平成の仁義なき戦い   作:アサシン・零

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第1話「広島の火種」

広島市中区、平和公園の喧騒が収まったばかりの8月6日。2002年、平成14年の夏は、茹だるような暑さと平和への祈りが交錯する日だった。午後16:41、広島の空はまだ青く、原爆ドームのシルエットが夕陽に映える。しかし、街の裏側では、別の火種が燻っていた。ヤクザの世界で、血と欲望が渦巻く抗争の幕が上がろうとしていた。

 

佐々木暁斗、22歳。黒いスポーツキャップに黒Tシャツ、白ズボンという2002年らしいストリートスタイル。首にはシルバーのネックレス、腰にはJ-PHONEのガラケーがぶら下がる。広島中道高校を卒業後、就職難の波に飲まれ、凶道会富山組に拾われた若造だ。17歳の時に起こした性的暴行の補導事件を笑いものにし、欲望を抑えるための薬を常用するが、副作用の眠気には悩まされている。警察への敵意を胸に秘め、凶道会を乗っ取り、広島・福山・四国を支配する野心を燃やす男。それが暁斗だった。

 

上八丁堀、雑居ビルの4階。富山組の事務所は、煙草の煙と安酒の匂いが漂う薄暗い部屋だった。壁には広島カープのポスターが貼られ、床にはビールの空き缶が転がる。エアコンの効きが悪いのか、部屋は蒸し暑い。暁斗はソファに腰掛け、ガラケーを弄りながら待っていた。目の前には、富山組の組長、富山義弘。42歳、和服の上にカジュアルなシャツを羽織った男。温厚な顔に、厳しさと親の責任感が滲む。暁斗を息子のように可愛がるが、その野心には薄々気づいている。

 

「暁斗、お前、最近流川で暴れすぎじゃ。」富山が低く響く広島弁で切り出した。机の上の灰皿には吸い殻が山積みだ。「相田組の連中がお前を目の敵にしとる。舐めとるんか、じゃけえ、ってな感じでな。」暁斗はニヤリと笑い、キャップのつばを上げた。「組長、相田のチンピラが調子こいとったけえ、ぶちかましただけじゃ。広島は俺の街よ。誰にも渡さん。」ガラケーをポケットにしまい、目を光らせる。だが、薬の副作用が忍び寄る。瞼が重くなり、意識がふっと揺らぐ。慌てて目を擦り、気合で耐えた。

 

富山は眉をひそめ、煙草に火をつけた。「お前、薬のせいでフラフラしとるやろ。抗争の前に寝られたらたまらんぞ。」彼の声には、叱責と心配が混じる。「今日、凶道会の会長、沖 武信さんが倒れた。重篤らしい。後継の話が動き出しとるんじゃ。相田 剛が若頭としてでかい面しとるが、俺はお前を信じとる。だがな、暁斗、野心はええが、義理を忘れるなよ。」

 

暁斗の胸に、熱と冷たさが同時に走った。沖武信、71歳。凶道会の頂点に君臨する大侠客。病弱とは聞いていたが、死が近いとなれば、広島の裏社会は一気に荒れる。相田剛、凶道会若頭。薬物とネット詐欺で金を稼ぐ現代派の男。暁斗は彼を嫌悪しつつ、出し抜く算段を立てていた。富山の言葉に頷きつつ、心の中で舌を出した。「義理か。組長、俺は義理も野心も両方持っとるよ。」

 

その時、事務所のドアが乱暴に開いた。舎弟のケンジ、20歳のチンピラが息を切らして飛び込んできた。「組長!暁斗さん!流川で相田組の連中がウチのシノギ荒らしとる!スナック『瀬戸の月』で美月さんが絡まれとるみたいじゃ!」ケンジの広島弁が部屋に響く。

 

暁斗の目が鋭く光った。影山 美月、18歳。流川のスナックで働く幼馴染。暁斗の補導事件を知りつつも、彼に惹かれる女だ。一方、桜野 彩花、17歳。中道高校の後輩で、暁斗を純粋に信じる少女。美月と彩花、二人への想いが暁斗の心を揺らすが、今はそんな場合じゃない。「美月が?舐めとるんか、じゃけえ!」暁斗は立ち上がり、腰のナイフを握った。

