オリ異聞帯で上条さんを召喚する話 作:自爆しかありますまい
カルデア様。
異種格闘聖杯戦争『ナチュラルセレクター』への招待状を発行いたしました。
外資系をはじめ二十七社の協賛によって開催の運びとなりました本大会へのぜひとも、参加のご検討をお願いします。
ルールについては以下の事項のとなります。
・多対多のトーナメント制で雌雄を決するものとする。
・今回の参加陣営は七つ。それぞれに「サーヴァント」が一騎ずつ配属され、そのサーヴァントが倒された時点でその陣営の敗北が決定する。また、各陣営には代表者である「マスター」を一人選出しマスターが倒された場合もまた同様であるものとする。
・舞台となるのはハワイ諸島、ハワイ島。攻撃によって建物等の破壊が起きても、罰則の発生はないものとする。しかしハワイ島沖に出てしまった場合はそこまでで強制敗北とし、そこまでで予選敗退とする。
・勝敗は対戦相手の意識を完全に奪うか、降参のサインによって決定する。意識を奪う過程で対戦相手を死亡させてしまった場合も、勝者に罰則はないものとする。
・対戦時間は十五分。途中休憩も無い。制限時間が過ぎた場合、大会専属の医師が両選手の身体的ダメージを計測して判定を行うものとする。
以上の条件を満たさない者は参加不能とする。また、競技中に発覚した場合はこれまでの経過を全て取り消して退場処分とする。
違反した選手が大会運営側からの命令措置に従わない場合、他参加者への協力を依頼し、強制的に排除するものとする。
『自然淘汰を決定する者』の名を冠する本大会の優勝賞品はたった一つ。優勝者には、なんでも願いが叶う万能の願望器『聖杯』が与えられます。
今まで、あらゆるオカルトや科学が学園都市方式ではないだけで前時代的、眉唾扱いと言った苦い思いをしてきたと思います。それがいかに不当で不適切、理不尽であるかは我々はいたく存じております。
この機会に、ぜひとも本物の証明をなさってくださいませ。
(白紙化地球、シャドウボーダー運転席、ダヴィンチ謹製魔導プロテクト搭載ホログラム投影機能付きカメラの映像より)
『……上果さん、ですか?』
『そうだ、なにせ次の異聞帯担当のクリプターだ。情報共有ぐらいは行なっておいた方が良いだろう』
話を切り出しのはゴルドルフ新所長だった。
場所はノーチラス内部、シャドウボーダー。ハワイ異聞帯への移動中、歴戦のマスターである彼――
インド異聞帯を攻略してから早数日。次の攻略対象は比較的小さいハワイ異聞帯になった事から始まった。
理由はかくあれど、やはり一番の要因はその圧倒的なまでの異聞深度の低さにあった。その数値はE-、今までにない程の低さであった。
異聞深度と言うのはどれほど元の世界……汎人類史から外れているかを示す指標だ。それを踏まえて確認すれば、ほとんど汎人類史から外れていないだろうという推測は簡単な物だった。具体的に言えば、あのロシア異聞帯よりも下だ。
そのため会議やトリスメギストスⅡの演算でも後回しにせず、海上移動が可能になった今こそしっかりと攻略した方が良いという結果になったのだった。
『上果という男ははっきり言ってしまおう。カドック・ゼムルプス以下の魔術師未満だ。それもそうだろう彼は今代から魔術師として活動を始めた、いわゆる「初代」に当たる。カルデアのデータベース上でも魔術刻印すら無い一般人に近いと明記されている以上、彼よりも異聞帯に注意した方が良いだろう』
そもそも魔術師に求められるのは積み重ねだ。
魔術刻印というものがある。一子相伝のその家系が残してきた研究成果の様なものだと想像すればいい。それは魔術師の強さに直結しないものの、ある種の指標になりえる。考えても見てほしい。一代でのし上がった天才と数世代もの助走の果ての天才ならば、どちらの方が優れているだろうか。ノウハウや蓄えのある名家の方がより深く活動できるだろう。そして、その蓄えは魔術刻印に顕著に反映される。それが無い以上は大なり小なり程度が知れるというものだ。
そこにゴルドルフは「……確かに初代でありながら時計塔に入門できたのは快挙と称して良いがな」と補足した。
『それに上果の年齢は見た目通りなら二〇歳程度。初代であることを加味して十代の頃から魔術の研鑽を積んだとしてもおよそ十年行くか行かないかだろう』
『それは確かにそうですが……』
『……侮れとは言わない。あくまでも優先順位での話だ』
藤丸の隣に居たマシュ・キリエライトはいまいち煮え切らない態度で言った。
それに反応したゴルドルフは少し気まずさを覚えたのか、話を切り替えた。
