【全文】TCGアニメ2期ラスボス女に憑依した時の初見シーズン対面について【無料】   作:アマルティア・テーベ

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・VS【貴血】有利 part2

 

「命……か」

 

(……ハードモードどころか、ルナティックでは……?)

 

 この世界では珍しく命の危険がないバトルを行えると思っていた矢先に、命の危機に瀕している。つくづく七瀬サラの人生というものは破滅的だ。血と暴力は彼女の人生と密接に結びついている。

 

 それでも、ここで諦めるわけにはいかない。逃げるわけにはいかない。そんな調子では、きっと生き残れない。

 

 私は私の命を諦められない。

 

「ええ、ええ、いいでしょう。ここで貴方に負けるようでは、どの道私の未来もここまでということ」

「威勢のいい小娘だ。命乞いをせぬことは評価してやろう」

 

 紅い剣はいつの間にか消えている。加害の意思を失ったのではなく、カードを引くために。

 

「我がターン、ドロー。エナジー追加権は破棄。スペル《ブラッディアーツ・サイレントデス》を使用!」

 

 繰り出されるのは、彼の切り札を呼ぶスペル。

 

ルスヴ 手札7→6 エナジー6→1

 

《ブラッディアーツ・サイレントデス》

スペルカード コスト5

貴血/ブラッディアーツ

▪︎あなたの墓地から貴血属性でコスト7以下のユニットを1体場に出す。このターン、それはブロックされない。

 

「現世を穿て、鏖殺と鮮血の主よ!《魔杭公ヴラド・ドラクル》!!」

 

 紅い魔法陣から一人の戦士が這い出る。

 無数の剣と槍を背負った鎧騎士が、兜の下の赤い瞳でこちらを睨む。思わず寒気がする。スーパーテクノロジーの産物である腕輪が投影するビジョンは、静かな息遣いまでもリアルに再現している。

 【貴血】のエースユニット。

 

《魔杭公ヴラド・ドラクル》

ユニットカード コスト5

貴血/死

▪︎【貫通】(このユニットの与えるダメージは貫通ダメージになる。貫通ダメージがユニットの体力を超過した時、その数値分のダメージを相手に与える。)

▪︎【永続】相手のパワー1以上のユニットが破壊される時、かわりに消耗状態で場に残る。そのユニットは全ての能力を失い0/1になり、励起できない。

▪︎【誘発】このユニットが消耗状態のユニットへ攻撃する時、そのターン中、このユニットは+2/+2補正を受ける。

5/5

 

「更に我は《ブラッディアーツ・マッドフォール》を使用!我は今、このスペルのコストの支払いを我がライフから捻出することができる!現れよ、眷属!」

「おや、気前の良い」

 

 【貴血】の特徴の一つである、ライフでコストの支払いが行えるスペル。タクティクスによりユニットが【奪取】を得ることを考えれば、払ったライフはすぐに取り戻せる。実質的には0コストも同然。

 

 このゲームでは20点以上のライフを保持するには別のカードでライフ上限を上げなければいけない。先に支払い、後で取り返す。自傷戦略の鉄板だ。

 

ルスヴ ライフ20→16 手札6→5

 

《ブラッディアーツ・マッドフォール》

スペルカード コスト4

貴血/ブラッディアーツ

▪︎あなたのコスト5以上の貴血属性のユニットがいて、このターン《ブラッディアーツ・マッドフォール》を使用していなければ、あなたはこのスペルを4点のライフを支払うことによって使用してもよい。(コストを支払って使用したものと扱う)

▪︎1/1/の貴血属性のバット・トークンを2体生成する。

 

 影絵から切り取られたように真っ黒く薄っぺらい蝙蝠たちが魔杭公の周囲を飛ぶ。

 

「主には眷属が付き従う、というわけですか」

「然り。バトルだ。《ドラクル》で攻撃!《サイレントデス》によりこのターン、決してブロックされん!」

「……っ!」

 

 霞のように《バラム》をすり抜けて、目前に迫る《ドラクル》が槍を振るう。鎖骨を抉るような一撃。痛みはない、が……インパクトは絶大。

 

サラ ライフ20→15

ルスヴ ライフ16→20

 

