貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る   作:しば犬部隊

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すみません、かなり長いです。


32話 ミリタルナサイドクエスト・魔術都市へ

「──! まさか……。アネスタシア達が連れてきた、従者……?」

 

 父王ローランは最初こそ、俺の侵入に驚いた様子だったが、すぐに落ち着きを取り戻した。

 

 ああ、この辺も原作通りか。

 

「しかし、驚きました……一体どうやってここまで? 女がほとんどの警備とはいえ男の身でここまでくるのはさぞ苦労したでしょう」

 

 意外にも、ローランはまだ動じていない。

 ああ、この感じ。

 ゲームと全く同じ、女を見下した物言いに、慇懃無礼な話し方、そして妙なカリスマ。

 

 父王ローランはプレイヤーに嫌われている。

 しかし、同時にその妙なカリスマから嫌われつつもファンがいる事も事実だ。

 

 ゲーム設定では、デドマン帝国の古い家系出身のこの男は、昔から不思議と周囲の人間に好かれ、いつのまにか大勢に囲まれる。そんな人間として扱われている。

 

「さて……私に何か用があったのでしょう? お話でもいかがですか?」

 

 父王ローランは愚かだが、間抜けではない。

 既に俺を警戒している。

 

「それにしても随分腕が立つようですね。素晴らしい……貴方ほど優秀な男性は多くはありません、貴方のような人材は貴重だ」

 

「そうだ、良ければ……友人になれないでしょうか?」

 

 灰クソ原作知識──父王ローランには他者を魅了する特技がある。

 これは、バグでもなんでもない、隠し要素だ。

 

「……友人ならたくさんいるんじゃないか?」

 

「え?」

 

「不死連盟とは仲良しのようだな」

 

「……!! なぜ、それを……いえ、随分、物知りのようですね。ふふ、ますます、興味深いお方だ……! こちらの想像以上の人物のようですね……では1つ、取引しませんか?」

 

 デドマン帝国に、王姉妹を売ろうとしていたってコトは……原作通り、帝国の上層部は既に不死に掌握されている訳か。

 

 そもそも、コイツが王の地位にあるのも、隣国のデドマン帝国の皇族の血を引いているおかげだ。

 ミリタルナは、先王の崩御後、アネスタシアを王に擁くか、それともこの排泄物、いや、ローランを王にするかの二択を迫られた。

 

 結果的に、アネスタシアの年齢やデドマンとの外交関係諸々を込みで、アネスタシアが成長するまではこいつが王になる事になった訳だ。

 

 要はコイツ、ミリタルナの人間ではなく、デドマンの人間だ。

 そして、デドマン帝国は原作灰クソにおいては不死が建てた国、要は不死連盟の本拠なのだ。

 

 だが……取引?

 こんなやりとり、原作ゲームではなかったぞ。

 

「貴方の目の中には、何か野心のようなものがたぎっている、同じ男です。何も言わずともいい。貴方のような方が女の従者など本気で行う訳もない」

 

「そこで提案です、私は貴方が欲しいものを用意する事が出来ます」

 

「何を言って……」

 

「アネスタシアか、ミア、そのどちらかであれば、貴方にお譲り致しましょう」

 

「…………譲る?」

 

 なんだ、このセリフは?

 原作でこんな流れはなかったぞ。

 

「見ればわかります。アネスタシアか、ミアに唆されたのでしょう? それとも彼女達に魅せられましたか? まあ、どちらでも構いません」

 

 ローランが書斎の引き出しから何かを取り出す。

 

「これを。貴方に譲りましょう──”人形の秘薬”……ある魔術師が作り出した古代の薬品です。効果は非常にシンプル。これを飲ませた相手から意志や記憶を奪う事が可能です。まあ、文字通りの人形となる訳ですね」

 

 何言ってんだ、コイツ。

 どんだけ殺した方がお得なんだ。

 

 灰クソファンが、こいつにつけた数多くあるあだ名で最も有名なものが、ふと脳裏をよぎる。

 

 ”排泄物”。

 

 まさに、じゃねえか。

 

 処する事は最初から100%確定だったが、120%に上昇した。

 

 だが、ここで俺の、いや、ゲーマーの悪い癖が出る。

 

 ぶっ殺す事を決めたnpcが、なんか聞いた事のない話を始めるこの状況……。

 

 ちょっと最後まで聞きたくなってしまったのだ。

 

 灰クソ原作知識──会話選択肢で無言を選ぶと、だいたいNPCがペラペラと聞いてもない事を喋り始める事がある。

 

 試してみるか。

 

「……」

 

「ふふ、なるほど、口数の少ない暗殺者、という訳ですか? 良いでしょう、王たるもの、暗殺者の1人や2人差し向けられるべきです」

 

 気分を良くしたらしいローランがぺらぺらと喋り始める。

 

