【全文】TCGアニメ2期ラスボス女に憑依した時の初見シーズン対面について【無料】   作:アマルティア・テーベ

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基本的には有利な相手。先手取られて3連続で《ドレイン・ブラッド》捲られるとか、《バレットマスター》を2ターン連続で出されるとかしない限りは基本的に押し勝てる。
【重要カード】
《グリム・エフェクト》はなるべく温存を推奨。
《リヴァイアサン》が出ればほぼ勝ち。
相手の練度次第では【奪取】持ちの大型で殴ってるだけで勝てたりもする。


・VS【魔弾】 先手:有利 後手:微有利

 

 ドレッドヘアを揺らす黒人のハンターはニコニコ笑いながらこちらへ近づいてくる。気さくなその笑みはまるでダンスの誘いでもするかのようだが、彼が私の命を脅かすために送り込まれた存在であることは間違いない。

 

「……どちらさまで?」

「あんたを恨んでるやつからの依頼、とだけ言っておくぜ。動けなくして連れてこいってさ!」

「まあ、そうでしょうね……それで、殴り合いですか?」

「HAHA!そんなの野蛮な上にキリがないじゃねえか。こいつだよ!分かってるくせに、可愛い顔してとぼけてくれるじゃねえの」

 

 陽気な黒人はデッキと腕輪を見せつけてくる。

 そう、ここはカードゲームアニメの世界。大体の事柄はカードで決まる。

 

「ウィザーズ・バトル!」

「……ウィザーズ・バトル」

 

 加えて『私』の場合、敗北は死かそれに準ずる結末を意味する。この襲撃者の依頼人は間違いなくカタギではないだろう。公権力よりも先に私を確保し、何かしらの目的を果たしたい者。報復、実験、見せしめ、エトセトラ。選択肢にはキリがない。

 

「オープン!タクティクスは《引き金と魔弾》!」

「オープン…《血と罪を束ねし契約書》」

 

 

・ウィザーズ・オブ・ウィズダムは20点のライフを互いに削り合うカードゲーム。決着条件は「ライフ0」「ドロー時にデッキ0」「カード効果による勝利・敗北」の3つ。

 

・プレイヤーは初期手札として5枚ドローをするが、ゲーム開始時にタクティクスと呼ばれる種類のカードを公開することで初手の1枚として扱い4枚ドローを選択することもできる。

 

・コストの支払いはゲーム開始時に2、そして基本的に1ターンごとに1山札から追加できるエナジーを用いて行う。カードのコストを支払う時、同じ数のエナジーを消耗させてコストを支払う。

 

・エナジーの追加とは、エナジーゾーンにカードを表向きで配置することを意味する。ターンの開始時、コストの支払いに使用して消耗したエナジーと場の消耗したユニットは全て励起する。

 

 ……ここまではかつて私がプレイしていたものと差はない。

 

 だが。視覚的には大きく異なる。卓上遊戯では収まらないのがこの世界のウィザウィズだ。

 ホビーアニメ特有の謎の超技術により、持ち運びできるサイズの精巧なホログラム投射システムが互いのカードを表示する。互いのライフが空中に表示され、ゲームが始まる。先行は──相手。

 

(相手のタクティクス……【魔弾】か。先手を取られてしまいましたが、どうなるか)

 

「俺の先行!エナジーフェイズにエナジーを追加し、メイン!3コスト支払い早速解放するぜ!タクティクス《引き金と魔弾》!」

「まあ…そうなるでしょうね」

 

 男の背後に浮かぶ無数の銃。

 リボルバー、狙撃銃、大砲、ガトリングガン……いくつものそれらに共通するのは「弾丸」。

 

 タクティクスカードは初手で見せるだけでは意味がない。コストを別途支払って解放する必要がある。

 【魔弾】は生物…ユニットとスペルカードの弾丸を組み合わせて戦術を組み立てるデッキ。タクティクスの《引き金と魔弾》が戦術の根幹になる。

 

