貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
『ふひ。わ、ワガハイが手を貸すまでも、な、なかったね、マスタァ』
「いや良い援護だった。助かったよ、魔族とは初めて戦ったが……』」
頭を潰した魔族の死体を見下ろす。
人間、それも女とよく似た生き物を殺した。
それも命乞いを無視し、無慈悲に機械的に。
もっと抵抗感や、命を壊した事への罪悪感があるかなと想像していたが……。
《”静謐なる自我”──平穏を求める者の自我、それ以外は、もう何もいらない》
『思ったより簡単だな』
透明で、静かだ。
むしろ、平穏を害する存在が1つ消えた事で暖かな気持ちすら感じる。
月の宮で得た身体能力と、悪竜装備による触手攻撃はやはり強力だ。
更に不死と保管している他のオーパーツもある。
原作で中ボスくらいの魔族なら、なんの問題にもならないな。
「……そうか。つい殺してしまったが、この魔族にあえて殺されて不死を利用して逃げるのもアリだったか?」
『そ、それをするなら、王姉妹に正体を疑われているタイミングとかの、ほ、ほうが、有効だよ。い、今は、殺して正解だとお、思う』
物騒な事には頭のキレる愛竜の言葉。
それもそうかと妙に納得してしまう。
「まあ、それもそうか。どちらにせよ、もうこの場には居られない――」
キュピーン!! 脳に電撃のようなしびれが走る。
この感覚は──。
『悪竜シリーズ装備スキル“運命の死”発動』
月の宮で、ラミィにはいくつかのオーパーツを摂食させている。
今のラミィは数々のぶっ壊れアイテムを内包したチート中のチートだ。
この”運命の死”もまた、ラミィが食べたオーパーツの1つ。
『──指定検索対象──アネスタシア・ネイチア・ミリタルナ。ミア・ネイチア・ミリタルナ、彼女達の騎士団──全滅の可能性あり』
「チッ……やはりそう来るか」
運命の死は、最大2人までのキャラの死亡フラグを感知する事が出来るオーパーツ。
原作では推しキャラの生存を守るファンの声に応えてアプデで実装されたものだが……。
手に入れておいて、正解だったな。
原作でも、あの王姉妹は死亡フラグがやたら多い。
だが、この王都襲撃では死なないはずだが……そうはいかないようだ。
『ま、魔族の攻撃が激しい王都の外郭で防衛線で戦ってるみたい。そ、そろそろ限界っぽいね~』
「待て……王都の外……!? 王族がそんな前線で?」
原作では王城で戦うはずだ、知らないイベントに変わっている……。
「……カレル行商街の時と同じ原作にない展開か。……素直に原作知識無双させてくれよ」
『どうするゥ~? マスタァ。どっちを選ぶのお? 正体を隠す? それともそんなの関係なしに、戦う? ワガハイは、どっちでも──』
「いや──両方やろう」
なんだか、だんだん腹が立ってきたぞ。
どうして、俺ばかり、狂っているシナリオに振り回されないといけないんだ?
『え?』
「正体を隠したまま、リヒト・テトグマンの疑いを晴らしキャリアを確保する。王都と王女姉妹達も救う。全部やるのが、死にゲープレイヤーの腕の見せ所だ」
『ふ、ふひ、ま、また意味分かんない事言ってる……www、でもちゅき……ね、ね、ワガハイ、何をしたらいいのぉ?』
今、やるべきは――王姉妹の信頼を手に入れる事だ。
そのために、作戦を考えた。
1.王宮に受け入れてもらうため、リヒト・テトグマンとしてこの戦いで役に立つ
2.不死としての正体は絶対に秘密のまま
この2つの条件をクリアする手段はすでに確保している。
「ラミィ、手分けして動きたい──自立モードに移行できるか?」
悪竜装備の能力、“自立外殻”
その効果──悪竜装備は自律行動を可能とする。
月の宮のクソ天使達の中には、2体同時に倒さないと死なないギミックボスもいた。
そいつを殺す為に、100年かけてラミィと作った能力だ。
ラミィに鎧の操作を任せれば、謎のバカ強い鎧とリヒト・テトグマンの2人で行動する事が出来る。
ラミィに魔族の軍隊をしばき回してもらいつつ、俺はリヒトとしてあの姉妹を助ける……!
いける……多分!!
