貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る   作:しば犬部隊

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6話 異世界に来たので魔術を使いたい

「魔力なし、レベルなし、スキルもなし。だが、男キャラでも出来る事はある」

 

 ないないづくしの異世界転生、それでも本編が始まる前に、最低限の自衛手段は必要だ。

 

 原作知識を元に考えた所、自衛手段に使えそうなものは以下の通り。

 

 

 1.魔術→魔力がないので恐らく厳しい、しかし対策あり。

 2.固有魔術→上記に同じ

 3.剣術→可能性あるかも。なので毎日筋トレしてニアに稽古してもらっている。

 4.実績→ゲームではプレイするたびに特殊な条件を達成するとこれが貰えていた。特殊なパワーアップが出来るけど……この世界にそれがあるかは分からない。しかし、希望あり。

 5.オーパーツ→これ可能性大。魔法のアイテムの事、オーパーツ自体に魔力があるため、男でも扱えるはず。

 

 

 灰クソの裏技にはいくつか、公式が黙認しているバグを利用したものが多数存在する。

 

 実は、このバグ技の中には1つ男キャラを使う上で非常に役立つバグ技があるのだ。

 

 その名も、”禁欲魔力バグ”。

 

 その方法は簡単。

 

 性欲値というステータスをMAXにした状態でストレスを溜めたまま.規定日数を過ごす。

 

 これだけで、男では0のはずの魔力が1に増えるというバグ技。

 

 ゲームではこの性欲値を定期的に解消しないと、様々なデバフが発生する。

 

 魔力が1あった所で何も意味はないので、死にゲープレイヤーにはあまり使われていない技だ。

 

 だが、今の俺には──十分試す価値はある。

 

 魔力が1あれば、基礎攻撃魔術”魔力の矢礫”が使えるかもしれない。

 

 自衛の手札はいくつあっても問題ない。

 それに、オーパーツも魔力があったほうが扱いやすいハズだ。

 

 条件は揃っている。

 この世界で前世の記憶を思い出して以降、俺は数年レベルの禁欲──を行っている。

 

 日頃から冒険者ギルドのお姉さん達からのセクハラ、ニアのスキンシップ、ついでに言えば妙に距離感の近い教え子達からのスメハラと誘惑が多い毎日にも耐えてきた。

 

「全てはこの時の為……」 

 

 この異世界転生、ステータスオープンがないタイプの異世界転生だ。

 なので、自分に魔力があるかどうかの判別はもうぶっつけ本番でやってみるしかない。

 

 とりあえずやってみよう。

 

 俺はギルドで借りてきた魔術教本を開き、”魔力の矢礫”のページを開く。

 

 魔術を使う方法は2つ、詠唱と媒介、媒介ってのは要は杖とか指輪とかのオーパーツを利用するやり方ね。

 

 詠唱は慣れたら省略できるらしい、ゲームでも確かに魔術が得意なキャラはそんな感じだったはずだ。

 

 えっと、詠唱文は……おっほ、ゲームのフレーバーテキストと同じじゃん。

 

 

「我、星の輝きを求める者なり。遥か遠く、月の力をここに。”魔力の矢礫”」

 

 

 ……何も起きない。

 まあ、そんなもんか、がっかりして気を抜いた瞬間、魔術書の紙で指先を切った。

 

 指から血が零れ──。

 

「いてっ、あ、クソ……あれ?」

 

 切ったひとさし指の先が、異常に熱い。

 零れるはずの血が、しゅる、しゅるしゅる、回転し、まとまり、形を変えていく。

 

 指先で空中に浮いて小さなボールペンみたいな形に。

 

 それはどこか、矢に似ているような──。

 

「っ! 我、星の輝きを──いや、違う」

 

 魔術書を閉じて、頭の中に存在する灰クソのフレーバーテキストを思い出す。

 思い出すのは、種別:攻撃魔術、ある特殊なルートでのみ習得する事が出来る”血の魔術”と呼ばれるもの。

 

「”我、血の導きに従い悪竜に至る者。今こそ、共に神を喰らわん──”血の矢”」

 

 人差し指の先に、小さなボールペンサイズの血の矢じりが出来た。

 