『そうそう、性格やパーソナルな情報について聞こうじゃないか。勿論、視察の際にもそういったデータは閲覧したが、彼だけ情報が薄すぎて紙一枚で完結していたからね。うん』
『彼は何と言いましょうか、遊び心がある人でした。よく映画などを他のスタッフやAチームの方と見ていました。勿論私もドクターと一緒に同席させていただいたこともあります。後は、カルデア基地では趣味のロードバイクができないことをよく嘆いておられました』
『……他には?』
『気が立っている事の多かったカドックさんと、他人とお話のしたがらない芥さん以外のAチームメンバーと仲はそれなりに良好でした。確か、とりわけデイビットさんと仲が良かったと思います。本人は「歳が近いからじゃね?」とは言っていましたが』
それ以上マシュの言葉が続く事は無かった。
『……それだけ?』
『え、あ、はい』
『聞いておいてなんだが、彼は本当にAチームのマスターだったのだろうか……』
『確かにこうして考えると何故Aチームに彼が選ばれたのか分かんないですね』
話を聞いていた金髪のスタッフであるムニエルが疑問を投げかける。
実際、魔術師としては初代。これと言った特徴が無く、並み以上の精鋭が集うAチームに所属するのはいささか疑問が残る。当然、カルデアにはAチーム以外にも多くのチームが存在する。成績上位からA、B、C、Dと連なっている。彼よりも魔術師として有能な者はそれこそごまんといる。しかし彼はカルデアに訪れてからAチームの所属であった。
『……ふむ。最低値の異聞帯、最弱の魔術師と言ったところか。案外、そういった手合いの方が厄介なものだ』
ホームズからの言葉で、今までのカルデアでの戦い方を思い出す。
だって、カルデアの歩みは常に劣勢からの逆転から始まった。特異点、異聞帯、そのいずれもが自分たちが圧倒的に不利な状況からの戦いばかりだ。
逆の立場で考えよう。もしも圧倒的とは言わないにしろ有利な状況から始まった戦いで、敵は最弱や最低値とまで不利な状況。ここから逆転の可能性は限りなく低い。……それは本当だろうか。今までのカルデアの旅を少しでも振り返ればそんな答えを自信満々に語るのは愚の骨頂。故にホームズはそう評価したのだった。
『それにこの「クリプター」ペペロンチーノから渡された一通の招待状。そこには「ナチュラルセレクター」という聖杯戦争のルールが記されていた。異聞帯で聖杯戦争と言うのは今までにないことだ。気を引き締めてかからねばならない』
それは前回のインド異聞帯攻略時の事だった。担当クリプターであるスカンジナビア・ペペロンチーノとの会話の際に手渡された一通の手紙。中にはナチュラルセレクターと称された聖杯戦争への招待状だった。
それについて様々な考察をめぐらせて来たものの、結局は堂々巡り。最終的な考えは「行ってみるしかない」という至極単純なものであった。
『――さあ、そろそろ嵐の壁が見えてくる』
そう言ったのは、ノーチラスの船長である英霊ネモ。
現在異聞帯の周囲は嵐の壁で覆われている。それを乗り越えた先が異聞帯の世界と言う事になる。座標はハワイ諸島、ハワイ島。第五の異聞帯はすぐそこに。
1
(ハワイ島、エリソン・オニヅカ・コナ空港出入国ゲート、防犯カメラの映像より)
時期的には大体、旅行シーズンを逃しているだろうか。それでも空港内はそうとう人で埋め尽くされており四方八方の人の海。例え空調がガンガンに効いていたとしても、土地自体の熱気も合わさって蒸し風呂状態。しかしハワイの観光産業の規模を考えるのなら、これでもし空港内が人の疎らな場所に成り下がっていたらきっとハワイの経済は破綻の一途をたどるだろう。
その利用客たちは実に多種多様だ。
一番多い世界各国からの観光客は勿論の事、それを誘導する警備員、明らかに空港慣れしている輸送業者、手にプラカードを持ったツアーガイド気取りの胡散臭い地元人。しかし、明らかにそのどれにも属していないであろう人も見受けられる。
例えば、黒いフィールドワーク用の服だろうか少なくとも観光地に着ていく服装ではない黒髪の東洋人とか。
あるいは、ちょっときわどいインナーとゴテゴテとした装甲を着た、映画の撮影の様な装備の紫髪の後輩とか。
分類をするとするならば
『……なんで空港?』
『ネモさん曰く「何でも入国というのはそういうものだ」というある種のテクスチャが反映されてしまったそうです。でも通信が阻害されている訳でも、敵からの攻撃という訳でも無いようなので一時的に他の皆さんと離れてしまったという感じでしょうか』
