私にしては珍しく、本気で混乱してしまった。
テレポッドの実験の時は、少なからず舞い上がっていて、違和感を感じなかった。
しかし、実験後に話しかけてきたクロノは、明らかに自分の知っているクロノではなかった。
何かのジョーク?
調子が悪い?
誰かに監視されている?
お祭りで浮かれて飲みすぎた?
思春期のイメチェン?
別人…?
そして会話を進めるうちに、自ずと選択肢は一つに絞られた。
「あんた、誰」
そこからは、憤りの連続だった。
ソイツの説明は分かったし、リアリティの有り無しは一旦置いておいて、この世界を待ち受ける運命は理解できた。しかし、理解できなくても納得できないものが残った。
どうして、クロノが
なぜ、こんなヤツに
コイツが自分の意志と関係なく、今の境遇に落とされたのは分かったが、それに関してはクロノも同じことだ。
物心ついた時から、ずっと近所で育ってきたクロノ。物静かで、優しくのほほんとして、時折ハッとするほど強い意志を秘めて、年頃の男の子らしい可愛らしさが無いのが玉に瑕と勝手に思っている。年月を経て男らしく精悍になっていくクロノを見て、友情とは違う複雑な想いを抱いていた。
そして、クロノにしては珍しく、指折り日数を数えながら、千年祭を楽しみにしていた。そんなクロノに楽しんでもらうために、私の中でも最高傑作を用意して、もっとお祭りを楽しんでもらおう、そう思って何徹もした。
八つ当たりというか、行き場の無い感情をぶつけてしまった自覚はある。
だが、それらを差し引いても、コイツの言動は最低だった。
言い訳めいた物言いも、
媚びるような言葉選びも、
あくまで自分に責任は無いという姿勢も、
何もかもが勘に障る。クロノの体にこんな奴の魂が宿ったことに、心から嫌悪する。
それでもなんとか理性的な選択をすることができたのは、事の重大さもあるが、何よりも早くクロノを助けたいという一心からだ。
自分の目が黒いうちは、クロノの体で好き勝手な行動はさせないという決心もあった。
とりあえず明確な目的がないまま、私たちはガルディア城に向かうことにした。
道中も、慣れ親しんだクロノの面影は見られなかった。それどころか戦闘を遊戯のように楽しんだり、こちらの歩調を一切考えなかったりと、フラストレーションは一方的に募った。
そして到着した城の廃墟では、見たことの無い異形が出迎えた。
きっと緊張感など持っていなかったのだろう。
私からの警戒の声で攻撃を躱したのは流石だったが、その後も目を覆いたくなるような展開だった。
結果として、私たちは散々に蹂躙された。私は右腕が吹き飛ばされ、冗談のような量の出血をした。手持ちのポーション程度では痛み止めにもならず、血は流れ続けた。
そんな状況のまま何とか攻撃を避け続けて、いよいよ意識が遠くなってきた頃に、誰かに抱き上げられた。その力強さからか、何が起きたのか確認もせぬまま、私は意識を手放した。
クロノ…?