TSして王女になった僕が、華々しい戦死を遂げるまで   作:間川 レイ

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第2話

2.

王城の作戦会議室には悲鳴のような報告と罵声が飛び交っていた。

 

「第53歩兵連隊、壊滅!ワルター大佐殿、戦死!」

 

「第206魔道士中隊、敵に完全に包囲されたとのこと!救援を求めています!」

 

「第28近衛騎士連隊より決別電!『我残存兵力ナシ。王国ノ藩屏最期ノ意地ヲ見セン。王女殿下ニ栄光アレ』」

 

「206の救援にはリッテン伯の騎士団をあたらせろ!……何?!リッテン伯が裏切っただと?!」

 

「第一防壁より緊急電!『我突破サレツツアリ』!」

 

「第一防壁を抜かれれば市街になだれ込まれる!近くに第208歩兵中隊がいただろう!何としても防がせろ!」

 

「今から急行しても間に合うかどうか……!」

 

「間に合う間に合わんじゃない!間に合わせるんだ!」

 

届くのは悲報ばかり。軍事の専門家でもない僕にもわかる。今、まさに王国は崩壊しつつあった。

 

どうして、どうしてこうなった。僕は思わず自問する。

 

始まりはなんてことはない、単なる地方の反乱であったはずだ。物珍しいといえば彼らの長が前国王の庶子を名乗り、現王家は国政を壟断し民を虐げていると主張したことぐらいだ。その主張は内実を知るものからすれば失笑ものであったであろう。そもそも前国王は愛妻家で庶子などいなかったことは宮廷では有名であったし、そもそも王室は民に対して寛容であった。実際王直轄地では関門も撤廃されており、税率も低く、裁判も公正だった。確かに近年の王室主導の改革で王国一律に追加の課税は行われている。だがそれは事前に三年後には再度の引き下げが予告されており決して重いものとは言えないもののはずであった。

 

そう、だからそもそも反乱のおこる下地などなく、仮に反乱がおこったとしても、既存の騎士団の力で鎮圧可能、その見立てだったのだ。

 

しかし動くべき騎士団は初動が非常に遅く、反乱の蔓延を招く。危機感を持った王室が近衛を中心とする王直轄軍を率いて鎮圧に向かうも、魔道砲兵なる隣国の大ルッシャ連邦で開発中と噂の新型兵器を反乱軍は大量に保有しており、それらの活用により革命軍との会戦で王直轄軍は完敗。

 

王は戦死し生き残った皇太子二人もさんざんなぶりものにされたうえで殺された。

 

そしてこの敗戦以来各地の貴族たちはこぞって反乱軍側に参加。今では革命軍を名乗り、散発的に抵抗を続ける王直轄領を焼き払いながら王都に向けて進軍している。

 

だから僕は自問する。どうしてこうなった、と。

 

3.

だが民たち、とくに反乱を起こした地域の民たちからからすればまた違った見方がある。ただでさえかつかつの苦しい生活を送っているというのに、更なる課税。しかもこの課税は自分たちの領主様が決めたものではなく、お転婆で有名な王女様の思い付きによるものらしいとのうわさが入る。

 

それに加え、王直轄地に「がっこう」なるものを立てるため人手を供出するようにという。高くなった税金に働き手の供出。さらには普段は威張り散らしている領主様の部下たちが珍しく申し訳なさそうな顔をしながら、「王命遂行のための準備費用」と称してなけなしの家畜さえ持っていく。さらには相次ぐ王直轄兵と思しき者たちによる略奪。このままでは到底冬を越せそうにない。民たちは限界であった。

 

そこに現れたのは「前王の庶子」を名乗る男とその手勢たち。彼らは言う。君たちの生活が苦しいのは今の王室のせいだと。王女のわがままが今の君たちの苦境を作った。さらに散々この国に尽くしてきた我らの領主様に冤罪を着せて殺そうとしているのも王女様だ。領主様がこれ以上の税金の引き上げに反発したからだ。ここだけの話5年前の大増税も最近相次ぐ略奪も王女殿下の指示らしい……。

 

