魔法科高校の劣等生 ― 無限の境界 ―   作:ハヤオ

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第10章 沈黙の街

1. 九校戦からの帰還

九校戦の喧騒が終わり、第一高校のメンバーは帰路に就いた。

大型バスの窓から差し込む午後の陽光は柔らかく、エリカはシートに身を預けながら欠伸をした。

「ふぅ……やっと帰れる。」

 

隣の席に座る啓太は、窓の外を見つめたまま無言だった。

あの総力戦の最中、彼は黒鉄連盟の幹部を捕らえたが、その男が吐いた言葉が頭から離れなかった。

 

――“これは序章に過ぎない”――

 

(都市を巻き込む規模の作戦……次は何を狙ってくる)

 

エリカがそんな啓太の表情を覗き込む。

「ねぇ、帰ったらちゃんと休むの? あんた、ずっと気を張ってたでしょ。」

 

「休むつもりはある……けど、気は抜けないな。」

 

エリカは不満げに眉をひそめたが、それ以上は何も言わなかった。

 

2. 不穏な静けさ

翌週末。

啓太とエリカは休日を利用して都心へ出かけていた。

本来は装備のメンテナンスを兼ねた買い物の予定だったが――街は異様に静まり返っていた。

「……人が少なすぎない?」

 

普段なら賑わっている商業区も、通りを歩く人影はまばら。

店のシャッターが降り、路地には異様な冷気が漂っていた。

 

啓太は即座に周囲の空間を解析。

「……魔力密度が高すぎる。自然じゃない。」

 

次の瞬間、視界の端で光が瞬いた。

人影のようなものが現れ、そして音もなく消える。

 

3. 無音の現象

二人は通りを進むうち、異変の核心に近づいていった。

ある交差点に差し掛かった瞬間――周囲の音がすべて消えた。

車の走行音も、風の音も、人の足音も。

「……音が、全部消えてる?」

 

エリカが小声で言ったが、その声すらも自分たちの耳には届かない。

啓太は目を細めた。

 

(物理的な音波が遮断されてる……いや、空間そのものが振動を拒絶している)

 

彼は無下限の術式を展開し、干渉領域を拡大した。

すると、交差点中央に黒い円環が浮かび上がった。

 

4. 黒い円環

円環は直径二メートルほどで、内部は漆黒の霧が渦を巻いていた。

魔力反応は異常に高く、まるで空間の一部を切り取ったように見える。

エリカが刀を構える。

「触れたら危ないやつでしょ、これ。」

 

「間違いない。……多分、向こう側と繋がってる。」

 

啓太が解析を進めようとした瞬間、円環の中から腕が伸びた。

人間の腕だが、皮膚は灰色で、無数の魔法式が刻まれている。

 

エリカが反射的に斬りつけるが、腕は空間ごと消え、再び円環の中へと引っ込んだ。

 

5. 残党の影

啓太は円環の魔力波形を記録し、眉間に皺を寄せた。

「黒鉄連盟の残党……いや、それ以上だ。これは転送と封印の複合術式。」

エリカが真剣な眼差しを向ける。

「ってことは、この先に敵の拠点があるってこと?」

 

「そういうことだ。」

 

啓太は通信端末を取り出し、達也に連絡を入れた。

《市街地に異常空間を発見。転送術式の可能性大。》

 

《了解。こちらから支援部隊を送る。それまで持たせられるか?》

 

《やってみる。》

 

6. 初動戦闘

支援到着までの間、円環から複数の敵影が出現した。

全員が黒鉄連盟の徽章を刻んだ防弾スーツを着ており、魔力を増幅させた武装を構えている。

啓太は無下限領域で弾丸と魔法弾をすべて遮断。

「エリカ、二時方向!」

 

エリカは指示通り飛び込み、敵の一人を一撃で無力化。

刃と魔法が交錯し、交差点は瞬く間に戦場と化した。

 

7. 円環の崩壊

数分後、支援部隊が到着し、達也が直接術式解析に着手した。

「啓太、この円環……完全に閉じるには同調術式が必要だ。」

「同調、ね……なら合わせる。」

 

啓太と達也は同時に魔力を放ち、異なる理論の術式を円環へぶつけた。

無下限の空間遮断と達也の術式分解が重なり、円環はゆっくりと収縮していく。

 

最後の瞬間、内部から誰かの声が響いた。

 

――“志賀啓太、次はお前が来い”――

 

円環は完全に消滅し、静寂が破られた。

街の音が戻り、人々のざわめきが再び響き始めた。

 

8. 余韻

作戦終了後、エリカは啓太の隣で深く息を吐いた。

「……行く気、あるんでしょ?」

啓太は空を見上げたまま答えない。

だが、その沈黙がすでに答えになっていた。

 

エリカは小さく笑った。

「じゃあ、私も行くから。」

 

啓太は視線を向け、わずかに笑みを浮かべた。

「……分かった。」

 

夕暮れの街に二人の影が伸び、その先に次の戦いの気配が漂っていた。

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