「【奪取】により我のライフを回復。我はこれでターンエンドだ」

「おや、そちらの蝙蝠さんたちは攻撃しないのですか?」

「つまらぬ挑発だな。意味がないことを我がするとでも?」

「冗談ですよ。《バラム》の【起動】を使用。手札の《デビルズ・ウィズダム》を除外し、その効果を使用。2枚ドローを選択」

 

サラ 手札5→4→6

 

《デビルズ・ウィズダム》

スペルカード コスト4

悪魔/チャージ/ドロー

▪︎以下から1つを選ぶ。あなたのライフが10以下なら、かわりに2つ選ぶ。

 ・あなたの山札の上から1枚目をエナジー化する。

 ・カードを2枚引く。 

 ・あなたは4点のライフを得る。

 

 

 挑発の真似事をしてみたが、やはり乗ってはこない。相手が冷静なのか、私のトークスキルの問題なのか。

 

 作中の七瀬サラはとにかく煽りのスキルが高く、冷静さを失わせてプレイミスを何度も誘発させていた記憶がある。慇懃無礼という言葉の生き写しのようなプレイスタイルは批判も多かったが、魅力もあった。

 

 《ドラクル》の攻撃力は5。つまり(ライフ回復を考慮しない場合)4回攻撃が通れば私のライフは0になる。攻撃力1で下手に攻撃するよりも、2体のトークンは消耗状態の《ドラクル》を守る盾として配置した方がいいという判断だろう。

 

 

・ユニットは攻撃する時、プレイヤーまたは消耗状態の相手ユニットを指定して攻撃する。その際、相手プレイヤーは自身のユニットを消耗させてその攻撃をブロックできる。

 

ルスヴ 場

《魔杭公ヴラド・ドラクル》(消耗)

バット・トークン×2

 

(……《サイレントデス》によるアンブロッカブルはこのターンのみ。攻撃力5ならば《バラム》で受け止められる。《バットレイン》もまだ置かれていない。……少し、攻めてみようか)

 

「私のターン、ドロー。エナジーの追加はせず、メインフェイズ」

 

 ドローしたカードを見て、思わず口元が緩む。

 

 ルスヴ・A・ヴォリトリと七瀬サラのマッチアップ──アニメ2期を見た者ならば、誰もが夢想したであろう景色を、今自分は見ている。それどころか、その当事者の一人となっている。

 

(嬉しい。楽しい。──たまらない)

 

 疑問は尽きない。不安は尽きない。掛け金は私の命。

 

 それでも。とてもとてもとても、楽しい。

 久しぶりに触れたカードの感触。リアルなビジョン。夢にまで見たリアルなバトル。あれだけ求めてやまなかったウィザーズ・オブ・ウィズダム。それが今、目の前に!

 

 笑みが深くなるのが分かる。沸き立っていく心を落ち着かせるように、私は引いたカードを場に叩きつける。

 

「大罪の使徒よ。我が命と罪を火種に、煌々と燃え上がり世界を穢せ!」

「……来るか」

「《混沌の蒼炎、アスモデウス》!!」

 

サラ 手札6→5→7 エナジー7→4

 

《混沌の蒼炎、アスモデウス》

コスト6

炎/悪魔/大罪

▪︎【大罪】(この名前のユニットはデッキに1枚しか入れられず、他のあなたの【大罪】を持つユニットがいる場合、場に出せない)

▪︎【誘発】このユニットが出た時、カードを2枚引く。

▪︎【誘発】このユニットが出た時、または各ターンの開始時、相手のユニット全てにターン終了時まで-2/-0補正を与える。

▪︎【起動】《コスト》いずれかのプレイヤーのエナジーが7以上なら、ライフを半分支払う:このターン、このユニットは破壊されず、相手のユニット全てと相手プレイヤーに同時に攻撃しダメージを与える。あなたのライフが6点以下なら、このユニットはターン終了時まで+6/+6補正を受ける。この能力はゲーム中1度しか使えない。

6/6

 

「2枚ドロー。そして貴方の全てのユニットを焼き焦がす!」

(……《混沌の織炎》も他の【大罪】も来ない、か。しかし悪くない引きだ)

 

 アスモデウスの【起動】を使ってもいいが、15のライフを半分支払っても残りは8。6以下でなければ追加効果は得られない。そもそもルスヴのライフ20点を削り切れるわけでもなく、たった3体のユニットのために使うには勿体無い。だから、今は得策ではない。

