オリ異聞帯で上条さんを召喚する話 作:自爆しかありますまい
――やっべぇ、体燃えてる。
そんなところで前世の記憶を思い出した。
不肖、俺こと
時計塔の現代魔術科に所属して幾月、マリスビリー何某にへっどはんてぃんぐされてAちいむの一員になり申した。
……古風な言い回しして現実逃避しようと思ったけど無理だったわ。
ともかくとして前世で遊んだソシャゲの「Fate/Grand Order」こと「FGO」世界に転生していたらしい。
らしいというのも、記憶が戻ったのも今し方。コフィンの中で本能寺(動詞)していた時の出来事だった。
それからは割と怒涛の展開が続き、気がついたら主人公たちの敵「クリプター」とか言うのになってしまったのだ。
いや、弁明させてほしい。
もう何もかも終わった後に蘇生された訳だから、俺に拒否できるような権利とかは一切なかったのである。
だって拒否ったら死体に逆戻りしてしまうし。
そんなこんなで周りの空気読みしながら「うんうん、そうだね?」と適当に返事していたのだが、とうとう異聞帯の担当を割り振られてしまった。
これで晴れて、世界の敵という事だ。
「では私のお仕事はここまで。後は勝手に頑張ってくださいね?」
「あ、はい」
異星の使徒とか言う、どの面フレンズの一人である桃色狐の女性コヤンスカヤにタクシーされて担当の異聞帯に訪れていた。
いきなり水着に着替えだした辺りビーチを満喫する予定なのだろう。なんだコイツ。
そのまま呆然とコヤンスカヤを見送った。
……、
「すっげぇ、あれキラウェア火山とかじゃなかったけ? 迫力すげぇなおい」
IQがとんでもなく低下していると思われるが、現実から目を背ければそうなる。
場所はハワイ諸島、ハワイ島。ヤシの木に囲まれ、あたたかな日差しの南国ビーチ。そのすぐ横の一般道。
それ以上に特に言うような事は無く、事前に知らされていなければぱっと見異聞帯とは分からないだろう。それほどまでにやけに
この後は「FGO」のストーリー的なメタ視点で考えるなら、俺は倒されて異聞帯の要である空想樹は伐採されるだろう。
そこから順当にいけば、主人公に負けて死ぬか異星の使徒辺りに回収されてなんやかんやあって死ぬのがオチってところか。どっちにしろ死ぬしかないじゃない。
「ハードだなぁ」
かと言って、主人公に勝とうと全力で潰しに行くのも正直気が引ける。理由やら境遇がどうあれ、彼らは死に物狂いの勢いで戦って人理修復という偉業を成し遂げたのだ。それに対してその仕打ちは中々気が進まないのが本音だ。
あと単純に勝てるビジョンが浮かばない。他のクリプターはともかくとして、キリちゃんやデイビッちゃんを倒す(予定)奴らを相手にするのはちょっと……。
だったら、この立場を使ってスパイとしてカルデアの味方した方がいいんじゃね?
何せ、今の俺の状況は異星の神に負債があると言う事だ。原作の話を鵜呑みにするのであればAチームのリーダーであるキリちゃん……もといキリシュタリアのおかげで蘇生された事になるからな。であれば、俺に対する強制権や使徒による監視やらなんやらで結構動きづらい。最悪変な動きを見せればリンボや言峰に背後から
俺はまさしくキリちゃんのついでに蘇生された消耗品な訳だ。そんな俺が堂々と亡命したらどうなるか分かったもんじゃない。
故にスパイするか、潔く人類の敵になるか……。
でもまあ、一人ぐらいはカルデアの味方になった方が良いか。
「うーん、どうしたものか」
『――何かお悩み?』
『あ、いえ、お構いな――』
このアメリカ、ハワイにしては随分と流暢なフランス語で背後から語りかけてくる少女の声。
先ほどから「あーでもない」「こーでもない」とうんうん唸ってばかりいるから、不審に思われたのか声をかけられてしまったようだ。
つい反射的に拙いながらもフランス語で返事するが、そこに居たのは予想外。いや、有り体に言えば世界観に合わない人物だった。
「――
我ながら間抜けな声だったと思う。
そこに居た人物は金髪碧眼、まるで絵本の中から「理想論のお姫様」が飛び出してきたかの様な色白の肌、スラリ伸びた美しいボディライン。ダイバースーツに似たコルセットを芯として薄い膜を何重にも重ねて作ったような、身体のラインがハッキリと出る未来の宇宙服っぽいよくわからないデザインのドレスを着込んだ少女。
名前をサンドリヨン。世界的に有名な童話「シンデレラ」のフランス語読みの名前を持つ魔術師であった。
『私の名前を知っているってことは……フランスの魔術師? それにしてはフランス語に慣れてないようだし、英国辺りの魔術師かしら?』
そう首を傾げるサンドリヨン。
かわいい。――じゃなくて
いや、だってお前は「とある魔術の禁書目録」のキャラだろ? なんで異聞帯に居るんだ?
