ーぼよぉ〜ん!
「あぁ〜れぇ〜でゴンス〜!」
「ご、ゴツモーン!」
でっかいバネで吹き飛ばさたゴツモンを慌てて追いかけるシズカを、オレことススム(本名:黒崎進)はバカでかい釘をハンマーで打ちながら見ていた。
「お、重っ……っ!」
「ではもう少し大きいのいっとくであります!」
「まだ増やすのかよ!?」
「ギリギリを見極めるでありま〜す」
重し代わりのガラクタに繋がる縄で縛られたまま羽ばたくピコデビモンと、更にガラクタをくっつけて負荷を増やすコマンドラモンの2匹。
「そこ支えててタクヤくん……レナモンいいよー!」
「そのまま待て、
「はぁはぁEカップ(目測)が直ぐそこにモフモフ尻尾ビンタありがとうございます!」
ナインナイン姉さんとタクヤが支えている柱にレナモンがサンドバッグを取り付けるが、姉さんの揺れる巨乳をガン見してるタクヤを尻尾で強く叩く。おのれタクヤ羨まけしからん。
「……どうしてこうなった?」
オレ達は今、大小様々なガラクタで大きな工作をしています。
ーーー
「ナインちゃんはね、そろそろ自分に自信を持ってもいいと思うのよ」
それは少し前……オレ達がナインナイン姉さんに指示をお願いした後、黒のニットキャップとスカジャンを着たエテモンがそう言ったのが始まりだった。
「そうは言うけどねエテモン、私はこの街のデジモンだからこそトレーニングを提案したのであって……」
と言うのも、ナインさんはピコデビモン達の育成には乗り気じゃなかったからだ。彼女は飽くまでダスト・アートの仲間だからトレーニングプランを練る気になったのであって、昨日今日知り合った若いオレ達を師事するなんて恐れ多いってプランニングを拒んだ。
「だからこそだろうが! ナイン嬢ちゃんはオレら親分ズやキャップモンズっつー成功例があるんだ、コイツらが完全体以上に育て上げるなんじゃ不可能じゃねぇだろ!」
自信持てって!と言わんばかりにバシバシ背を叩く、赤いベースキャップを被ったガーベモン。
ーヌメヌメヌメ!
「……え~? 確かにゴキモンブラザーズが進化できたのは日頃のトレーニングの成果でもあるけど、それはブラザーズが頑張ったからで……」
「ブラックキングヌメモンの言う通りだ、オレ達は姉さんの為に頑張れたんだ!」
「ゴキモンのお兄様に同じく!」
緑のバケットキャップを被ったブラックキングヌメモンに合わせてゴキモンブラザーズもフンスフンスと鼻息を荒げて熱弁する……やっぱそこらのデジタルワールドじゃ見かけねぇぐらいに強いなこのゴキモン。
帽子を被ったヌメモン・ザッソーモン・レアモンのキャップモンズ、その他のハズレ進化デジモン達も「そうだそうだ」と言わんばかりに声を上げている。姉さんすげぇ慕われてんな。
「ほらね? 少なくともあちき達が保証するから、貴女のやり方でコイツらを鍛えてあげなさいよ」
「いいこと言うじゃねぇかエテモン! とにかくだ、オレ達は強くなって、ススムと一緒に色んなデジタルワールドを冒険してぇんだよ!」
「お、オデからも頼むでゴンス! オデ、憧れのスターモンに進化したいんでゴンス!」
「私は昔から変わらない。只管に強さを……タクヤが示してくれた強さの道を歩みたい」
今度はエテモンに合わせてピコデビモンが乗り出し、ゴツモンとレナモンも自分の願いを伝える。樹海のデジタルワールドでエントモンから逃げるしかなかった事に負い目を感じてたんだよな、ピコデビモン。
「ん~……よしっ! そこまで言うならやってやろうじゃないの!」
私のトレーニングプランは厳しいわよ、とショベルカーみたいな腕の先端……ペンチみたいな手同士を噛み合わせるナイン姉さん。拳を手で叩く的なノリか?