「アネスタシアか、ミアか。どちらでもいい。この秘薬を使えば、貴方の希望した女を、貴女だけの玩具として扱えるのです。様々な使い方がありますよ。2人共、見目だけは文句なしですから。ええ。分かりますとも、あの女達に、ひどい目にあわされたのでしょう? ふふ、その腕も、あの2人を庇った結果、でしたかね? 想像してみて下さい。あの高慢な選民ぶる女が、貴方に跪く光景を。そのまま足を舐めさせても構いません」

 

「2人共、きちんと調整を施しています、人形にしてもきっとお楽しみいただけますよ。ほら創造してください、あの高慢な女が貴方だけに従う人形となる姿を」

 

「ああ、ご安心を。調整というのは心、精神的な面ですね」

 

「元々あの2人は、私の故郷であるデドマン帝国に献上する為に作った子です。デドマンの高潔なる者達が好む女。頑張れば頑張るほど、努力すれば努力するほど、よりよきを望めば望むほど、周囲を巻き込み、全てを台無しにするような歪みを発現するように教育しました」

 

「…………教育?」

 

 思わず、声を漏らしてしまった。

 おい、なんだ、その話。

 初耳なんですけど。

 

「はい。催眠魔術による洗脳や暗示。そしてデドマンに伝わる秘法による魂への干渉。アネスタシア、ミア共に幼少期に秘法を施術済みです。その結果、2人の固有魔術の発現に成功しました、そう、我々デドマン帝国は既に、固有魔術の操作にも手を伸ばしているのです」

 

 固有魔術……スキルの事だ。

 灰クソでは、女性キャラのみ、1人1つの特殊な能力を発現する事がある。

 女性なら全員発現する、という訳ではないが、ネームドキャラのほとんどはこの固有魔術を持っている。

 

「アネスタシアは銀の焔を宿す瞳を、ミアには黄金の残光を従える肉体を……先王は非常に、優秀な母体だった。ああ……あの淫売……ミアの父なんぞにうつつさえ抜かさなければ……殺さずに済んだものの……」

 

 もうええて、この排泄物。

 

 でも、俺が黙って話を聞く事に気を良くしたのだろう、排泄物の舌が回り始める。

 

「加えて、あの2人はその存在やあり方すらも歪むように作り、育てました。アネスタシアは危機の解決に対して真っ先に自分の命の使用を選択しに入れるように。彼女の持つ力は強大ですが、この形質がある以上、長生きは出来ない。邪魔になればすぐに死ぬように設定しています。まあ、そのほかの理由としては……デドマンの趣味ですね。王を志す女が危機が迫るたびに自死にしか思えない選択を取るようになる、救いたいと思った者も救えず、自らの命を無駄遣いする理想家の女……滑稽で笑えるでしょう?」

 

 ──原作で、アネスタシアはめちゃくちゃ死ぬ。

 それはもう、自ら死亡フラグを建築し、それを達成しようとしてるのではないかと言うくらいに死ぬ。

 

 この排泄物が言う事が正しければ、つまり、その原因は……。

 

「そしてミアは徹底的に自尊心が育たぬように。従順な剣としての運用を可能とするようにね。従者の貴方なら既に知っているかもしれませんね。彼女は実に卑しいでしょう? 表向きはアネスタシアに相応しい騎士面をしていますが、実際は己を己で肯定出来ない哀れな女です。自信も、信念もない故、剣や姉、何かに寄りかからねば生きていけない」

 

「本来の予定では、アネスタシアとミアの仲は険悪になるつもりでした。……ですが、幼少期のある時期、カレルという街に出してから、妙に仲が良くなりましてね……。まったく、我が妻、先王は余計な事しかしなかった」

 

「まあ、この国に来た目的は果たせました。ミリタルナには既に、私やデドマンの血が混ざった。先王は私との婚姻で王国と帝国の恒久平和を目指そうとしていたようですが……ふふ、どこまでも愚かな女だ。我々、真なる人類たる男が、お前達のような化け物もどきと平和とは……片腹痛い」

 

「男と女が対等だとでも? ああ、今思い出しただけでも笑えてきます。あの女、先王を殺した時のあの顔、弱者である筈の男に寝首を掻かれた時の彼女の顔は……とても、素晴らしいものでした……さて、そろそろでしょうか?」

 

 ローランがふと、時計に視線をやる。

 

 ──ああ、ここからはどうやら原作通りらしい。

 そう、父王ローランには秘密があるのだ。

 

「”動くな”」

 

「っ……」

 

 全身に痺れを感じる。

 指に力を入れようとしても、ピクリとも動かない。

 

「驚いたか? 無力な王だと油断したな、王姉妹の従者、いや、わが命を狙う暗殺者よ」

 

 先ほどまでの慇懃無礼な口調はなりを潜め、尊大な口調でローランが喋り出す。

 

 ああ、これも原作通りだ。こっちが、この排泄物の正体だ。

 自分の有利が確定した途端に、偉そうな口利きやがってほんま。

 

