自分がヒロイン   作:ぜいにくまん

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第3話

まだ日も上り切らないうちに起き出す。

夜は本当にする事がないので朝が早くなるのだ。

宿の受付は一日中対応をしている。日本のコンビニみたい。

鍵を預けてダンジョンに向かうとしましょう。

 

「まだ外は暗いぞ。カンテラの貸出をしてるがどうだ。有料だが」

 

宿の亭主が声をかけてきた。

俺たちはけっこう夜目がきく。視力まで二倍というわけじゃないだろうがめちゃめちゃ目もいいのは確かだった。

 

「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 

我が半身が笑顔で答えた。俺には見えないが亭主の表情から相変わらずの美少女フェイスである事を確信する。

村では初恋キラーだった我が半身である。

多分年下はほぼ全員。年上の情緒もぐちゃぐちゃにしていないとは言っていない。

 

いらないと言ったのにサービスだと押し付けられた灯りを持って宿を出た。

 

 

俺が表に代わり、昨日の続きから探索を進める。

早朝は人が少ないためより獲物を狩りやすい。

サクサクと狩り進めて行くとすんなり深層の入り口を見つけた。

迷う事なく先へ進む。

 

3層では魔物が最大三体の群れになる。

このままどこまでも増えるかというとそんな事はなく最大でも五体同時までだそうだ。

これは探索者側が組めるパーティの最大数と同じ数であった。

このパーティというのはただ単に一緒に行動する味方という意味ではなく、収納魔法のように適性のある者がアクティブスキルとして味方をまとめる効果として存在している。

これの最大数が五人となっているのだ。

パーティを組むメリットとしては経験を共有する効果があるらしい。

レベルの概念は存在しないのだが魔物との戦闘を繰り返す事で強さが成長していくというのは経験則で知られているため、貴族や大金持ちの中ではいわゆる養殖に使われる。

 

深層は五階層ごとに強力な階層主が存在し、それには1パーティ毎にしか挑めない。

3層を俺たちのようにソロで行くやつ自体がそもそも存在しないようだが、基本的にはパーティを組む事が前提の設計思想になっているようだ。

 

俺のチートにもパーティを編成する機能が備わっている。

俺たちふたりで常にパーティを組んでいる状態なのかと考えた事もあったが、地元で五人組パーティを作る実験も成功したため最大数で編成できる事も確認済であった。

他人を信用する事が難しいため実現できるかはわからないのだが。

ゆくゆくは戦闘奴隷を購入してパーティを埋める必要があるかもしれない。

 

それでも男をパーティに入れるのはどうだろう。

なんといっても俺たちは美少女だ。

いや美少女でなくとも性別が違うと生活が色々面倒になる。

女性であっても普通に戦う世界なので男じゃないから弱いという事もないが、それでも平均的に男性が戦闘で強いことはこちらの世界でも変わりはない。

 

まあ今すぐ考えることでもないか。なんといっても奴隷はお高いのだ。現代日本の感覚でいうなら車を買うくらいのイメージである。

 

男性の方が戦闘力に優れている理由だが、当然と考えず論理的に考えるなら力と体力のステータスが関わっていると思われる。

シンプルに前衛が強くなるからな。魔法使いのジョブはほぼ貴族の独占だし。

戦闘奴隷でなく普通に働かせるにしても力と体力は重要だ。よって男性より女性奴隷の方が安く購入できる。もし現代日本でこんなこと言ったら大問題になりそうだ。

もちろん美しい女性奴隷にも需要は存在する。俺たちにはそれはそれは高値がついたらしい。

礼に喧嘩を売ってやらないとな。こっちは出血大サービスだ。血を流すのはあちらになるが。

 

宿の朝食の時間は決まっている。遅れて食べ損ねたりしないよう余裕をもって撤退することにした。

 

朝食はパンがまだ柔らかいものが食べられたため悪くなかった。

恐らく贔屓されていそう。前日の売れ残りのカチカチパンになると思っていたからだ。

美少女は得である。

食事をとったらギルドに換金をしに行くことにした。

 

昨日とは混み具合が全く違うカウンターで換金を伝える。

用意されているトレイに収納魔法からドロップ品を積み上げていった。

番号の書かれた木札を受け取り査定待ちだ。

ギルド内を眺めながら半身と会話をして過ごしていると声をかけられた。

 