こうしてナインナイン姉さん指導の下、ダスト・アート総出でオレ達を鍛えることになったわけだ。
ーーー
「ひとーつ! トレーニングマシンは自分で造れ!」
自分達に合ったトレーニング機材を、頭と体を使ってジャンクデータで組み立て。
「ふたーつ! とにかく
観光ついでに街を周るランニングコース。地形が複雑だからパルクールも加わる。
「みーっつ! 理想の自分を追い続ける為に工夫しろ! 頭を使え!」
ゴツモンはバネを使ったジャンピングコースで体幹と機動力を、ピコデビモンは重りで飛行力を、レナモンはデジモンを模したサンドバックでパワーを強化。悔しいけど
「因みにこちら、ゴキモンブラザーズの作品にございます」
ゴキモン(兄)のボルダリングの壁、ゴキモン(弟)のグレイモンを模したガラクタサンドバック。前者は取り付け自由でコース自在、後者はガチャガチャ動いて反撃もするビックリドッキリメカ。かなり完成度の高いトレーニング機材だった。
ーそして……なぜかオレ達3人もトレーニングに参加しています。
「あの、わいら、肉体のない、精神だけのアバターなんやけ「精神は肉体を超えられる!」は、はひぃっ!」
ロボアームを振り回しながら走るナイン姉さんに一喝され、タクヤは足を速める。
疲れも痛みも感じられるが、この体は精神データを基に作られた仮想データ。疲れも痛みも脳の錯覚に過ぎない……のだけど、余りにも酷いと
まぁつまり、VR世界やデジタルワールドで身体を鍛えても現実世界にあまり反映されない……んだけど。
「体の使い方は体で覚える! それはアバターだろうと現実だろうと同じ!」
オラ頑張らんかい!と言わんばかりに抱えてたゲレモンを近づけ、漂う口臭に慄いてシズカの足を速める。いやな加速方法だ……。
「冒険は体が資本! それが私の
つまりスパルタ育成だった! けどオレ達の他にもヌメモンやスカモン、ナイン姉さんのレアモン(大)もひぃこら言いながらランニング(パルクール込み)しているし、完全体に進化できるのも納得か……って。
「おっとっと……!」
やっべ躓いた……思わず目を閉じたらボフっと柔らかい何かが顔を包んだ。あと甘い匂いもする……なんだろうと思って見上げると……立派な双丘が目の前に広がっていた。
「オウリアモンないす~。もしかして完全体で固定できた?」
ゲレモンを下ろしてナイン姉さんが嬉しそうに見上げているのは、完全体の植物型デジモン……先日エントモン相手に奮闘したキャップモンズが一体・オウリアモンだ。元はザッソーモンで事が終わったら元に戻る仕様だったが、めでたく完全体デジモンとして確約できたらしい。
ー……?
オウリアモンはボソボソと小声で言いながら、花弁のような手で抱きかかえたオレの頭を撫でている。大丈夫?って心配しているようだけど……。
(む、胸……っ!)
ふわっふわの柔らかなオッパイに包まれてそれどころじゃ……けど甘い匂いで頭がぼ~っとして……!
「だめだしずむ……」
「沈んでる場合じゃね~だろススム~!」
重りで縛られているのに蹴りは冴えるんだなピコデビモン……けど蹴りの痛みより頭に掛かる心地よさが勝る……。
「こらススムを誘惑するな~!」
べりっとシズカがオレをオウリアモンから引きはがす。あ、危なかった……もう少しでもって行かれるところだった(意識と性癖が)
「なによこんなオッパイモドキ……ふわふわぁ~」
「「いやお前も沈むんかい!」」
まるで新品の枕に包まれているかのような幸せそうな顔! 信じられるか、こいつクラスじゃクールビューティーって呼ばれる人気者なんだぜ?
「ほなわいもってほぶっ」
オウリアモンに近づくより先にレナモンに抱かれるタクヤ。レナモンはムスッと不機嫌そうに、けどギューッとタクヤを抱き締める。身長差もあって胸元にタクヤの顔が当たる……いや敢えて当ててるのか?
「タクヤのことホントに大好きでゴンスねぇレナモn」
ーゴチンっ!!
文字通り石頭のゴツモンをレナモンの鉄拳が黙らせる……これが強さを求め修行を重ねた成果か……! 因みにタクヤには聞こえてない。レナモンのモフモフ谷間を堪能しているから……こっちもかよ。
「おっぱいってホント楽しそうだなぁススムぅ?」
ーヌメヌメェ~
「うっっせぇ! 楽しそうに煽るんじゃねーよピコデビモンにブラックキングヌメモン!」
ーーー
「よ~し、そろそろリアルへ帰るわよテイマーの諸君」
「「「は~い……」」」
ガンガンっとロボアームの先端同士を叩き合って終了を告げるナイン姉さん。対するオレ達は程々にヘトヘト……少し冒険した程度じゃ身に付かないわ、こんな疲れ。
「オレ達はど~すんだよ?」
夕方になる前に帰ろうとしてピコデビモンが声を掛けるが、ゴツモンもレナモンもヘトヘトだった。他のデジタルワールドじゃ経験できないもんなぁ、こんなトレーニング。
実は3匹とも出会ったデジタルワールドは同じで、棲み処もそこにある。いつもならオレ達が帰る前にデジモン達をそこへ送り届けるんだけど……。
「折角だし
ほれあそこ、とナイン姉さんが指さす先には「HOTEL」の看板を掲げた小奇麗な建物だった。宿泊施設まであるのかよ……。
「トレーニングの監督はこのガーベモン隊長が引き継ぐぜ!」
「えぇ~?」
敬礼するガーベモンに「任せた!」とナイン姉さんも敬礼。あのガーベモンも相当なスパルタだったよなコマンドラモンコンビに対して……。
「ほら帰るわよ、親御さんを心配させすぎないようにね」
ちょ……ロボットアームで首根っこを掴んで引きずらないで……両腕で三人纏めて引きずるとか相変わらずのパワーキャラだなナイン姉さんって……。
置いてかないで~、と嘆くピコデビモンに、どこか哀愁を感じるオレでした……強く生きろよ。
こうして、ここダスト・アートとの出会いを切欠に、ススム・シズカ・タクヤの新たな冒険の道が開かれることになる……新たな出会いの数々によっては開いていけない扉も開くことになるが。
クロックモン「クロノブレーカー! 時を破壊して色々すっ飛ばすぜ!」
ダイジェクトで別のデジタルワールドを冒険したり、特訓の成果で進化させたり。