「よっしゃ!!」

 

 と、叫んだ瞬間、ばすん! と射出される血の矢。

 壁に小さな穴をあけて、ぱしゃっと飛び散る。

 なるほど、集中が溶けたらコントロールから外れる訳か……

 

 幸い、まだ傷は塞がらず指先から血はどんどん溢れてくる。

 よし、集中、集中、集中、集中、集中……。

 

 血液をこの傷口全部に集中する。

 

 俺は人差し指を前に、気分で親指を縦に立てる。ピストルのジェスチャー。

 

 俺の魔力は恐らく、バグで用意したカスみたいなものだ。無駄打ちもできないし、血液だって必要だ。

 

 1回の動作で、身体に技術を覚えこませる。

 

 イメージだ。指先に残っている感覚を追え、呼吸を止めて、身体の中の血液を──魔力だと思って操り、手繰れ。

 

 

 脳内シュミレートしろ。

 

 前世では、灰クソのボス戦で詰まった時はいつもそうしていた。

 

 落ち着いて冷静に繰り返せば、死にゲープレイヤーは神だって殺せる。

 

 だから、魔術だって覚えれるはずだ。

 

 

 

「ふー……」 

 

 

 

 深呼吸。

 

 足のつま先から、頭の天辺、指先に血管を通して力を送る。

 

 じわあ……指先が熱い。

 

「”血の矢”」

 

 しゅるるるるるるる。

 

 人差し指の先、やじりの形をした血液が完全に留まっている。

 

 成功だ。

 

 後は、これを狙い通りの場所に撃つ事が出来れば──そう思った瞬間だった。

 

「あれ?」

 

 くらっと、視界が真っ暗になる。

 

 バツッ!! また俺の制御を外れた血の矢が勝手に壁に向かって射出される。

 

 あ、クソ、これ、魔力切れか? 

 

 めまいに耐えつつ、ソファにゆっくり座り込む。完全にあれだ、立ち眩みと似ている。

 

「なる、ほど……今の、俺には、1発と半分が限界、か……、あ、やべ」「

 

 

 結局、その後、無理してもう1回使おうとしたら、完全に気絶した。

 

 やらかしたわ。

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

「リヒト、リヒト!! 起きて!! 起きてよ!! ヤダ、ヤダヤダヤダ!! 起きてって!! なんで、どうして、あ、アタシ、アンタがいないと……もう……」

 

「リヒト君、リヒト君、僕も、嫌だよ、初めて、友達が出来たのに、こんなの……」

 

 

「……んあ?」

 

 

 目を覚ました時、目の前には完全に泣き顔の友人達がいた。

 

 緑髪ポニテの猫系八重歯美少女と美少女と間違えるレベルの白髪メカクレ美少年と、黒い可愛い犬。

 

 ニアとライス君、そして飼い犬のロボだ。

 

 どうやら、ライス君が晩御飯のおすそ分けを持ってきてくれた所、俺が気絶しているのを発見したらしい。

 大急ぎで冒険者ギルドで訓練をしていたニアを呼び出してくれたとか

 

 

「あ、起き、た? 生き、てる……」

 

 

「あ、り、リヒト君、よかった、良かったよぉ……目、覚ましてくれた、う、ひぐ、よかった、ああああ、アタシ、アタシが、剣の稽古やらせすぎたからっ、ごめん、ごめんねえ! リヒト、男の子なのに! ずっと、剣に付き合ってくれたから、アタシが無理させて、うわあああああああああああああん」

 

 

「わおーん!! わふわふ! わおーん」

 

 あかん、完全にやらかしたわ。

 

 ニアは目を腫らしてるし、ライス君も泣いてるし、ロボはなんかよく分かってないけど、皆がほっとしてるので取り合えず吠えてるし。

 

 この後、ニアとライス君、ロボには少し疲れが出た、心配をかけてすまないと丁寧に謝って、そのまま流れで一緒に食事をする事になった。

 

 ライス君と一緒にシチューを作って、ニアと、心配して様子を見に来てくれたB級冒険者お姉さんパーティーにふるまったりした。

 

