アバタースキル【
樹海みたいなデジタルワールドからついて来たエントモンを、私のゴーレモンが鋭い牙に刺さらないよう抑えている。完全体VS成熟期とはいえパワーならゴーレモンに分配が上がるし、エントモンから漏れる黒い瘴気こと大量の食肉蟲も、体から吹き出る高温ガス『カース・クリムゾン』である程度は抑えられている。
勿論ゴーレモン一体だけだったら防げないけど……。
「「ドリームダスト!!」」
「すぅ〜……ハザードブレス!」
さっきのゴキモンブラザーズが周囲のジャンクデータを使った必殺技で漏れ出た蟲を押しつぶし、残った蟲はレッドベジーモン達の口から強烈な匂いの毒ガスで仕留める。ヌメモンやゲレモンが声を掛け合って避難し、ベジーモン系統が触手でエントモンの動きを制限し、レアモン達はエントモンの脚にしがみ付いて噛み付いたり腐食液を垂れ流したりしている。
ゴーレモンが動きを止めているのが大きいんだろうけど、数の暴力とはこの事。余所から来た私達を援護しようと出来ることをしてくれるのは見てて気持ちが良いけど、エントモンの腐った樹の身体には微かなダメージしか刻まれていない。寧ろ羽を広げより大量の蟲をまき散らして周囲のデジモンを食らおうとしてくる。
腐ってても完全体、とても強い。私は蟲から逃げるのに精一杯だし、どうすれば……。
「クリムゾンネイル!」
上空から急降下してきたデビドラモンが赤い爪を振りかざし、エントモンの片羽を引き裂いた。そのままエントモンの背を陣取って爪跡を刻み続けるけど、鬱陶しいとばかりに暴れてゴーレモン共々振り払っちゃう。当然、暴れれば暴れるほど蟲が溢れ出るわけで……。
「シズカ!」
「ススム!」
聞き覚えの声がして振り向けば、アバタースキル【
『……ジモ……シャー……!』
「エントモンが、何か言っている?」
「あん? どうでもいいだろそんなの! ……おーい! なんとか止めれないかー!?」
「無理言うんじゃねぇよ完全体だぜコイツ!?」
「疲れてきたでゴンス~!」
「このお兄さん無茶いいますねゴキモンのお兄様!」
「けど放っておくと拙いのは確かですよ弟よ! とにかく
そんなことって言い方キツいわよススム……確かにアイツは理性が殆どない凶暴なデジモンだけど、
「キャップモンズ、集〜合〜!」
うわビックリした、誰あのお姉さん……凄い見た目のアバター体ね。あと胸デカっ……。
ロボ腕お姉さんの号令に、ニットキャップを被ったレアモン、バケット帽を被ったザッソーモン、ベースキャップを被ったヌメモンが集まりだす。ああキャップモンズってそういう……三匹は力強く頷いてエントモンを見上げ、準備万端だと背中で語る。
「デビドラモン・ゴーレモンと一緒に、一気に畳みかけるわよ!」
そう言って、ショベルカーみたいな腕なのに器用にデジヴァイスを取り出した。少し古いタイプだけど*1……というかまさか、その面子で!?
ほ、ほんとに進化させちゃった*2……けど大型トラック並にデカいエントモン対して、もんざえモンとオウリアモンは2m弱、ナノモンなんか50cmもない。この体格差*3は不安でしか……。
ードゴンッ!
も、もんざえモンのパンチ一発でエントモンの足が吹き飛ん……いや抉られた!? ゴーレモンよりパワーあるんじゃない!?
ージャミール
蟲の大群がオウリアモンの香りに誘われ、そのまま花弁で一気に捕食された。あの数をいっぺんに飲み込んじゃうだなんて……花弁で隠れてたけどコイツも巨乳だな?
ープラグボム!
え? エントモンにじゃなくて建物に撃つの!? けどナノモンが爆破して崩れた建物は、取り押さえているゴーレモンとデビドラモンを避けてエントモンに直撃。これを計算して爆弾を撃ったってこと……いや撃ちすぎ! そしてどうして倒れた建物全てがエントモンにだけ当たるの!?
「いやいや良いのかよこんなに建物壊して!? 大事な街なんだろ!?」
「避難できてるから
こんな状況でもデビドラモンのツッコミは冴える。どうやらあのお姉さんはこの街を拠点にしているみたいだけど、自分達の街を壊してもいいのか……ナノモンも任せろと言わんばかりに親指(?)サムズアップしてるし……。
エントモンの四肢を殴って抉る、小回りの利くパワーファイター・もんざえモン。
瘴気の如き蟲の大群を纏めて始末する、昆虫型デジモンの天敵・オウリアモン。
効率よく倒壊させた建築物でエントモンの動きを封じる、策士にして爆弾魔・ナノモン。
エントモンと比べると地味に見えるけど、いずれも私達が知る完全体に恥じぬ強さを発揮している。もうこの三匹で十分じゃないかな?