見たこともないような人混みを前に、動くに動けない二人。それどころか追撃の英語アナウンスを前にアウェー感はすさまじいものであったとだけ。
キョロキョロと周りを見渡した少年。彼の目に映る光景は空想樹の様な異物が無ければ、超越した技術体系によってできた未来都市でも、まして汎人類史と比べて退化した世界観でもない。実際に行った事があるのか、テレビの特集で見たのかは忘れたが、彼の記憶の片隅にある「そういえばハワイとかの空港ってこんな感じの場所だったよなぁ」という感覚をしみじみと感じていた。
『(とりあえずカルデアとの合流を目指す訳だけど、現在地がどこか調べないとかな。あってよかった翻訳の礼装)』
少年――藤丸は胸をなでおろす。
というのも一般的な高校生程度の日本人からして、英語と言うのは授業で習おうとも本場で役に立つことはまずないだろう。最大の鬼門ネイティブ発音に、要点を押さえすぎて何書かれているか分からない英文、それらが英語慣れしていない人を苦しめるのだが藤丸としては
そもそもの話として経歴のせいか妙に外国慣れしてしまったのでこんなところで無理に焦る必要はないのだろう。
ところでその後輩――マシュ・キリエライトはデザイナーズベイビーであり、その人生のほとんどをカルデア基地で過ごしてきた彼女にとってこの場所はどうだろうか。
今までは異聞帯というまったく知らない場所、例えるなら異星という体で探索していた事でそんな気持ちになることは無かっただろう。
しかしここは異聞帯と言う名のただのハワイだ。ルルハワという特異点で似たり寄ったりな場所に何度も訪れたことがあったため、そんなバイアスで見ることはできず無事「旅行雑誌で見たことぐらいはあるけど、実際に初めて行った国外の旅行先ってなんか緊張するよね」な一般人みたいな状態になってしまっていた。
『せ、先輩、あそこにお土産屋さんがあります!』
『マシュ、後で寄ろうか』
テンパり過ぎて最早自分でも何を言っているのかわかっていない彼女に、一周回って「ウチの後輩可愛いな」とこちらも完全に毒抜きされてしまった彼。これでアロハシャツでも着ていれば、旅行客としては満点な二人である。
暫く人の波が過ぎ去るのを待った二人。常に便が到着している異常事態な訳でもなかったので、ものの数分で身動きが取れそうになかった混雑は多少なりとも改善された。
そのまま何とか柱に書かれていた案内板を見つけ、とりあえず外に出るため歩みを進める二人。
ポーン、とどこからか電子音が鳴る。
空港各所に取り付けられたアナウンス用のスピーカーからだろう。
ご利用いただきありがとうございますの定型文から始まり、次の便の話だったり、外気温などよくある空港のアナウンスが流暢な女性の英語で流れる。
『えっと、コナ空港?』
『その様ですね。コナ空港、ハワイ島の主要空港の一つです』
マシュの言葉からも汎人類史とほとんど変わらないことが予想できた。実際の地名がそのままの事を考えるに通貨なども同じと思われる。ならば中国異聞帯のようにサーヴァントを呼び出せない状況にはならないだろう。
『早く霊脈を見つけてサーヴァントを召喚しないとだね』
『ええ、霊脈の反応自体はそこまで離れていないようなので早めに行いたい所ですね』
実際マシュ以外のサーヴァントを連れず、本丸であるシャドウボーダーとは逸れたとあっては良い的だ。ここが敵陣であることを忘れてはならないと再度気を入れる二人であった。
(ハワイ島、エリソン・オニヅカ・コナ空港フロントに設置された自動販売機内部、防犯カメラの映像より)
【ようこそ! カルデア御一行様、常夏の島ハワイへ。あなた達の味方、クリプター上果はこちら】
ハワイの空港出口付近のフロントは観光客にハイエナするため、多くのガイドが待ち構える。
それは半ば詐欺まがいのぼったくりガイドだったり、純粋に日銭を稼ぐために働く真っ当なガイドだったり、もうすでに予約のために待ち構えている業者等様々である。
そんな場所に、銀の短髪と誰かから貰ったであろう可愛らしい花の髪飾りをした英国風の顔立ちの青年がいた。
その歓迎の意思が書かれた看板を掲げながら、首を長くして待っていたようであった笑顔の青年を見た藤丸とマシュは勿論固まった。
第一村人ならぬ、第一サーヴァント発見よりも前に因縁の敵だとか、宿命のラスボスに出会ってしまったらそんな反応にはなる。何なら歓迎ムードでこちらに近寄ってきたらそりゃあ頭が
と言うか、そもそもこの手の人は大抵意味深ムーブしているのが鉄則だろうになんで!?