 料理するのは好きだからな。割と好評だった。

 それにしても友人に心配と迷惑を掛けてしまったな。反省しないと。

 

 泊まりたがっていたニアに、ライス君の見送りを頼み、寝床につく。

 ベッドの中で、俺はこの世界にきて今までないほどワクワクしていた。

 

 血の魔術は、俺が灰クソプレイしてた時に使っていたお気にいりの魔術だ。

 

 もし、ゲームで使っていた魔術が本当に使えるのなら……使ってみたい。

 これはもう、死にゲープレイヤー、いや、ゲームファン共通の夢だろう。

 

 幸いな事に食事をとって休めば、あの魔力を使った時の妙な疲れもだいぶ軽減出来ている。

 

「今度は、迷惑かけないようにしないと」

 

 気を付けるべきだろう。この世界で男は魔術を使えない。

 

 そんな中、俺が魔術の使用の可能性に近づいた事は、隠しておく方が無難だ。

 

「平穏に行こう……でも、今日の食事は、楽しかった、な……」

 

 そのまま、俺は泥のような眠りに身を任せた。

 

 

 ◇◇◇◇

 

「リヒトっちのご飯、美味しかったね~!」

 

「ほんと、それ~! てか私のシチューだけちょっと多かったの気づいた?」

 

「はい、それ素人処女妄想乙~! わたしのシチューの方が多かったし、目つきも優しかったです~!」

 

 リヒトテトグマンの家での食事会からの帰り道。

 

 B級冒険者パーティー”ハンターズドリーム”の3人娘が、夜の活気に満ちたやんややんやと騒ぎながらカレルの大通りを進む。

 

 男娼の誘いも軽く、彼女達はいなして断る。リヒトと食事が出来たので、なんか、そういう気分にはなれなかったのだ。

 

 リヒトは彼女達にとっても不思議な男だった。

 

 自分達のような、男に避けられがちな下品な女にもまるで貴族の子女に接するような態度をとってくれる不思議な男の子。

 

 でも、恐らく相手にはされないだろう。

 

 ニア・リセラヴェルタ、この街で決して敵に回してはいけない女と、最近では帝都の貴族、亜人連合の王族達までもが彼に執心しているのだから。

 

 だから、こうして、少し離れた場所でファンのように彼と接する、それだけで良い。

 

 彼女達はきちんとわきまえていた。

 

 ふと、青髪の魔術職の女が呟く。

 

「でも、そういえばリヒトちゃんの家さ、魔力の残り香がなかった?」

 

「え? そんなのあった?」

 

「ニアとかがマーキングしてるんじゃないの?」

 

「う~ん、ニアとも違うんだよね~誰の魔力だったんだろ」

 

「え~大穴で、リヒトっちとか?」

 

 一瞬の沈黙。

 

「あっはっは、ないない!」

 

「そうだね~、リヒトっち男の子だもん。男の子で魔力があるのは、えっと、その……」

 

「ないよ、そんなの、男で魔力があるなんて、そんなのさ~あの100年前の戦争以来でしょ、なんだっけ、あの殺しても死なない奴ら。冒険者ギルドでS級探索者だけが討伐依頼受けれる化け物の、え~と、あ、そうだ、テミス、アンタのおばあちゃん、100年前の大戦に出征してたんでしょ? ほら、男でも魔力を使う化け物がいるって話あったじゃん」

 

 狩人の女が、ん~と何かを思い出す素振りを見せて。

 

「あ! 思い出した! 男でも魔力が使える存在! 不死(ふし)、だったっけ?」

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 次の日は、血の矢を2作っても気絶しない。

 

 3つ目と半分でめまいを感じたので、すぐ中止。

 

 血の魔術は普通の魔術よりも体力と生命力を消費する。

 

 気をつけるべきだろう。

 

「俺は、ゲームの主人公みたいに不死じゃないからな……」

 

 ふと、思う。ニア、お前が羨ましい。死んでも死なない灰クソの主人公のお前が。

 

「俺も、不死だったらな~」

 

 




御覧頂きありがとうございます。引き続きカレル行商街での異世界ライフをお楽しみください。
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