貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
マズい。
ラミィを展開するのが間に合ったので、体がバラバラになる事は避けれた。
内臓がぐちゃぐちゃで、感覚的に1回死亡するのは間違いない。
まあ、死ぬのはいいとしてだ。
1個、非常にマズい事がある。
「何故、だ、何故、男のお前が余達を庇った!? なぜっ、どうして」
「嫌だ、こんなの、こんなの嘘、嘘嘘嘘」
駆け寄ってくる王姉妹。
声が引き攣り、ミアに至っては泣きそうだ。パニックになっている。
まずい、バレないように身体の再生をしなければ……。
おい、魔族の襲撃がないと思ったら今度はどんな突発死亡イベントだよ。
……待てよ?
ミリタルナ王都で、王姉妹を庇って死ぬ、か……。
なんか、アステーラの時と似たような状況だな。
まるで、前の世界と同じような……
なんだよ、それ……。
クソ、頭を打ったか。めちゃくちゃ眠てえ。
外傷の再生は終わった……砂煙で恐らく灰化は誰にも見られていない。
「ダメだ、ダメだダメだ、リヒト! リヒト・テトグマン、目を、目を瞑るな! 寝るな! あ、あああ、どうして、どうしていつも、こうなるのだ!! 余の、大切なものばかり、なぜ……」
「嫌です、リヒトさんっ、こんな、こんなの、こんなのって、ないです。やだあ、やだああああああ……」
もう王姉妹の声も、聞こえない。
マズいぞ……彼女達の前で死ぬワケには行かない。
前の時みたいな、事に……。クソ、視界がどんどん暗く。
もう、何も聞こえない。
《YOU・DIED》
はい、クソ。
◇◇◇◇
~灰クソ発売前特別シナリオ紹介PV~
『あなたは、PCで流れる動画を見ている』
灰と絶望のダークファンタジー"CRISIS SOUL"シナリオ紹介PVへようこそ。
2028年に発売が間近に迫ったクライシスソウル、今日はあるシナリオをプレイヤーの皆様に紹介していこうと思います。
チュートリアルである王都襲撃イベントで不死として覚醒したプレイヤーはこれから本格的にクライシスソウルの世界に足を踏み出す事になるでしょう。
ここではプレイヤーが自由に足を踏み入れることの出来る大陸地域の1つ。
魔術都市”ルラカナ”をご紹介していきます。
『深い霧に包まれた廃墟になった水上都市を見下ろす』
この地を訪れたプレイヤーは月見台の魔術学院を中心に栄える魔術都市”ルラカナ”滅亡の謎を探るシナリオに直面する事になります。
魔術都市ルラカナは永世中立を謳い、大陸中の人間国家から尊敬を集めている魔術の本場でした。
しかし、数年前に起きたある事件"月見の夜"を経た結果、滅びました。
プレイヤーがこのルラカナを訪れた際、既にこの魔術都市は魔物と魔族が蔓延る廃墟となっています。
プレイヤーは月見台の魔術学院に何が起きたのかを探る事も、足早に去る事も可能です。
『崩れ落ちた魔術師の尖塔、黒く焼け焦げた魔術の都市。所々に遺る魔術師達の遺骨の映像が流れる』
そして、空を覆うように砕けた──月の残骸。
かつて大陸中の魔術師が憧れたこの都市はもはや人の居場所ではありません。
この恐るべき地を探索する事を選んだプレイヤーは月見の夜に何が起きたかを探る事になるでしょう。
書物、記録、あるいは死者の記憶。
このシナリオでは、都市全体が一つの巨大ダンジョンとして設計されています。
『崩壊した魔術学院。謎の巨大クレーター。そして廃墟と化した都市の上に滞空する月のかけら──』
数多くのボス、イベント、そしてこれからの旅で役に立つ多くの魔術がプレイヤーを待っています。
ルラカナの謎に挑む事を決めたプレイヤーには心強い味方も現れるでしょう。
”月砕き”を名乗る人類最強とうたわれた魔術師──既に故人であるハズの亡霊の願いを聴くも聴かないもあなた次第です。
謎を探るプレイヤーは恐るべき大敵にまみえる事になるでしょう。
魔物だけを喰らう大狼、恐るべき神の如き大魔族、不死同盟。
そしてルラカナでもっとも恐ろしい化け物『落月の魔族』
月見の夜を引き起こしたとされる大魔術師、その末路と噂されるその存在。
果たして彼女は、都市を滅ぼした元凶なのでしょうか。
それとも──。
人を魔物に変える病、月を恐れる人々の記録、そして謎多き魔術師達の世界を救う戦い、その末路を知る冒険がルラカナプレイヤーをお待ちしております。
灰と絶望のダークファンタジー”CRISIS SOUL”『魔術師の落月』編をお楽しみ下さい。
ざざざざざざざざざ
『画面が砂嵐でふさがれる、何も見えない』
『乱れた音声だけが聞こえる』
『あなたはそれに耳を傾けた』
ああ、それと……これは別の話になりますが、世界も記憶する事をご存知ですか?