『まあ魔術師ではあるんだけど、待って、今めちゃくちゃ混乱してる』
『?』
サンドリヨンはライトノベル「とある魔術の禁書目録」の新約三巻で登場したキャラクターだ。
童話「灰被り」を利用した魔術を扱う魔術師で、ハワイ島の空港で主人公の上条当麻の前に現れて攻撃を仕掛けた奴だ。原作ではその後マリアンという魔術師に改造されて人間テーブル(文字通り)にされたり、その状態から五体満足に組み立てる際パーツの不足でロリ化したり等散々な目にあうキャラでもある。
とまあそんな
つまり、この「FGO」の世界に居ること自体おかしいって事だ。
『……私として何でもいいしどうでもいい。それよりも早く逃げることをお勧めする』
「は?」
『今からここは戦場になるって事』
――ごうんっ!!!
目の前の地面が、物理的に吹き飛んだ。コンクリートや街路樹として植えてあったヤシの木が吹き飛びビーチの砂塵が舞う。
地面が砕かれた、と言うよりも何か圧倒的なパワーで無理やり地面ごと綺麗にくり抜かれて空に飛ばされたような状態だった。
あと数歩でもズレていれば、体ごと吹き飛んでいただろう。いくらAチームに選ばれたとはいえ、魔術刻印すらない初代のクソ雑魚魔術師だぜ俺!?
何なら飛んできた瓦礫で死にかけた程だ。
「あっぶなっ!」
何とか命からがら回避した俺は、ガバっと顔をあげて周囲を見渡す。
砂塵が舞って若干視界は悪いが、左斜め後方にサンドリヨンがいた。
と言うかあの
サンドリヨンの「灰被り」術式の効果は、元の童話に沿っている。曰く「一夜にして素人娘に夜会慣れした王子を感嘆させる程のダンスの技術を仕込んだ」という強引な解釈を用いて、彼女に超越的な運動能力を付与している。それは多少喧嘩慣れした主人公の拳だろうが、時速230kmの銃弾だろうが、それどころか間近にクラスター爆弾が落ちても、全弾回避するとまで言われた程だ。そりゃあ、こんな攻撃程度訳ないだろう。
でも残念だったな、俺は死にそうなんですが助けてください!
『科学サイドの魔術師狩りか。
「え、今なんて」
割と聞き流せそうにない言葉が聞こえたような。
すると砂埃の向こう側。恐らく地面を抉った張本人らしき人が居た。
ゆっくりとこちらに近寄ってくる。砂塵の様な汚れ、不安定な足場と言った物を意に介していないようにゆっくりと砂埃の中から人物が現れた。
黒と白が特徴的な服。白い髪、赤い目を持った悪魔。
あれは――
「ア、
いや確かにサンドリヨンが居る以上、一方通行もいること自体はなんらおかしい事ではない。おかしい事ではないけども。
ここって「FGO」の世界だよね? 「とある」の世界じゃないよね? コヤンスカヤの単独顕現がバグって
余計に混乱してきてしまった。
「あァ? ンだオマエ」
ギロリと切り裂くような眼光が飛んでくる。
赤い瞳に日焼けを知らない白い肌と白い髪、もやしの様な細い体。黒を基調として白の模様が入ったTシャツとジーパン。これで見間違いの人違いの線は薄いだろう。
彼の名前は一方通行。サンドリヨンと同じく「とある魔術の禁書目録」で登場する主人公格のキャラだ。
ベクトル操作という力の向きを操る超能力を持った化け物で、作中では科学サイドの「最強」の名を欲しいがままにしている存在。
……いや待て――あいつチョーカーはどうした!?
「でもまァ……全員殺せば問題ねェよなァ!」
そう一方通行は心底楽しそうに笑った。
原作である「とある」でサンドリヨンが登場する頃の一方通行は、紆余曲折あって脳に銃弾をかすめたせいでチョーカーが無ければ超能力どころかまともな生活すらできなかったはずだ。
それをしていない? ということはここは「とある」の世界じゃないのか? いや時系列の問題か?