《引き金と魔弾》

タクティクスカード コスト3

魔弾

◾︎【誘発】あなたのメインフェイズの開始時に、デッキの上から魔弾属性を持つスペルカードが出るまでカードを公開し続ける。最初に公開されたスペルをこのカードの下へ置き、残りを山札へ戻しシャッフルする。7枚以内に公開されなかった場合、あなたはゲームに敗北する。

◾︎【誘発】魔弾属性のユニットが攻撃する時、それがこのターン最初の攻撃なら、そのユニットのコスト以下のコストを持つスペルをこのカードの下から1枚墓地へ置いてもよい。そうしたら、そのスペルを発動する。

(タクティクスカードはあなたのメインフェイズにコストを支払うことで解放できる。ゲーム開始前、タクティクスカードは裏向きで伏せておきゲーム開始時に公開する)

 

(捲れが噛み合えば殴るだけで毎ターン1アド……強制敗北のリスクも、構築を寄せればないようなもの)

 

 対面の戦術は高速アグロ。タクティクスのコストが3と軽く、1ターン目から解放してこちらへ圧をかけてくる。

 そして私の【大罪】はと言えば…重量級タクティクスを解放するために序盤を耐え凌ぎ、中盤から後半にかけて高コストのパワーカードで相手を制圧する。いわゆるミッドレンジになる。だがコストでライフを大きく減らすことが多い【大罪】にとって、豊富な本体火力…ライフに直接ダメージを与える手段を有する【魔弾】相手は楽勝とはいかない。

 

 アグロに先手を取られ、そして今の手札には加速札──エナジーを追加し、先手後手の速度差を埋めるカードがない。それでも壁になるユニットや除去ができるスペルはあるため、最悪ではない。

 

「ターンを終了するぜ」

「ドロー。エナジー追加。メイン……2コスト《壺の使い魔》を召喚」

 

 腕輪の謎の超技術により、テーブルのように形成された半透明の力場の上にカードを置く。

 

サラ手札6→5

 

《壺の使い魔》

2コスト 0/3

悪魔/土/防御

▪︎【永続】相手のコスト5以下の、ユニットの能力または手札から発動されるスペルカードは、可能な限りこのユニットを対象にしなければならない。

▪︎【誘発】このユニットが破壊された時、あなたは3点のライフを得る。

 

(【大罪】は本領発揮まで時間がかかる。手札に加速札はないし、相手が「あれ」を引けていないと助かるが……)

 

「ターンを終了」

「Yo!随分ガードが固いんだなぁ?」

「臆病なんですよ」

「よくいうぜ!俺のターン、ドロー!エナジー追加し、メインフェイズ!タクティクスの【誘発】だ!」

 

襲撃者

ライフ20 エナジー0→4 手札5→6

 

「よし!《魔弾フェイタル・ゲイル》をタクティクスの下へ置くぜ!そして4コスト《新進気鋭の女傑》を召喚!」

(……引かれてたか。あのマシンガンを……)

 

手札6→5

エナジー4→0

 

《魔弾フェイタル・ゲイル》

2コスト スペル 

風/魔弾

▪︎以下から1つを選ぶ。相手の飛行属性のユニットがいれば、2つ選ぶ。

 ・相手プレイヤーに2点のダメージを与える。

 ・ユニット1体に2点のダメージを与える。それが飛行属性を持っていれば、破壊する。

 

《新進気鋭の女傑》

4コスト 5/2

風/魔弾

◾︎【誘発】このユニットが出た時、手札を1枚捨ててもよい。そうしたら、《速射》という名前のコスト2で「相手のユニット1体かプレイヤーに2点のダメージを与える」という効果の魔弾属性のスペル・トークンを2枚生成し、自身のタクティクスカードの下に置く。(このトークンは使用後、ゲームから取り除かずに墓地にとどまる)

◾︎【誘発】このユニットが攻撃する時、あなたのエナジーが5枚以下なら、あなたの墓地からコスト4以下の魔弾属性のスペルカードを全て除外し、手札を全て捨ててもよい。そうしたら、捨てた手札の枚数まで除外したスペルカードを可能な限りコストを支払わずに使用する。

 