「”支配者の舌”、私と一定時間会話をしたものに無条件で強力な暗示をかける事が出来る。オーパーツだよ。かつて地上を支配していた神々、古き強者達が遺した人類の遺産だ」

 

 べろり。

 排泄物が、むき出しにする舌。

 複雑な紋章が刻まれた、青白い舌が2枚重なっている。

 

 ”支配者の舌”

 原作では、ローランと一定の会話を行うとこのオーパーツが発動。

 プレイヤーは、この排泄物に支配されて即バッドエンド、というイベントが発生する。

 通称、排泄物エンド。

 

 もちろん胸糞悪い終わり方だが、何故かプレイヤーの多くは周回の度にあえてこの排泄物と対面しにいく事が多い。

 

 何故か──うん、ここからめちゃくちゃ面白いんだよ。

 

「デドマンの秘法には、男の体内にオーパーツを仕込む事が可能とした。そう、これはつまり、男こそが人類の遺産を正当に継承した生き物という事の証明だ。王姉妹の暗殺者よ、分かるか?」

 

「この世界は男によって、支配されるべきなんだ」

 

「女という家畜を支配し、正当に管理する。これは天が男に、この私に与えた使命なのだ……!!」

 

 排泄物のテンションがどんどん上がっていく。

 あ~原作通り原作通り。

 

「デドマンと偉大なる古い不死達が、この世界を浄化する……! おお! ”神父オルデラン!! ” ”聖少年ジウブ!! ” ”大父ダディ・ウィック”、”サイクロン1”、そして”剣聖アルミ鍋!! ” 不死たる人類の守護者達と、その正当な子孫たるこの私が、蒙昧な女を支配し、管理する!!」

 

「動けないだろう? そうだ、女に、家畜に媚び、従者などというケガラワシイ道を選んだお前にはふさわしい末路をくれてやる!」

 

「人形の秘薬が欲しかったか!? これが、欲しかったか!? 渡す訳がないだろう!」

 

「このわたしが、家畜以下の存在に少しでもなびくと思ったか!? 無能でまぬけの阿呆が!! まんまと人形の秘薬につられたな!!」

 

「バァ~カ!! ははははははははははははははは!! この私が、選ばれた貴種たる私が!! 大いなる不死達の後継者たるこの私が、お前のような木っ端と取引するなど、本気で思ったのかァ~」

 

 排泄物が最高潮のテンションを迎える。

 原作再現すぎる。

 コイツは、歪んだ不死への憧れを持っている人物だ。

 

 原作をやっている時は笑ったよ。

 このセリフを不死である主人公にノリノリで言うんだからな。

 現実でも同じだったわけだけど。

 

「……さて、”自害せよ、アサシン”」

 

 排泄物の二枚舌が蠢く。

 

 身体が勝手に動く。

 手が勝手に腰に忍ばせておいたナイフに伸びた。

 

 俺は俺の首を掻っ切る羽目になるのだろう。

 

「ははははははははは、何が起きるか愚鈍なお前にもわかるだろう? これからお前はお前自身の手で死ぬのだ!!」

 

「そうだ、お前の死体は、アネスタシア達の寝室に送り返してやろう。ああ、どんな顔をするか? そう、お前の死をきっかけにしてアネスタシアとミアを追い詰める。デドマンへの献上品として最高の仕上がりになるのだ!!」

 

「さあ、死ね!! 絶望を見せろ! 泣き叫べ、許しを乞え!! 下賤な女に媚びた事を後悔しながら死──」

 

 うわ、手が出そう。

 そう思った瞬間にはもう遅かった。

 

「フンっ!!!」

 

「おけらッ!!!!!?????」

 

 気付いた時にはもう、排泄物の腹にボディブローをかましてしまっていた。

 汚い悲鳴を上げて、体をくの字に折り曲げながら排泄物が壁まで吹き飛ぶ。

 

「あ、え。あ、? な、殴られ、おげええええええええっ……」

 

「オーパーツにも格がある事を知ってるか?」

 

「がっ、あ、……え?」

 

「ラミィ」

 

『フヒッ、は、ハァイ、マスタァ』

 

 俺の体からラミィの黒い魔力が渦巻く。

 うん、体が軽くてよ。

 

《悪竜の古鎧の効果により──敵性オーパーツによる状態異常が無効化された》

 

 灰クソ原作知識──悪竜の古鎧は全てのオーパーツによるデバフを無効化する。

 流石はクリア後入手ご褒美ぶっ壊れ最強装備。もうラミィさえあれば良い。

 

『そんな、マスタァ……ふひ、プロポーズ、されちゃった……ってコト?』

 

 ちょっと何言ってるか分からないが、まあよし。

 

 ナイフを仕舞い、排泄物に近づく。

 

 排泄物はようやく事態を把握したらしい。

 つまり、自分の切り札──支配者の舌は俺に通用しない事に。

 