 

富山が一喝した。「暁斗、落ち着け!相田の挑発に乗るな。だが…行くならケンジと一緒じゃ。俺も後で動く。」富山の目は、父親のような心配と信頼が入り混じる。

 

暁斗はニヤリと笑い、事務所を飛び出した。ケンジが慌てて後を追う。エレベーターの中で、暁斗は薬を飲み込んだ。眠気を抑えるためだが、副作用がいつ襲うかわからない。ガラケーの着信音が鳴り、画面には美月の名前。「暁斗、助けて…相田の奴らが…!」声が途切れる。暁斗の血が滾った。

 

午後17:00、流川の路地はネオンが瞬き、L’Arc〜en〜Cielの「Driver’s High」がスナックから漏れ聞こえる。2002年の広島は、バブル崩壊後の虚脱感と若者のエネルギーが交錯する街だ。スナック「瀬戸の月」のカウンターでは、影山美月が相ida組の手下三人につかまれていた。ミニスカートの制服に、怯えた目。だが、彼女の広島弁は強気だ。「離せよ、じゃけえ!暁斗が来たら、お前ら終わりじゃけ!」

 

手下の一人、刺青だらけの男が笑った。「暁斗?あの薬キメたガキか。富山組なんぞ、相田組の前じゃゴミじゃ!」テーブルを蹴り、ビール瓶が床で砕ける。その瞬間、店のドアが勢いよく開いた。佐々木暁斗、キャップを深く被り、ナイフを手に立つ。「美月、触るな。俺の女じゃ。」広島弁が低く響く。美月が顔を上げ、ほっとした表情を見せる。「暁斗…!」だが、奥で飲み物を運ぶ桜野 彩花が現れ、暁斗と美月の親密さを見て目を伏せる。心の声が漏れる。「先輩…美月さんとそんな関係なん…?」

 

手下たちがニヤニヤと近づく。「お前が暁斗か。相ida組の名前、舐めとるんか?」リーダー格の男がナイフを抜く。暁斗は一瞬、薬の副作用で視界が揺らぐ。だが、気合で目を覚まし、カウンターを飛び越えた。ナイフが閃き、手下の腕を切り裂く。血が床に飛び散り、客が悲鳴を上げて逃げる(残酷描写)。ケンジがもう一人を殴り倒し、店内は乱闘の嵐に。

 

美月が叫ぶ。「暁斗、気をつけて!」彩花は怯えつつ、カウンターの後ろで身を縮める。暁斗は手下のリーダーを壁に叩きつけ、ナイフを喉に突きつける。「相田に言っとけ。広島は俺の街じゃ。舐めとるんか、じゃけえ!」だが、突然、眠気が襲う。暁斗の体がふらつき、ナイフが床に落ちる。手下が隙をつき、拳を振り上げる。

 

その瞬間、店の外でサイレンが響いた。広島県警察の汚職警官、田中がパトカーから降りてくる。「佐々木暁斗、また問題起こしたな。檻にぶち込むぞ!」田中の目は、補導事件の過去を知る冷たさで光る。

 

暁斗は意識を振り絞り、ニヤリと笑った。「田中さんよ、俺がお前をハメたるけえ。覚えとけ!」ケンジが暁斗を支え、美月と彩花が心配そうに見つめる。店の外では、流川のネオンが血と欲望を照らし出す。

 

同じ頃、上八丁堀の別の事務所では、凶道会の若頭、相田 剛が部下に指示を飛ばしていた。「富山組を潰せ。沖会長の死が近けりゃ、広島は俺のもんじゃ。」その背後で、鷹山 寿浄がガラケーで情報を集め、沖田 慎二が賭博場の資金を計算。大月 晴信はナイフを研ぎながら、策略を巡らせる。

 

南区の港では、三合会の貨物船が密かに停泊。東広島市西条町の酒造では、海凶会の森田 泰久が密談を重ねる。安佐北区高陽町亀崎では、蒼月弧狼組の梶谷 沖久が農家のシノギを管理。四国の高松では、志方八幡会の大谷 輝守が薬物ルートを固める。広島の裏社会に、嵐が迫っていた。

 

 

 

 

 

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