貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
この世界には魔力というエネルギーが存在する。
女性は魔力に適合し、様々な魔術の使用や肉体の強化、進化などの恩恵を受ける事が出来る。
魔力は凄い。
魔力で強化した肉体は岩とか素手で砕くし、魔術という様々な超常現象を起こす業の燃料になるし。
そして、街を出ればファンタジーおなじみのモンスター達が闊歩しているこの世界。
魔力がなければ人間はモンスターに対抗できない。
しかし、魔力が使えるのは“女性だけ”だ。
女は魔力を使えて、男は魔力を使えない。
同じ生き物なのに、性別というたった1つの要因が全てを分ける超格差社会。
それが、灰クソの世界だ。
……この設定、女キャラを使う理由の為だけに作られたってマジかよ。
確かに理屈は通っている。
そら、自然に強キャラは女ばっかりになるだろう。
だが思いついても普通、ほんとにやるか?
男キャラを使う=魔術もレベルアップによるステータス強化も出来ない完全縛りプレイの始まりだ。
ゲーム体験自体も、女キャラと男キャラで差が付きすぎる。
具体的に言えば、灰クソのチュートリアル(最初の)ボス“
ただし、これは女性主人公を選んだ場合だ。
プレイアブル(操作する)キャラクターを男にした場合の突破率は……1.2%にまで下落する。
クソバランスなんて言葉じゃ追いつかないゲームバランスだ。
むっつりスケベ心恐るべし……でも、そんなふざけたゲームなのにめちゃくちゃ面白いんだよな……。
「ねえ、君、君、そこの給仕さん!」
「……ん? あ、俺……? はい! 何かご注文でしょうか?」
精一杯のビジネススマイル。
前世では一流の社畜だった俺は、笑顔の作り方などは心得ている。
具体的に何の仕事をしていたかは思い出せないけども。
「えー何この子、愛想良い! 好きかも!」
「確かに……この前行った帝都のお店の子より可愛いかも……」
「新しく入った給仕さんかな? ねえねえ、こっちに来てお姉さん達と一緒に飲まない?」
声をかけてきたのは、女性冒険者の3人組パーティーだ。
この世界の女性、特に魔力に覚醒している女は皆、異常なほど見た目が良い。足の長さ、くびれた腰、美しい顔立ち。
文字通り、遺伝子が違うって感じだ。
そんな美人達が、露出の多い軽装鎧に身を包む。丸出しのおへそや、輝く太もも。
ふーん、えっちじゃん。
さて、そんなエッチな3人のお姉さんには見覚えがある。
地方都市である、この街のギルドではトップ層に位置するB級の実力者。
そんな彼女達が、椅子を丁寧に指差しにこりと笑う。
異世界ものでよくある冒険者ギルドでのウエイトレスへのナンパ。
この世界ではナンパも主に女性が行うものとなっている。
……俺は、今、ナンパされているのだ。
「黒髪って珍しいねー? 東方辺境の血かな?」
「あ、あはは。両親が東の出身でして……」
「え、そうなんだ! うちら遠征で行った事あるよね」
「そうそう、良かったら東方の話してあげよっか? ほら、お酒もあるし!」
じっとり。
女性達の視線は……俺の短パンから出る太ももに集中している。
灰クソ設定資料集23Pによると、この世界の女性は魔力の影響か、その……性欲がかなり強い、らしい。
美少年ではない俺でもナンパの対象になるほど、この世界の女性は肉食系が多いのだ。
「でも、珍しいよねー。男の子なのに外で働いてるとかさー」
女性冒険者茶髪ロングさんが、エールを煽りながら呟く。
前世の基準で言えばモデルみたいな美人達が、ちらちらと俺の短パンや胸元をチラ見してくる。
前世の女性が、男性の視線に敏感というのは……こういう事なのだろう。
「ほらほら。こっち座りなって。しっかりチップも払うからー」
「確かここのお店、こういうシステムあったよねェ? はい、取りあえず3万G」
きらきら光る金色の硬貨を3枚握らされる。
余裕で1か月は食べていける金額……。背に腹は代えられない。
言われるがまま、俺はその冒険者達のテーブルに着いた。
「……おお、リヒト君、なんと」
「神よ……」
「リヒト君、無事を祈る……」
同僚の男性、ギルドの受付お兄さん達(※全員イケメン)が胸の前で、この世界のお祈りポーズを送ってくれた。
「……見てよ、あれ」
「いいなあ、B級のパーティーだよね……稼ぎがあったらああやって男の子呼べたりできるんだあ……」
周囲の少女冒険者達からの視線が凄い。
「あーあー、物欲しそうな目で見てからまあ」
「子供の冒険者でも女だからねえ……はい、君はこっち、もっと奥に来て?」
そんな視線から俺を隠すように、美人のお姉さん達が、左右をがちっと固める。
甘い匂いすげえ。
この世界の女性は、基本的に身長が高く身体も絞られている。モデル体型や、アスリート体型が多い。
クソ……卑怯だぞ。綺麗な顔立ちに身長の高いスタイル最高お姉さんって……
10代の下半身に悪すぎる……!
