【全文】TCGアニメ2期ラスボス女に憑依した時の初見シーズン対面について【無料】   作:アマルティア・テーベ

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無限コンボと《ドラクル》の能力に気を付けておけば基本的には問題なし。
《重要カード》
《グリム・エフェクト》はダメージ軽減というより0コストの自壊スペルとして運用すること。《ドラクル》から解放しつつ《契約書》での回収に繋げられるとベスト。
《ベルゼブフ》が出れば相手の無限コンボでの勝ち筋はなくなるため、最優先で探すこと。


・VS【貴血】有利 part1

 

 酒場の扉を押し開ける。

 薄暗い空間の中に人の気配はない。それもその筈、今はまだ営業時間ではないからだ。

 だが、私はそこにいる者を知っている。

 

「こんにちは」

 

 人間離れした、という表現が最も似合う男がそこにいた。真っ白い肌と色素の薄い金髪。年齢は三十代半ば程に見える。……彼を人間とするならば、の話だが。

 吸血鬼を思わせるその男は、腕を組んだまま瞳を閉じて酒場の中心に立ち尽くしている。こちらに気付いていないのか、気付いている上で無視しているのだろうか?

 

「……何者だ?まだこの館は目覚めてはおらぬ。饗宴を望む者よ、立ち去れ。貴様は今、客人ではないのだから」

 

 芝居がかった言い回し。けれども、そうでなくては不自然なほどにしっくりくる口調。

 今私の目の前にいるのは、数百年もの間イタリアを生き続けるヒトならざる者。暁ジンギとも七瀬サラとも違う、別種のバケモノ。血を啜り、異能を手繰る者。

 瞼が開き、金の瞳が露わになる。寒気がする程美しい。宝石を目に埋め込んだと言われても納得できるくらいに。

 

 ルスヴ・A・ヴォリトリ。

 「出る作品間違えてるだろ」と数多の視聴者から突っ込まれた、不死者のウィザード。「ウィザウィズ」とは別ラインのオカルト存在。

 アニメ2期の登場人物であり、大会パートには出ていないものの実力は極めて高い。迷いの中にいた主人公をそのカードで叩き潰し、リベンジマッチにおいてもギリギリの接戦を繰り広げた男。

 

「カードをお譲りいただきたく、交渉に来ました」

「闘いの中に生きる者か。我が城を訪れるからには……更なる力を求めてのことか」

 

 この酒場を訪れたのには理由が3つある。

 

 1つ目は、私が求めているカード《ブラッディ・リチュアル》の持ち主が店主であること。そのカードを何枚か譲ってもらうべく、どうにかして交渉を行いたい。作中でもルスヴは自らに勝利した者には気前良くカードを与えていた。交渉が成立する可能性は低くない。

 

 2つ目は、ここの店主はよく当たる占い師でもあること。『私』、というか七瀬サラの行く末がどうなるのか。これからどうしていくべきなのか。少しでも情報が欲しい。

 

 3つ目は、ここの店主は七瀬サラに負けず劣らずの変人であり、強固な自己の世界と俗世への無頓着さを併せ持っていること。端的に言えば、私が大犯罪者であっても全く気にせず相手をしてくれるウィザードであること。この男とならば、きっと気兼ねなくバトルができる筈だ。

 

「我との交渉を望むのだな」

「ええ」

「では何を捧げる?生半可な対価では…」

「私の血を」

 

 対価としてルスヴへと差し出せるものなんて、七瀬サラには身体ひとつしか存在していない。

 マフィアの勢力を失い、手元にあるのは僅かばかりの金銭だけ。だが、その程度の対価では彼は交渉には決して応じてくれないだろう。彼もウィザード、端金でカードを売り渡す筈もない。金では決して動かず、暴力で脅そうにも「グッドゲーム・ファミリー」でさえ彼の店には手を出せなかった。

 

 痛みを厭わない覚悟を示さなければ、このバケモノの食指を動かすことはできない。首を傾けて首筋を晒す。噛みつきやすいように。美味い血が流れていると思ってもらえるように。

 