 何より【貴血】には、低コストの除去カードが複数ある。それを切らせるための「的」として、アスモデウスは都合がいい。これが生きている限り、相手のバット・トークンは攻撃に参加できなくなる。

 

 【貴血】の本来の闘い方は無限コンボではない。それはあくまでサブプラン。このテーマの主体は吸血鬼が血を啜るが如きライフ回復と、眷属たるバット・トークンの物量。そしてライフを要求する代わりにコストパフォーマンスの高いスペルの数々。

 

「アスモデウスでプレイヤーを攻撃!」

「その攻撃時、我は《散血の罰》を使用!」

 

 紅い風が吹き荒れた。突風の勢いでアスモデウスの身体がのけぞった。否、切り裂かれた。

 

《散血の罰》

スペルカード コスト4

貴血

▪︎あなたの貴血属性のタクティクスが解放されていて、あなたの墓地に《散血の罰》がなければ、あなたはこのスペルを2点のライフを支払うことによって使用してもよい。

▪︎相手のユニット1体を破壊する。あなたはX点のライフを失う。Xは破壊されたユニットの攻撃力に等しい。

 

ルスヴ ライフ20→18

 

「このスペルは貴様のユニット1体を破壊する。代償として我は破壊されたユニットの攻撃力分のライフを失う必要がある。が……《ドラクル》がいる今は違う!」

 

 《ドラクル》が槍を大地へ刺す。次の瞬間、《アスモデウス》は足元から突き出た巨大な影の槍に貫かれ、その身体を地に繋ぎ止められた。

 

「貴様のユニットは戦場へ晒される!死という安楽な結末は遠いぞ!!」

 

 ドラキュラの由来となった串刺し公の所業を再現するかのような、ユニットの屍を晒させる戦略。安らかな死を与えさせない、悪魔的な残虐行為。

 

「天に昇ることも土に還ることも許さぬ。ドラクルのいる戦場で死んだ貴様のユニットは全ての能力を失い……無力な屍として晒されるのだ」

 

《アスモデウス》6/6→0/1

 

 ドラクルの【永続】は破壊されたユニットを串刺しにし、0/1のサンドバッグに変える。能力を失い励起もできず、消耗状態のまま残り続ける串刺しの半死体は、次の貫通ダメージの的になる。

 

 そしてこの串刺し能力は厄介なことに、「破壊された」という情報を残さない。貫通の補助だけでなく妨害の役目も果たすのだ。私はこれで、一度目の破壊では《契約書》でユニットを回収することができなくなった。《グリム・エフェクト》の代替コストにも攻撃力1以上のユニットは使えない。

 

 《散血の罰》が参照するライフロスの数値は、あくまで「破壊されたユニット」のもの。ユニットが何らかの形で破壊を免れた場合、プレイヤーがライフを失うこともない。《ドラクル》がいればこのカードは2点のライフを払うだけで使える最高クラスの除去と化す。当然ながらデザイナーズコンボだ。

 

 だが厄介な1枚目はこれで使わせた。《散血の罰》がその代替コストで使用できるのは1枚目のみだ。

 追加の攻撃に意味は、ない。ここは攻めず、《バラム》を壁にする。これが正解の筈だ。裏目が最も少ない選択の筈だ。

 なのに、何故か。

 そうではない気がする。

 

「……《壺の使い魔》を出し、ターンを終了」

 

サラ 手札7→6 エナジー3→1

《混沌の蒼炎、アスモデウス》0/1 (消耗。励起不可)

《調停の叡智、バラム》

《壺の使い魔》

 

 ルスヴがこちらを睨んでいる。

 

「つまらぬな」

「はい?」

「この国を騒がせ、滅ぼしかけた悪逆の主犯がこの程度と?道化の冗談でも聞かされているかのようだ。滑稽極まる。血湧き肉躍る闘いを期待した所にこの児戯では……ただ不愉快なだけだ」

 

 感じる、これは怒り。目の前の男から、猛烈な怒りの感情を向けられている。全身から汗が流れ出す。心中の歓喜も不安も戦慄が塗り潰す。

 

「空虚なる者よ。核の欠けた虚ろな有様で生き続けることが貴様の望みか?この至高の闘争に身を置きながら、何故貴様はそんなにも腑抜けている。悪逆に生きた者よ、何を失った」

「……私が、虚ろ?」

「我の眼にはそう見える。故に厭わしい。それだけだ」

 

 虚ろ?