「君、10代だよね? なんでギルドで働いてるの?」
「ほんとほんと。君くらいの年齢の男の子って基本的に……お家で聖歌練習したり……詩を作ったりしてるんじゃないの?」
彼女の言う通りだ。男の労働者はかなり少ない。
理由は簡単。男は働かなくても生きていけるから。
だいたい20代前半で家庭に入り、社会に出る事は少ない。
労働者として社会に出る男というのは一部の商才がある者や、技能持ちといった所か。
後は……俺のように事情がある者だ。
「……数年前に両親が他界してまして……生活の為に稼がなきゃならないんです」
「……へえ。そうなんだ」
「男の子で、若いのに……立派だねえ」
「ええ~めっちゃ偉い……感動しちゃった」
「ほら、よかったらこれ食べな? 美味しいよ。“陽鶏(ひよりどり)の炭焼き” 」
金髪ポニテさんが差し出してくれた熱々の焼き鳥。
経験上、こういうのは断った場合面倒な事になる。具体的に言うと、女が奢るって言ってるのに恥をかかせるの? みたいな。
なので、俺は遠慮なく頂く。
「おいしっ」
ザクザクの衣の内側には、肉汁溢れる鳥の旨味がぎっしり。
スパイスと黒コショウのパンチある香り。
この世界、飯がめちゃくちゃ美味いのだ。
美味しいファンタジー料理が食べられる、これだけは転生してよかったと──。
「君、美味しそうにごはん食べるね……」
「ふふ、可愛いー! ねえ、お肉、美味しい?」
すりっ……すりり。
金髪ポニテ冒険者お姉さんは俺の太ももを、青髪ボーイッシュ冒険者お姉さんは俺の肩を撫で回していた。
「ほんと、ご飯美味しそうに食べる男の子、私、好きだな~」
対面の茶髪お姉さんの長い脚が俺のふくらはぎをつーと撫でていく。
いつのまにか、お姉さん達に身体をまさぐられていた。
う~む、流れるようなセクハラ。
流石は貞操逆転世界、セクハラも女が男にするものになっている。
正直、美人に撫でまわされるのは、嫌な気分はしないのだが……。
「ひゅう~……見ろよ、リヒト君のあの堂々とした態度を……」
「あんな屈強な冒険者に囲まれて、顔色1つ変えずに接客を……」
「可哀そうに……女性冒険者向きの脂っこい食事を食べさせられて……」
「立派だ……立派すぎるぜ、リヒト君……」
「凄すぎる、あの胆力……!」
受付お兄さん達から、畏怖と尊敬の視線で見つめられている。
この世界の男からすると、女という生き物は……まあ、怖いのだ。
魔力により、女の肉体は素手で岩を割り、剣を持てば湖すら割る事もある。
同じ人間のはずなのに、生き物としての機能に差がありすぎる。女の気分1つで貞操どころか命まで奪われかねない。
女性の事を、人の形をした魔物だと言う人もいるくらいだ。
……灰クソのゲーム設定が現実に反映されると凄く歪だ。
「君……なんか不思議な子だね」
「ほんとそれ、君さ、ウチらに触られたりして怖くないの……?」
「お金で買った男の子でも、ここまで堂々としていられないよ?」
お姉さん達の息が荒くなってきた。どんどん俺の身体をまさぐる手が下半身に近づいてきている。
眼もとろんとしてきてるな……これは良くない。
「ねえ、なんで嫌がらないの?」
「もしかして、こういうの、好きなの?」
セクハラ親父みたいな事をのたまう美女達。
このまま放っておくと、こっちがビッチ扱いされかねない。
発情と性欲は魔力に深く関係している。
簡単に言えば、強い女性ほど……エッチなのだ。
なんで、灰クソのゲームシステムが、こんな厄介な生態として反映されてるんだ!! バカかよ!