民衆は怒り狂った。もはや現王室の横暴許し難し。たとえ反逆罪に問われることとなっても反乱を起こすしかないといった熱狂の渦が沸き上がる。

 

そして粗末な農具を構えて領主府に向かおうとした民衆に向かって庶子と名乗る男は言う。

 

今の現状を憂いているのは何も君たちばかりではない。心ある商人たちもだ。この武器は彼らからの支援だ。心置きなく使いたまえ。その言葉とともに渡される領主府の兵隊たちが使っているような質のいい武具たち。

 

武具をそろえ意気揚々と進軍する民たちが領主府の兵たちといよいよ遭遇し、熾烈な戦闘がかわされる、ことはなかった。

 

庶子を名乗る男の前で跪く領主とその私兵たち。お待ちしておりました閣下と深々と領主は頭を下げる。以前より現国王の悪政には心を痛めておりました。民を救わんとするその崇高な志、小生は感服仕りました。我々もその義挙にぜひ加わりたくと。庶子は鷹揚にうなずく。そなたの忠義、大変見事である。と。

 

民は思った。ああ、自分はまさに天が正される場面に出くわしているのだと。忠義の心を新たにする民たち。これと同様の光景は彼ら反乱軍が進むたびにみられる。そのたびに反乱軍の規模は増大し、いつしか革命軍を名乗るようになった。

 

そしてこれを重く見た王直轄軍もいよいよ動き出す。だが時の理は革命軍にこそあった。貴国の窮状には心を痛めると、革命軍に対する、本来であれば長らく紛争状態にあった大ルッシャ連邦からの魔道砲兵をはじめとする多数の軍事援助。その中には超重装騎兵と呼ばれる極めて高い突破力と殲滅力を持つ代わり、育成に非常にコストのかかる騎兵の派遣や近年の連邦の拡張政策を支える頭脳である参謀群の派遣も含まれていた。

 

同時に北方連合からは対魔導士戦闘に近年高い評価を得つつある大量のマスケット銃の無償譲渡とその訓練の実施。大義は我にありと革命軍の士気はいやがおうにも上がる。

 

そして、王直轄軍との激突。王直轄軍が大陸に誇る重装魔道騎兵の突撃は魔道砲兵の効力射によって粉砕され、浮足立った軽装魔道士連隊をマスケット銃の猛射が襲う。

 

何とかそれを援護しようとした新設の歩兵連隊も、義勇軍の超重装騎兵の突撃によって粉砕されると勝敗は完全に決した。残されたのはほぼ無傷の革命軍と、最期まで頑強に抵抗を続ける傷まみれの近衛兵たち。そのけなげな抵抗も怨嗟に燃える革命軍本隊の突撃によって完膚なきまでに叩き潰された。最期まで抗いぬいた近衛に対する民衆の憎悪はすさまじく、生け捕りにされた皇太子の目前で男の捕虜は拷問を受け殺され、女の捕虜は正気を失うまで輪姦された後やはり殺された。

 

そして青ざめる皇太子たちも同じように拷問を受け、民衆にこれまでの増税が全て王室の私利私欲に基づくことであることを「自白」した後、今では主席と呼ばれている庶子の命令で処刑された。

 

これによって勢いを得た革命軍はそのまま王都を目指した。途中王直轄領では散発的な、だが激烈な抵抗を受けたものの、各地からこぞって援軍に現れる各領主の協力もあり、次々と粉砕していった。またその抵抗の報いはすさまじく、王直轄地の男はことごとくが処刑され、女子供は正義に仇なす不穏分子として、革命軍の指導教育に服すものとなった。

 

また革命軍が王都を包囲するころには、長らく王国と友好関係にあった南方商業都市同盟が突如として王国に宣戦を布告。王国最大の軍港キールを占拠すると、革命軍に義勇軍の派遣と接収した在南方都市同盟の王国市民財産の返還を提案。革命軍はこれを受け入れ、結果王都は3万の守備兵に対し18万の大軍で包囲されることとなった。

 

革命軍の士気は天を焦がすほどに高まっていた。

 

 

 

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