 七瀬サラは確かにふざけた女だった。破滅を望み、死を希う、狂ったウィザード。

 だが──虚ろとは、呼べなかった筈だ。

 

 彼女の中身は底なしの破滅願望に満ち満ちていた。希死念慮が頭から爪先まで詰まった怪物だった。確固たる意思で破滅を望む。歪んではいても、欠けてはいなかった。

 

(原因は、私)

 

 何かが、欠けているとするならば。

 それは私だ。この身体に憑依し、今カードを握る私だ。

 

(私には……何が、足りていない……?) 

 

「我のターン!ドロー、エナジー追加!そしてスペル《ブラッディアーツ・マッドフォール》!4点のライフを支払い使用!現れよ、眷属!」

「くっ…!」

 

 考える間にもゲームが進む。

 

ルスヴ 手札6→4 ライフ18→14

 

「さらに我は《ブラッディカース・バットレイン》を使用!さらに新たな眷属を生み出す!」

「……っ!」

(来た……無限コンボの片割れ!)

 

ルスヴ 手札4→3 エナジー7→3

 

《ブラッディカース・バットレイン》

オブジェクトカード コスト4

貴血/生成

▪︎【誘発】このオブジェクトが出た時、または相手が効果でダメージを受けた時、1/1の貴血属性のバット・トークン1体を生成する。

 

 これでトークンは5体。

 無限コンボの準備が整い、相手の打点は合計10。もはやコンボを待つまでもなく死にかねない。

 

「叩き潰せドラクル!」

「……ッ、《バラム》でブロック!」

「生温い。《血霧の構え》!」

 

ルスヴ 手札3→2 エナジー3→0

 

《血霧の構え》

スペルカード コスト3

貴血

▪︎あなたのユニット1体を対象とする。それはこのターンの間、そのユニットは+1/+1補正を受け、「このユニットがブロックされた時、このユニットを励起させる」を得る。

▪︎【リチャージ2】各ターンの終わりに、2コストと1点のライフを払い、手札のこのカードを捨ててもよい。そうしたら、1枚引く。

 

ルスヴ ライフ14→20

 

 ドラクルの槍が《バラム》を突き破る。

 そして無防備なアスモデウスへ槍が迫る。自身の能力による補正も合わせて7点の貫通ダメージ。

 アスモデウスが捩じ切られると同時に、私の身体が宙に浮く。突き飛ばされるような衝撃が私を背後の壁に叩きつける。呼吸が詰まり、痛みが走る。

 

サラ ライフ15→9

 

「……がぼぇ、ごほっ、おっぇ……」

 

 これもルスヴの異能のひとつ。

 自在に衝撃を発生させる力を、彼はバトルの最中にも行使できる。だが彼がこのような真似をするのは、機嫌が特に悪い時だけ。

 

「【貫通】によるダメージが発生したことにより、《バットレイン》が眷属をさらに追加!」

「《契約書》により……ライフを1点払い。今、破壊された《アスモデウス》を回収。そして、ライフを払ったことによりドロー」

 

サラ ライフ9→8

 

「追撃せよ、4体の眷属!」

「1体を《壺の使い魔》でブロック…!」

「フン、これで我のターンは終了だ」

 

サラ ライフ8→7→6→5

 

ルスヴ 場

《ドラクル》(消耗)

バット・トークン×6(内4体消耗)

 

 これで私のライフは5。

 万が一《ドラクル》を除去したとしても、《サイレントデス》によってブロックされない《ドラクル》の一撃でそのままゲームが終わる数値。壁を並べようにも、《ミストグレイブ》がルスヴの手札にあれば貴血属性のユニットが入っていない私のデッキではそこで終わり。

 私は負ければ、ルスヴの怒りをこの身で受け止めねばならない。

 

 

 敗北が。死が、目の前に迫っている。

 それなのに──何故、この身体は悦んでいるのだろう?

 何故、『私』は、七瀬サラは笑っているのだろう?