「ねえ……君、この後、お姉さん達と一緒に──」「この手袋……“アクラ鳥”の素材ですか?」
「え?」
俺は咄嗟に青髪ボーイッシュお姉さんの手を取る。
「お姉さんがつけてるこれです。“アクライーグルの皮”それも剥ぎ取るのが難しいお腹の皮ですね? わあ、すごいなあ……きれいな薄青色だ……」
「あ、うん……く、詳しいね。その通りだけど……モンスターとか分かるの? 男の子なのに?」
お姉さん達のえっちな雰囲気が少し和らぐ。
今だ! たたみかけろ。
自分の貞操は自分で守れ!
「はい! 俺、モンスターちょっと好きなんです」
これぞ、灰クソやり込み廃人勢の俺の知識を活かした処世術!
“冒険やモンスターに詳しい系男子”!
前世の世界では、男子垂涎のモンスターや冒険に関するロマンに、この世界の男はまるで興味を示さない。
だが、俺は違う。
モンスターとか、戦闘とか、冒険とかそういうの大好きだ。
要は、この世界の女性と俺の感性は非常に似ている。
現代で言えば、“男友達と話題を共有できる系のクラスメイトの女子”……と言った所か……。
前世の世界でも、男の趣味に理解のある女性というのはコンテンツ力が相当強かった、気がする!
「この手袋の素材は、お姉さん達が狩ったんですか?」
「え、う、うん……」
少し驚き顔の青髪ボーイッシュさん。
こんな反応をする男は珍しいのだろう。
よし、この調子で畳みかけるぞ。
「すごい! アクライーグルって時速100キロ以上で飛ぶ上に、くちばしに魔力を感知する器官があるから射ち落すのも一苦労なのに!」
「へ、へえ……ほんとに詳しいんだ……えへへ、それほどでもないって」
テレている青髪ボーイッシュさんに話の続きをねだる。
「ま、まあ……ウチは魔力隠すの得意だから。猟犬魔術を矢じりに仕込んで使ってるんだ……あ、えっと、猟犬魔術ってのはね──」
それはもうすでに、知っている。ゲームでな!