これなら、アリバイを作りつつ、正体を隠して行動する事が可能だろう。
『ま、ま、マスターと離れて行動する奴? わ、ワガハイ、あれ、あんま、す、好きじゃないな……サミシイ』
ふむ、ラミィはかなりテンションファイターだからな……。
仕方ない、陰キャドラゴンのテンションを上げておくか。
「悪竜といえど、魔族の軍隊は1人じゃ厳しいか?」
『──ハァ?』
空気がはっきり冷たくなった。
鎧の足元から染み出る闇が、影絵のように壁に張り付く。
その影絵は、竜の顎のようだ。
『我は悪竜──ラミレルアス。大いなる不在の神に逆らいし悪逆の竜。1000の天使を噛み喰らい、神の都を一夜で焼き、最強の神を追放した最強』
知っているさ、お前が灰クソの伝説の中の伝説という事は。
知っていてなお、この恐怖……気を抜くと、ひざが笑ってしまいそうだ。
『その我の力を疑うか? 我が小さき愛しい不死よ』
原作で、装備した者が狂死するとさえ言われた鎧。その鎧に宿る伝説の悪竜に俺は微笑みかける。
ああ、怖い。
だが 恐れる必要は微塵もない。悪しき竜は俺の仲間だから。
「見たいんだ、君の力を」
俺はその場に片膝をつき、俺の竜へ願いを伝える。
「皆殺しだ。魔族を狩ってくれ。我が強く頼もしき──愛竜よ」
『──ふひ♡』
◇◇◇◇
魔族による王都襲撃に対する父王からの命令は1つ。
『王都を護れ、命に代えても』
都を守るべき王はいち早く王城に籠り、宮廷魔術師の結界の中に逃げ込んだ。
王の代わりに戦うのは、王女姉妹が率いる第一宮廷騎士団と冒険者ギルドだ。
宮廷騎士団と冒険者ギルドは、獅子奮迅の活躍で王都内に溢れる魔物の群れを駆逐。ミア・ネイチア・ミリタルナの奮戦により、王都上空を飛び回る
それでも、危機は続く。
王都を取り囲む魔族の軍隊。その数数万。それに対し、援軍到着までの間、時間稼ぎの為、第一宮廷騎士団1000人を率い、野戦に突入。
第一宮廷騎士団は、絶望の防衛戦に挑んでいた。
「父上、今、なんと仰ったか……」
『言った通りだよ。防衛戦の指揮を妹に渡し、君は王城に帰還しなさい』
「は?」
簡易的に設営された騎士団の本陣。
アネスタシアは通信魔術用の水晶玉から響く父の言葉に、めまいを感じていた。
『君の活躍により、王城はいったんの危機を免れました。王女が前線に立つ必要はないでしょう?』
「何を、言っている……父上もご存じのはず。籠城戦は、城を守る為の野戦軍がなければ必ず負ける……」
『だから、その為の
「余に……逃げろ、と仰るのか……妹を死地に置き、命を賭けて戦っている臣下を、置いていけと……」
『?? ──女は男を守る為に死ぬのが仕事でしょう?』
貴様が、王が素面でそれを言うのか?
アネスタシアは血管が焼き切れそうな怒りを覚え──。
『アネスタシア。下賤な者と違って君は私の血を残す為に生きなければならない』
「──貴様」
血が冷たくなる。実の親、王、そんなものやはり関係ない。
男の王など、やはり──。
『アネスタシア。聞き分けなさい。死んでもいい者を死なすだけ、簡単な仕事でしょう? それでは』
通信が切れた。
メキッ、アネスタシアが拳を机に叩きつける。ひび割れた机が彼女の激情を代弁する。
「何を、ぬけぬけと……! 貴様が、宮廷魔術師とS級冒険者を王城の守備に縛り付けさえしなければ、まだ勝ち目がある戦いだった!! 愚物め!!」
「ね、姉さま……しかし、義父上の言葉通り、姉さまだけでも安全な王城に……」
「貴様の意見は聞いていない……」「っ……」
本陣には、アネスタシアとミアを守る為の近衛騎士が数名待機している。
全員、幼い頃より友として育った仲だ。
そんな彼女達はただ、静かに王女姉妹のやり取りを見守る。
『こちら、右翼前線、もう、もう無理です!! あああ、数が、数が多すぎる!! 援軍を! 援軍をおおおおおおお』
『嫌ァ、嫌ァァァァァ、巨人、巨人が、アタシの脚を──お父さん、お母さん、助けっあああああああああああ』
『耐えろ!! 耐えるんだ!! 王女殿下がきっとなんとかしてくれる!』
『うわあああん! アネ様万歳! もう死にまああああす!』
『バカ!! あきらめるなって!! 女でしょ!! 戦って死になさい!!』
