貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
◇◇◇◇
毎日はあわただしく過ぎていく。
今日もよく働いた……。最近、やけにスキンシップが増えてきたキッズ達の家庭教師、その後は冒険者ギルドで給仕のバイト……。
自室の硬いベッドに横たわる。
今は、竜暦200年。本編開始は210年。
「あと、10年……か」
10年後の本編開始に備える為に──。
ゴッ──ォオォ。ゴッ。
大きな音、何の音だ。
やけに、暗い? 俺、いつ寝たんだ? いや、寝てるのなら、なんで思考が回って……。
んん??
《Ashes to ashes》
ごおおおおおおおおおおおん、ごおおおおおおおおおおん。
大きな音がした、ような……。眠たくなったので、そのまま意識を手放して。
《dust to dust》
《全身圧性●頭部破砕による即〇胸腹部臓器破裂による出血性ショック●頸椎完全脱臼による呼吸停止多発性骨折を伴う即〇レベルの体幹圧潰損傷》
《Y● D●●D 》
ぎぎぎぎぎぎ
《全●因適応開始、上記〇因実績を解除》
《衝撃耐性Ⅰ 圧迫耐性Ⅰ 窒息耐性Ⅰ 炎熱耐性Ⅰ 上記耐性を獲得》
がちゃん
《
「えっ」
突然、目が開いた。
部屋、じゃない。
ベッドも、机も、なくなって、いや、燃え尽きている。
全部が燃えくず、黒焦げ。さっきまで寝ていた寝室が、無くなっている。
燃えている。崩れている。
俺は、崩れた家の下敷きになっていた。
奇跡的に無事だったのか? 存外冷静なまま、家の残骸の隙間から這い出る。
「なんだ、これ……」
俺の家を焼けた巨大な岩石が潰していた。
俺は直撃を免れたらしい。じゃないと、とっくに死んでいるはずだ。
時刻は真夜中。
皮肉なまでに綺麗な星空だ。三つ子の月が大きく星の海に浮いている。
「……何が、起きた?」
ここは、カレル行商街。
今はまだ竜暦200年。灰クソ本編開始前の時代。
まだ、なんのイベントも起きる訳がない。
息が、荒くなる。
街はずれ、街を見下ろせる丘へ向かう。
大丈夫、きっと大丈夫、何も起きていない、何も起きない、起きる訳がない。何も何も何も何も何も──。
「……え」
丘から一望できる、行商街カレル。
夜空に赤い光が映る。
それは、炎だ。黒い煙と赤い炎、そして、人の悲鳴──。
街に広がる炎。
翼をもつ魔物が舞い、建物には薄汚い魔物が張り付き、魔物の嗤い声と、人々の悲鳴が重なる。
魔物の集団による街の襲撃──灰クソの偶発イベントの1つ……。
「
ありえない……!
灰クソ本編開始前に、カレル行商街でスタンピードが発生するだと……!?
こんなイベント、俺は知らない……!
「どう、して……」
ありえない、なんで、俺は、こんなの、知らない。
街が、燃えている。
カレル行商街が火の海に包まれている。バイト先の貴族街も等しく瓦礫の山に代わっている。
街を進む。
家庭教師をしていた少女達はどうなった? ライス君達はどうなった? そうだ、ニア。ニアを探さなければ……。
彼女は灰クソの主人公だ。
本編が始まる10年後まで、彼女は死なない。
彼女と会えば、なんとかなるはず、だ。
深呼吸だ。
とるべき行動を取れ。感情と行動を切り離せ。
家庭教師先の少女達の安否、確認する術がない。
貴族街は丘から見た所、より激しく魔物に襲われている。
無策で向かえば、間違いなく死ぬ。
却下。
必要なのは、戦力と情報だ。
まず目指すは冒険者ギルド。今、最も安全な場所は冒険者が集う場所だ。
ニアもライス君もそこにいる可能性が高い。貴族の少女達も避難している可能性もある。
よし、落ち着いてきた。
動けるな、リヒト・テトグマン。
冷静に行動しろ、焦れば全部終わるんだ。
「クソ、一体、何が起きている……!?」
俺は街を進む。
ああああああああああああ、ァァ、嗚呼ァァァァァァァァ!!
