悲劇の恋じゃない、それは事案だ。と友人に言いたい俺が、なぜか片棒を担がされている 作:えなり
決行は、日の暮れかけた夕刻。ジュリエットの家の近くの公園に、俺たちは潜んでいた。公園の茂みは、俺たちという名の犯罪者予備軍を隠すには十分な暗さだ。
「いいか、ロミオ。絶対に調子に乗るなよ。まずは高度30メートルまで上昇。そこからジュリエットの家の方向に水平移動。窓を特定したら、一旦俺に報告しろ。いいな?」
「ああ、わかっている。我が鋼鉄の翼よ、悲恋の乙女の元へ、いざ飛び立て!」
「だから、そのいちいち大袈裟なセリフはやめろ!誰かに聞かれたらどうすんだ!」
俺の忠告を無視し、ロミオは慣れない手つきでドローンのコントローラーを操作する。ブゥン、という軽いモーター音と共に、ドローンは夜の闇へと吸い込まれていった。コントローラーに付属した小さなモニターに、ドローンからの映像が映し出される。
「見ろクロン!あれがジュリエットの家だ!」
モニターには、煌々と明かりが灯る一軒家が映っている。二階の角部屋。話に聞いたジュリエットの部屋と一致している!間違いない、あれがジュリエットの部屋だろう。カーテンの隙間から、人影のようなものも見える。
「よし、作戦通りだ。一旦高度を下げて、手紙を取り付けるぞ」
「待て、クロン。ジュリエットが…ジュリエットが窓辺に立っている!」
ロミオが叫ぶ。見ると、確かにカーテンが開き、少女のシルエットが窓際に現れた。千載一遇のチャンス。ロミオの目がギラリと光る。
「今だ!今、俺の想いを届けるんだ!」
「おい、馬鹿やめろ!手紙も付けてないのにどうするんだよ!」
俺の制止も聞かず、ロミオはドローンをジュリエットの部屋の窓へと急降下させる。何かアピールでもするつもりなのか。モニターの中で、ドローンが窓に数メートルの距離まで迫った、その時だった。
パシャッ!
という軽い音と共に、ドローンの映像が大きく乱れた。何かがレンズに当たったらしい。
「な、なんだ!?」
次の瞬間、ドローンはコントロールを失い、きりもみ状態で落下していく。モニターの映像は、地面が迫ってくる様子を映し出した後、砂嵐になってブラックアウトした。
茂みから飛び出して落下地点に向かうと、そこには無残にプロペラが折れたドローンの残骸と、濡れたビニールの破片が落ちていた。
「水風船…?」
誰が、一体何のために。俺たちが呆然と立ち尽くしていると、ジュリエットの部屋の窓がピシャリと閉まるのが見えた。まるで、俺たちの愚かな挑戦を嘲笑うかのように、、、、、