魔法科高校の劣等生 ― 無限の境界 ―   作:ハヤオ

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第13章 境界に潜む影

 九校戦を目前に控えた魔法科高校は、どこか浮き立った空気に包まれていた。

 一年生にとっては初めての大会であり、二年生以上にとっても名誉と誇りをかけた戦いだ。

 だが、その熱気の裏で、水面下では冷たい波が広がっていた。

 夜の第一高校校舎裏。

 警備用センサーの死角を縫うように、黒ずくめの影が三つ。

 外部からの侵入者──その目的は、九校戦に出場予定の機材とデータの改ざんだった。

 

 影の一人が呟く。

「……セキュリティは想定より甘い。やはり表向きの名門校でも、裏は脆いもんだ」

「油断するな。相手は『魔法科高校』だ。何が仕掛けられているかわからん」

 

 その瞬間、足元の空気が重くなる。

 耳鳴りのような低い振動が、夜気に溶けて伝わった。

 黒服たちは本能的に足を止める。

 

 ──そこは啓太が展開していた**「無限領域」**の境界線だった。

 

 境界は目に見えないが、侵入者の体を蝕むような圧力を放つ。

 空間そのものが歪み、光の屈折がわずかに揺らめいた。

 

 闇の中から声が響く。

「……それ以上、入らない方が身のためだよ」

 

 啓太だった。

 黒いパーカーにジャージ姿という、訓練帰りのようなラフな格好。

 しかしその目は、夜闇を切り裂く刃のように鋭い。

 

「誰だ……!」

 侵入者たちは即座に魔法発動の構えを取る。

 だが啓太の右手が軽く動いただけで、三人の周囲の空気が固まった。

 

 時間が止まったかのような感覚──いや、正確には速度が限りなくゼロに近づいたのだ。

 空間操作による相対速度の低下。無下限呪術の応用だ。

 

 啓太は一歩踏み込み、目の前の男のフードを乱暴に剥ぎ取った。

「他校の偵察部隊、か。九校戦は好きだけど、こういう裏工作は趣味じゃないんだよね」

 

 抵抗もできずにいる三人を、彼は結界の外へと押し出す。

 結界外に出た瞬間、時間の流れが元に戻り、三人は地面に崩れ落ちた。

 

 そこに足音が近づく。

「啓太! ……また勝手に動いて」

 赤毛を揺らし、剣を肩に担いだ千葉エリカが現れる。

 

「勝手じゃない。ちゃんと校内の巡回ルートだったし」

「普通の巡回で、侵入者三人を無力化する人がどこにいるのよ」

 呆れたように言いながらも、エリカの目はどこか楽しそうだ。

 

「……ま、ありがと。これで機材に手を出されずに済んだわけだし」

「礼なら、今度の九校戦で勝って返してよ」

「もちろん!」

 

 二人のやり取りをよそに、遠くでは再び結界が微かに波打っていた。

 ──それは啓太の無限領域が外部からの干渉を感知している証拠。

 ただの侵入者ではない、もっと大きな影が動いている。

 

 九校戦を揺るがす嵐は、すでに始まっていた。

 

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