「能力!手札を1枚捨て、スペルトークンを2枚生成する」

「思い切りの良いこと」

「はっ、このデッキは臆病もんにゃ使いこなせねえからな!」

 

 《女傑》は優秀な攻め札だ。タクティクスの下に魔弾を水増ししつつ、手札を全て捨てる重いコストと引き換えに大量のスペルを踏み倒すフィニッシャーにもなる。

 

手札5→4

《引き金と魔弾》(下に《魔弾フェイタル・ゲイル》《速射》《速射》)

 

 【魔弾】は高速アグロ・ビートダウンに分類される。タクティクスの踏み倒し効果をオーバーパワーにしないためか、高コストカードは意図的に少なくされているテーマだ。

 

「バトル!《女傑》でプレイヤーを攻撃!その時タクティクスが誘発するぜ、手札から使われてないカードをそいつは吸い寄せられねえだろ?」

「……よくご存知で」

「トークンの《速射》を墓地へ置きプレイヤーに2ダメージ!」

「…っ。攻撃は《使い魔》でブロック」

 

 このゲームに「召喚酔い」や「ブロッカー」といった要素はない。何か特殊な能力がない限りユニット全ては出たターンに攻撃できるし、相手の攻撃をブロックできる。

 《速射》により虚空から弾丸が私を撃つ。僅かな衝撃と共に、私の身体が数センチ後退する。

 

サラ

LP20→18

《速射》→墓地

《壺の使い魔》→破壊

 

「よしっ!ファーストダメージは俺のもんだ!」

「《使い魔》の効果でライフを3点回復」

 

LP18→21

 

 《壺の使い魔》はライフゲインで序盤を支え、中盤以降も軽量の除去や妨害効果を吸い寄せることでこちらの戦略を助けてくれるカード。だが【魔弾】のタクティクス下から使われるスペルはそれをすり抜けてしまう。

 かつてプレイしていた時はなんとも思わなかったが……いざリアルに見てみると、こちらにサムズアップしてライフ回復をもたらしながらチリになっていく姿にほんの少し心が痛む。

 

(引きは悪くない……が、加速札が来ない。耐えて、押し潰すか)

 

「俺はターンエンドだぜ」

「私のターン。ドロー、エナジー追加、メイン……3コスト《魔炎》」

 

《魔炎》

3コスト スペル

悪魔/炎

▪︎相手のユニット1体に3点のダメージを与える。あなたのライフが相手より5点以上少なければ、かわりに6点のダメージを与える。10点以上少なく、あなたのタクティクスが解放されていれば、相手プレイヤーにも3点のダメージを与える。

 

手札5→6→5

 

 手札にまだエナジー追加させる加速札や、アドバンテージを稼げるカードが見えない。今はひとまず、相手の攻めを挫き続けるしかない。

 

《新進気鋭の女傑》→破壊

 

「Oh!マイハニー!」

「ターンエンド」

「俺のターン!ドローしエナジー追加、メインフェイズ!タクティクスの【誘発】だ、どれどれ……Excellent!《魔弾ドレイン・ブラッド》!」

 

襲撃者 手札4→5

 

《魔弾ドレイン・ブラッド》

4コスト スペル

魔弾/悪魔

▪︎相手のプレイヤーまたはユニットに4点のダメージを与える。あなたの魔弾属性のタクティクスが解放されていれば、あなたは4点のライフを得る。

 

「ドレイン・ブラッド…面倒な」

「凶悪なタマだぜ。5コスト払って《熟練の固定砲台射手》を召喚!効果で2枚目の《新進気鋭の女傑》を手札に加える!」

(……げっ)

 

 うわ、ちょっと不味い。

 

手札5→4→5 エナジー5→0

 

《熟練の固定放題射手》

5コスト 5/4

魔弾

▪︎【誘発】このユニットが出た時、あなたのデッキから魔弾属性でコスト4以下のユニットを1枚選び、手札に加える。

▪︎【永続】あなたの魔弾属性のスペルによって与えるダメージは1増える。

 

(《ドレイン・ブラッド》は特に効率の良いダメージスペル…おまけに《女傑》までサーチされたか。本格的にこちらのライフが危ない)

