――眼を開くと、怪物が此方を見下ろしていた。
ギョロリと動く目。突き出た牙。機械が入り混じる腐った体は生き物とは思えない歪な姿をしていて、全身から形容しがたい腐臭が漂っている。
誰もが悲鳴を上げて逃げ出すような怪物を見上げながら、私は。
「
ギューっと抱き着いた。腐った体を覆う金属パーツを選んで抱きつくのは許してね。
怪物……デジモン*1と呼ばれる生き物レアモンも、腐敗した肉質が私に触れないよう、器用にも大きな爪でそっと抱いてくれた。出会った当初に比べて随分と成長したものだ。
出会いのハグを堪能した後、レアモンは行こ行こっと私を急かすので歩き始める……前に。
偶然にも傍にあった鏡の
我ながら豊満な上半身を覆う黒のTシャツ。様々な
そして「ナインナイン(九十九に因んだアバター名)」のプリティーポイント・ブリキの玩具のような両腕。油圧ショベルそのもので、手先もリッパーと呼ばれる掴むことに特化した爪だ。
うむ、今日もアバター体*2に異常無し。この歪なバランスが好きなのよ。
では行くとしようか。スローペースなレアモンと足並みを揃えながら。
デジタルワールド*3に私こと
念願だった一人暮らしを始めたばかりの頃、息抜きでVR装置(ウチは椅子型。最新の物はヘッドフォン型やバイザー型とか小型化が進んでいる)でVR世界にダイブしたら偶然にもデジタルワールドを発見。
例に漏れず*4、初対面で敵対していたレアモンと出会い、なんやかんやあって友情を育みパートナーとなった。理性を持たないデジモンって言うけど、今じゃ無邪気で可愛らしいヤツだ。
しかしこのデジタルワールドは、私の趣味との相性がバッチリだった。
レアモンと出会ったこのデジタルワールドは立地条件が良いらしく、広範囲のデジタルワールドから様々な
面白い事に流れてくるのは、錆びた鉄やガラスの破片といった無機物のジャンクデータが中心になっている。今じゃちょっとした山や街レベルで積み重なってる。
そんな場所だから棲んでいるのはレアモンみたいな
そして私は……掃除と廃材アートが大大大大好きなのである!
趣味としてパッチワークを楽しみ、美術高校で技術を磨いた私は、大小様々な無機物系ゴミデータを目の当たりにして創作意欲が爆発。
アバタースキル*5である【データ圧縮】を駆使しブリキアームでガリゴリ。周囲のデジモンがドン引きする中、様々な廃材アートを作り上げたものだ。
こうして私という異物を(自分から強引に)捩じり込んだ結果、雑多なゴミ山から一変。興味が沸いた現地デジモンが見様見真似で造った廃材アートが並ぶデジタルワールドへと開拓していった。
その名は「
他のデジタルワールドから注目されるような観光地にするを目標に、大学生になった今でも通っている。レアモン達と開拓するの楽しいし。
そんな愛する街に向かって私とレアモンは移動中。道中には色々なジャンクデータの廃材アートが並んでいる……増えてるねぇ。善き哉。
バードラモン像、巨大エンジンみたいなオブジェクト、道標、
「―――あ、生きてる」
とりあえずツンツンって触ってみたらピクピクって反応した。良かった良かった。
「いや助けろよ、あんたコイツと同じ人間だろ!?」
バサバサとやってきた蝙蝠みたいなデジモン・ピコデビモンがツッコミ入れてきた。その小さなボディじゃ引っ張り上げれないもんね。
「そう怒っても、生存確認は大事だよねー?」
レアモンもそうだそうだと言っております……そういう問題じゃない? 許してチョコモン。
「……ってツッコミしてる場合じゃねー!? 大丈夫かススムー!?」
ノリツッコミするぐらいには余裕がありますわね、このピコデビモン……そうだね助けてあげよっかかレアモン。一緒に掘り起こすぞー。
―――
「ううむ……まさに冒険家!って感じのアバター。いいね!」
「先ず言う事がそっちかよ!」
「落ち着けピコデビモン」
このピコデビモン、ツッコミ役として苦労が絶えなさそうだねぇ……頑張るんだぞ若者よ。
少年の名前はススム(アバター名)くん。中学一年生。テンガロンハットを被ったTheトレジャーハンターといった風貌のアバター体。パッチワークスカートにロボット腕っていう私よりずっといいな!