「とびきり罪深い者の血です。あなたのこれまでの時間の中で、一度たりとも口にしたことのない珍味であることをお約束します」

 

 無論、ハッタリだ。

 私の血が味わい深いという保証は全くない。そもそも私に血の美味さ不味さを判別することなどできないのだ。

 機嫌を損ねればそのまま危害を加えられるかもしれない。ルスヴがヒトとは違う価値基準で生きている存在であることはアニメの描写でも明らか。

 

 それでも──リスクを背負わなければ、きっと私は生き残れない。理屈ではなく直感でそれが分かる。

 少しの沈黙の後、ルスヴは静かに笑った。バーカウンターに置かれていた腕輪を装着し、こちらを指差す。

 

「罪深き者よ。その輝き、闘いの中で魅せてみるがいい」

「……お望みの通りに」

 

 ウィザーズ・バトル。静かに、二人がカードを手に取る。

 

「《気高き誓い》」

「《血と罪を束ねし契約書》」

 

 先行は──私。そして運が良いことに、デッキに4枚しか入っていない3コストのエナジー加速札が初手にある。

 

「ドロー。エナジー。メインフェイズ。《デビルズ・デトネーション》。エナジーを追加して、ターンを終了」

 

サラ 手札5→4 エナジー3→1/4

 

《デビルズ・デトネーション》

スペルカード コスト3

悪魔/チャージ

▪︎あなたの山札の上から1枚をエナジー化する。その後、あなたのライフが10以下なら、カードを1枚引く。

 

 ……悪魔属性のスペルだから採用しているが、性能そのものは旧時代的だ。それもその筈、これはウィザウィズ第1弾の収録カード。今の3コスト加速札には当たり前のようにこれ以上のオマケがついている。

 

「我のターン。ドロー!エナジー追加!そしてメインフェイズ。《ブラッディ・リチュアル》!!」

 

《ブラッディ・リチュアル》

スペルカード 3コスト

貴血/チャージ

▪︎あなたの手札からユニット1枚を捨てる。そうしたら、あなたの山札の上から1枚をエナジー化し、カードを2枚引く。

▪︎あなたのコスト5以上の貴血属性のユニットが破壊された時、あなたの貴血属性のタクティクスが解放されていれば、これを手札に戻す。

 

 ……これが、現代基準のエナジー追加札のスペックである。手札交換をしながらエナジーを追加し、【貴血】で運用すれば無限に手札に戻る。誰が使っても強く、実家で使うとさらに強いお手本のようなパワーカード。当然ながらシングル価格も暴騰し、酷い時は【貴血】のデッキ価格の半分を《ブラッディ・リチュアル》4枚が担っていた。

 

ルスヴ 手札5→3→5

 

「《魔杭公ヴラド・ドラクル》を捨ててエナジー追加、2枚ドロー!我はこれでターンを終了する」

(便利すぎる……しかもここから《サイレントデス》にそのまま繋がるし……)

 

 羨ましい。欲しい。ものすごく欲しい。

 無料のエナジー追加だけでは5コストが上限となるウィザウィズにおいて、5コストには強いカードが集中しやすい。3から5へのジャンプアップはかなり重要になる。私のデッキにも強い5コストのカードは多い。

 だからこそ、《ブラッディ・リチュアル》が欲しい。七瀬サラは毎回《デビルズ・デトネーション》を引けていたが、今の『私』はそうではないのだから。

 

「私のターン。ドロー。エナジー、メインフェイズ……《調停の叡智、バラム》」

 

サラ 手札5→4 エナジー5→0→1/6

 

 三つの仮面を身につけ、蛇の尾を生やした悪魔が私を守るように現れる。

 

《調停の叡智、バラム》

ユニットカード コスト5

悪魔

▪︎【誘発】このユニットが出た時、あなたの山札の上から1枚をエナジー化する。相手のタクティクスが解放されているなら、カードを2枚引いて1枚捨てる。

▪︎【永続】相手のコスト6以上のユニットは、出たターンには攻撃できない。

▪︎【起動】《コスト》励起状態のこのユニットを消耗させる:手札または墓地のコスト4以下の悪魔属性のスペルカード1枚を除外してもよい。そうしたら、そのスペルの効果を発動する。この能力は相手ターンにのみ使える。(ユニットの能力として扱い、スペルの使用として扱わない)

