『次のニュースです。先日、電子ドラッグを秘密裏に売買していたとして、〇〇地区に住む20代のパート従業員◇◇◇(男性)が逮捕されました』
「物騒だねぇ」
「ほんとにねぇ」
カフェの備え付け薄型テレビで報じられているニュースを見て、私こと
ドジっ娘エージェントことサリアさんが組織を潰したって言うけど、世間はまだまだ電子ドラッグが流行っているらしい。都会のネットワークは色々と怖いねぇ。
私が住んでいる地域は片田舎だから、都会のような喧噪もネット犯罪も無い。しかし地域に合ったAIの発展や地域活性化のおかげで老人にも優しく住みやすい街並みなのだ。
これもお祖父ちゃんお祖母ちゃんの……もう昔の話だから良いにしよっと。
「それで彩子、頼みってなーに?」
ホットなカフェオレを飲みながら聞く……友達の奢りで飲むカフェオレは格別だね! 遊びに行こーって誘われて二人でブラブラしていたけど、頼みがあるってことでお馴染みのカフェでお茶することになったのよ。
「頼みなんだけど、うちの郵便局*1のデジワ一緒に見てくれない?」
「デジワを? バードラモン*2いるじゃん」
彩子は仕事にプライベートにデートと忙しくも充実な日々を送っているけど、仕事先のデジタルワールドの様子を見に行くのも日常茶飯事じゃん。
因みにバードラモンは彩子のパートナーデジモンであり、今では彩子の勤務先である郵便局のサーバーで発展したデジタルワールドに棲んでいる。高校時代に私達とよく冒険してて、そこで培った経験と実力を活かしてデジモンや冒険者テイマーの相談役になっているらしい。ピヨモンの頃から年長者気取ってたねぇあの子ってば。
「なんかそこそこに面倒な問題になっているらしくてさ、他所の人手とデジモン手が欲しいんだって」
「面倒な問題かぁ……放っておくと拙いよねそういうの」
現地デジモンが悩むぐらいの問題って、現地デジモン同士で協力しても中々解決でず、外部からの刺激や知恵を借りて解決するパターンが多いのよね。
「そうそう。昔から人助けが得意な一美ちゃんなら任せられるなって。ほら、『デジタルワールドの乱れはサーバーの乱れ』*3って言うし、頼めないかしら?」
おねが~い、と手を合わせる彩子ちゃん。
「ん~……中学生だけど助っ人追加してもいい? ガッツと行動力はお墨付きだよ?」
何せ私のスパルタトレーニングについてきている子供達とデジモン達だからね。 日頃の成果を見るに丁度いいし、渡りに船ってやつだ。
「良いけど大丈夫? あそこ
未知の世界に冒険したくなった子供が色んなデジタルワールドに出向く事は慣れっこだけど、この街の郵便局ネットワークで発生したデジタルワールドはね……高校生だった私達ですらね……。
「まぁ、冒険は何事も体験ってことで!」
「貴女って面倒見が良い割に勢いつけすぎる時あるよね。そこが良いんだけど」
流石は私の友達にしてかつての冒険仲間、理解してくれるって嬉しいわね! あ、シナモンロール追加しちゃっていい?