通信水晶から響くのは、戦場の悲鳴。
「はりぼての王を守る為に、余は、臣下を死なせるのか……」
自分が悩む間にも、1人、また1人、忠誠を誓ってくれた兵が、臣下が死んでいく。
アネスタシアの噛み締めた唇から、血が零れる。
机に広がる地図を確認。
魔物の群れは、統率された軍の如く、王都を囲いつつある。
こちらが1000に対し、あちらは数万以上の大軍。
尋常の策では、まともに戦う事すら困難。
「姉さま」
「妹よ……早く身体を休めろと言ったはずだ。貴様は王都で竜を10匹も相手取ったのだ。魔力も枯渇している、そのままでは──」
「……覚えてらっしゃいますか? カレル行商街での日々を。――先生の授業です」
「何?」
本来の
彼女にはまだ多くの役目がある。
主人公と出会い、滅びに抗う不死身の勇者として覚醒する運命だ。
本来の歴史では、第一宮廷騎士団を犠牲にし──ミアとアネスタシアは王城に帰還し生き残る。そのはずだった。
「先生の元で学んだ数か月はとても楽しかったです。姉さましか理解できないような難しい戦術の話も、先生はとてもわかりやすく教えてくれました」
だが、ある男の存在によって、運命は大きく歪んだ。
「先生がたまにしてくれた昔話がありましたね、東邦辺境のおとぎ話……」
カレル行商街で出会った男の教師。
彼は、よかれと思ってその話を、彼女達にしていた。
こことは違う、異なる世界、寝ても覚めても狭い島国で殺し合う、死ぬ事を道として説いた戦闘集団の話。
「包囲を広げる圧倒的な大軍、既に決まった負け戦。精鋭を率いての一点突破。前方への撤退戦。先生、曰く」
その中でも、最も勇ましく極まった連中の話を――。
「──バトルオブセキガハラ、シマヅノキグチでしたか?」
「待て……何を言っている?」
「ミアは、姉さまの正しい妹ではありません。同じ母の胎から生まれていながら、この血の半分は故の知らぬ者。姉さまこそ、正しき王です」
妹の言葉と重なるように、通信水晶から声が響く。
『またあいつだ!!
『白髪の女の魔物──いや、嘘、あれは、魔物じゃな──ざざざざざざざ』
『嘘、100人以上が一瞬で潰っ──』
白髪の人型の魔物。通信から聞こえる戦場に潜む化け物の存在。
この世界の伝説、今はもうお伽話になっている存在に人の形をした魔物──魔族の帰還、あの男が告げた言葉と、符号する。
「テトグマンさんの仰っていた事は本当なのでしょう──魔族が帰還し、王都を襲っている、これはきっと乱世の呼び水になります、これから先の世界に姉さまは絶対に必要なお方です」
ミア・ネイチア・ミリタルナは正しく英雄の素質を持っていた。
英雄の素質――犠牲。
「ミアが血路を拓きます。その隙に姉さまは王城へ」
ミア・ネイチア・ミリタルナは死ぬ気だ。
姉を生かす為の囮、アネスタシアの礎になろうとしている。
幼き頃、種違いの自分を妹として受け入れてくれた事、あのカレル行商街の夏を共に過ごし、同じ男に憧れた事。
──全てが壊れたあの夜に、姉1人にだけ決断させてしまった事。
全ての思い出がミアに決意をさせた。
「今こそ、姉さまに恩を返す時。ミアはこれより、敵戦線に正面突破を行います。お味方、尽く、御退き候」
片膝をつき、剣を地面に突き立てるミア。
死への恐怖は微塵もない。
この世界の女への教育、戦う事を義務づけられた貴族としての教育は彼女を正しく英雄へと昇華させていた。
「ならん。そのような真似、絶対に赦さん」
「──そうですか」
ミアが、すっと目を細く。
もう彼女に姉の意見を聞く気はなかった。姉を気絶させてでも、為すべき事を為す。
だが、しかし。
「……やるなら共に、だ」
「え?」
この妹にして、この姉あり。
アネスタシアもまた、父の妄言に付き合う気などさらさら無い。
歴史は、すでに8年前に狂っている。
この姉妹は、ある男の教師から聞いたおとぎ話をずっと、ずっと覚え――その戦士達の在り方をずっと忘れていなかった。
「教師殿のおとぎ話、バトルオブセキガハラ、シマズノキ゚グチを超える。我々はこれより各地で独立奮闘している友軍と合流。──全ての戦場に向かって撤退戦を開始する」
それは前代未聞の戦術。
あの教師の授業を聞いて居なければ選択肢にすら現れぬ狂気の沙汰。
