貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
◇◇◇◇
「……リヒト、テトグマン……」
原作から比べると随分ギャル、それもちょっと悪いギャルになっていたレナリア。
彼女に必要な取引を持ちかけてみた訳だが……。
「……ふ、ふ~ん、良い、名前……なんじゃない? 知らないけどさ」
「ああ、ありがとう」
「んっ……!! そ、その顔、禁止!! それ、私の前では、しないで!! なんか、なんか、変な感じになるから!!」
灰クソ世界で身に着けた儀礼的愛想笑いはダメらしい。
ふむ、なるほど女性によってある程度対応を変えた方がコミュニケーションが円滑に取れそうだな。
このリアル灰クソ世界で最も避けるべきは、ディスコミュニケーションだ。
重要人物の動向や精神状態を逐一チェックし、完璧な関係を築き、平穏をつかみ取る。
俺は灰クソプレイヤーとして、一分の隙も許されないのだ。
「あの、さ……一応聞くけど、ほんき、なの?」
「ほんとに、私にも、魔術が扱えるように……マ……お母様みたいな、魔術師になれる可能性があんのかよ」
「ある、確実にこれだけは言い切れる」
「っ、ふ、ふーん……ふーん、適当な事言ってるだけじゃないの? もし、それが嘘だったらアンタ、責任取れるの?」
「ああ、もしも俺が嘘をついていたとしたら殺してくれて構わない」
「──へっ?」
『……マスタァ、今のはちょっと、そ、その、なくない? かなって……ラミィね、思うのね』
何を言う、ラミィ。
見てみろ、レナリアは目をぱちぱちとさせて固まっている。
これは俺の言葉に感銘を受けたという事だ。
『か、感銘?』
完璧な受け答えと言っていいだろう。
灰クソの主要キャラは基本的に皆、英雄。
こういう普段のやり取りから勇敢さをアピールしておかねばな。
俺の平穏の為にも、レナリア・カリア・ルラカナには覚醒して貰わないと困るし。
『う~ん……月の宮で死に過ぎたのかなあ……』
「お、オマエっ、男が、か、簡単に、殺してくれとか、い、言うなよっ……! ルラカナはマジで危ない魔術師だっているんだ!! ほんとに、死んじゃうかもしれないぞ!」
良い子かよ。
やはり、口調やキャラは随分すさんでしまっているが、この子はあのレナリアなのだろう。
原作におけるレナリア・カリア・ルラカナというキャラを一言でいえば──。
「あ~違うッ、私はそんな甘ちゃんじゃなくて……えっと、えっと……私は、お母様の娘だ。月見台の魔術学院学長の娘としてだなあ、ミリタルナからの賓客であるオマエには大人しくしてほしいワケ。分かる? 私、クールだから」
良い奴だ。
滅んだ故郷、死んだ仲間、敗れた母親の無念を晴らす為にたった1人で大魔族に挑む。
今更そんな事したってなんの意味もないのに、ただ、誰かの為に頑張る事が出来る子だ。
「ああ、分かってる」
「ッ、チッ……なんなんだよ、全く……。男ってのは、もっと、こう……騒いだり、落ち着きのない連中ばっかじゃないの?」
「色々な奴がいるって事です、レナリア様。女に頼って生きる男もいれば……それが嫌で、魔術をこっそり覚える男だっている」
パフォーマンスとして、血をくゆらせ、螺旋のような形に変形させる。
滞留する血に魔力を流し込み、軌道を変える、血の矢の応用。
成熟すれば、自動追尾弾としても使えそうだ。
レナリアはその血の螺旋をしばらく眺めた後、大きく息を吐いた。
「ほんとに、私に魔術が使えたりできるのかな……」
「どうして、そう思う?」
「だって……何しても、ダメだったんだよ……魔術書を何冊も読んで呪文を覚えて、瞑想して、魔力を練って……でも、全部だめだったんだ……」
しゅんとした様子のレナリア。
「私……私は、お母様の娘なのに……基本攻撃魔術”魔力の矢”も使えない落ちこぼれで……」
「今、ここで試して貰う事は出来るか?」
「……”我、魔力を束ねて紡ぐ者、我、月の欠片をたぐる者、我ら皆、月の子なれば”」
レナリアが言葉紡ぐのは、最も初歩的な魔術”魔力の矢”の呪文。
