貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
「つ、強かったわね……」
「うへ~……何あれ~……ホンホン言い過ぎでしょ~」
「び、っくりした……あ、あれが水音の怪の正体……? イヤな学校だわ、ほんと」
「ふう、ふうっ、り、リヒトさんのホンホンホン攻撃のアドバイスがなければ……どうなってたんだろう」
ホンホンおばさん改め、無明の老婆は討伐された。
魔術師が4人揃った時の数の暴力はすさまじい。
原作灰クソでは、安易なローリング回避をディレイと連続攻撃で狩ってくるホンホンおばさんも、魔術師の連携の前にあっけなく討たれていた。
俺達は、地下水路を進む。
現状けが人はいない。
あと少し付き合って貰ったら引き返して本格的な探索はソロで行おう。
ホンホンおばさん──無明の老婆。
灰クソ原作の設定では、あの魔物は大魔族が使役する尖兵という設定があった。
前周回で倒したアステーラをはじめとする大魔族。神殺しの十二魔星とよばれる強力な魔族達はそれぞれ自らの軍隊を持っているとされる。
ホンおばは、その兵の一種。
あいつ、終盤ステージでは普通に敵モブとして出てくるタイプの中ボスだからな……。
今回は1人だけで良かった。
「ねえ、リヒト。……サンテホンホンホンのホン、で動きが大きくなるのなんで分かったの?」
「……あの時はどうかしていた。あのアドバイスは悪かった、自分でもないと思ってるよ」
「あ、誤魔化した。フーン、教えたくないって事? まあ、いいけど。ミリタルナの従者さんは秘密が多いみたいね」
レナリアがつーんとした顔でこちらを見つめてくる。
黙っていると興味を喪ったのか、それ以上の追及はなかった。
「いや~久しぶりの魔物との戦い、結構スリルありましたな~」
「対魔物の実技っていつぶりだっけ? 月とか二つ首の獣が出る前に1回ゴーレムとの戦闘訓練があったから……もう結構たつよね」
「うひひ、今回はわたし、結構役に立てました……マザリィ様にも褒めて貰えるかも……」
妙に、皆楽しそうだな……。
流石はルラカナの魔術師、彼女達は学生と言えど他勢力に所属すれば上位の戦力扱いされるレベルにあるのだろう。
透明な水をたたえる地下水路を進む。
壁や地面には所々、幾何学的な紋章や青い結晶が浮き出ている。
幻想的な光景だ。
流れている水も魔力を含んでいるのか、ほのかに青く輝いている。
原作灰クソの考察班によると、ルラカナが出来た瞬間にこの地下水路も生まれたらしい。
ここは人工物ではなく、自然物という事だ。
ルラカナは隕石が落ちて出来た湖に出来た湖上都市だが、この地下水路もまた隕石によって生まれた場所なのだと。
灰クソ考察班──通称”脳民”と呼ばれているネット住民達は、灰クソプレイヤーの中でもとりわけ、その世界観に脳を焼かれた連中だ。
彼ら曰く、ルラカナ地下水路は”ゆりかご”らしい。
隕石は古い魔族の乗り物で、この地下水路はその乗り物に備わっていた環境支配機能によって造られたもの。
地下水路は傷ついた魔族、もしくはそれに由来するものの休憩所、もしくは前線基地のような役割で作られた、だっけか。
なので、ルラカナを滅ぼした大魔族アステーラは地下水路に身を潜めていたんだよ、というが”脳民”達のメイン考察だ。
SF始めんなって。なんで自然に魔族が宇宙由来の存在になってるんだよ。
でも……ちょっと理屈が通っているのが嫌だな。
この地下水路には、確かに魔力が潤沢に流れている。
「てか~、レナリア。なんか急に強くなった~? 教室で見せたあの変な魔術もだけど~。なんか動きのキレも上がってない~?」
「そう? でも、今日はスッラのバフがいつもより、こう……なんていうのかしら。体にすっと入ってくる感じはあったわ」
「……この地下水路での実習中、魔術の調子が良くなること、多いですよね」
レナリア達の動きが良かった、良すぎたのも先ほどの考察の裏付けの1つになる。
だが……そうするとだ。
そもそも”魔力”とはなんだ?
魔族の扱う魔力と人間の扱う”魔力”は規模や特性は違えど、その本質、魔術や身体強化に使うエネルギーという本質にはさして違いはない。
魔族の為に作られた地下水路で、魔力を持つ女性たちの調子がよくなる。
それはつまり、魔族とこの世界の女性が扱う力が似ているという事にならないか?
クソ、こんな時、ネット掲示板があれば……!!