ああクソ。よくわからん。
「よそ見してる暇あンのかァ三下よォ?」
付近にあった広告の看板が吹き飛んでくる。それをすれすれで躱すが、背筋が凍る。要はただの鉄板が自分目がけて飛んでくるのだ。
しかし、思ったよりも大規模な攻撃をしてくるという訳では無いようだった。
彼がその気なら周囲一帯を吹き飛ばすようなこともできなくはないと思うが。
「あいつサンドリヨンの術式の範囲外からちまちまと瓦礫飛ばしてやがる。詰将棋でもしてる感覚なんですかね、あの第一位は」
どうにも、俺を危険な存在判定をしていない――あるいは、彼本来のやさしさかも――ようでサンドリヨンを狙うついでに甘い攻撃が飛んでくる程度だった。
しかし、一回でも当たればお陀仏だから頑張って避けるけど。
魔術で牽制の一つでもできればいいが、残念ながらそんな都合の良い魔術なんか使えません。ガンド? ああ、ルーン魔術がなんだって?
その上、一方通行は持前のベクトル操作能力のせいで、基本的に物理現象が伴うならなんでも反射できる。石でも投げてみろ、こっちに飛んで返ってくる。
『なんで狙われているので?』
『分からない。間接的な理由ならわかるけど、多分目に留まったからじゃない?』
『なんだそりゃ』
しっかし、ずっと遠距離の作業攻撃に徹する一方通行さん。恐らく近づいてこないのは、サンドリヨンの術式の一つにある『ガラスの靴』によるものだろう。
あれは一定範囲内に居る人間の足のサイズを、サンドリヨンの足のサイズである二二・五センチを超えたものには指の切断、小さければ骨と骨を強引に伸ばす中々えげつない術式だ。ならこんな歪な戦い方も頷ける。それに元来、一方通行は中遠距離からの戦いの方が純粋に強い。そんなものだろう。
今でこそ彼女は灰被りの術式で回避しているが、問題は一方通行のスパコン並みの頭脳で戦闘を組み立てているという点だ。正直、いつ詰みが訪れてもおかしくはない。かと言って一方通行が見逃している内に、サンドリヨンを見捨てて逃げるのは個人的にしたくない。(そもそも逃げられるとは言っていない)
まさしくジリ貧。時間ばかりが経過する。
すると。
『
「――ええい、無理に決まっているだろう役被り。しがない作家サーヴァントに何を期待しているんだ。そもそも何故灰被りなのだ、あれか、少女の憧れが抜けきっていないメルヘンな思考回路か。だとしたらお似合いだな。きっと十二時の鐘が鳴っているのだろう、早くみすぼらしい姿にでもなったらどうだ? ん?」
『黙りなさい。言った私がバカだった』
青い髪と
いや――
「あ、アンデルセン!? どうなってんだここ!?」
あんたなんで居るんだ? いや、こっちは居てもおかしくは無いのか? ん? あれ?
キャスターの英霊「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」。世界的に有名な童話作家の一人だ。
FGOの世界としてはなんら居ても問題はない。けれど組み合わせの問題だ。
具体的にはこう、畑が違う。
『キャスターの真名を知っているなんて、……聖杯戦争の参加者?』
『いやいや、そういう訳じゃないない。たまたま知っていると言うか何と言うか』
全力で否定する。
こんな訳分からん状況でサンドリヨンとまで敵対はしたくない。
あれだ、コラボストーリー的な奴か。
異聞帯とか名乗ってますが実は「『とある』のキャラ使って聖杯戦争!」って感じの期間限定イベントですってオチだ。そう解釈するのが一番しっくりくる。みたいな本編時空に関係ないアレだろう。
「いや、魔境じゃないですかやだー」
どちらにしても「とある」と言えばとんでもインフレの世界だ。英霊と真っ向から戦えるようなバケモンがゴロゴロといる。
それが? 聖杯戦争? ハワイ島消し飛ぶわ。
それはそれとして、全速力で一方通行から逃げる。趣味のロードバイクで培った体力がこんな形で役に立つとは。
何故か知らないがサンドリヨンも一緒になって逃げている辺り、戦うつもりはないのだろうか。
『へるぷみー! サンドリヨンさぁん!』
『ちょっと、こっち来るな!』
『死ねとおっしゃるので!?』
ただこういう場合は大抵ギャグ空間に片足突っ込んでると相場が決まっているので、体をノリに任せる。そっちの方がまだ生存率が高そうだ。
サーヴァントをこちらも召喚して迎撃ってのも考えたが、そんなことをしている場合ではない。魔術もこんな咄嗟な状況だと正直碌なものを使えない。俺の持っている手札と言えばあとは「大令呪」ぐらいなものだ。
「不条理ってか? なんも楽しくないんですがそれは。いや、元からそういうものか」