 

「攻撃!《固定放題射手》の攻撃時に、《魔弾ドレイン・ブラッド》!お前に5点のダメージを2発お見舞いだ!」

「……どちらも通ります」

(……エナジー加速よりも延命を優先しないといけないな、これは)

 

 赤い魔弾と重たい弾丸が一発ずつ私を襲う。

 

アリア

LP21→16→11

 

《魔弾ドレイン・ブラッド》→墓地

 

 

・プレイヤーのライフ上限は20点。カードの効果で上限値を操作しない限り、プレイヤーはそれ以上のライフは保持できない。

 

 

「ターンを終了するぜ」

「私のターン。ドロー、エナジー追加、そしてメイン」

 

サラ エナジー0→5 手札5→6

 

(ライフはそろそろ危険域。やはり【魔弾】に先手取られるときつい)

 

 【大罪】は立ち上がりが遅い。早いアグロにマウントを取られてあっさり死ぬ…ということもないわけではない。

 

 もっとも現実のウィザウィズ環境では汎用パワカの搭載によりそんな弱点も解決していたのだが……今のデッキにはそういった汎用カードは存在していない。

 だからこそエナジーを追加できるカードで少しでも早く高コストのユニットをプレイできるようにしなければならないが、今回は噛み合いが悪い。

 

「《射手》に《魔炎》を。条件を達成しているため6ダメージ。そして《壺の使い魔》を出して、ターンを終了」

 

《熟練の固定放題射手》→破壊

 

手札6→4

 

「おっと、やられちまった…だが、まだまだ俺の攻めは途切れねえ!ドロー!エナジー追加はしねえ」

 

襲撃者

手札5→6 エナジー追加なし

 

 このゲームにおけるエナジーとは、いつまでも湯水のように湧いてくれる物ではない。

 

 

・エナジーが5枚以上あるプレイヤーは、エナジーフェイズでのエナジー追加が山札からではなく手札からになる。

 

 

 このゲームの重要なルールである。故にこのゲームにおけるアグロデッキはコスト5以下のカードが中心となる。

 

「メインフェイズ!【誘発】で捲れるのは……!なんてこったい、《魔弾リトル・フラッシュ》だ……」

 

《魔弾リトル・フラッシュ》

1コスト スペル

魔弾/支援

▪︎相手のユニット1体に1点のダメージを与える。このターン、それはブロックできず、【起動】を使えない。

 

 単なる1コストスペルの追加に過ぎない。確かに純粋なカードパワーという面では低めだが……アグロの攻めを補助するカードとしては上等だ。なによりあのタクティクスは、攻め続ければ無からアドバンテージを稼ぎ続ける。

 

(……【魔弾】はこれが強い)

 

 ぽつりと内心で呟く。

 エナジーが少ないということは、1ターンに取れる選択肢が少ないということ。アグロデッキは必然的に取れる行動の選択肢が狭くなる。

 だが【魔弾】のタクティクスである《引き金と魔弾》は、スペルの踏み倒しにより行動回数を増加させている。装填される魔弾は運任せとはいえ、手数の多さは明確な力だ。構築を寄せるだけの価値があるハイスピード・ビートダウン。それこそが【魔弾】。

 

「4コストで《新進気鋭の女傑》!《速射》を2枚生成!そしてアタックだ!」

 

手札6→4

 

《引き金と魔弾》(下に《フェイタル・ゲイル》《リトル・フラッシュ》《速射》《速射》《速射》)

 

「アタックフェイズ開始時に《グリム・エフェクト》を代替コストで発動。《壺の使い魔》を破壊」

 

アリア

手札4→3

 

《グリム・エフェクト》

3コスト スペル

悪魔/ネクロ

◾︎あなたはこのスペルのコストを支払うかわりに、あなたの悪魔属性のユニットを1体破壊することで使用してもよい。

◾︎このターンと次のターン、あなたが受ける5以上のダメージを2点になるまで軽減する。あなたのライフが10以下なら、かわりに全てのダメージを1点になるまで軽減する。

 