『やっと来たなカルデア』
『……人違いです?』
『あ、そうでしたかすいません。っておい!』
結果としては彼に対する対応が、戦闘準備よりも先にどうにも他所他所しいものになってしまう。それは不意打ちどころか、予想だにしない行動によるものだ。
そんなこんなでノリ突っ込みする青年――上果は完全に出鼻をくじかれたように、こちらもこちらで毒抜きされてしまっていた。最早戦いをしようにもぐだぐだな空気感だった。
『か、上果さん!? これは一体?』
『何ってそりゃあ、歓迎?』
心底不思議そうに頭を傾けた上果。それを見て、なんとも言えない表情の二人。
それもそうだろう。今まではの旅では一部例外こそあったものの、基本的にはカルデア側を排除しようとするのが定石だった。なんだかんだ味方として一時期共闘した者は居るが、ここまで露骨な歓迎は初めての事だった。記憶の奥底では「
『……さては疑ってるな?』
ごもっとも。むしろ疑わない方が問題があるだろう。そんなカルデア側の事情を知ってか知らずか、続けて言った。
『俺は味方。それもかなり信頼できるタイプだ』
『では、汎人類史側の人間と捉えて良いのでしょうか?』
『まあ、そうなるな』
『……これは新所長に判断をお願いするべきです』
最大級の警戒を行うマシュに上果は、肩の力抜けよと言わんばかりに気軽い口調で。
『混乱するのも理解できる。ロシアも、北欧も、中国も、インドも、そのいずれもクリプターと言うのは敵だった訳だからな。「これはそう言うものだから理解しろ」と言うのも無理がある。ともすれば道すがら事情は説明するとも。そもそも心配なら先にサーヴァント召喚したって構わない。それぐらいは待つさ』
そのまま「今の俺にはサーヴァントが居ない。正確に言えば
その言葉が正しければ、上果は敵であるはずの藤丸とマシュ両名の前に丸腰の姿を現している事になる。あえて言うとするならば、彼程度マシュ一人で取り押さえる事も造作もないだろう。そんな暴挙、いや自暴自棄とまで言える行動はより疑いを深めるだろう。
例えば、この空港のどこかしらに伏兵が潜んでおり、常にこちらを狙っている。
例えば、カルデアデータベースの情報は虚偽であり、この場の二人を容易に排除できる力を持っている。
例えば、この言動は全て罠であり、それらを利用した計画を幾重にも張り巡らせている。
考えればいくらでも可能性は出てくる。
それでも。
『……いや、大丈夫です』
『マスター、それは危険すぎでは?』
『大丈夫、この人を信じてみよう』
それに対しての答えは、ある意味で人類最後のマスターらしいものであった。
『じゃあ立ち話も何だ、そこのラウンジに行こう。飲み物ぐらいはあった方がいいだろう? そこで、この異聞帯について、それと俺について話そうか』
その答えに優しく微笑んだ上果は、近くにあったラウンジの案内が書かれた電子ボードを指す。
と、カッコつけてみたものの、内心としては。
『(単純にのどが渇いただけなんだけどね。この熱気で四時間待っていたから熱中症になりそう)』
手に持っていた看板に張られていた、歓迎の意思が書かれた罰ゲームみたいな文言のシールを剥がし、そこら辺で暇をつぶしていたガイドに看板本体を返却。
そして歩き出した一行。人混みを避けながら前に進む。
マシュは勿論警戒を怠らず、常に一定距離を上果と取っていた。
その様を見た上果は肩をすくめ、藤丸は苦笑い。
『っとその前に、端的に結論を言おう』
しかし、ふと思い出したように上果は振り返り、言った。
『頼む。この異聞帯の王。――
カメラ映像からの描写って、原作読んでて一度やってみたかった表現方法なんですよね。
以下CM風
悪性蔓延る地獄のリゾート地。
科学を扱う者達と魔術を扱う者達、両者が争う戦場に聖杯戦争が開催される。
激化する地獄のその先でかの神は彼を待つ。
Fate/Grand Order cosmos_in_the_Lostbelt
異種無差別戦ナチュラルセレクター 幻想を抱いた果てで
……カルデアよ、必ず報いるとも。