「よ~しよし、大分
四肢を抉られ、蟲を減らされ、体の動きを封じられたエントモンを見上げてニヤリと笑うお姉さん……この為に完全体を3体も用意した? なんのために?
「皆離れて! 仕上げいくよレアモン!」
今度は完全体トリオも建物で埋もれたエントモンから離れ、それを追うようにデビモンとゴーレモンも離れる。さっきのナノモンに進化したレアモンとは違う、
「「「「で……デカ……っ!?」」」」
私達2人と2匹が驚くぐらいに大きい、エントモンですら覆い被さる程の巨体が姿を現す。
さっきのナノモンもそれっぽかったけど、このレアレアモンこそがレアモンの正統な進化先なのだろう……次々に生まれては朽ちる異形の身体に、黒い装甲で覆われた巨大な頭部兼口がとても不気味で、元々不気味だったレアモンより更に怖い。
ーブラステッドディザスター
ーディスケイズン
その異質さは凶暴性ばかりが目立つエントモンですら恐れたのか、崩壊した建物から脱出せんと藻掻き、大量の蟲を瘴気の如くばら撒きレアレモンに襲わせるが、体中の小さな口から噴き出された黒いガスが一瞬にして飲み込む。ゴーレモンの『カース・クリムゾン』ですら及ばない殲滅速度だ。
ードライアドスティンガー
蟲が無意味と解ったエントモンが力を振り絞って脱出、同時に鋭い杭みたいな牙を突き刺す。レアレアモンは衝撃で多少揺れはしたけど動じることはなく、逆に生き物みたいな両腕で噛み付いて動きを封じちゃう。
腐った樹の身体に生かさず殺さず噛み付くパワーコントロール、抉られた四肢と翼で押し上げるも動じない大きさと重さ、崩壊と再生を繰り返す異形の巨体……そんな不気味極まりない
「ごめんね。キミは危険だから」
悲しそうな顔をして見上げながら、彼女は手を振り下ろす……まるで死刑宣告のように。
『……ジモン……ラッシャー……!』
ーダイジェス
ーわあぁぁぁぁ!
巨大な口でエントモンを丸かじり。ほんの僅かに残った
「……すっげぇ」
「……うん」
デジモン達に胴上げされてる、帽子を被った3匹の成熟期トリオことキャップモンズ、それにレアモンとロボ腕お姉さん。成熟期から完全体に進化サポートできるアバターは見た事も会った事もあるけど、あんなテイマーは初めて会った。テイマー検定*4A級に届くだろうな、あのお姉さん。
「胸すっげぇ暴れてる」
「「そっちかい!」」
ピコデビモンの蹴りと私の正拳が同時に入った。
胴上げ中にブルンブルン揺れてる人様のおっぱいガン見すんなバカススム! おのれ
―――
ダスト・アートで尤も高い建築物の天辺にて、デジモン達の胴上げを見下ろす二つの影。
「オウ、マーベラス! レアモンをレアレアモンに進化させたテイマーは初めて見マース!」
「巻き込んじゃったけど、腕の良いテイマーが居てくれて助かったわね。これからどうする?」
「ンー……今は
「もー、うっかりが過ぎるんだからー。アタシこのデジタルワールドをウロつくのイヤなんだけどー?」
「Oh、ハクジョーな事を言わないでくださいリリモーン! 一緒に探してヨー!」
「ああもう解った解った!
「センキューベリマッチ!
「……その言い方と格好は誤解を招くっていつも言っているわよね、アタシ?」
「ナンデヨー!? ジャパニーズレディニンジャーはニホンの
「あんなゲームを子持ちの主婦がしてんな!」
バシっという音を最後に、二つの影は姿を消したのだった。
―――
一方その頃、とあるデジモンがデジモン達の胴上げを物陰から見つめていた。
「
その名はピストモン*5。胴上げされているロボットアームの女性と、そのパートナーである大きなレアモンを見てクツクツと笑う。
「
恐らく盛大な勘違いをしたまま、ピストモンは陰の奥へと姿を消すのだった。
ーこの日を境に、ジャンクと芸術の街は、大きな勘違いに巻き込まれ大騒動の日々を迎える羽目になる……。
女主人公こと九十九姉さんは掃除が好き。
次回、謎のくノ一風お姉さん(アバター)とリリモン襲来。