 

「らしくなってきたな、悪逆よ。だが、我を満足させるにはまだ足りんな」

「ありがとうございます。ドロー」

 

 意味も理屈も未来も分からない。結局何が欠けているのか、私の何が悪いのか、分からない分からない分からない、何故この世界にいるのかも、何をすれば良いのかも、何をするべきなのかも。

 

 だから、楽しもう。

 目の前のゲームを。

 

 

 青黒い炎の魔人が、またその姿を見せる。

 

エナジー7→4

 

「再び来たれ、《混沌の蒼炎、アスモデウス》。効果で2枚ドロー」

 

(──来た)

 

 力を持つカードでの蹂躙を楽しもう!

 圧倒的なパワーで相手を蹴散らそう!

 

「《罪深い継承》」

 

 その条件は満たされている。

 

《罪深い継承》

コスト4 スペル

大罪

◾︎あなたの大罪属性のタクティクスが解放されていて、このゲーム中に《罪深い継承》を使っておらず、あなたのライフが10以下なら、このスペルのコストは0になる。

◾︎直前のターンまたはこのターンにあなたのユニットが破壊されているなら、あなたの山札の上から、あなたのエナジーと同じ枚数見る。そうでない場合、3枚見る。その中から【大罪】を持つユニットを1枚公開して手札に加える。

◾︎相手の最も攻撃力の低いユニットを1体選ぶ。あなたのエナジーをそのユニットの攻撃力分励起させる。

 

「山札の上から7枚を見て……ふふ、この【大罪】を手札に。そしてそちらのトークンの攻撃力分、1エナジー励起させます」

 

 きっちり7枚目。勝利の鍵は我が手に。

 悪魔を呼び込むための呪文は、すらすらと口から飛び出してくる。

 

「大罪の使徒よ、我が命と罪を糧に、瞳に映る全てを喰い荒らせ」

 

 ぶぶぶ。

 ぶぶぶぶ。

 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ。

 無数の羽音。何百何千という蝿が、漆黒の鎧騎士のシルエットを作る。

 

「──《無我無尽、ベルゼブフ》」

 

 新たな【大罪】が顕現する。

 騎士は恭しく私に一礼すると、襲撃者へと刃を向ける。

 

サラ エナジー5→0

 

《無我無尽、ベルゼブフ》

ユニットカード コスト8

悪魔/大罪

▪︎【大罪】

▪︎【奪取】(このユニットが攻撃によりダメージを与えた時、同じ点数のライフを得る)

▪︎【永続】相手はライフを得られず、ライフ上限を増加させることができない。

◾︎【誘発】いずれかのユニットが破壊された時、あなたのライフ上限を+1する。相手プレイヤーは2点のダメージを受け、あなたは2点のライフを得る。

◾︎【起動】《コスト》いずれかのプレイヤーのエナジーが7以上なら、ライフを半分支払う:プレイヤーを1人選び、『あなたのカードが対戦相手に与えるダメージは2減り、あなたのユニット全ては消耗状態で場に出る』という効果のギフト・トークンを付与する。

8/8

 

 【大罪】の重量級フィニッシャー。戦場で誰かが死ぬ度に私を満たす、働き者の騎士。

 

「ベルゼブフ、【起動】。ライフを半分支払い、貴方へギフト・トークンを与えましょう」

「ギフトだと…?」

 

 ベルゼブフの剣先から濁った波動が撃たれる。波動はルスヴの足元に幾何学的な紋様を刻み込む。

 それは死ぬまで決して消えない祝福であり、死ぬまで決して治らぬ毒。

 

「続けてアスモデウスも【起動】。ライフを半分支払い、このターン破壊されず。攻撃が全体化。さらに、私のライフが6以下のため、+6/+6補正」

 

サラ ライフ5→3→2

 

 悪魔に命を捧げて、私のライフはたったの2。でも、勝てればそれで構わない。

 

 並び立つ【大罪】。

 暴食と色欲。

 騎士と魔人。

 ラスボス特有のパワーカード連打。

 

 せっかく2期ラスボスの身体なのだから、それらしく振る舞ってみるのも悪くない。

 

「首を落として差し上げなさい。《ベルゼブフ》!!」

「……《ドラクル》!だが、2枚の《ブラッディ・リチュアル》は手札に戻る!」

 

 蝿の騎士が一度、刃を揺らした。魔杭公の首は落とされ、鮮血が撒き散らされる。

 

サラ ライフ2→10

 

「さァ──後を追わせておあげなさい。全て、焼き尽くせ!《アスモデウス》!!」

「……《ブラッディアーツ・ストローマン》!」

 