「……!!!!!!!!!???????????????」

 

 あ~これこれ、この表情。

 ゲームと全く同じだ。

 目玉が飛び出そうになるほど目を見開き、顎が外れるほど口を開いたマヌケ面。

 

 周回プレイヤーの多くがローランチャレンジに挑む時、タイムアタックの邪魔になるのがこの表情だ。

 

 理由は簡単、皆、この顔が見たくてついローランを無駄に長生きさせてしまう。

 

 灰クソは確かにクソみたいな連中ばかりの鬱ゲーだが、あれだけ売れたのはきちんとこうやってクソ野郎どもが、プレイヤーの行動に驚き、恐怖し、反応するからという考察もあったな。

 

「お前、ッ、お前、お前お前ッ、まさか、まさか、効かない、のか? 我がオーパーツ、支配者の舌が」

 

「家畜はお前だ。父王ローラン(排泄物)

 

「え?」

 

 ピッ。

 鮮血魔術。

 血の矢と同じ要領で血液を圧縮し、刃にして相手に飛ばす。

 

 雑魚専の省エネ技だが……。

 

「あぎゃっ」

 

 ぼとっ。

 排泄物の右腕程度なら、一撃で落とす事が可能だ。

 

「ああああああああああああああああああ!!?? 腕ええええええええええええ!! わ、私の腕えええええええええええええええええ、こ、この、いかれがァァァァァ! わ、私の腕ををおおおおおおおおおお!! 衛兵っ!!! 衛兵えええええええええ!」

 

「……あれだけ女をバカにしてるくせにこれか」

 

 ちりんっ。

 

 オーパーツ”耳鳴りの鈴”。

 これを鳴らすと所有者が許可した音以外は、消え失せる。

 つまり──。

 

「衛兵!!! 衛兵、どうした!!?? 曲者! 曲者です! すぐに来い! ……おい!! 聞こえないのか!? この役立たず共!!」

 

 ローランの声は、誰にも届かない。

 お前の声は、許可していない。

 

「思うにお前に王の資格はない」

 

「は? き、貴様が、貴様、今何を、下賤な女の従者如きが、何を言った!?」

 

「女を家畜と見下していながら、危なくなったら女に助けを求める。家畜に助けを求める王とはずいぶん、滑稽だな。ダブスタのアホが」

 

 俺にバカにされている事に気付いたのだろう。

 一瞬、ぽかんとした排泄物が、怒りに顔を真っ赤に染めて。

 

「──な、舐めるな。舐めるなよォおおおおおおおお!!」

 

 懐から、怪しい丸薬を取り出した。

 それを丸のみにするローラン。

 ああ、この辺も原作と同じね。

 

 今、排泄物が飲んだのはデドマン帝国のある機関。

 

 聖人教会と呼ばれる、デドマン帝国の宗教機関が作った薬だ。

 その効果はシンプル。女が飲めば死亡し、男が飲めば……、月の加護を与えるとかいうそれは。

 

「男が、この世界を支配する!! 生意気な女どもめ!! 私を! 余を見ろ、この崇高な姿を!!」

 

 めききききききき。

 ローランの身体が変異する。

 腕や脚が捻じれ、太く、そこから針のような獣毛が生えていく。

 

 口や鼻が尖り、裂け、目は血走り──。

 

 変異。

 ローランの肉体が巨大化していく。

 あっという間に、その頭は天井付近に触れるほどに。

 

「支配してやるぞ!! 家畜共!! 子羊の群れよ!! 余は狼として生まれ、狼として支配するのだ!!」

 

 獣人──いや、狼男だ。

 

「どうだ、これこそが、正しい月の加護……! さあ、貴様の血を、肉を裂き、その内臓をアネスタシア達の目の前にさらしてやろう、どんな顔をするだろうか、私の家畜共は。ああ、その時こそそ、私はあの生意気な家畜に父としての威厳を──」

 

「血屍累々」

 

「え」

 

 遅い。

 こいつ、変身直後棒立ちの時間が長すぎる。

 赤い刀身を持つ日本刀系の武器。

 

 灰クソぶっ壊れ最強武器の1つ。

 ”血屍累々”。

 

 もうこれだけブンブンしとけば、大抵の敵は溶けて行くという強武器だ。

 月の宮で手に入れたそれを、棒立ち狼男の首に突き刺す。

 

「吸え、血屍累々」

 

 じゅるっ。

 

「ああああああああああああああああああ!!??」

 

 血を吸う事で、一気に奴の姿が元に戻っていく。

 

 俺の目の前にいるのは、服が破れた貧相な男だ。

 

「あ、あああああああ、やめ、やめろっ、わ、私を、余を殺すなっ! 殺すなあああああああああああああ ぶべっ」

 

 やかましいので、良く開いた口を蹴って靴を食わせる。

 歯が何本が折れたみたいだが、喋らなくなったのでちょうどいい。

 