「え、猟犬魔術? すごいですね!」
「へ? き、君、猟犬魔術知ってるの?」
「はい! 狩人の家系の方が代々大事に育てていく魔術ですよね? 魔術協会の主流魔術にはない狩りに特化した物だって聞いた事があります! かっこいいなあ……」
「え? か、かっこいい? え、え、えへへ……そ、そっかァ……あ、ごめんね、さっきから身体触ったりして……その、嫌じゃなかった?」
急に紳士、いや、淑女になった青髪ボーイッシュお姉さん。
自分の得意分野に興味を持つ相手は、大事にしたくなるものだ。
「はい、お気になさらず。すごいなあ、お姉さん、凄腕の狩人職なんだ……。あ、この弓も……アカシヤオークの弓……え、マジでかっけえな、本物こんな感じなんだ……」
「え、ええ~、ぶ、武器の素材まで分かるんだァ……何この子~……好きかも」
この弓、ほんとかっけえな……。
湾曲なライン、滑らかな質感……武器って感じだ……。
序盤のお助け武器として有名な奴じゃん……。うっわ、灰クソファンとしてかなり感激だわ……。
ゲームで出てきた武器に目を奪われていると──。
「ね、ねえ、君、剣士のあたしがアクライーグルの嘴を斬った話とか興味ない?」
「あ! ずるい! ねえ、キミ、魔術詳しいね! 魔術師の話、聞かせてあげるよ!」
「ちょ、待ってよ! この子は狩人に興味あるんだからァ! 横取り禁止ィ!」
俺の尻まで撫でていたお姉さん達の両手は行儀よく、テーブルの上に。
いつのまにか話題は、誰が俺に自分の職業の話をするかに替わっている。
「すげえ……」
「なんでリヒト君、あんな野蛮な話に詳しいんだ……」
「あの性欲強めの腕利きパーティーを手懐けてる……これまで、どんな苦労を……」
「しっ、言うな……きっと俺達なんかじゃ想像もしない辛い勉強をしたんだろうぜ」
「ひゅ~、やっこさん、まさに、魔性の男……!」
ますます強くなる男性同僚からの視線。
皆、女性を誤解している。
この人達は、エッチな事を考えているお姉さんじゃない。
仕事熱心な淑女の皆様だ!
「こんなに仕事の話ができる男の子って初めてじゃない?」
まあ、灰クソの職業特性はデータとして記憶してるからな。
「分かる~なんていうか、上辺だけじゃないよね、武器の話とか素材にも詳しくて驚いちゃった」
武器だけじゃなく、アイテムの入手方法から性質、フレーバーテキストも全部覚えてるからな。
「待って。ウチさ、本気でこの子気に入ったかも……」
「あはは! ……実は私も」
「……やっぱ気が合うね、あたし達」
ん? おかしいな……。空気がじっとりしてきたような。
むっわァとした熱気と、甘い匂い。
お姉さん達の視線が、なんか怪しいような。
「ねえ、君、お仕事って何時まであるの?」
「お姉さん達、君とまだお話したいなあ……」
「もっと静かで、ゆっくりできる場所、行かない?」
……おかしいぞ。仕事の話に熱心な淑女だったはずなのに……。
「ちなみに君は……すんすん……」
「ふんふん、この、香り……」
「うん、間違いないね……」
俺の首元の香りを嗅ぐお姉さん達、爛々とした目がねめりとこちらを見つめて。
「「「あは、童貞だね」」」
前言撤回。
淑女じゃなかった。エッチだったわ。
水着にジャケットだけ羽織っているような冒険者装備、おっぱいがたくさん目の前にある。
まずいな、このままじゃ喰われる。
性的な意味で。
「オヤァ?」
がしゃん! 大きな音と共に、酒場の扉が叩き開かれる。
一気に静まり返る酒場。
皆の視線は、酒場の入り口へ。
「メスの匂いきつ過ぎクッソワロタ。誰の幼馴染にサカってる? その罪の深さを理解しろ? カスムシちゃん?」
緑髪の少女が、怪物の素材をいくつも引きずりながら現れた。
「「「……あ?」」」
「あ? じゃあねえんだよ、誰の男に盛ってんだ、雑魚女ども」
向けられた殺気に、殺気で返すお姉さん達。その殺気をさらに殺気で返す緑髪の美少女。
「……あ、まずい」
思わず俺は声を漏らす。
「えはは♡ 何がまずい? 言ってみろー? 浮気の自覚がおありかー♡ 可愛いね、抱き潰すぞ?」
酒場の入り口に立つ緑髪ポニテの美少女。
メスガキ主人公ちゃん、いや、この街のギルドで唯一のA級冒険者──。
「お前は、アタシの(幼馴染)だろー?」
この世界の主人公、ニア・リセラヴェルタがにやりと笑った。
2話、御覧頂きありがとうございます。
引き続きお楽しみ下さい。