 《使い魔》の身体が弾け飛び、チリになって漂う。血生臭いこのバリアが、私を襲うダメージを減衰させる。このままでは《リトル・フラッシュ》で《使い魔》のブロックを封じられ、《女傑》の攻撃でライフを大きく削られてしまう。ならばこのスペルによって、回復と軽減を同時に行うべきだ。

 

「《女傑》の攻撃力は5。よって攻撃でのダメージは軽減。さらに《使い魔》で3点回復」

「チッ、だがタクティクスで《速射》を墓地へ置き2ダメージだ!」

「……っ」

(……しくじった。攻撃宣言に対応して使えば、《リトル・フラッシュ》は無駄撃ちさせられて、ライフも2点多く残せた……)

 

アリア

LP11→14→12→10

 

 明確なプレイミス。これはとても恥ずかしい。まだ寝ぼけているのだろうか、私は?

 

「私のターン……ドロー。そして手札をエナジーに追加」

 

サラ エナジー5→6

 

 ……来た。加速札ではないが、この盤面ではありがたい軽減札が。

 

「スペル、《デビルズ・ワイド・マジック》。これにより、私のタクティクス解放コストは3減少」

 

 

《デビルズ・ワイド・マジック》

スペルカード コスト1

悪魔/チャージ

▪︎このターン、あなたの悪魔属性のタクティクスを解放するコストは2減る。あなたのライフが相手よりも少なければ、さらに1減る。

 

 

「ほお?ってことは、来るワケか」

「4コスト支払い、タクティクス解放──《血と罪を束ねし契約書》」

 

 私の背後に浮かび上がる巨大な契約書。強大な悪魔を呼び起こし、術者と縛り付けるための契約。

 羊皮紙に刻まれた赤いインクが何か、なんて。口にするまでもない。

 

《血と罪を束ねし契約書》

タクティクスカード コスト7

大罪/悪魔

▪︎【誘発】各ターンに1度、あなたがライフを支払った時、カードを1枚引く。

▪︎【誘発】各ターンに1度、あなたの悪魔属性のユニットが破壊された時、1点のライフを支払ってもよい。そうしたら、そのユニットを手札に戻す。

▪︎【永続】あなたは【大罪】を持つユニットを何体でも場に出すことができ、【大罪】を持つユニットを使用するコストが3減る。

 

「へっ、恐ろしいタクティクスだ…だが、そっちのエナジーはもう1!これ以上何ができる?」

 

 何かできてしまう。それがこのデッキだ。

 既に、準備は整っている。

 

「スペル《罪深い継承》。《契約書》が解放され私のライフが10。よってコスト0で使用」

 

《罪深い継承》

コスト4 スペル

大罪

◾︎あなたの大罪属性のタクティクスが解放されていて、このゲーム中に《罪深い継承》を使っておらず、あなたのライフが10以下なら、このスペルのコストは0になる。

◾︎直前のターンまたはこのターンにあなたのユニットが破壊されているなら、あなたの山札の上から、あなたのエナジーと同じ枚数見る。そうでない場合、3枚見る。その中から【大罪】を持つユニットを1枚公開して手札に加える。

◾︎相手の最も攻撃力の低いユニットを1体選ぶ。あなたのエナジーをそのユニットの攻撃力分励起させる。

 

 

「《使い魔》が破壊されているため、山札の上から6枚を確認…《混沌の蒼炎 アスモデウス》を手札に。《女傑》の攻撃力分、5エナジー励起」

「んな…!?0コストのスペルがエナジーまで!?イカれてやがる!」

 

エナジー0→5

 

 ほんとだよ、と私は内心で頷いた。

 

 競技環境の【大罪】の強さの半分くらいはこのカードにあったと思う。普通に使っても強いのになんでコスト0になるんだろうか?条件はギチギチとはいえ、せめてコスト0になるならエナジー励起効果はつけちゃダメだと思う。

 《血と罪を束ねし契約書》が重量級タクティクスのため、その隙を補おうというカードなのだろうがどう考えてもオーバーパワーだ。正直言って死んだ方がいいと思う。

 