「お前ほど、ぶっ殺した方がお得な奴もそうはいない」

 

「んんんんんんんN!!!?????」

 

「お前は最も厄介なカスだ。能力がないくせに、無駄に血筋と権力だけはある。お前の思いつきや気分で多くの有能なキャラが死んでいく。俺にはそれが我慢ならねえ」

 

 コイツのせいで、前の周回ではアネスタシアの配下が大勢死ぬことになった。

 

 この排泄物を放っておけば、今回も同じ轍を踏む事になるだろう。

 

「だが1つ問題がある。ここはゲームじゃない。これが原作灰クソゲームプレイならお前の死体にマイクロビキニを着せて馬車に積んで王都を練り歩いたりしてやる所だが……」

 

「……は?」

 

「今、お前を完全に殺すと、デドマン帝国や不死連盟の動きが読めなくなる、しばらく宮殿を留守にするんだ。王姉妹の安全はきちんと確保しておきたい」

 

「な、何を、何を、言っているんだ、お前、さっきから……何を」

 

「そこで俺は考えた。お前、良いものを持っているじゃないか」

 

「ア──」

 

 排泄物の足元に転がっている小瓶に入った黒い液体。

 

「”人形の秘薬”。ゲーム本編でも3回しか手に入らない超レアアイテム。これは月の宮では手に入らない。ここで入手できたのはラッキーだったよ」

 

「ま、待てっ、まさか、まさか、お前、お前!!?? ひいっ、やめ、やめろッ!! お前のような下賤な者が、この私に、余に!! ミリタルナの父たる私に、そんな真似をもごっ!!」

 

 小瓶の蓋を開け、小瓶を奴の口に突っ込む。

 そのまま片腕で小瓶を抑え、足で奴の喉を押し付けた。

 

「綺麗になれ」

 

「もがっ、やべっ、やめろ、この──余に、何を、この薄汚っ、ぼごっ、家畜以下の、ああああああああああ」

 

 ごくんっ。

 

 喉への圧力を少し弱める。

 排泄物が、人形の秘薬を飲み込んだ。

 

 確か飲み込んだ直後に、命令を与えれば命令通りの人形になるんだったな。

 

「お前はこれから──全ての人格を放棄し、新たな人間に生まれ変わる、これまでのお前は今、ここで死んだ」

 

「──」

 

 返事はない。

 しかし、俺の言葉に反応するように身体を痙攣させている。

 

「命令は1つ。綺麗になれ。綺麗になって、これからはミリタルナの維持と発展、そして、王姉妹の幸せと生存にお前の全性能を使え、デドマンも、不死連盟も全て欺け。出来なければすぐに死ね」

 

 さて、その効果はどうだろうか。

 

 ローランが何度か痙攣し、そして顔を上げる。

 

 人形の秘薬、その効果──飲んだ対象を、意志なき人形へと変える事が出来る。

 

 だが、それだけじゃあ安心できない。

 

 カレルや王都襲撃、この世界は灰クソプレイヤーである俺でも予想外の事ばかりが発生する。

 対策しすぎるに越したことはない。

 

 単なる人形化だけじゃ安心できない。

 

「ラミィ、アレを出してくれ」

『はあい、マスタァ。ふひ、つ、月の宮でこんなものを欲しがってた時は意味分かんなかったけど、使う時もあるもんだね』

 

 ほぼ四次元ポ〇ットと化しているラミィ指輪から取り出すのは、白と黒のカラーリングがされた手鏡。

 

 オーパーツ”カルマ反転手鏡”

 灰クソでは、プレイヤーの行動で善悪を判断するカルマ値というステータスが採用されている。

 まあ、悪い事すれば悪い顔になっていき、悪い奴らとつるみやすくなる、逆もまたしかり、みたいな要素だ。

 

 悪人プレイ、善人プレイの指標となる数値だな。

 

 この”カルマ反転手鏡”はその名前の通り、そのカルマ値を判定、そして反転する事が出来る。

 

 痙攣している排泄物に手鏡を向けると予想通りのカルマ値マイナス999。

 これはもう救いようがない生まれつきの排泄物という事だ。

 

 だが、しかし、このカルマ反転手鏡を使えば……。

 

「お前のカルマを反転する。これより今までの排泄物としてのお前は死に、新たな存在に生まれ変わる」

 

 ぱっか~と手鏡が光り出し、排泄物を照らす。

 

「ァッ、アッ、アッ、アッ」

 

 びくんびくんと〆られた魚のように身体を跳ねるローラン。

 う~ん、尊厳破壊。

 まあ、いいか……。

 

 人形の秘薬と、カルマ反転手鏡。

 2つの人格破壊アイテムの力にさらされた排泄物の結果は──。

 

「”ワタシハ、キレイなローラン”」

 

「よおし」

 

 そこには、キラキラな目とまっすぐの眉毛になった小綺麗なローランがいた。

 

