貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る   作:しば犬部隊

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40話 魔術学院侵入

 ~少し前、魔術学院出発前~

 

 朝である。

 月の宮からのモーニングルーティンである簡単な筋トレと素振りの型を終え、水を浴びる。

 

 ミリタルナでは朝の水浴びには井戸や温泉を使っていたが、ルラカナでは、庭に生えている月光アセビという巨大な花を利用する。

 

 この花は夜の間に空気中から魔力と共に水分を吸収する魔術植物の1つ。

 朝になるとこうして、花弁の周囲にボール状の水分がぷかぷかと浮かぶようになる。

 

「すげえな、これ……」

 

 とぷんっ。

 空中に浮遊する水から水を掬って顔を洗う。超爽快……。

 

 原作通りだ……。

 誠に遺憾だが、こういうゲームではオブジェクトとして置いてあるだけで使う事のなかったものを実際に見て触れて使えるというのは普通に興奮する。

 

 ルラカナは空からの飛来物で出来たクレーター湖に出来た都市。

 その飛来物の影響か、ルラカナ周辺の土地で生まれる植物や生物には魔力を帯びたものが多いらしい。

 

 俺もこう見えて灰クソ考察板の住人……荒廃前のルラカナで生活できるというのは……普通に興奮する。

 今更、ゲーム異世界転生感出てきたな……。

 

 顔を洗ったら朝食の準備。

 魔導コンロもゲームと同じ使用方法だったので、簡単に扱えた。

 冬の魔術を応用した食料保存庫には多くの食材が詰め込まれている。

 

 モロ鳥の卵に、月豚のベーコン……。

 

 じゅううううううううううううううう。

 一緒にさっとフライパンで焼いていく。もうこんなのいっちばん美味いんだから。

 ミリタルナで、かなり片腕で動く練習をしていたからな。

 卵だって片手で割れてしまうのだ。

 

「す、すごい……こ、こんな簡単に料理、作っちゃうんだ……」

 

 ちょうど起床してきたレナリアにも同じ食事を振る舞う。

 

 さて、お味の方は……。

 

「これは……!」

 

 う、旨い……! 塩と胡椒を振って焼いただけの濃い目玉焼きとベーコンだが、めちゃくちゃ旨い!!

 

 噛み締めればしっかりした歯応えと共に脂の旨味が口に広がるベーコン、目玉焼きはしっとり濃厚、半熟!

 これをパンで掬って喰えば……うん、やっぱり、どこの世界でもこういうのでいいんだから。

 

「うわ、おいしっ……()()()()()()()()()()()からほとんど食べてなかったけど、きちんと料理っしたらこんなに美味しいんだ……」

 

 切って焼いただけの超手抜き料理だが、レナリアも非常に気に入ってくれたらしい。

 彼女が扱うと、魔道具もうまく起動しないらしい。

 

 恐らく、無意識に星渦の魔術を発動させてしまい、魔力を吸収してしまっているのだろう。

 

「で、でも! これからは違うわ! 私はこの魔術をきちんと操って見せるんだから!」

 

 やる気満々なのは素晴らしい。

 しかし、原作灰クソの星渦の魔術には大きな弱点もあった。

 

「レナリアさん、君の星屑の魔術は特別な才能であり、素晴らしい魔術だ。でも、無敵の能力ではない」

 

「むっ……な、何よ。そんな事言われなくてもわかってるわ。この世に完全なものなんてないもの。……それで、その弱点って何?」

 

「状態異常にめちゃくちゃ弱い」

 

「じょ、じょーたいいじょう?」

 

「ああ、毒とか、麻痺とか……後はその他の呪いとか……。星屑の魔術は魔力を吸収、解析──いずれは放出も出来る魔術だが……」

 

「もしかして、”吸収”に問題があるってこと? 例えば、毒を作る魔術とかを吸収すれば私にそのまま影響が出るみたいな?」

 

「……凄いな」

 

 いや、驚いた。

 大正解だ。

 レナリアは、既に星渦の魔術の弱みについても把握しているようだ。

 

「ふふーん、お母様の言うとおりね。魔術師に完璧は存在しない。単一の魔術に完全無欠なものはない。どんな魔術にも必ず弱点があるって言われた事あるもの! ……凄く、小さい頃の話だけどね」

 

