魔法科高校の劣等生 ― 無限の境界 ―   作:ハヤオ

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第7章 九校戦開幕

1. 開会式

夏の陽射しが、湖面を鏡のように照らしている。

第一高校代表団は、整列して開会式の舞台を見上げていた。

背後には八校の選手たち、そしてスタンドを埋め尽くす観客のざわめき。

「九校戦、開幕です!」

司会者の声と共に、空に花火が咲いた。

色鮮やかな光が水面に反射し、競技会場を彩る。

 

啓太は舞台横、補助員席からそれを見ていた。

視線は観客席を舐めるように動き、一瞬たりとも警戒を緩めない。

 

(……今のところ、異常なし)

 

だが、会場全体を覆う空気には、目に見えない緊張が漂っていた。

それは啓太だけでなく、深雪やほかの警戒要員も感じ取っている。

 

2. 第一競技《スティープ・シューター》

初日の目玉競技の一つ。

魔法で推進する小型ボードに乗り、空中の標的を撃ち落とすタイムアタックだ。

「よし、啓太。例の補助術、準備OK?」

控室でエリカがにやりと笑う。

 

「空間傾斜は安定してる。あとはお前の反応速度次第だ。」

 

「任せなさい。」

 

スタート地点、エリカはボードに跨り、スタート信号を待つ。

啓太は観測モジュールを通じ、彼女の周囲の空間パラメータを把握していた。

 

――ピッ!

スタートの電子音と同時に、エリカの体が空気を切り裂く。

傾斜補助により、初速は他選手の1.3倍。

 

「くっ、目で追えない……!」

実況席が驚きの声を上げる。

 

エリカは次々と標的を撃ち抜き、ゴールラインを一気に通過。

記録表示板には、歴代2位のタイムが光った。

 

「やった!」

戻ってきたエリカが手を振る。啓太は小さく頷いた。

 

3. 裏の動き

同時刻、会場外周。

黒鉄連盟の構成員たちが、整備員に偽装して立ち回っていた。

「第一目標は志賀啓太。競技後の混雑時に接触する。」

「女の方はどうする?」

「釣り餌にする。動揺させればいい。」

 

彼らの目は冷たく、手際は迷いがない。

 

4. 《ミラージュ・バット》

二日目の競技。

巨大なバットで空中を滑空し、距離を競う。

エリカはこの競技にもエントリーしていた。

啓太は観測席から視界を広げ、風向きと気流を制御する。

「……今だ。」

 

合図と共に、空間の傾斜がエリカを前へ押し出す。

彼女は風を切り裂き、湖上を一直線に駆け抜けた。

 

記録は堂々のトップ。

観客席から歓声が上がる。

 

だが啓太の耳には、別の音が届いていた。

短く、鋭い通信音。

 

――《接触試行、警戒》

 

5. 接触

競技後、エリカが控室へ戻る途中、背後から男の声がした。

「千葉エリカさん、ですね?」

 

振り向くと、整備員姿の男が立っていた。

その笑みは、どこか薄気味悪い。

 

啓太はすでにその場へ向かっていた。

「エリカ、離れろ!」

 

男の袖口から、魔力を帯びた短剣が閃く。

同時に啓太の指が鳴り、空間が波打った。

 

短剣は途中で動きを止め、男の手ごと空中で固定される。

 

「……っ!」

男は舌打ちし、仲間の援護を待つが――啓太は一歩で距離を詰めた。

 

「二度は言わない。消えろ。」

 

低い声と共に、男の体は重力方向を失い、地面へ叩きつけられた。

 

6. 嵐の前触れ

拘束した男は即座に運営へ引き渡された。

だが啓太の胸中に安堵はなかった。

(こいつら、まだ本命じゃない。……次は必ず、もっと大きく仕掛けてくる)

 

夕暮れの湖面が赤く染まり、遠くで観客たちの笑い声が響く。

その光景の裏で、嵐の渦は静かに力を溜めていた。

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