3/6

 

 【大罪】において一番頼りになる中継ぎがこれだ。優秀な壁になりながらエナジー加速と手札交換を同時に行い、さらにはスペルのコピーによるさらなる加速や防御も可能にする。《バラム》で《グリム・エフェクト》を何度再利用したことか。

 攻撃制限能力も便利だが、【貴血】相手にはそこまでの効果は期待できない。

 【貴血】相手では序盤の半端な攻撃に意味はない。【起動】を有効化させたままターンを回す。

 

「エナジーを1追加し、これでターンエンドです」

「我がターン。ドロー!エナジーを追加し、メインフェイズ!もう一度《ブラッディ・リチュアル》だ。《鮮血の享受者》を捨て、エナジーを追加し2枚ドロー!」

「……ほう」

 

ルスヴ 手札6→4→6 エナジー5→2→3/6

 

 ズルい。思ったが口にはしない。

 

「タクティクス解放…《気高き誓い》…!」

 

 虚空に紅色の刻印が刻まれる。芸術品のようなその刻印は、不死者にとっての誓いの証。

 

《気高き誓い》

タクティクスカード コスト3

貴血

【永続】あなたのユニットは【奪取】を得る。(【奪取】を持つユニットが攻撃によりダメージを与えた時、その点数分ライフを回復する)

【永続】相手のタクティクスが解放されていれば、あなたのブラッディアーツ属性のスペルは無効化されない。

 

 【貴血】のタクティクス。味方ユニット全てに【奪取】を与えることによる異常なまでの生存力と、特定のスペルが決して無効化されなくなる能力による行動の保証。

 

「我が同胞……我が決意……そして我が誇りの象徴。しかと瞳に刻むがいい……」

 

 確かに強いが、【貴血】の最も恐ろしい所はこれではない。

 確かに奪取による回復で長期戦には強いが、ライフ回復による生き汚さはこちらも同じこと。カードパワーの押し付け合いになれば有利なのはこちらだ。

 

 一番の脅威になる点は、この【貴血】というデッキが──アニメ範囲のカードプールでも再現できる無限ループコンボを有している、ということだ。

 

 

《ブラッディカース・バットレイン》

オブジェクトカード コスト4

貴血/生成

▪︎【誘発】このオブジェクトが出た時、または相手が効果でダメージを受けた時、1/1の貴血属性のバット・トークン1体を生成する。(ライフの支払いはダメージとして扱わない)

(オブジェクトカードは発動後、場に設置され効果を発揮し続ける。)

 

《ブラッディアーツ・ミストグレイブ》

スペルカード コスト6

貴血/ブラッディアーツ

▪︎このターン、あなたがライフを得る度、対戦相手に同じ点数のダメージを与える。

▪︎貴血属性でない全てのユニットを破壊する。

 

・ループに必要なのは解放済みの《気高き誓い》と盤面の《バットレイン》、そして《ミストグレイブ》。攻撃でダメージを通せる任意のユニット1体。

 

①《ミストグレイブ》により、使用ターンは自身のライフ回復の際、相手に同量のダメージが発生するようになる。

②タクティクスの《気高き誓い》により【奪取】を得たユニットがダメージを与えると、そのライフ回復に反応して《ミストグレイブ》により同量のダメージが発生。

③カードの能力でダメージが発生したことにより《バットレイン》がトークンを生成。

④生成され【奪取】を得たトークンの攻撃が通る度、②③の手順を再度実行。相手のライフが尽きるか攻撃が妨害されるまで、手順を無限に繰り返すことができる。

 

 霧に包まれたまま傷を受けたが最後、その血を嗅ぎつけた眷属たちが殺到する。命が尽きるその瞬間まで、永遠に蝙蝠に血肉を食い潰される。

 