「……学長殿は、君に魔術を教えなくなったのはいつ頃からなんだ?」

 

「いつ頃っていうか、最初から。物心ついた頃からよ。でも、最初は、ずっとずっと小さい頃は魔術を教えてくれなくても、魔術の話はたくさんしてくれたわ。お母様が開発した流星の魔術を見せてくれた事もあったし……でも、きっと、私が落ちこぼれだから、途中で呆れちゃったのかな……」

 

 しゅんとするレナリア。

 話題を変えるか。

 

「でも、今の君には星渦の魔術がある。ああ、そうだ、その魔術は、その魔術がもたらす特殊効果にも弱いからね。吸収するものと吸収しないものの目利きが必要で、かなり扱い自体は難しい──」

 

「……」

 

「……どうした?」

 

「……んー? 随分、星渦の魔術に詳しいなって思っただけ。もしかして、私以外にこの魔術を使ってる子いたの?」

 

「……ああ」

 

「っ……そ、そうだったんだ。私が、初めてじゃ、ないんだ……べ、別にどうでもいいけどさ~……その、どんな、子だったの?」

 

「昨日、君とよく似た子を知っていると話したのを覚えてるか? その子だよ、俺の知っている君ではない星屑の魔術の使い手は」

 

「ふ、ふーん……どんな、関係だったの?」

 

「仲間だった。彼女の目的と生き方に共感してね。助手みたいなものだったかな」

 

「助手……そっか……もう、誰かの助手だったんだ……そう、よね……アンタみたいな男、他の魔術師が放っておくわけ……」

 

 か細い声でレナリアが呟く。

 ちょっと元気ないな。食事の問題か?

 

『マスタァの話し方の問題だと思うよ』

 

 何言ってんだ、ラミィ。まだ朝は早いぞ、寝てなさい、夜型ドラゴン。

 

「その子は、どんな子だったの?」

 

「昨日言った通り。君とよく似て……いい奴だった」

 

「だった……? ねえ、もしかしてその子って……」

 

「……」

 

 原作灰クソの貴女です、とは言えないのでとりあえず黙っておこう。

 困ったら沈黙。

 灰クソコミュニケーションだとこれが結構使えるんだ。

 

「あっ、ご、ごめんなさい……私、ちょっと無神経だったわ。謝る。え、えっと、ほら、元気出しなさいよ! 今日はきちんとアンタとの約束通り、魔術学院に連れていってあげるからさ!」

 

「ありがとう、レナリアさん」

 

「む……だから呼び方……まあいいわ、これからゆっくり慣れてけば…………」

 

 レナリアが綺麗な所作で卵とベーコンを平らげていく。

 そのメイド服、いつ脱ぐんだろうか?

 

「……そ、そういえば、男の手料理……食べるの初めてかも……ふ、ふふっ。ね、ねえ、アンタ、ミリタルナでは結構、料理って──あっ……う、で……」

 

「ん?」

 

 レナリアが固まる。

 俺を見て、いや、正確には俺のなくなった腕を見ている?

 どうしたんだ?

 

「ご、ごめんなさい、私の事ばっかり……アンタの方が、大変……なのに……それに、元はと言えば、その腕は、私のおかあ様が……」

 

「ああ、これか。気にしなくていいですよ。レナさん」

 

「っ、どうして、アンタ。もっと怒るのがふ、普通なんじゃ」

 

「だって、レナさんのお母様が治してくれるんでしょう?」

 

「──あ。……え、ええ。そうよ、その通り……! ……ありがとう、リヒト。アンタ、やっぱ良い奴ね」

 

 おお。我ながら良いコミュニケーションが取れたのでは?

 朝食を終えた後は、ついに魔術学院に出発だ。

 

 学院に入るには、正門をくぐらなければならない。

 この正門には結界が張られてあり、学院の関係者しかその結界を通る事は出来ない。

 

 ゲームでは、廃墟のルラカナを回って何故か結界を維持している魔物を斃すか、門を破壊するか──これはバグ技だが、レナリアと一緒に門をくぐるかしかなかったはず。

 

「ふふん、安心しなさい、リヒト。私、昨日寝ないで考えたわ。アンタを魔術学院に入れる方法をね!」

 

「ほほう」

 