この魔術は、仕組みが非常にシンプルなので、ほとんどの術者が最初に覚え、そして最も早く詠唱破棄で扱う事が出来るようになる魔術だ。
魔術攻撃の基礎、と言ってもいいだろう。
魔術師でなくても、器用な冒険者なら練習しなくても魔術書を読んだその瞬間から使えるような魔術。
しかし、レナリアの指先からは何も発生しない。
魔力自体は渦巻いているが、一切術として機能はしていない。
「…………こんな、感じ。ふ、ふふ、見た? 言ったっしょ? 私はやっぱり……」
「ああ、予想通りだ。──これなら完全に問題はないな」
「は?」
そう、予想通りなのだ。
原作レナリアも、通常の魔術が一切使えなかった。
その理由は、彼女の生まれにある。
彼女は、通常のホムンクルス、作られた人間ではない。
「次は、俺の言った呪文をそのまま使ってくれ」
「え、え?」
「”我、唯一の月の雫。我、唯一の月の輝き。星辰の輝きから生まれしものなりて”」
「な、なにその呪文……あの、私、悪いけど魔術学院にある魔術書全部読んで全部暗記してっから。純魔力を扱う為の呪文……月系の呪文に、そんなモン一切ないんですけど?」
「信じてくれ、レナリアさん」
「……これでダメでも、文句、言わないでよね……もう、普通の呪文でさえ無理なのに、出所が不明の呪文なんて出来るワケないっつの、これだから素人は……」
ぶつぶつ言いながらもレナリアは手を翳して。
「”我、唯一の月の雫。我、唯一の月の輝き。星辰の輝きから生まれしものなりて”」
何も起きない。
魔力の揺らぎはあるが、レナリアの手元には何も──。
「ほら、言ったっしょ? 私には魔術は──…………え?」
しゅるっ、しゅるっ、しゅるるるるる。
魔術による現象が始まる。
俺の編んでいた血の魔術が、彼女の手に吸収されていく。
正確に言えば、レナリアの手元に発生した……”魔力の穴”のようなものに、吸収されて──。
ああ、やはりだ。
このレナリアも、原作レナリアと同じ、この世界で唯一無二の才能を持っている。
それは──。
「えっ、ちょっ、えっ、えっ、えっ、えっ……! え!? ちょ、え、え、え!? 嘘、嘘ッ、嘘、私、これっ!? これって!!?? ま、魔力、魔力が、動いて!?」
「……術者の呪文による現象の指定、魔力による現象の固定と変化。それを術者の意志で発動させた。レナリアさんが、今扱っているのは紛れもなく、魔術だ」
魔術を吸収する魔術。
まるで、全てを飲み込む極小の虚空。それが彼女の手元に発生していた。
レナリア・カリア・ルラカナのみが扱える”
これが、使えるという事は、やはり彼女は……原作のレナリアと同じ──。
「や」
「ん?」
目の前に、なんか、デカくて白い肌が。
露出の多いメイド服から零れそうだった胸が──。
「やった……やったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ぐえ」
ぎゅっ。対面のソファから飛び出してきたレナリアに抱き締められた。
「う、私ッ、ま、魔術、魔術が、使えた、使えたよね!!?? ねえ、ねえってば! やった、良かった、良かった、良かったああああ……私、私、あ、ありがとおおおおお、私に、使える魔術、教えてくれて、ありがとおおおおおおお!!」
母親ほどナッガ……くはないが、充分大きな胸を顔に押しつけられる。
甘い汗の香り、妙にじっとりしているしめっけ。ねっとりした体温が顔を覆う。
「ごほっ、息、息が、っ、出来なっ」
「あ、あ、あ、ごめん……っ! だ、大丈夫!? ごめんねっ、私、男の人になんて事を……あ、べ、別に今のは、アンタの事を心配したとかじゃないの
謎のクール理論を投げてくるレナリア。
危なかった、流石原作主要キャラ、シンプルにステータスが高いので力がめっちゃ強い。
まあ、そもそもレナリアのこの才能は元々──。
「い、いや、良い。良かったよ、これで、嘘をついた事にはならないかな?」
「──ッッ、それ、その感じ、やめて……」
「え?」
「その、優しく笑うの……やめて、なんか、おかしくなる、からっ」
笑っていたの、か? 俺が?