特異点による世界改変は完璧なものではありません。
致命的な運命を回避する事は可能ですが、それはあくまで過程だけ。
結果はたいして変わりません。前周回で起きた事が非常に起こりやすくなっています。
全てを夢として誤魔化しても、世界はおぼろげに全てを覚えてしまっています。
過程が歪み、結果だけが世界に遺る。
全ての特異点を見つけ、安定化させる事をおすすめします。
でなければ、この世界の攻略は不可能でしょう。
貴方の望む──グランドルートの話です。
期待しています。
──不死なる灰よ。
◇◇◇◇
~リヒト視点~
「……夢か」
気絶していたらしい。
何か、妙な夢を見ていた気もするが……
所々包帯を巻かれて、治療の後が見える。
不死がバレていれば呑気に治療されているはずもない、とっくに封印措置で棺桶の中に閉じ込められているはずだ。
つまり、不死バレはしていないと予想していいだろう。
ふと、視線を感じる。病室にいたのは──。
「──」
がたんっ。
座っていた椅子が真後ろに倒れる勢いで、彼女が立ち上がる。
アネスタシアだ。
銀の目隠しを外した彼女──見ただけで息をのむ美貌。
輝くような銀髪はどこか艶を無くし、顔は真っ白、血が通っているとは思えない。
目の下に濃いクマ。
眠っていないのが、一目でわかる有様で。
「──…………ぁ……」
かすれた声。
砂漠をさまよう遭難者が、乾ききった喉で最期に振り絞った、みたいな声。
「殿下……?」
「…………」
そこから、数十秒、アネスタシアは固まっていた。
憔悴してなお美しい顔、ぴくりとも身じろぎをせず、しかし、ようやく。
「………………り、ひと、テトグマン……」
「あ、はい。殿下、そのご様子は、一体──」
「リヒトっ!!!!!! あっ……」
がたっ。
アネスタシアが俺に駆け寄る、しかし、彼女が足をもつらせ前につんのめる。
まずいっ。
俺は彼女を受け止めようとベッドから跳ね起きる。
彼女に近い方の腕、左腕を差し出して──「あれ?」──ない。伸ばしたハズの左腕がいつまでたってもアネスタシアを受け止める事はなかった。
ぼふっ、そのままアネスタシアを体で受け止める結果となる。
ベッドに、アネスタシアに押し倒される形で着地。
ぎしっと激しい音で軋むベッド。
流石王宮ベッド、びくともしていない。
「り、リヒト──怪我は──」
「う、で、殿下、お怪我はございませんか?」
「──」
アネスタシアが目を見開き、動きを止めた。
「──何故だ……」
「え?」
「其方は、今も、また、余を、私を、庇った……何故だ……何故、自分の事よりも、私の身を案じるのだ……其方は男で、私は、女なのに……」
アネスタシアは俺の首に抱き着いたまま声を漏らす。
「その前に言う事があるだろう……今ので、気付いただろう……其方は、腕が、事故で左腕が──私とミアを庇ったせいで──」
アネスタシアが、泣いている。
目に涙をたっぷり溜めて。
「あ~、やっぱり」
うん、今、完全に理解した。
左腕が、無い。
包帯に包まれた肘から先がすっぽり無くなっている。
じわり。
毛穴がゆっくり開き、チクチクとした感覚がゆっくり体中に広がる。
──なんで再生してねえんだ。俺、不死ぞ。
いや、それよりもマズいのは──指輪。
左手薬指に着けている、悪竜装備は、どこへ──。
「──ラミィ!」
『ふ、ひひ、呼んだ? マスタァ』
あ、いたわ。普通に脳内に声が響いてくる。
良かった。最悪の事態は免れて──。
「……ら、みィ? リヒト? 其方、何を言って……」
しまった。がっつり脳内フレンズの名前を口にしていたらしい。
誤魔化すしかないだろう。
「あ、い、いえ、そ、その、あ、はは。ひ、左腕、そ、そう、左腕に、ラミィって名前を付けていて──」
なに言ってんだ、コイツ……!
俺はバカか?
案の定、アネスタシアは固まって──ぶわっ。おい、なんでだ、アネスタシアの涙が増えたぞ。
「リヒトっ、リヒトっ、もう良い! もう良いのだっ!! ……無理せずとも良い!! すまぬ、すまぬ……そこまで、追い詰められて……いや、当然だ……男の身に、そんな大きな傷が……すまない……」
「うわぷ」
アネスタシアに抱きしめられる。
顔を胸に押しつけられる。
蒸れた谷間の香り──なんか、花の蜜を100倍濃縮還元したような香り。
頭が、くらくらする。
俺は必死で彼女を押しのけようとして──
「──あっ」
無くした左腕、肘から先のない左腕でアネに触れてしまった。
「うっ、あ、私、私のせいで……男に……護るべき男の身体を、う、あ」
ぼろろろろろろろ。
アネスタシアの目に大粒の涙が再び──。
ま、マズい!