 今回の父王ローランチャレンジ。

 便利な手駒化に成功。

 元の人格は消滅。

 

 さて、排泄物改め、キレイなローランに色々聞きながらこれまでの悪行を洗いざらい言わせてみた。

 

 そしたら、まあ、出るわ出るわ。

 

 どうやら、本気でデドマン帝国によるミリタルナ侵略を行おうとしていた。

 

 部屋の隠し扉には密書やら、賄賂やら、機密文書などがザクザク・

 

 密書には、アネスタシアやミアをはじめとしたミリタルナ王族を、デドマンの貴族に売り渡そうとしていたらしい。

 

 とりあえず、この密書に書いてあるデドマン貴族はそのうち皆殺しにしておこう。

 

 キレイなローランには、しばらくの間は今までの排泄物通りに過ごすように指示。

 アネスタシアに綺麗に王権を渡せるように、しばらくの面倒ごとはコイツにやらせよう。

 デドマンや不死連盟とのやり取りも継続させる。

 二重スパイ。ただし、バレたらすぐに自害するように設定した。

 

 まあ、最善手に近いだろう。

 

 さて、父王ローランの件が終わった翌日からは、次の仕事に移る。

 

 灰クソのイベントは結構時限系が多い。

 俺がいない間に妙な事が起きないように、王姉妹の地盤を強化しておかないと。

 

 まずは、やれば出来る子騎士団──別名陰キャムチムチ騎士団、ではなく、王宮騎士団”梟”達のサイドクエストだ。

 

 この子達をきちんと育成しておけば、ミリタルナの防衛力がめちゃくちゃ上がる。

 アクションゲームで戦うのがめんどくさい空飛ぶ系の敵をばしばし撃ち落してくれるからな。

 

 王都を襲う飛竜を打ち落とす時のムービーめっちゃかっこいいし。

 

 早速、アネスタシアとミアに許可を取って、やれば出来る子騎士団──王宮騎士団”梟”達の訓練を見学させて貰う事に。

 

 アネスタシアとミアは、何故か暗い顔をしていたが快く俺の行動を許可してくれた。

 

 なんか、ラミィを更に濃くしたような感じの子達ばっかりだ。

 

『わ、ワガハイ、あんな感じなの??』

 

 王姉妹や、その直属の配下の近衛騎士団”銀狼”の面々は一軍ギャルとか運動部のエース系女子。

 こっちのやれば出来る子騎士団は、そのなんて言うんだ……もうちょっと隅っこで、あんま運動とかコスメとか買いに行かない感じと言えばいいのか……。

 

 銀狼たちは、おへそが縦に割れてるけど、ここの梟騎士達は、こう……お臍が潰れて、へそ出しの鎧を着ると少し肉がはみ出ている感じというか……。

 

「お、男の子、男の子が、私達の訓練の見学に来ていますううううううううう!!」

 

「な、な、なんなんですかあああああ、貴方ああああ」

 

「わ、私達いいいい、いくら払ったらいいんですかあああああああああ」

 

「ま、待って……これは、絶対に裏がある」

 

「そ、そうだ、絶対にそうだ……いつもみたいに、また男の子にからかわれて、勘違いさせられて終わるんだ……」

 

「お、男の子はどうせ、私達みたいなのより、銀狼の美人陽キャが好きなんだ……」

 

「う、陽キャ、陽キャ、銀狼、怖い……街とかで会ったら凄い大きな声で声かけてくるもん」

 

「合同訓練とか、平気で2人組作って稽古したりしてるもん……」

 

「だ、騙されんぞ……」

 

「そうだ、男の子は私達みたいなのをからかって遊ぶんだ……」

 

「そう、男の子なんかに、負けない」

 

 キリッ。

 梟の騎士達が、妙に警戒している。

 

 素直じゃないムチムチ達め。

 

 まあいい、さて、彼女達の強化のきっかけとなるサイドクエストを進めよう。

 

 女キャラで梟の騎士団を強化するのは凄く大変なのだが、実は男キャラだと一瞬でクエストは終わる。

 

 その方法は……あまり、気乗りはしないが……やるしかない。

 

「今日はお忙しい中無理を言って申し訳ありません……リヒト・テトグマンと申します。皆様の訓練に興味があって見学をさせていただく事になりました」

 

「「「「「「ふひゅ」」」」」」」

 

「ど、どうしよ、声、かけられた」

「え、礼儀正しくない?」

「なんか笑ってくれたよ、……好きかも」

「だ、騙されんぞ、そうやっていつも、男の人にお金を巻き上げられるんだ」

「そうだ、私達みたいなのは男の銀行扱いなんだ」

 

 もじもじしているムチムチ美少女達。

 こうして集団でおどおどムチムチしている姿は、確かにちょっと梟っぽい。

 

 よし、やるか。

 俺は、もじもじしているむちむち達に向けて。

 

「あ、あの、皆さん、すっごくかっこいいです もし良ければ、弓矢の扱い方教えて頂けませんか?」

 

 おえええええええええええええええええええ!!

