貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
「彼が不自由をしていないのならば良い。ルラカナの落ち度で腕を無くしてしまった不幸な方だ。何1つ面倒をかけないように」
「は~い!! でもでも、学長~マザリィ、1個気になったんだけど~聞いてもいい?」
「……なんだ?」
学長──ノクトラ・カリア・ルラカナは、ミリタルナの従者に見せていた女の顔ではなく、ルラカナの指導者としての顔で受け答えする。
「その~彼の腕を早く治してあげたいのはわかるんだけど~? 何もこんな微妙なタイミングじゃなくてもよかったんじゃないの~? ほら~上、見て、上」
マザリィが天井を指さす。
その瞬間、学長室の天井、壁が光の結晶になり、砕ける。
あっという間に室内は開いた屋上に早変わり。
学長室、月見台の魔術学院で最も高い塔。
夜空の中にいるような光景の中、彼女達の頭上にあるのは──月。
明らかに大きすぎる月が、一刻一刻と近づいてきていた。
「3日後には、月が堕ちちゃうかもって状況でわざわざ彼を連れてこなくてもってマザリィ、思うかな~」
「……知れた事です。ミリタルナとの関係を発展させていく上で、彼を放置する選択肢はなかった。特にミリタルナの王姉妹は苛烈だ。ルラカナの月の事を他国に内密にしている以上、あの場で更に3日待てなど通用しない」
「え~でもでも~それって~もしも月が堕ちた時に彼を巻き込む事に──」
何かを言おうとするマザリィ、そして魔女達が全員同時に口を噤んだ。
何故か。
「私がいる限り月は落ちない」
「「「「「ッ」」」」」」
ぞっ。
魔力、ノクトラが放つその魔力に全員が気圧された。
まるで炎を目の前に突き付けられたような熱と痛み、魔女達が冷や汗をかきながら押し黙る。
「下らぬ事を言う暇があるのなら、各位は各位の仕事をされよ。──猟犬の魔女。二つ首の獣の追跡はどうなっている?」
「は、はい。学長、以前、使い魔に匂いを追わせています。……しかし、すみません、やはり、”地下水路”に逃げ込んでからはなかなか見つからず……」
長身猫背で黒髪の美女──猟犬の魔女が答える。
「良い。そのまま励んでくれ。あの獣は賢い。追われているという事が分かればそう簡単には姿を見せないだろう。しかし、逆を言えば、その間は奴による被害も抑えられるという事になる」
「お言葉のままに。ノクトラ様……」
彼女達は全員”魔女”の称号を持つルラカナの重要人物。
それぞれが、学院に教室を持ち独自の方法で魔術師の命題でもある”淵源”の探求を許された実力者達。
魔女1人で、ルラカナ外の勢力の都市と交戦出来る。
彼女達の存在こそが、ルラカナの中立を保証する抑止力でもあった。
そんな彼女達の頭を悩ませている目下の脅威は2つ。
獣と月だ。
「分かった。貴女には引き続き二つ首の獣の追跡を行ってほしい。……各自からの報告を聞く前に状況を整理しよう」
「”月”がルラカナの空に現れたのが2週間前。これは我々が日頃から観察している空に浮くあの月ではなく──何者かの魔術によって造られた悪意ある月だ。そして同時期に現れたのが──二つ首の獣。数年前から”デドマン帝国”の冒険者ギルドが追いかけている”災害”に数えられる魔物。現在、ルラカナはこの2つの脅威に瀕している」
「我々、魔女会議はこの2つの脅威に際して二手に分かれて対策を行うと決定した。貴女達、教室を持つ”魔女”は二つ首の獣の対処を。そして、私はあの月への対処を。そこまでは宜しいだろうか?」
学長の低い声に、魔女達は小さく頷く。
「各位には仕事の成果を。ネズミの魔女。貴女にはたくさんの仕事を任せて申し訳ないけど……頼んでおいた二つ首の獣、被害者の調査の進捗は?」
「う~ん。目的は以前不明かな~。どうしてここに現れたのか、とか~、あとはそもそもどうやってルラカナの結界から入り込んだのかとか~。でも、1個、面白い事が判明したよ」
「面白い事?」
「うん。二つ首の獣に襲われた魔術師、総勢13名なんだけど……全員に共通点があってさ~。なんだと思う?」
「……マザリィ」
「ひ、や、やだなあ~学長、そんな怒らないでよ~……ごめんごめん、素直に報告しますって~。二つ首の獣に襲われた魔術師は全員、”外から来た魔術師──外来”だったんだ~。それで全員が”デドマン帝国”からの亡命者、もしくは二等親以内に”デドマン帝国”出身者がいる子だったって事」
「……ほう?」
ルラカナの魔術師には大きく分けて2種類が存在する。
最初からルラカナで血を織りなしてきた”純粋”、そしてルラカナの外からやってきて魔術師の門を叩いた”外来”。
「それでね~、その外来の魔術師への聞き取り調査では、全員が1回二つ首の獣には丸吞みにされてるんだ~。でも、もう死んだ! って思った後、吐き出されて~、魔物にこう言われたんだって」
マザリィが、手を合わせてニコリと微笑む、
「”──貴様では、ない”。だってさ」
マザリィの報告に、魔女の全員が怪訝な顔を浮かべた。
色々奇妙な内容だったからだ。
「……貴様では、ない? 獣が、そういったのか? ……人語を介せるとすれば間違いなく
「さ~それがさっぱりだよ~。被害者の誰も、二つ首の獣とは飲み込まれて吐き出された後に、そう告げられて獣は去っていくんだって~……でも、これさ~おかしいのはさ~、誰1人死んでいないんだよね~」
「最初に襲われた者もか?」
「うん。現状、ルラカナが二つ首の獣によって被った人的被害はゼロ~不思議な話よね~」
「……人的被害?」