 イカれている。が、間違いなく強い。カードゲームアニメにおいて、これほどの頼もしさもない。だって現在進行形で命を狙われている身の上なのだから。

 

「だが…回復したエナジーは5!さっき手札に加えたそいつは6コストだろ?足りてねえぞ!」

「《契約書》により【大罪】ユニットのコストは3減っています。──出でよ」

 

 カードを放つ。

 次の瞬間。襲撃者も、私も、呆然と空を見た。

 

「な、ん……SUN?」

 

 なんて悍ましい太陽だろう。

 巨大な炎塊が、異様な色の熱エネルギーが、頭上から落下してくる。投影されたビジョンとは思えない威圧感。

 これこそが七瀬サラのエースユニット。

 私が昨晩シークレット版を注文し、恐らくはこの身体に憑依するきっかけとなったカード。

 

 すらすらと、まるで私ではない何かに突き動かされるように口が動く。

 

「大罪の使徒よ。我が命と罪を火種に、煌々と燃え上がり世界を穢せ」

 

 全てを飲み込む、青く黒い炎。

 

「《混沌の蒼炎、アスモデウス》」

 

 世界を焼く炎。

 球体が弾け、魔人の形になったそれが咆哮した。

 

「────ッ!!」

「what!?」

 

 襲撃者のフィールドが焼かれていく。

 アスモデウスがいる限り、相手のユニットは常にこの青い炎に焼かれ続ける。

 

《混沌の蒼炎、アスモデウス》

コスト6 6/6

炎/悪魔/大罪

▪︎【大罪】(この名前のユニットはデッキに1枚しか入れられず、他のあなたの【大罪】を持つユニットがいる場合、場に出せない)

▪︎【誘発】このユニットが出た時、カードを2枚引く。

▪︎【誘発】このユニットが出た時、または各ターンの開始時、相手のユニット全てにターン終了時まで-2/-0補正を与える。

▪︎【起動】《コスト》いずれかのプレイヤーのエナジーが7以上なら、ライフを半分支払う:このターン、このユニットは破壊されず、相手のユニット全てと相手プレイヤーに同時に攻撃しダメージを与える。あなたのライフが6点以下なら、このユニットはターン終了時まで+6/+6補正を受ける。この能力はゲーム中1度しか使えない。

 

「こ、こいつがウワサの…!」

「2枚ドロー。そしてフェイズを移行」

 

 にぃ、とアスモデウスが笑う。炎の触手を翼のように束ねた魔人が、飛んだ。炎剣を手にした魔人はだらりと腕を振るい、斬撃を放つ。

 

「プレイヤーへ攻撃」

「ぐ、おォォォォ!?」

 

襲撃者 ライフ20→14

 

 相手が派手に吹っ飛んでいく。ビジョン投影機能を持った腕輪を介したウィザウィズの対戦では多少の衝撃は付きものだが、これは明らかに異常だ。

 これこそが七瀬サラの異常性のひとつ。ダメージを増幅させ、衝撃を増大させる力。『パニッシュシステム』と名付けられた衝撃増幅装置と同じことを生身で実現してみせる。

 お相手には気の毒だが、仕方がない。なにせあちらも『パニッシュシステム』によるリアルなダメージを発生させているのだから、同じことをされても文句は言えまい。増強率はこちらが大幅に上だが。

 

「グッ……だが、《女傑》を殴り倒さなかったのはミスだぜ!お前のライフ、削り取ってやらぁ!ドロー!タクティクスの効果は……ぃよし!《魔弾ライト・ジャベリン》!」

 

《魔弾ライト・ジャベリン》

コスト3 スペルカード

魔弾

▪︎相手のユニット1体に4点の貫通ダメージを与える。そのユニットが悪魔または天使属性なら、かわりに6点の貫通ダメージを与える。(貫通ダメージがユニットの体力を超過した時、その数値分のダメージを相手に与える)

 

「これでそのバケモンを倒しつつお前のライフも攻められる!さらに俺は《忠実な銃砲犬》を出す!」

 