「お嬢ちゃんひとりかい。剣はいいとして防具もないようだが」

 

隣で同じく換金待ちしていた冒険者のようだ。俺は黙って対応を半身に任せる。

 

「ソロですね。防具は換金できたら揃えようと思っていまして」

 

防具までは奪える余裕がなかった。

ダンジョンを甘く見ていたわけではないが魔物を狩ってきた経験上、少なくとも1、2層で必要になるとは思わなかったため後回しにしていた。

 

「おいおい命知らずな嬢ちゃんだな。あんまり無茶はしないことだ」

 

パーティメンバーらしい男からも苦言が。

そう言われても準備できるんならしてるっていう。

 

「何かあったら相談しな。俺たちはこの町がそれなりに長い。美人だから勧誘もされるだろうがいい奴ばかりじゃない。気をつけることだ」

 

ナンパかな〜と思っていたが別の男からも心配された。普通にいい人たちだったようだ。

 

「お気遣いありがとうございます。気を付けますね」

 

我が半身も微笑みをサービスしている。男達は見惚れたのち順番が来たためカウンターへ戻っていった。

我が半身は姿勢も美しい。俺が表だと姿勢もそうだが目付きも悪くなってしまう。

半身の美少女力は歴戦の冒険者も見事仕留めたようだ。

我が半身は世界一可愛い。

 

番号を呼ばれたのでカウンターへ戻る。

額はそれなりの金額でかなりいい宿で美味い食事をとったとしてもまったく問題がないほどだった。

日本だと日当で2、3万くらいの価値になりそう。

魔物は普通一撃で倒せないし俺たちはパーティじゃないので独り占めができるのも大きい。

 

命をかける金額かというと微妙かもしれないが。

効率も実はそんなに良いわけじゃなかった。俺たちはどちらもけっこうな方向音痴なのだ。

スカウトのジョブもあくまで戦闘スタイルの違いなだけで、道や魔物の位置を把握できたりするわけではない。

これなら索敵や道案内が得意なメンバーがいた方が報酬の分前を考えても効率が高い気がする。

その分成長も早まるし。

 

『そうだね…ごめん、私が道を覚えられたらいいんだけど…』

 

ダンジョンでは裏に控えている相棒がしょんぼりしてしまった。

普段は裏にいる俺が同じようにまったく道を覚えられないのでお互い様である。慰めたのだがお互いにしょんぼりする結果になってしまった。

 

早速先程のパーティに防具屋の場所を教えてもらい向かってみる。

戦闘ダンジョンの町だけありギルドから程近いわかりやすい場所にあったおかげで迷わずに済んだ。

装備品は安いものでも値段がそれなりにするため、昨日の稼ぎ分だけでは赤字になるが奪ってきた金はそれなりにある。

最も低ランクの皮製装備にとどまったが一通り揃えておくことにした。

 

準備を整えたら3層攻略を進める。

3層程度なら攻撃力を強化しなくとも一太刀で済むため、魔物の数が増えた分おいしいまである。

動きのキレも美少女なのに獣狩りゲーのステップ並みの挙動で回避できるため特に問題ない。

反復横跳びとかで鍛えていたらステータスが面白いくらい上がったからな…

防具は揃えたがいまだ被弾はなく進めていた。

 

4層へ進む入り口を見つけたので更に奥へ。

四匹同時はさすがにかなりの緊張感をもたらした。

ステップというよりもはや某ロボゲーのクイックブーストのごとくドヒャアと鳴っていそうな動きで翻弄しつつ切り刻んでいく。

正直楽しい。この調子で成長していけば好きだったゲームの動きを実演できそうだ。

スタイリッシュアクションゲームの動きとか憧れちゃうよね。無駄のない無駄な動き。

存分に狩りの血に酔いながら戦いをしていると、別のパーティを見つけた。

これまでも見ないわけではなかったのだがダンジョンは構造は同じでもパーティによって別の空間に飛ばされる事もあるようで、同時に10パーティがダンジョンに踏み込んでも全員が別々ということすら普通にあり得ることらしい。

パーティを組む事が前提である理由のひとつだな。

インスタンスダンジョン方式のようだ。

 

距離をとってすれ違おうとすると、男達はこちらを囲むような動きを見せた。

 

「ようかわい子ちゃん。金を出せば命は助けてやる。大人しくするんだな」

 

盗賊のグループだった。

 

 

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