 自分で出す猫なで低音ボイスキッッッッ。

 

 だが、原作では男キャラでこんな感じの会話選択肢を選んでいくと、勝手にむちむち美少女達が覚醒むちむちに……。

 

「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」」

 

 いや、流石にそんなチョロい訳がないか……。

 ここはもう俺にとっての現実の世界、全部が全部ゲーム知識でうまくいく訳もない、

 そうして、訓練は始まった。

 

 ◇◇◇◇

 

 ~訓練終了後~

 

「ううう、やだあああああ、行かないでええええええ」

 

「ずっとここにいてええええええええええええええええ

 

「まだ褒めてええええええええええ」

 

「男の子に褒められるの超気持ちいいのおおおおおおおおおお」

 

「もっともっと頑張るからまた来てえええええええええええええ」

 

「無理だよ……()()()()()()は、あのイケメン超美人と完璧美少女、殿下とミア様の従者だもん……」

「……もっと皆強くなったら、殿下の近衛に入れて貰えないかな……」

「!! それだ!!」

「特訓、特訓しよう! あの陽キャ集団銀狼でも、出来ない事を出来るようになればいいんだよ!」

 

 ムチムチ達が素直になった。

 おい、うまく行ってんじゃん……。

 なんなんだよ、この世界、もうわかんねえよ。

 

 まあ、いいか。次。

 

 異世界後宮あるある、意地悪な女官、改め、性格の悪い男官達だ。

 

 原作のミリタルナ王城の男官達は、この世界の男の嫌な所を全部煮詰めたような場所。

 

 放っておけばシナリオ終盤で、裏切り者がめっちゃ出て、アネスタシアやミア、そして騎士団と言ったネームドキャラ達の死亡確率が大幅に上昇する。

 

 さっきの素直になったむちむち騎士達も、不死に唆された男官達に毒を盛られて死亡したりするのだ。

 

 悪いが、心情的にも、戦力的にもそれはさせない。

 

 あの素直なむちむち達がそんな終わりを迎えるなんて認めない。

 

 処してしまう、というのも1つの方法だが、俺は快楽殺人鬼ではない。

 排泄物、現キレイなローランのように殺しても分からないカスは殺すしかないが、男官達は違う。

 

 原作灰クソで、最初は嫌われ者だった男官達だが、きちんと信頼関係を重ねておけば激アツのイベントが発生するのだ。

 

 ──クエスト名”最初の一歩”──。

 

 不死の軍勢に襲われたミリタルナ王城を守る為、戦う力がないはずの男官が一致団結し、命がけで戦うという奴。

 

 これは灰クソに慣れているプレイヤーほどガツンと殴られるクエストだ。

 

 戦う力がない男、しかし、自分達を護る為に命がけで戦う騎士達を見て自分達に出来る事を必死で行う。

 危険な前線に食料を届けたり、負傷者の回収をしたりなど。

 弱くて力のない者がこう、勇気を振り絞って頑張る系の話は個人的に大好きだ。

 

 灰クソはこうしたプレイヤーの行動が、周囲のキャラに与える影響が非常に多い。

 

 何もしていない状態だと、裏切り者のカスにしかならない後宮の男も、きちんと信頼を得ておけば激アツの援軍となってくれるという訳だ。

 

 ただ、このクエストはむちむち達と違い、結構時間をかけなければならない。

 

 今回は、とりあえず後宮男クエストの重要人物、アネスタシアの従兄殿との顔合わせだけやっておく。

 

 この従兄殿、一見、アネスタシアと同じく、他人に厳しく、話の通じない嫌な奴というキャラなのだが、実は天然できちんと会話すれば善人という事がわかる。

 

 周囲の教育により、高飛車かつ、偉そうにするのが高貴なる男の仕草だと教え込まれ、不器用ながらそんなふるまいをしているだけなのだ。

 

 具体的には、むちむち達のような平民出身者に冷たかったりとか。

 

 なので、きちんとそういうのやめた方がいいと素直に伝えた所──。

 

「……え? そう、なのですか?」

 

 犬系男子、と言うのだろうか。

 この穏やか系長身爽やかお兄さんが、アネスタシアの従兄であり後宮のボス的な立ち位置にいる男性。

 

 シルバ・チア・スカイマンだ。

 男なので、ミリタリナの名前とネイチア大陸のミドルネームは奪われている。

 

「はい。シルバ様。実は、あまり女性を、例えばむちむち、いえ、梟の騎士団のように貴族出身者でないものにわざと冷たく対応したりはあまりよくありません」

 

「! お前、この方はどなたと──!」

 

「いえ、問題ありません。テトグマン殿、続けて下さい」

 

 取り巻きのイケメンを、シルバが制する。

 

「はい、具体的には例えば先ほどシルバ様が女性の騎士見習いの礼が低いって頭を叩いていましたね?」

 