 巨大な赤黒い藁人形が出現し、ルスヴへと向かう炎を吸い寄せる。

 

ルスヴ ライフ20→15 手札4→3

 

《ブラッディアーツ・ストローマン》

スペルカード コスト4

貴血/ブラッディアーツ

▪︎あなたはこのスペルを、5点のライフを支払うことで使用してもよい。

▪︎このターン、あなたが受けるダメージ全てを0点になるまで軽減する。

 

「5点のライフでコストを支払い、このターン我が受けるダメージは全て0になる!」

 

 緊急回避のための防御スペル。

 だがこれが守れるのはプレイヤーだけ。残された6体のトークンは焼き尽くされる。

 そして、次はベルゼブフの【誘発】が追撃する。

 

「ベルゼブフの能力が6度【誘発】。私のライフ上限は6増加し、12点のライフを獲得。本来は貴方へ同量のダメージも発生しますが……ね」

 

 濁った光が私を包む。傷は癒えて、更なる活力が湧いてくる。

 濁った光がルスヴへ向かう。全て藁人形へと吸い込まれる。

 

サラ ライフ10→22/26

 

「ターンエンド。ありがとう。ルスヴ・A・ヴォリトリ。貴方のおかげで──私は、目が覚めました」

「……ククク。もう勝ったつもりか!」

 

 ルスヴが笑う。底なしの歓喜が私にまで伝わってくる。《ベルゼブフ》と《アスモデウス》の圧にまるで怯んでいない。不死者はカードを手放さない。

 

「手札をエナジーへ。消し飛ぶがいい。《ブラッディアーツ・ミストグレイブ》!」

 

《ブラッディアーツ・ミストグレイブ》

スペルカード コスト6

貴血/ブラッディアーツ

▪︎このターン、あなたがライフを得る度、対戦相手に同じ点数のダメージを与える。

▪︎貴血属性でない全てのユニットを破壊する。

 

ルスヴ エナジー8→2 手札3→2

 

 霧が全てを飲み込む。

 《アスモデウス》も《ベルゼブフ》も、《使い魔》も死ぬ。

 だが《ドラクル》がいない今、《契約書》によりユニットを回収することができる。

 

「《契約書》の能力。1点のライフを支払い、《ベルゼブフ》を手札へ。そしてライフを払ったことにより1枚ドロー。《使い魔》が破壊されたことで、3点のライフを回復」

 

サラ ライフ22→21→24/26

 

「まだゲームは終わっておらん。《鮮血の享受者》!」

 

 ローブを纏った魔術師が現れる。杖の先から放たれる光弾は私とルスヴ両方へ届き──私の命だけは、脅かさない。

 

《鮮血の享受者》

ユニット コスト2

貴血

▪︎【誘発】このユニットが出た時、各プレイヤーに2点のダメージを与える。

▪︎【誘発】このユニットが場を離れた時、カードを1枚引く。

2/2

 

ルスヴ ライフ15→13

サラ ライフ24/26

 

「なっ…!」

「ベルゼブフのギフト。貴方のカードが私へ与えるダメージは、それが攻撃であれ能力であれ、常に2点軽減されます。そして……あなたのユニットは、必ず消耗状態で場に出る」

 

《ベルゼブフ・ギフト・トークン》

▪︎あなたのカードが対戦相手に与えるダメージは2減り、あなたのユニット全ては消耗状態で場に出る。(これはギフト・トークンであり、デッキには入れられない。カードの能力によってのみプレイヤーに与えられる)

 

 無限コンボはもう成立しない。

 ベルゼブフのギフトにより、与えられるダメージは2減少する。つまり生成されたバット・トークンでは、攻撃力1ではもう私へダメージを与えられない。《バットレイン》がトークンを生み出すことはない。眷属の連鎖は起きない。

 

 そして全てのユニットが消耗状態で場に出る以上、何かしらの強化でトークンの攻撃力を3以上に引き上げても後が続かない。励起していないユニットでは攻撃できず、消耗状態のままでは相手の攻撃を受け続ける。

 

 【貴血】は豊富な除去カードを有しているが、それは全て破壊によるもの。私のユニットはいくら破壊されても《契約書》で回収できてしまい、除去したことにはならない。

 ライフ回復を封じる《ベルゼブフ》と、ギフトのダメージ軽減効果をさらに凶悪にする攻撃力減少を持つ《アスモデウス》。どちらを維持しても、私の有利が継続できる。

 

「さあ、どうしますか?」

 

 2点まで削れたライフは今や20を超えている。

 潤沢な手札には追撃のユニットとスペルが何枚もある。

 敗北の寸前から、一気に形成逆転。ギリギリからの大逆転。カードゲームの醍醐味だ。

 嗚呼──心地良い。

 圧倒的な力で、盤面を制圧するのは心地良い!!【大罪】はこうでなくては!!