《忠実な銃砲犬》

ユニットカード コスト4

魔弾

▪︎【誘発】あなたが魔弾属性のスペルを使った時、これはターン終了時まで+1/+1補正を受ける。

2/4

 

「さあ攻撃だ!《女傑》で攻撃する時、タクティクスの下から《魔弾ライト・ジャベリン》をそのバケモンへ!さらに手札を全て捨て、2発の《速射》と《ドレイン・ブラッド》もあるぜぇ〜!?」

 

 リソースをかなぐり捨てた一斉射撃。スペルの多重使用により《銃砲犬》はそのサイズを上げ、無数の魔弾も遅い来る。

 

 全ての攻撃が通れば3+2+2+4の11点ダメージ。そして攻撃力6の《銃砲犬》の追撃が来る。私のライフは10点。これではひとたまりもない。

 

(まあ通りませんがね)

 

 アスモデウスによって潤沢になったこの手札には、エナジーを使わない防御札がある。私の命を確実に繋ぐためのカードが。

 

「スペルを使用──《グリム・エフェクト》」

 

 アスモデウスの肉体が弾ける。青黒い塵が、私を襲う衝撃を全て減衰させる。

 光の槍は行き場を失い、《女傑》のマシンガンは私の命を削るが、決して殺しきれない。

 

サラ ライフ10→9→8→7→6

襲撃者 ライフ18→20

 

「《アスモデウス》を破壊して使用し──私のライフは10のため、このターン私に向かう全てのダメージは1点に軽減されます」

 

 私の有利はもはや揺るがない。

 

「アスモデウスが破壊されたことにより、《血と罪を束ねし契約書》の能力が誘発。1点のライフを支払い、アスモデウスを手札へ。さらにライフを支払ったことにより、《契約書》で1枚ドロー」

「お、俺の必殺の一撃を……なんて涼しい顔で躱しやがる!し、しかも今死んだ筈のそいつ、また手札に……!!」

 

サラ ライフ6→5

 

 これぞ【大罪】の真骨頂。強力なスペックを持つかわりにデッキに1枚ずつしか入れられない【大罪】のユニットたちを、タクティクスの効果で何度も使い回す。相手はやがてその対処が不可能になり、じりじりと敗北に近づいていく。

 

「だ、だがまだゲームは終わっちゃいねえ!俺は…これでターンエンド!」

 

 そう。《女傑》でも《ドレイン・ブラッド》でも何でもいい、魔弾属性のユニットでもいい。ダメージソースになるカードを引ければまだ逆転の可能性はある。私のライフはたったの5。《グリム・エフェクト》はもう手札に残っていない。勝機はある。

 

 彼のライフが残り、次のターンがくればの話だが。

 

「ドロー。エナジーを追加」

 

サラ エナジー6→7

 

 ピースは揃っている。

 

「再び出なさい。《アスモデウス》」

「──ッッ!!」

 

 先ほどよりも大きな咆哮。

 エナジーの魔力が満ち、私の命が削れ、己にとって最も都合の良い戦場がそこにあることを理解しているのだ、この魔人は。

 

「では、幕引きとしましょう」

「……俺のライフは18点。それを、このターンで削り切ろうってか?そっちのエナジーはあと3しかねえのに?」

「はい」

 

 襲撃者の瞳に油断はない。とはいえ手札を全て使い捨てた彼には抵抗の手段はない。

 見せちゃいましょう、アニメ再現スーパー・ロマン・コンボ。

 

「2枚のスペルを使用。《混沌の織炎》《コロナフォース》」

 

《混沌の織炎》

1コスト スペルカード 

悪魔/大罪

▪︎あなたのユニット1体を選ぶ。このターン、それに【奪取】を与える。そのユニットがカード名に《アスモデウス》を含むなら、それはこのターン「このユニットの与えるダメージは軽減されない」と「相手のユニットが離れた時、相手に2点のダメージを与える」を持つ。(【奪取】を持つユニットがダメージを与えた時、その点数分ライフを回復する)

▪︎【リチャージ2】各ターンの終わりに、2コストと1点のライフを払い、手札のこのカードを捨ててもよい。そうしたら、1枚引く。

 