「うん、それが男性としての礼儀だと教えられて──」

 

「ソイ」

 

「!」

 

 ぺちんっ。

 力加減してシルバの頭を叩く。

 

「頭を急に叩かれるのは、どんな気分ですか? シルバ様」

 

 一瞬何がなんだか分からない様子でぽかんとするシルバ。

 初めて飼い主に怒られた大型犬みたいだ。

 

 周囲の取り巻きはもちろんめちゃくちゃ騒ぎ出す。

 

 だが、シルバは──

 

「うわ、本当だ……凄く、悲しい気分になるね」

 

 特段怒った様子もなく、むしろ晴れ晴れとした顔になっていく。

 

「そうか、やっぱり、こういうのって良くないんだ」

 

 小さく呟くシルバ。

 そう、この世界の男は基本的に性格が悪いが……全員が排泄物のような悪人という訳ではない。

 

 ただ、世界が歪んでいるだけだ。

 シルバのように、素直な心根を持っている者もいる。

 

「……実は、あまりよくないのではと思っていたんだけど……うん、貴方ほどの方が言うのなら、やめようかな……」

 

「それがいいかと、シルバ様。このような者の進言を受け入れて下さったこと、感謝申し上げます」

 

「ふふ、よしてよ。テトグマン殿、礼を言うならば僕の方だ。そうか……アネスタシア様が、貴殿を従者に選んだ理由が少しわかった気がするな」

 

 これで、シルバとの縁が出来た。

 原作通りに、この日以降、後宮の評判が少しづつ上がっていくことになった。

 

 

 ◇◇◇◇

 

 ミリタルナ王城でのサイドクエスト周りを片付けた。

 限られた期限にしては上出来だろう。

 綺麗なローランも、今の所、上手く稼働しているし、むちむち梟たちはつい先日、騎士団での狩猟で亜竜を仕留めたらしい。そして後宮の連中も、少しづつだが、今までの高慢な態度が改められつつあるようだ。

 

「……」

「……」

 

 だが、王姉妹達は何故かずっと、こう……暗い? というか何か思い詰めているような……。

 忙しいだろうに、昼間は毎日、姉妹のどちらかが、俺の様子を見に来てくれていた。

 

 だが、不思議と夜、閨に呼ばれる事はなく、最近は静かに夜を過ごす事が出来た。

 まあ、喪った腕が痛むという俺を気遣って、そっとしてくれているのだろう。

 

 そうこうしていると、すぐに魔術都市からの迎えの竜車が来ることになる。

 

 俺はミリタリナにしばしの別れを告げ、空飛ぶ竜車で魔術都市ルラカナの領空へ到着していた。

 

「……そろそろルラカナの領土につきます。魔術結界を通過するので、少しばかり違和感を感じるかもしれません」

 

 馬車の対面に座る魔術学院学長、この世界最高の魔術師の言葉に頷く。

 

 彼女の言う通り、少しばかり、体の芯をくすぐられるような違和感を覚える。

 

 そして、次の瞬間には。

 

「……すげえ」

 

 竜車の窓から覗く光景。

 それは、原作灰クソでは見られなかった──滅亡前の魔術都市の姿。

 

 湖畔地帯。

 雄大な平地に、5つの大きな湖が見渡せる。

 

 湖に囲まれる形で、巨大なクレーターのような地形がある。

 

 クレーターの中にも、巨大な湖、もう海と変わらない。

 

 そして湖の中心には街があった。

 青い水晶の塔を中心にした、全体がうっすら輝く尖った屋根の建物群れ。

 アレが、月見台の魔術学院。

 街には血管のように、水路が行き渡り、区域によっては水の上に建物が経っている箇所もある。

 

 ファンタジー水の都。すげえ。

 

 だが、何より俺の目を奪ったのは、その幻想的な街並みではない。

 

 気付いたのだ。

 魔術都市を、大きな影が覆っている事に。

 

 俺の注目は、街から、すぐに上空へ。

 何もない、竜車が飛ぶ高度には、その街に影を落とすものなど見当たらない。

 

 更に視界を高く、窓を開け、風を浴びながら上を見上げる。

 

 竜車が飛ぶ高度より、はるか高く。上を。

 

 ああ、ちくしょう。やっぱりね。

 

 月だ。

 街に影を落としていたのは、月。

 

 太陽を、月が隠している。

 明らかに、デカすぎる月が。

 

 月が、この街を見下ろす。

 

 銀髪クール美人アラサー、ノクトラ・カリア・ルラカナが呟く。

 

「これが、魔術都市ルラカナ」

 

 今にも落ちてきそうな、月の下で。

 

「3日後に、月によって滅ぶかもしれない魔術師の国です」

 

《魔術都市ルラカナ編──シナリオ開始》




 長い話読んで頂きありがとうございました!
 第二部も本格開始、お楽しみ下さい!
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