 タクティクスを含めた4枚コンボ。だがタクティクスカードが初期手札とみなされ除去もできないカードであること、コンボパーツの《バットレイン》が自力でトークンを生成することを考えれば、実質的には2枚から始まるワンショットキル・コンボ。

 

 コンボを始動させるにはユニットの攻撃が成立する必要があるが、《ミストグレイブ》の全体除去がそれを補っている。

 

 付け入る隙が存在しない部類のコンボではないのだが、今の私のデッキにはコンボの始動に対応できるカードは少ない。そしてコンボパーツはコンボを抜きにしても単体性能の高いカードであり、コンボを狙わずとも強い。

 

 核となる高コストのスペルそのものを無効化しようにも《気高き誓い》によりこちらのタクティクスが解放されている場合はそれもできない。

 

(……通ってしまえば、そのまま負ける。そしてそんな単純なつまらない負け方をするようであれば、この享楽主義者は恐らくカードを与えてはくれない……)

 

「我はこれでターンエンドだ」

「……その直前に《バラム》の【起動】を発動。《バラム》を消耗させ、墓地の《デビルズ・デトネーション》を使用。エナジーを追加」

 

サラ エナジー1→2/7

 

 既にエナジーが5枚以上あろうとも、効果によるエナジーの追加ならば手札から行う必要はない。これで私の次のターン、追加をせずともエナジーは7。相手がタクティクスを解放した以上、隙を晒せるのはここしかない。

 

「私のターン、ドロー。エナジーの追加はせず、メインフェイズへ。タクティクス解放──《血と罪を束ねし契約書》」

 

《血と罪を束ねし契約書》

タクティクスカード コスト7

大罪

▪︎【誘発】各ターンに1度、あなたがライフを支払った時、カードを1枚引く。

▪︎【誘発】各ターンに1度、あなたの悪魔属性のユニットが破壊された時、1点のライフを支払ってもよい。そうしたら、そのユニットを手札に戻す。

▪︎【永続】あなたは【大罪】のユニットを何体でも場に出すことができ、【大罪】のユニットを使うコストが3減る。

 

「ほう……初めて見るタクティクスだな」

「これでターンを終了します」

「ふむ……7コストもの絶大な対価を強いるタクティクス、か。この先はさぞ強力な者が出て来るに違いない……」

 

 獰猛にルスヴが笑う。獲物を見定めた狩人のように。

 

「しかし……同時に醜悪でもあるな。罪深き者よ。貴様の罪禍、拭いきれぬほど染み付いていることに気が付いているか?」

「……ほう。やはり、分かるのですね」

 

 気付かれている。七瀬サラの重ねてきた罪に。この身体に染み付いた罪に。

 

「我は貴様の善悪など気にはせぬ。だが、もしもこの闘いがつまらぬものであったならば──」

 

 いつの間にかルスヴの手には、一本の紅い剣が握られている。血のように紅く、恐ろしく鋭い剣だった。

 

「相応の結末が待っていることを忘れるなよ」

 

 その剣は今、ぴたりと私の心臓へと向けられていた。……どうやら、私はルスヴを満足させることができなければ命が危ういらしい。

 

(確かに、リスクは受け入れる覚悟でしたが……これは、予想外ですね)

 

 デッドオアアライブ。

 生存の条件は、ルスヴ・A・ヴォリトリを満足させること。

 

 もしかして、ただ勝つよりもよっぽど厳しいのではないか?




ウィザウィズQ&A
Q.「ダメージを与える」とはどういうことですか?
A.ユニットの攻撃や、「ダメージを与える」と書かれた能力によって相手のライフが減少することを示します。「失う」と書かれている能力によって相手のライフが減少した場合はダメージを与えたことになりません。

Q.攻撃力0の《壺の使い魔》で相手プレイヤーへ攻撃しました。この時、「相手にダメージを与えた時」の能力を使用できますか?
A.いいえ。使用できません。ユニットの攻撃力が0になっている場合、または攻撃のダメージが0点に軽減されている場合は、ユニットがプレイヤーに攻撃してもダメージを与えたことにはなりません。
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