金髪碧眼なのは日本人とアメリカ人のハーフだからだそう。ツンケンな態度と歳を考えると反抗期かな? けど視線はチラチラ
私とレアモンの自己紹介も終えた所で、ススムくんから人探しをお願いされました。
なんでも、他所のデジタルワールドで冒険してた所で幼馴染とそのパートナーデジモンまでもが一緒に迷い込み、そのまま逸れちゃったらしい。
なら、このデジタルワールドに詳しい私と最初に会えたのは幸運だったねススムくん。何せ見た目が
反抗期なりに頑張ってお願いしてくれたので、ここはお姉さんとレアモンが人肌脱ぐとしましょうか!
次いでにこの子と幼馴染にダスト・アートの良さを知って他所で宣伝してくれたら嬉しいな。
因みにこのレアモンは?って聞かれて、私のパートナーだよって答えたら、ピコデビモンがうへぇって顔した。
見た目で判断するなよーこんなに良い子なんだぞーって抱きついて無害アピールしてやる……見た目と中身がイコールなのはデジモンあるあるだって? ご尤もではありますが。
では征かんダスト・アートの中心へ……ドカーンってデカい音してますね?
ねぇススムくんにピコデビモン、幼馴染とパートナーデジモン以外にも迷い込んだヤツっているかな?……そっかー、他所のデジタルワールドから迷い込んだ際に、2人と2匹を追いかけてきたデカいデジモンも来てるのかー。
安心していいよ、私が鍛え上げた現地デジモンは強いからね!
それ以上に雑魚いデジモンが多いので助けたいです! 駆け足でお願いします!私はレアモン背負って走りますので!
―――
オレは
パートナーデジモンのピコデビモン、勝手について来た幼馴染と一緒に冒険してたらガラクタだらけのデジタルワールドに迷い込んだけど、幸いにも同じ人間のアバターに出会えて案内してくれるわけだけど……その第一発見者に問題が……。
―――ブルンブルン揺れてる巨乳が目に毒すぎ……!
アバター体ってのは本人の精神データを介して形が作られる。そしてアバターの服ってのは下着……その、ブラジャーとか考慮して作られていない。
イラストや3DアニメのAI生成のような大げさな乳揺れじゃなくて、布地の中で暴れるリアリティのある乳揺れがすぐ横で繰り広げられているんだ……!
ナインナインさんはボロみたいなスカートにロボットみたいな両腕が独特的で、腐肉を滴らせるレアモンを持ち上げえっちらほっちら走る様は異様にしか見えない。
けどそれらが全く気にならないレベルで、黒のTシャツを破くんじゃないかってぐらい暴れる巨乳が気になって仕方ない……!
「ススムってほんっと人間の胸が好きだよな~」
「うっせぇ! 余計なこと言うな!」
「ここに来る前にすれ違ったリリモンの胸ちらっと見てたもんな~? そんなに人間のメスが好きなら認めちまえよ~」
「今は!
くっそコイツ、オレと女が絡むと急に小悪魔っぽくなりやがって! 自称ワルのツッコミ役な癖に!
とにかくシズカとゴツモンだ! 人様のおっぱいなんか気にしている場合じゃない!
―そ、それに
黒崎進(14歳)。シングルマザーの母に育てられた絶賛反抗期中の中学1年生。冒険心と反逆心に溢れた駆け出しデジモンテイマー。
そんな彼の、周囲の年上の女性と女性型デジモンによって性癖が歪みそうになる、女難に満ちた冒険の日々が始まろうとしていた……。
将来を見越して、金髪碧眼の男の子主人公にピコデビモンを添える。