そんな感じで一人で納得していると。
「おいかけっこするような歳でもねえンだけどなァ。……いい加減愉快なオブジェになりやがれ三下!」
メキメキメキメキメキメキメキメキバキバキバキバキバキバキッ、ゴシャン!!! と。
解体工事の作業現場の様な耳をつんざく音が炸裂した。
端的に言ってしまえば、黒ひげ危機一髪のように住居入り三階建てのテナントビルが一棟、放物線を描いて飛んでくる。
「ちょ、ま」
圧倒的な質量攻撃の前に本気の命の危機を感じて、ってそんな事を考える暇もない。ただひたすら押し潰されてぺしゃんこにならないように逃げる。
ゴッッッ!!!! という凄まじい音と共に建物が地面に衝突して倒壊。飛んできた石やコンクリートもそうだが、爆風によって背中から後押しされて前方に吹き飛ばされる。
半ばヘッドスライディングの様な姿勢で着地した。
「あだっ!?」
余りに理不尽すぎる現象に、先ほどまでの世界がどうとかのまとまり切らない思考が完全に抜け落ちてしまう。
完全にサンドリヨンと話していたからとばっちりを受けた訳だけど、それにしたってあの一方通行とガチンコ鬼ごっこは運が悪い。
「おい無事か? 死体ならそこで這いつくばってろ。よし死体だな」
「勝手に死亡判断しないでくれませんかね? 死ぬかと思ったけども!」
いつの間にか傍にいたアンデルセンが爆風で這いつくばった俺の体をつつく。たまらず言い返すが、こんなの命が何個あっても足りない。
そんなことよりも、明らかに先ほどの一方通行が好まなそうな攻撃に目をひん剥く。
確かに「とある」原作でも似たようなことを行っていたが、あれは状況が状況だ。たった一人、とても回避と接近戦に特化したサンドリヨンに対して取るような戦法とは思えない。
いくら人影が少ないとは言え、完全に居ない訳じゃない。そんな場所で無意味に破壊をまき散らすような攻撃はしなかったはずだ。
そもそもの話。
「おい一方通行! 関係ないやつ――主に俺だけど――を巻き込むなよ、上条当麻にぶん殴られるぞ! と言うか俺がぶん殴ろうか!? 腕があらぬ方向に曲がるけどな!」
「あ? 上■当麻だァ?」
軽口を叩いているような言い方にはなってしまったが冗談ではない。
いくら敵魔術師を追っているとは言え、あの悪党の美学を一番に掲げる一方通行が見かけた奴を無差別に攻撃? ありえない。
そんな自らが忌み嫌う方法を、なんらかの事情以外で意図的に行うとは考えずらい。
「
…………………………………………………………………………。
「――――は?」
一瞬で頭が真っ白になった。
先ほどよりもはるかに間の抜けた声だったと思う。それほどの、まるで頭を固い鈍器で殴られたような感覚だった。それどころか電流、いやキックボクサーに顎を蹴り上げられるほどの衝撃。
いや、だって一方通行が存在するということはアレイスター・クロウリーの
だからこそ、ここが「FGO」の世界である事と異聞帯であることの二つを加味して、なまじ最悪の結論が出てしまう。
震える声を抑え込むようにしてサンドリヨンに最後の逃げ道を問う。
『……サンドリヨン、■条■■について知っているか』
『先ほどから、何の話をしている?』
『い、良いから答えてくれ!』
彼女が知っていないのはおかしい。
なぜなら彼女は原作において対「■■■■」としてグレムリンという魔術グループに雇われた外部魔術師だ。だからフランスからわざわざハワイにまで来たんだろう!?
しかし、現実は非常だった。
『誰それ?』
――ああ、クソ。そういう事か。だからこそ腑に落ちた。そもそもここは「FGO」世界、いいや型月の世界だ。って事は……。
これは……文字通り最悪な異聞帯だな。
「はッ、これは――――流石に話にならないぞ」
ここは異聞帯。既に剪定されたありえざる世界の続き。
ルールと
これより始まるは異聞聖杯戦争。
多くのゲテモノをかき集めて。
その杯は誰の手に。
うーん、とんちき
上果(かみはて)
身長:166cm
体重:56kg
性質:中庸・善
出身地:英国ロンドン/日本
特技:ロードバイク、カラオケで95点を取れる、実は四か国語話せる
好きなもの:ハイキング、登山、読書
嫌いなもの:理不尽、魂と尊厳を守れない奴、内ゲバ
一人称:俺、上果さん
二人称:手前、お前
決戦の日:燃えるような地平線/星よりも遠い君
魔術系統:Magick式魔術(儀式魔術)、類感魔術
魔術回路・質:E++
魔術回路・量:E
魔術回路・編成:正常(前世の記憶によって一部変質)
魔術属性:火
魔術特性:抽出、拡散
起源:拡散/虚飾(前世の記憶によって変質)
時計塔、現代魔術科所属の魔術師。初代。