「うん、死人はでてないって事かな~。妙な話よね~。デドマン帝国での”二つ首の獣”による被害はそれこそ都市の1つや2つじゃ済まない。騎士や有力冒険者もあの氷と炎を操る魔獣に殺されてるだもの~、まるで獲物を選んで探してるみたいだわ~」
「……そうか。マザリィ。貴女の所管は? 二つ首の獣は、討つべきと思うか?」
「う~ん、平時なら面白い研究対象になりそうだから放っておくのもありかな~とも……思うけど。ちょっと未知数すぎて放置は危ないかな。見立て的には、魔女が3人いて、きちんと準備しておけば9割は殺せるかなって感じの魔物だし……予定通り駆除でいいんじゃないかな~とマザリィは思いま~す!」
元気に手を挙げるマザリィ。
彼女の帽子に座るネズミ達も血走った目で手を挙げている。
「……その件でノクトラ様に報告がある」
新たに声を上げたのは、魔女帽子の代わりに黄色いクマのぬいぐるみを置いた少女のような魔女。
”糸紡ぎの魔女”イモラ。
淵源への探求を、予言と予知によってなさんとする彼女はごくたまに、9割当たる予言をぬいぐるみに降ろす事が出来る。
彼女が言うには──つい先ほど、予言が降りたらしい。
しかし、内容があまりにも……刺激的だった為、発表するのをためらっているとのことだ。
「……良い。私が許可します。遠慮なく使って下さい。イモラ」
「分かりました。ノクトラ様。──”いとつむぎ、いとつむぎ、星よりも海よりもこまかく砕けて繋ぎ合う。いとつむぎ、いとつむぎ。明日の天気はなんだろな”」
彼女の短い呪文──その瞬間、彼女の頭の上に置かれている黄色いクマのぬいぐるみが。
「”げらり”」
嗤った。
『”げらりげらげらげらげらげら”』
『月の街、月の街、魔術師の街、オワオワオワリ!! もう終わり!!』
『”不死、不死、不死!! ”』
『不死がこの街を終わらせる!!』
『不死を追って不死を憎む獣がやってきた!!』
『魔族の黒き月、甘い闘争を求める星の将軍! 不死!! 破壊を求める悪魔どもがやってきた!!』
『月見台の王は秘密と街を天秤に掛ける。星月夜に抱き締めた奇跡か、それとも魔術師の国か。どちらか1つだけ。両方が生きる事は出来ず、片方をその手で縊り殺すしかなし!!』
『おめでとう! おめでとう! おめでとう! 月見台の王よ! おめでとう! 血塗られた手で国を護るか! 国の灰にまみれながら奇跡を抱きしめ続けるか! 2つに1つ!』
『でも、どちらにしてももう遅い! 終わり、終わり!! 星月夜の時! 王が奇跡を見つけたのでもう終わり!! げらげらへらへらげらげらげら!!』
「”男の不死が、ルラカナを終わらせる!!! ”」
『あ、それと魔術師の中に裏切り者がいます”』
しんっ。
ぬいぐるみは、もう喋らない。
「「「「「「「「……」」」」」」」
最悪の空気の中、ルラカナの夜は更けていく。
そして、朝が来た。
今日もルラカナの真上にはあの月が──。
真っ黒に染まった月が静かに、静かに降りてくる。
最初の朝、後72時間。
◇◇◇◇
~最初の朝、後72時間~
~月見台の魔術学院にて~
魔術学院には、ルラカナ地下水路への秘密の入り口が存在する。
俺の目的──月の落下阻止にはまず地下水路に潜む大魔族を探し出し、それを排除する事が必要だ。
その入り口を目指すべく、レナリアの秘策を実行し、魔術学院に潜入した。
そして、俺は今──。
「は~い! じゃあ、今日は~猿でも出来る基礎攻撃魔術だけを使って騎士をぶっ殺す学の特別授業として~”特別講義・男の子の身体について”を始めたいと思いま~す!!」
バカ広い講堂、360度、ちょっとギャルっぽい魔術師達に囲まれています。
「「「「「「やったあああああああああああ」」」」」」
「じゃあ~皆~? 男の子に質問ある人~!?」
「「「「「「「「はああああああああああああああああいい!!!!」」」」」」
うわ、凄い手が上がってる。
小学一年生の6月かよ、ちょっと授業に慣れてきて発表したがってるんじゃねえぞ。
「はい!! それじゃそこの、出席番号45番!! ポニー・ユニコンさん!!」
元気なピンク髪のツインテ魔術師が立ち上がる。
彼女は曇りなき眼で俺を見つめて。
「ちんちんついてるってホントですか!!?? またもしもそれが可能ならそれを見せて頂く事は可能ですか!!」
クソ異世界がよ。
レナリアに助けを求めても──。
「私のなのに私のなのに私のなのに私のなのに私のなのに」
何でそうなるんだ……! 講堂の隅っこで親指噛んでる場合じゃないだろ!!
お、俺は地下水路を目指さないといけないのに。
どうして、こんな目に……!
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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おまけ
原作灰クソアイテムテキスト
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・魔力の矢
月見台の魔術学院が編みだした基礎攻撃魔術。
杖、もしくはそれ以外の媒介、熟練者は指先や果ては虚空から、魔力の矢を放つ。
牽制、とどめ、戦闘の一手、用途を絞らず使用でき、同時起動もできる
月見台の魔術学院は古くは、この魔術すら秘匿していた。
自らの研究の成果、淵源への到達に必要な研鑽をどうして下賤な者に渡さねばならぬのか。
魔術師よ、淵源の為にあれ
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