 

「これが、貴様の力か……」

 

 瞳を輝かせてこちらを見るルスヴ。

 まだ私の知らないカードを持っているかもしれない。次に何を繰り出してくるのか、注意深く見守っていたが。ルスヴは──まるで騎士が礼を示すが如く、右手を山札の上に置いた。

 

「見事だ」

「……ゲームはまだ続いていますよ?」

「これ以上やっても我の勝ち目は薄い。ならば、これで終幕だ。我が友人たちが無意味に傷付くのは見たくないのでな。貴様の勝ちだ、強き者よ。どうやら我の眼が曇っていたようだ」

 

 サレンダーが腕輪に承認され、ゲームは驚くほど静かに終わった。どうやら、彼を満足させられたらしい。

 

 ふわり、と。ルスヴの懐から取り出された4枚のカードが宙を舞って私の手まで届いた。占い師でもある彼には、私が欲しているものも最初から分かっていたようだ。

 

「持っていくがいい。悪逆。貴様の望みはこれだろう」

「《ブラッディ・リチュアル》……『視えて』いたのですか?それに、私が悪逆と分かって尚与えると?」

「さてな。疾く行け。まだ向かうべき場所があり、出逢うべき相手がいるのだろう」

「……感謝します、不死者よ。では、対価を」

「いらぬ」

「……は?」

「今、我は高揚している。貴様の血がどんな珍味であれ、我はこの甘美な時間を自ら穢す気はない」

 

 よく分からないが、どうやら対価も無しにカードをくれるらしい。……あまりにも都合が良すぎるが、くれるというならば受け取るしかない。そのために来たのだ。

 目を閉じたままのルスヴへ一礼し、私は酒場を後にした。

 

(……得た感動に水を差したくない、というのは。人間にも怪物にも共通しているのか)

 

 よく分からない。けれど、きっと別に分からなくてもいいのだろう。

 七瀬サラにはきっと、また次の闘いが待ち受けているのだから。

 

 

 

 

 七瀬サラが立ち去ってから一時間後。

 至福の時間から現実へ意識を戻したルスヴは、「99+」と表示されている手元の携帯端末を操作した。

 

「もしもし、我だ」

『ようやく出やがったねバカ兄貴』

「カミラか。何用だ?」

『何用も糞もない。あんた、渡した指名手配書はちゃんと店に貼ってあるんだろうね』

「あのような物があっては我が城の品位が削がれると何度…」

『また営業停止になりたいのかい?常連たちはさぞ泣き叫ぶだろうねえ』

「……カミラ。我が妹よ。毎度のことながら、貴様はこのように面倒な理だらけの世でも特に面倒な場所でよく働いていられるものだ。感服するぞ」

『人の輪の中にいるのを望んだのはあんたもだろう、バカ兄貴。その窮屈さも必要経費さ』

「致し方なし……か」

 

 電話が切られた。

 ルスヴは床に置き去りにされていた指名手配書を拾い上げて裏返す。そこにあった顔を見て、僅かに目を見開いた。

 

「あの者……だが、まあ、我がカミラに言われたのは『手配書を貼れ』というだけであるから……聞かれてから答えれば良いことか」

 

 小さな額縁に七瀬サラの手配書が入れられ、そのまま酒場の壁にかけられる。

 うむ、とルスヴは満足気に頷いた。次来た時は酒でも奢ってやるか、などと思いながら。

 

 往々にして、この不死者は人間の理屈を都合よく無視する。

 

 




※こそこそ設定開示
【貴血】のインスパイア元は黒(MTG)やヴァンパイア(Shadowverse)

パワカ連打回でした。【大罪】のコンセプトの一つは「ボスラッシュみたいなデッキ」となっています。
次回、2期ヒロインとのリベンジマッチ回。
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