「姉さ、ま……何を」
「貴様1人でやるより、余を含めた全員で仕掛けるが可能性があるだけの事。それに──」
アネスタシアがにやりと笑う。
「この戦場にいる者は、余の兵、余の臣、余の友。王とは背負う者だ。余は父とは違う、臣下の死の礎の上に王朝を啓く気など毛頭ない」
第一宮廷騎士団“銀狼”に弱卒はなし。故にそれを率いる姉妹も英傑に他ならない。
王と勇者の姉妹。それこがネイチアの王姉妹。
「余は王族として為すべきを為す」
女には、死ぬと分かっていても戦わなければならない時がある。
「妹よ、供をせよ。これより我ら姉妹で──ゲヘナの門を叩きにゆく、月の宮にすまう伝説の天使も慄く戦働きを魅せよ」
アネスタシアの言葉に、ミアが片膝をつく。
これだ、これこそが己の姉、覇王となるべきお方。
絶対に、しなせてはならない。
「……御身を命に賭けても、王に。我が剣、鍛えた力全て悉く、姉さまの王道が為に」
「良い。二度と余の前で己を捨て駒扱いするな」
ミアが深く頷く。
この姉妹は、鉄火場でなければ互いに互いの想いを通じ合わせる事は出来ない。
「アネ様、ミア様、ご下知を」
「我ら近衛騎士、いつでも準備は出来ております」
「まあ、アネ様が無茶すんのはガキの頃から変わってないっすからね」
「クーリさん、アネ様に失礼ですよ」
近衛騎士が全員、その場に片膝をつき同意する。しかし口ぶりはどこか……厳格な主へのそれではなく、まるで──。
「くっくっく、貴様ら、まだいたのか? 逃げるなら今ぞ」
悪友同士のそれ。
王姉妹の近衛騎士はみな、幼少の頃からの幼馴染で構成されていた。
「笑えないっすよ、アネ様」「殿下を捨てて逃げるなんて家名が汚れるどころではありません」「まだいたのかじゃないんですよ」「ここで逃げたら不死大戦で戦って死んだおばあ様にぶっ殺されますってば」「ツンデレシスコン」
女騎士達が笑い出す。
この世界の──貞操逆転死にゲー世界の女達は皆、笑って死にに行く。
「良い。では行こう。この戦が終われば余はあの愚王から王座を貰い受ける。存分に武功を立てるといい。褒美は望みのままぞ、あとシスコンとのたまったものは一生無給」
「「「「「「やったああああああああああ」」」」」」
「わ、ァ……タダ働き、って事??」
やはり、男なぞ頼りになる存在ではない。自分に必要なのはこの臣下と妹のみ。
自分の世界には信頼出来る女だけがいれば良い。
「くはは、愛い者どもめ、女同士で番う奴らの気持ちもわかるものだ」
「あっはっは、アネ様のお相手なら喜んで後宮に美女が集いますでしょうね!」
アネスタシアの本隊、総大将率いる騎士の群れが暴れ出す。
女性、魔力に選ばれ戦う力をそのDNAに刻まれた生き物が嗤う。
「では、行こうか、臣下達よ」
「「「「「「「「「「「「「応」」」」」」」」」」」」」
アネスタシアが一軍を率いて、前へ。戦場へ。
眼前に大波の如く溢れるのは魔物の群れ。
鉄の鎧を着込んだゴブリン、オーガ、一つ目の巨人、大ムカデ、その他諸々。
本来であれば群れるはずもない魔物達が一斉に襲い来る。
「カレルを思い出す。我が人生の激変はいつも貴様ら魔物が好き放題に暴れるのだな……」
銀の目隠しを、アネスタシアが外す。
めききゃ……魔力で強化した握力でそれを、握りつぶした。
「いい加減、目障りだ」
魔物の大群をアネスタシアが視界にとらえて。
「スキル“魔眼──イオマグヌッソ”」
一気に銀の焔に焼き尽くされる魔物達。アネスタシアの
燃費と反動がものすごく悪い、しかし、扱えば1人で一軍をすら相手に出来るスキル。
大陸において、20人もいないS級スキルの持ち主。
「あの夜を二度と繰り返すつもりはない。続け!! 第一宮廷騎士団──王姉妹の銀剣達よ! 武名を天下に知らしめよ!!」
目から血を流し、笑うアネスタシア。
「姉さまの御名の元に。ミア、出ます」
姉が焼き尽くした戦場を賭ける金の光。彼女の金髪が翻る残影──それが通った場所にいる魔物が次々に切り刻まれていく。
「前へ! 前へ!! 友軍を見捨てるな! 我らは父王、あの男の愚王とは違う! 余が焼き、ミアが斬り開く!! ついてこい!! 銀剣の騎士共!!」
本来であれば後ろに控えるべき指揮官が、最も危険な前線に立つ。
