魔法科高校の劣等生 ― 無限の境界 ―   作:ハヤオ

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第6章 九校戦への序曲

1. 新たな任務

戦闘から三日後。

啓太は、生徒会室に呼び出されていた。

午後の光が大きな窓から差し込み、机の上の書類を柔らかく照らしている。

「志賀さん、あなたには九校戦の補助員として参加していただきます。」

 

司波深雪は穏やかな微笑を浮かべつつ、机に資料を並べた。

その声色は丁寧だが、含まれる空気はどこか緊張を帯びている。

 

「補助員って……具体的に何を?」

啓太は深雪の目を真っ直ぐ見返す。

 

「表向きは装備管理と安全監視ですが、実際には選手の護衛です。」

深雪は淡々と告げると、資料の一部を啓太の方に押し出した。

 

競技スケジュールや会場図、そして裏面には――

黒衣の男のシルエットと、「黒鉄連盟」という赤い警戒タグ。

 

「先日の襲撃犯と同一組織です。大会を利用し、何らかの接触、あるいは妨害を行う可能性が高い。」

 

啓太は少し視線を落とし、指先でページをトン、と叩いた。

「……わかった。引き受ける。」

 

2. エリカの提案

放課後、昇降口を出ると、壁にもたれかかって待っている人物がいた。

千葉エリカ。

腕を組み、やや不満げな顔。

「また何か面倒な話、引き受けたでしょ。」

 

啓太はため息をつく。

「お前は勘が良すぎる。」

 

「九校戦でしょ?あたしも選手として出るんだから、一緒に行動した方がいいじゃない。」

エリカは当然のように言う。

 

「お前、出場競技は?」

 

「《ミラージュ・バット》と《スティープ・シューター》。速攻勝負が性に合ってるから。」

 

啓太は少し考えた。

「……なら、お前用の補助術を作る。」

 

「は?補助術?」

 

「飛行中の空気抵抗を制御し、重力方向を数度ずらす。速度を1.4倍にできる。」

 

エリカは一瞬口をぽかんと開け、すぐに笑う。

「……やっぱあんた面白いわ。」

 

3. 密かな調整

夜、啓太は寮の部屋に籠り、机の上いっぱいに会場データを広げていた。

風向きの過去記録、競技の魔法制限リスト、空間座標の3Dモデル――。

(……制限内でどうやって抜け道を作るか)

 

無下限呪術は危険すぎて競技内は禁止だ。

だが、危険な部分を外し、純粋に空間の補助だけに絞れば、規則には触れない。

 

(距離無限化は封印、代わりに局所空間傾斜で速度増幅。監視官にも気付かれない)

 

彼は端末に術式コードを流し込み、光を帯びた試作モジュールを完成させた。

 

4. 影の会議

都心地下施設。

黒鉄連盟幹部会議。

「……奴の術式は現代魔法の範疇外だ。」

「空間そのものの無限化……手に入れれば、世界の均衡が崩れる。」

 

女幹部が映像を止め、冷ややかに言った。

「九校戦。奴は必ず来る。混乱を利用し、術式サンプルを奪う。」

 

「第一目標は本人、第二は……この少女。」

映像にはエリカが映っている。

 

「奴の精神的支柱を揺らせば、必ず隙が生まれる。」

 

5. 特訓の日々

翌日から啓太とエリカは訓練場に籠もった。

「じゃ、試してみよっか。」

エリカが木刀を構える。

 

「行くぞ。」

啓太が指を鳴らすと、空間が傾き、エリカの体が滑るように加速する。

 

「――っはや!」

その勢いで木刀を振り抜き、標的を粉砕。

 

「悪くないけど、このままだと速すぎて場外飛び出すわよ。」

 

「リアルタイムで補正する。」

啓太の真剣な表情に、エリカは思わず笑った。

 

6. 本番直前

大会前日。

啓太は選手控室の奥で、全競技場の空間座標マップを再確認していた。

だがその時、通信端末が短く震えた。

――《目標発見、接近中》。

 

啓太は即座に立ち上がる。

その直後、会場外の搬入ゲートで爆発音。

煙が上がり、選手たちがざわめく。

 

「啓太!」

エリカが走ってくる。

 

彼は彼女の肩を掴み、短く告げた。

「離れるな。……来るぞ。」

 

煙の向こうから、黒衣の影がゆっくりと姿を現す。

その口元には、不気味な笑み。

 

九校戦、開幕前夜。

嵐の予兆が、音もなく会場を包み込んだ――。

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