「最初はいっそアンタ、魔術が使えるから正攻法で入学させちゃおうかなとか考えたけど、私以外、喪女しかいない場所だから男の魔術師なんて大騒ぎ必須! お母さまに迷惑かかっちゃうもの! そこで考えたのがこの方法よ!!」

 

 レナリアが足元のスーツケースから取り出したのは──黒い外套だ。

 あれ、なんかどっかで見た事あるような……。

 

「じゃじゃ~ん!! ”透明の外套!! ” お母さまに昔貰ったものすごいアイテム! これ、アンタにあげるわ!!」

 

「え?」

 

「これをアンタが来て、私にくっついていれば正門はくぐれるはずよ!! どう!? 良い考えだと思わない? 透明マント来てれば誰にも見つかる事もないし!!」

 

 おい、バグ技、それバグ技。

 

 灰クソ系動画配信者、真顔タイムの動画『独りでは入れない正門を独りのまま入りたい』と言う動画でやっていた奴だ。

 

 魔術学院の結界に入る事の出来る人物に体を密着させる事で、結界の判定を潜り抜ける奴じゃん。

 

 ……ほんとに、成功するのか?

 

 ◇◇◇◇

 

 成功した。

 透明マントを着た状態で、魔術師ローブ(※へそ丸見え)に着替えたレナリアにくっついた状態でルラカナの魔術街を進む。

 

 凄い良い匂いがする。

 悪いと思って少しでも離れようとすると「……私とくっつくの、嫌? そう、よね……」みたいな感じでレナリアがバッドに入るのでめちゃくちゃくっついている。

 

 スレンダーなのに出る所は出ているレナリアの肉体の感触が凄い。

 むしろレナリアが俺の腕に抱き着いてくるので余計に歩きづらいし、匂いが凄く良い。

 

 ボディソープなんてないのに、なんでボディソープの匂いするんだ……!

 しかも、かなり高い奴!! 花とか石鹸の香りがする奴!

 

 そういうのに必死に耐えていると、学院の門もくぐる事が出来た。

 

 うん、女の園。

 バカ広い敷地内は、噴水やらテラスやらのキラキラ空間。

 顔のいい魔術師女子だらけ。

 

 しかも、なんか皆、妙にギャルっぽい……。

 レナリアは友達が多いようだ。女子高でモテる女子って奴か。

 

「レナリア~おは~! 今日は学校きてんじゃ~ん」

「あ、でも、また目にクマ作ってる……徹夜したんでしょ? きちんと寝なきゃダメだよ」

 

 ギャル魔術師の2人。

 ほわほわ系ギャルとレナリアと同じく高身長スレンダー系ギャルが一番仲がいいらしい。

 

 しかし、問題発生。

 レナリアの所属している教室に入った瞬間の事だ。

 

「はーい、今日の1時間目は~猿でも出来る基礎攻撃魔術だけを使って騎士をぶっ殺す学で~す! 戦闘服に着替えて、闘技場に集合!!」

 

「「「「「「はーい」」」」」」

 

「あ、忘れてた」

 

 え?

 

 レナリアがぼそっと言葉を漏らした瞬間。

 

「よいしょ~」

「着替えるのめんどいな~」

 

 一斉に、教室に魔術師達のローブがはだけて、脱がれていく。

 

 どうやら、あれだ。体育的な授業なので、全員ローブから運動着に着替える的な……。

 一斉に全裸になっていく魔術師達、花のような香りに包まれる部屋。

 

 うん、人として、何より前世の記憶を持つ紳士として、ここにいてはいけない。

 急いで教室を出ようとした瞬間──。

 

「あ、り、リヒト、待って──! 私も、一緒に行く! あっ」

 

 レナリアが、”透明の外套”を掴んだ。

 

 あ、バカっ。

 ずるり、透明マントが剥がれる。

 

 びっくりするくらい静まり返る教室。

 

 誰かがぼそっと呟く。

 

 

「…………男?」

 

 




 ここまで読んで頂きありがとうございます。

 宣伝多くて申し訳ないです。
 既に本作が並んでいる本屋さんもあるようです。
 土日にもしお見掛けした方がいらっしゃればぜひチェックしてみて頂ければ非常に助かります。
 初動良ければ続刊もありうるとは思うので、続刊、コミカライズ目指して頑張ります。

 また土日も更新する予定です。引き続きお楽しみ下さいませ。


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