レナリアの様子が少しおかしいな……。
まあ、いいか。
「分かった、で、話の続きなんだけど。レナリアさん、君は実は元々、その魔力を吸収する魔術を無意識に使っていたんだ」
「え?」
「思い返してほしい。これまで、君の周囲で魔術行使が上手く行かなかった事がなかったか?」
「……あ」
「それは例えば戦闘中や、危ないタイミングでよく起きたはずだ。君はずっと無意識にその才能を行使してきた。周囲から魔力や、魔術自体を吸収。さらにそれを分解し、肉体の強化に充てていたハズだ。心当たりはないか? ──魔術師と戦う時だけ、妙に調子がよかったりとかさ」
「あ、ある……! だって、その、アンタの世話人を決める”魔術戦”の時も、その、強い魔術師が、魔術の発動ミスったりとか……」
「それは君が”
「それって、つまり──」
「君は、最初から魔術師だったんだ、少しだけ特別製のな」
「──う」
ほんの少しの間だけ、レナリアはちょっと泣いていた。
原作の彼女も、同じだった。
「レナリアさん、それじゃ晴れて魔術が使えた所で、取引なんだが……」
「……レナ、でいい」
「ん?」
「私の、名前、呼び方……レナ、でいい。昔、お母様はそう、呼んでくれてたから」
おお、マジか。
これは原作イベント”名前、呼び方”じゃん!
レナリアとの関係性が良好な時に発生するレアイベント。
う~む、もうこれが発生するとは……。
でも。まあ、今はいいや。
これは現実、俺は名もなき不死ではなく、ミリタルナの従者としてここにきている。
なれなれしすぎるのも問題だ。
「いえ、そういう訳には……」
「呼び方、レナ、でいいっす。あ……っ、おい、今のは、聞かなかった事にしろ」
「承知致しました……レナリ」「レナ」「……レナ様」
「……ふんっ、まあ、それでいいわ。うん。あ、でも勘違いしないでよ、
「あ、はい」
「ふふーん。……で、取引って言ったわよね? アンタは私に魔術を教えた。……代わりに、何が欲しいの? ──い、言っておくけど、私は、その、男が嫌いなの。アンタの要求の全部に応えれるとは思わないでね。で、でも、リヒト、なら、その、少しは無茶を言っても──」
「
「──え?」
「頼む、君にしか頼めないんだ」
「ンっ」
きゅっとレナリアが顔をしかめる。どういう表情なんだろう。
「しょ、しょ~がないわねえ~、まあ? 私、こう見えて学長の娘? だし? 星屑の魔術? の使い手だし? まあ、何? その、見学? とかなら簡単に出来る? っていうか?」
「おお」
「でも、その前に──」
「ん?」
「もうちょっと魔術の訓練に付き合って」
「……おお」
◇◇◇◇
……そこから5時間ほどが経過した。
「やっ!!! やっ!!! まだ、まだ、練習する!! 魔術、もっと上手くなってママ、じゃない、お母様に証明するの!! そして私、ここの家の子になる!! リヒトのご飯、また食べる!!」
「おい、クールはどこに行った」
おおい、もう夜、夜ですよ。
しまった。途中腹が減ったので、料理を振る舞ったりしたのがマズかったようだ。
この世界の女性の何かを刺激してしまったらしい。
ついでに飲んでいた酒も悪さをしているのだろう。
「男の人の手料理、初めて食べたの!!!! 超美味しかったです!! なので、私はここに棲む!!」
この酔っ払いクール、どうしよう。
そう思った瞬間だった。
ぞ、ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ。
部屋の隅で、何か、黒いものが蠢いて──。
御覧頂きありがとうございます!
宣伝多くて申し訳ないです。
この業界、マジで1巻の発売1週間でシリーズ続行か打ち切りかが決まるのでちょっとしばらくは足掻かせて下さい。
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