こ、この感じ……アステーラ戦後に起きた世界改変の時と似た空気……!
これじゃあ、前回と同じ事が起きる。
アナスタシアの気を紛らわせなければ。
「で、殿下! み、ミア様は! ミア様はご無事、ですか!?」
「み、あ?」
アナスタシアが反応する。
よし、隠れシスコンに隙が生まれた! このまま彼女の意識をいい感じに逸らす!
「ミア様です、あの時、一緒にいたアネ様の大事な大事な妹様──」
「──あ、ああ、もちろんだ、其方のおかげで余も、ミアもケガ1つ、ない」
よっしゃ。アネがちょっと落ち着いてきたぞ。
この調子で──。
がしゃーんっ。
背後、花瓶が割れる音。
扉が、開いていた事に気付かなかった。
そこには、顔面蒼白で固まるミアがいた。
金の二房ポニテ、妖精のような美少女フェイスは、アネに負けず劣らず憔悴していた。
金髪のキューティクルは失われ、アホ毛が何本も跳ねている。
何より恐るべきは、その眼。おい、頼むからハイライトだけは、瞳のハイライトだけはオフにしないでくれ。
……こんなタイミングで現れる事ある????
「ミア様……よ、よくぞご無事で──」「どうして」
「え?」
「どうして、僕達の心配ばっかり、する、の?」
ミアの声が、震えて──。
「どう、してっ、そんなに、腕、なくなってるのに……僕なんかの心配、してる、のっ……一番、大変なのは、あなたじゃない、ですかあ、なんで、なんで……」
大泣き。
ミアがその場に崩れ落ち、ボロボロと泣き崩れる。
驚くほど小さく見えるその体。
「み、ミア様、落ち着いて──」
床に膝をつき、ミアの肩に触れようとする。
「──」
ミアの表情がこわばっていた。
あ、しまった、つい、また失った左腕を伸ばしてしまった。
ミアは、俺のなぜか再生していない左腕を見て──。
「ご、めんなさい、ごめんなさいっリヒトさん、リヒトさん、リヒトさん……ぼ、僕っ、僕のせいで、僕があの時、すぐに動けなかったから、僕のせいで僕のせいで僕のせいで」
「ミ、ミア様、大丈夫です、貴女達が無事なだけで本当にっ」
「なんで、責めないんです、かっ、僕っ、ぼくっ、貴方が目を覚ますまでずっと、責められるって、責めて欲しいのに、ふざけるなって、女のくせに男を護れなかったって、うわああああああん……」
ダメだこりゃ。
だが、諦めない。
カレルで学んだ技術、ちょっとめんどくさくなった女性をあやす技量をフル発揮。
その結果――王姉妹が落ち着いた。
泣きだすのはやめてくれた。
だが……。
「リヒト……我が従者……絶対に、其方を、もう二度と失いたくない……余は、私は、その為なら……」
「リヒトさん……ミアを、ミアを責めて……それがダメなら、ずっと、ずっと傍にいてください、ミアはその為ならなんでもします……」
アネもミアも様子がおかしくなっていた。
俺の両脇を固まるように動かない。
……悪化してね?
いや、そんな事はない。
落ちつけ……落ち着くんだ、リヒトテトグマン。
……とにかく、考える時間を、俺に考える時間を──。
「話は聞かせて頂いた」
がらっ、扉が開く。
新たな部屋への乱入者。
銀髪、きりっとした目、ぱっつんぱっつんむちむちのローブ。
三角帽子──魔術師が被るような帽子を被った高身長の美人が現れた。
あの、胸と尻がぱつぱつすぎませんか?
ローブがもう、ボディスーツみたいにミチミチなんですけど。
アネやミアと比べるとだいぶ年上、だろうか。
目つきや顔……どことなくアラサー感があるような……。
「──だ、誰ですか?」
ここは王宮、部外者が簡単に侵入できる場所じゃないはずだが……。
そのアラサー美人は突如、片膝をつく。
みちっ……むちっ……。
彼女から現実には存在しないハズの擬音が聞こえた気がした。
「リヒト・テトグマン様──この度の不慮の事故、全ては私──月見台の魔術学院にある」
「つきみだいの、魔術学院……」
がっつり聞いた事がある名称。
灰クソ原作に登場する魔術師達の総本山……。
「つきましては、貴公に提案がある」
アラサー美人、いや、アラサームチムチ美人がきっとした吊り目で俺を見上げて。
「どうか、貴公を──魔術都市”ルラカナ”の国賓として招待したい。──貴公の左腕の治療も含めて」
突如起きた大事故。
再生していない左腕、アラサーむちむち魔術師、そして──。
「──貴様、余達を置いて」
「──何を勝手な事をほざいているのでしょうか」
アネとミアの低い声。
「「弁えよ、魔術師」」
王族が、アステーラ戦の時と同じくらいの低い声を漏らす。
……あの、ほんと考える時間を、下さい……。
アラサー美形むちむちママ魔術師。君に決めた。
ぱつぱつのローブは魔術的な意味がきっとある。