これを見て奮い立たない女はこの場には存在しない。
「おいおい、大将が一番前に出てやんの! 絶対死なせねえ!」「アハハハハ!! 敵軍の真っただ中に撤退戦なんて! 我々の殿下はイカれてますね! 最高です!」「ガキの頃の初恋相手の影響らしいぜ!」「おバカ、それ、殿下に言ったらご機嫌を悪くさせますわ!」「無駄口叩いてないで! アネ様とミア様をお届けしろ!!」「絶対にこのお二人を死なせるな!! 死なせたら末代の恥と思え!」「あはー! 処女のまま死ぬのだけが思い残しなのー!」「みな、命を捨てろ!! 命を捨てて、殿下を生かせ!!」「私達の殿下を、王に──世界の王にするんだ!!」
銀剣を抜いた騎士達が魔物を屠り続ける。
快進撃を続けるアネスタシア本隊。青い返り血まみれになりながら、吶喊、吶喊、吶喊。
「抜けた!! レミーナ隊、ユリア隊、合流!! 貴様ら、まだいけるか!」
「で、殿下だ!! 殿下の本隊が来てくれた!!」「勿論です、殿下!!」「もう死んだ命です! ここで使い切ってやりましょうや!!」
次々に孤立していた部隊と合流し、戦場を駆けていく。
アネスタシアの魔眼による戦術級の広範囲攻撃とミアの超高速戦闘、魔術騎士達の死力を尽くした進撃により、敵軍を食い破り始める。
しかし、多勢に無勢。殺しても殺しても魔物の群れは衰えない。
1人、また1人と大波に呑まれるかのように、魔物の群れに飲み干されていく。
「あ、がっ、クソ、ここ、までか。ごめん、先に死ぬ!! 置いていけ!」
「っ、わかった!! 遺言ある!!??」
「優しい男で処女卒業してから死にたかった!! それ以外は、超楽しかった!! 殿下と妹様に宜しく!」
ゴブリンの槍に腹を貫かれた
そのまま殺到する魔物の群れに四肢をもがれながら──魔力を限界まで練り上げ、そのまま魔力暴走を起こして爆発する。
命を捨てがまりながら、騎士1人の命で100以上の魔物を粉々に変えた。
これがこの世界の女の人生。
戦って、傷ついて──笑いながら死んでいく。
「──ッ、すまん、臣下よ、すまない──すまない」
誰にも聞かれないアネスタシアの呟き。
「死なせて、しまって、ごめん」
臣下の魔力が1つ、また1つ消えていくのは背中で感じるアネスタシア。
だが、彼女にその死を悼む事も、止まる事も振り返る事すら許されない。
彼女に許されたのは、背負うだけ。
「クーリ、リラ! まだ、まだ生きているか!!」
「不思議な事に生きてるぜ!! アネ様!! リラのクソ眼鏡は知らねえけどな!」
「アネ様、近衛騎士リラ・ドリジャ、健在です!! クーリさんも無駄口が叩けるようで何より!!」
側近の近衛騎士、青髪の美女と黒髪の眼鏡美人が返り血まみれで嗤い返す。
「ミア、いるか!?」
「います、姉さま、ミアはここに──!」
王姉妹は、原作、灰クソにおいて――必ず死ぬ。
特に姉のアネスタシア。彼女を、シナリオクリアまで生存させる事が出来たプレイヤーは存在しない。
全ての行動が、アネスタシアを死に導く。
まるで、運命の死に魅入られているように。
それはきっとこの世界も同じ。
「ミア、敵陣列、何列抜けた!」
「姉さま、これより8、8列目を抜きます! 敵陣中央!! 四方八方敵だらけです!!」
既に──限界。
アネスタシアの目の出血は止まらない。ミアの四肢も、限界。残った騎士達も無傷の者は皆無。
それでも。彼女達は嗤うのだ。
「──くはははは! 良い! 我ら好んで死地にて嗤う!! 揃って、三代先の吟遊詩人の唄となれ!!!!」
「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」
アネスタシアが最前線で声を振り絞る。美しい銀髪は魔物の燃えカスに汚れ、限界を超えて酷使された魔眼から血を流しながらも、彼女が止まる事はない。
灰クソ原作と同じように、王姉妹は駆け抜けていく。
駆けて、駆けて、駆け抜けて。
「わあ、貴女達、とってもかっこいいわ」
やがて──運命の死にまみえるだろう。
《
読んで頂きありがとうございます!
感想、評価、いつも助かります。
ちょこちょこ他シリーズの宣伝などして申し訳ないです。
引き続きお楽しみください。