叫び声、人の声だ。
それに混じってこの世のものではないナニカの叫び声も響き続ける。
真夜中なのに、街に広がる炎や魔力の輝きで周囲は明るい。
瓦礫の山、死骸の香り、血痕、炎。
死骸。人間の死体が、街の至るところに転がっていた。
俺は、魔物が少ない道を選び、時に隠れながら街を進み続ける。
魔物の種類が、多すぎる。
ゴブリン、ハーピー、グリフィン、オーガまで……まるで、軍隊か何かだ。
街が、殺されていた。
ごおおおおおおおん、ごおおおおおおおおおん。ごおおおおおおおおおん。
響く鐘の音は街の断末魔のようだ。誰かが危険を知らせる為に鳴らし続けてくれている。
大通り、レンガの建物達はそのほとんどが炎上していた。
「ここは……あっ」
思わず、足を止める。ああ、そうだ、この場所は、冒険者ギルドの近くにあったっけ。
忘れる訳がない。何度も招かれた食事会。
駆ける思い出、だが、やめろ、やめてくれ。
こんなのは、ゲームだけでいい。
灰が舞う。俺の生まれた世界が、生きていた世界が終わっていく。
焼け崩れた、建物。
辺りには、雑貨の残骸のようなものが飛散している。
辛うじて、読める焦げた看板に書かかれた文字。
【雑貨屋ライスショップ】
何故か、今、今更。そのゲームのキャッチコピーを思い出した。
「なんだよ、この世界……!」
絶望を──叫べ。
「この世界は、一体、なんなんだよ!!!!!」
《灰と絶望のダークファンタジー・クライシスソウル》
「GOBRRRRR]
魔物だ
くちゃ、くちゃ、くちゃ。ゴブリンが、何かを食っている。くちゃ、くちゃ、くちゃ。
3匹のゴブリンが、残骸になった雑貨屋のすぐそばで、首のない人間の死体を手で千切りながら食べていた。
首のない死体は2つ。
女性の死体と、それに折り重なっている死体。
「「もっちゃ、もっちゃ」」
死体はライス君のお母さんと同じ服だ。
死体はライス君と同じ服だ。
「ちゅぱ、つぱ」
飼い犬であるロボと同じデザインの首輪、それをしゃぶっているゴブリンもいる。
「「「ゴブ?」」」
大柄なゴブリンと、目が合った。
ぽいっと、齧っていたボールのようなものをゴミのように投げ捨てる。
それは、ライス君と同じ白い髪の人間のあたまああああ「ああああああ、あああああああああああああ。あああああああああああああ!!」
ごぽり。腹の底、熱、血管を通して全身に広がる熱。
どうすれば、いい。この熱を、早く逃がさないと、死んでしまいそうだ。
敵だ。
目の前で、息をしている事すら不快な生物がのうのうと生きていやがる。
「GOB」
「ごおおおぶ」
「げれれれ」
どうすればいい。俺はこの生き物をどうすべきだ。
勝てないぞ、勝てないぞ、この世界では男は魔物には――。
「黙れ」
考えるまでもない。
灰クソで、クソムカつく化け物を俺達死にゲープレイヤーがどうするかなんて決まってる。
勝てる勝てないなんて、そんな低次元の話は存在しない。
「殺す……」
その言葉は、驚くほど簡単に口から零れた。
そうたとえ、勝てない相手だとしても。
「ぶっ殺す」
今、俺が何よりもすべき事、成すべき事は。
「絶対に、ぶっ殺してやる」
こいつらの息の根を一刻も早く止める事だ。
あとがき
犬の生死については信じてほしいです。