ぐうううううううううううううううううううう。
その時だった。大きな音が鳴った。
一瞬、魔物の咆哮か何かと思ったら……。
「「「……」」」
ギャル魔術師のノーンさんとスッラさん、そして委員長が顔を真っ赤にしてお腹を抑えている。
「え? あ、アンタ達、今の、なに?」
「あ、あはは~え? え~? 何って何? なんの事? れれれれれレナリア。何言ってるの~?」
「ふ、ふふ、そそそそそそそそうだよ、レナリア。やだな~何も聞こえなかったって。ね、ねえ? 委員長」
「そうそうそうそうですよ! わ、わたし達、魔術師が、まさか男性の前でお腹を鳴らすなんて、あっ」
くうううう……。
委員長のうすほそのお腹から頼りない音が響く。
その直後。
「あふ~」
「あ、ちょっと、きついかも」
「ど、どうして……こんな、体、力が入らない……」
レナリア以外の3人が、膝をつく。
「ちょ、ちょっとどうしたの!? も、もしかして何かのケガ!? それとも、さっきの魔物になんか呪いをかけられて──! ちょっと、やだ、しっかりしなさいよ!」
「いや、待て。レナさん。俺に診させてくれ」
「え?」
焦っているレナリアを落ち着かせ、地面に崩れ落ちている3人の様子を確認。
紅潮していた頬は今や3人共、真っ白。
手足は小刻みに震え、おまけに。
「ノーンさん、ちょっと失礼」
「あ、ふう……り、リヒトさあん……違うんですう……私達、こんな、貧弱じゃないのに~」
ノーンさんのおでこに触れる。
ふむ、ふむ。
続いて、スッラさん、委員長も同じく確認。
「違う、こんな、あたし達、弱い女じゃない……う、うう」
「り、リヒトしゃん、わ、わたし達、弱くない……よわめすじゃないんですううう……」
うん、予想通りだ。
異常に皆体温が低い。
これは、やはり──。
「ちょっと、リヒト、な、なにか分かったの!? ノーン達、一体、急になんで──」
「空腹による虚脱状態だ」
「……え?」
「正確に言えば、魔力欠乏が原因の空腹と虚脱だ」
「え、それってつまり──」
「「「……」」」
「この3人は、お腹が空いて動けなくなっている……!!」
「……」
レナリアが無言で額を抑えて押し黙った。
灰クソ原作のままだ。
魔術師キャラは魔力がゼロになると、虚脱状態に陥り行動不能になる。
空腹のデバフもかかり、
「……もう少し先を行くと水棲の魔物が入れない入り組んだ空間がある。そこで休憩をしよう」
「きゅ、休憩って、それをしたらこの3人は元気になるの?」
「いや、普通に休むだけでは魔力欠乏は解消できない。魔力を回復させる主な方法は──魔力を多く含む人間の体液の摂取」
「──え、それって」
レナリアが自分を自分で抱き締める。
母親譲りのプロポーションが強調される、胸がむにゅっと潰れて煽情的だ。
やめてほしい。
「だが、それをすると次は体液を提供した人間が魔力欠乏に陥る。そこで次善の手段では──異性の体液を飲ませる方法もあるが」
「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
「は?」
ノーンさん達が首だけぎゅるんと起こし、幽鬼のような目つきで俺を見つめている。
レナリアは冷たい目で俺を睨みつける。
ふ、安心して欲しい。
貴女達の気持ちは理解している。
見ず知らずの、今日の今日出会った異性の体液など飲みたい訳がない。
それは当たり前の事だ。
「だが、これは非常に効率が悪く、強い信頼関係がないと魔力回復は起きない。なので却下」
「ほっ……」
「「「……」」」
レナリアが胸を撫で下ろし、3人も、ぐでっと地面に伏せる。
きっと俺の体液に触れる必要がなくて安心しているのだろう。
そこはね、普通にマナーっすからね。
貞操逆転世界と言えど、他人の体液なんて不衛生だ。
「でも、この3人どうすれば……」
「いや、問題ないよ、レナさん。魔力欠乏を回復させる方法は他にもある」
「え? そ、そうなの? 良かったわ。リヒト、ほんとに物知り──」
「ごはんだ」
「え?」
「魔力欠乏から回復するには──温かいメシが必要だ!」
「「「お、お腹、減った……」」」
ノーンさん達がきゅうううとしぼんでいる。
お腹が空いて苦しむ人間の姿は、平穏とかけ離れている。
そもそも、皆細すぎだ。
メシだ。飯を、喰わせなければ……!!
《ギュッ》
ここまで読んで頂きありがとうございます!
書籍1巻発売中です!
既にご予約、ご購入頂きました皆様、誠にありがとうございます。
多数の購入報告、誠にありがとうございます。
発売から1週間、そろそろ売れたのかどうか分かる期間です。
どんな結果になっても本作は完結させるので気長にお付き合い頂ければ幸いです。
ルラカナももう中盤か……。
WEB版ここまで読んで頂いてる方にこそ、ぜひ書籍版も買って欲しいです。
引き続き更新していくのでぜひご覧ください。
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