《コロナフォース》

2コスト スペルカード

炎/悪魔

▪︎以下から1つを選ぶ。

・このターン、あなたのユニット1体に+3/+3補正を与える。

・ユニット1体に3点のダメージを与える。

 

 これこそがアニメの《アスモデウス》初登場回に披露された、3枚のカードによるスーパーコンボ。相手依存とはいえ、20点のライフを一度に全て焼き尽くすこともできるすごくすごいコンボなのだ。

 

「これにより私の《アスモデウス》は【奪取】とさらに2つの能力を得てパワーアップしました」

「攻撃力9…だがそれじゃ俺は倒せねえぜ…!」

「そうですねえ。では、こうしましょう」

 

サラ ライフ5→3(端数切り上げ)

 

「【起動】。私の命を半分捧げ──アスモデウスへ+6/+6補正を与える。そして、このターン決して破壊されず、攻撃は相手ユニット全てとプレイヤーへの同時攻撃になる」

「……は?攻撃力……15?」

 

 アスモデウスの全身から莫大な熱気が放たれる。景色は蜃気楼に歪み、ぶわりと汗が噴き出す。

 唖然とする襲撃者をよそに華麗に1枚引き……私は堂々と指を指す。

 

「攻撃」

「《銃砲犬》でブロック!……でき、ねぇ!?何故……ま、まさか!」

「お気付きになりましたか?」

「……俺と、俺のユニット全てを同時に!つまり……」

「あなたのユニットはこの攻撃をブロックすることができない」

 

 ブロックするための肉壁が何枚あろうとも。ルール上、この同時攻撃は防げない。戦闘を複数回行う以上、ダメージは蓄積するがこのターンはアスモデウスは不死身だ。

 

 アスモデウスは巨大な炎塊へと姿を変えて高く飛んだ。そして、音を置き去りに真っ直ぐに落ちた。

 《女傑》を、《銃砲犬》を、そしてプレイヤー本人を焼き尽くしていく。

 

襲撃者 ライフ18→3

サラ ライフ2→20

 

「グォォォ!?」

 

 派手に吹っ飛び、襲撃者の身体は隠れ家の壁に強く叩きつけられる。私はと言えば、一度に30点分ものライフを回復したことで一気に身体に生命力が溢れてくる。ああ、実に気分がいい!口がよく回る!

 

「だ……だが、まだ、俺のライフは……」

「残念。《混沌の織炎》により得た《アスモデウス》の能力は、【奪取】だけではありません」

「……は?」

「今、この子は相手のユニットが離れる度、1体につき2点のダメージをあなたへ与えます。……分かりますか?1体につき、2点ですよ?」

「……マジかよ」

「貫け、アスモデウス」

 

 炎の触手が二本、挟み込むように伸ばされる。

 当然、防ぐ手立てはなく。そのまま襲撃者を貫いた。

 

襲撃者 ライフ3→1→-1

 

 襲撃者は意識を失いその場に崩れ落ち、私は得体の知れない高揚感に包まれていくのを感じた。ああ、勝利の美酒とはこのことか。なんか、こう、えげつない量の脳内麻薬が出ている気がする。

 

 私は豪快に笑って勝鬨を上げるアスモデウスをBGMに、ひとしきりこの世界で初めてのリアルなバトルの快感と勝利に酔い痴れて──ふと、手札を見た。

 

 

「……これだけドローしたのに《バラム》も《デビルズ・ウィズダム》も引けないとは……困りましたねえ」

 

 

 ──引ければもっと楽に、危ない橋を渡らずに私を勝たせてくれたであろうカードたちを引けなかったことに、どうしようもない不安を感じる。

 

 勝ちは勝ち。それでも……ちょっとギリギリじゃないだろうか?




ウィザウィズQ&A

Q.「ゲーム中に一度しか使えない」とはどういうことですか?
A.そのカードを複数回場に出しても、ゲーム中に一度しかその能力を使うことができません。何らかの手段で場を離れたカードをもう一度場に出しても、既にその能力を使っている場合は使用できません。
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