―――
「……というわけで、君達にも来て手伝ってもらいます!」
テンガロンハットのススムくん・切れ目黒髪美人のシズカちゃんと、モノクロモン型ガラクタサンドバックをボコスカしていたピコデビモン・ゴツモンが振り向く。ダスト・アートでのアスレチックトレーニングが習慣になりつつあるね。
「手伝うのは良いんですが、どんな所なんですか?」
「そこは~……行ってからのお楽しみってことで。良い景色なのは約束するよ」
シズカちゃんが挙手して尋ねてきたので答えるが、敢えて言葉を濁しておく。到着してからのお楽しみってやつ。少なくとも君達の実力なら大丈夫だよ。
それでも子供達は見知らぬデジタルワールドにワクワクしているようだ。危険と隣り合わせとはいえ、絶景を目の当たりにできるのはデジタルワールドの冒険の特権だよね。
「オレ達が行くのはいいけどよ~」
冒険には乗り気だけど、なんか煮え切らないねピコデビモン。チラチラ上見ちゃって。
「
ゴツモンが上を……正確には低空で佇むブリンプモンを指差す。「どうやって?」って感じで。
ガーベ警備隊の数少ない隊員が一体・ブリンプモン。成熟期でありながら巨大な気球船みたいな乗り物系デジモンである彼を何故……そしてどうやって連れて行くのか。
まず
「
君って本当はアイスモン*4なのかい? 寒いぞよゴツモン。
「けど明らかに
疑問符を浮かべる子供達を代表してススム君が尋ねてくるが、言わんとしている事は解る。
私達はVR装置を使って脳波を
その差がデータ容量。各種デジタルワールドをVR世界を通じて行き来できる私達とは違い、デジタルワールドが生活圏であるデジモンは容量が大きすぎてVR世界を渡れない。成長期までならギリギリ通れても攻撃するほどのパワーは発揮できない。ただし耐久性は健在なのでアバターから害を受けることもない。
ススム君らがアチコチのデジタルワールドを冒険できたのは、パートナーデジモンがVR世界を渡れるギリギリの容量である成長期であることが大きいんだよね。
故に、この見て解る程に巨大なブリンプモンはVR世界を渡れるはずがないのだ……「普通にやろうとすれば」だけどね。
「そこはワープゲートを使えばオッケ」
「「
あるんだよな~、デジタルワールド同士を行き来する為のワープゲートが。
ダスト・アートが発生しているサーバーは電波状況がとても良くて、色々なデジタルワールドに行き来しやすいんだよね。前にススム君らが事故とはいえワープゲートを潜ってこれたのもそれが原因なんだ。
「因みにコレがそう」
ゴンゴンと、ブリンプモンよりもデかい錆色の建築物をノックする。トレーニングエリアに置かれていたコレはススム君らも気になってはいたらしく「これが?」と目を丸くしていた。
このヌメモンをモチーフにした板状のジャンクアートこそが、扉型巨大ワープゲート(知人作)だったのだ! 頭頂部には操縦席みたいなのがあって、ブラックキングヌメモンが搭乗している。
ーヌメ~
「ブラックキングヌメモンが操作すんのかよ……」
嫌そうな顔するんじゃないよピコデビモンや。金勘定に加えて機械にも強いんだよ彼って。
そうと決まればタクヤ君とレナモンも連れて行こう、そう思って向かった先は……。
「……いらっしゃいませ」
「堅いよレナモンちゃん。らっしゃ~い」
露出度高め(といってもモフモフ率が上がるだけだが)のメイド服を着たレナモンが出迎えてくれる喫茶店(店長はレッドベジーモン)にやってきました。
武人気質に見えるレナモンだけど、アルバイトしたりショッピングしたりと、ピコデビモンとゴツモン以上にダスト・アートの環境を気に入ったみたい。
「見なよ……わいのレナモンを」
「似合ってるよねぇ」
レナモン凛々しくも可愛いから何着せても似合いそう。お茶していたタクヤくんも自慢するわ。それはそれとしてタクヤくんとレナモンにかくかくしかじか。
「はいな~。んで、どこに向かいはるんです?」
バイトから上がってメイド服を脱いだレナモンもいるし、ここらで目的のデジタルワールドに関する重大なネタバレをしちゃおうかしら。
「空」
『……はい?』
「向かう先は空だよ。それも超高高度の、いわゆる天空って呼ばれる空域だね」
―――
―――
「いきなりこんな所に来られるとか、ハード過ぎませんかっ!?」
ゴウゴウと吹く強風に吹き飛ばされそうになりながらも必死にデビドラモンの背にしがみ付くススムくん。テンガロンハットがバタバタ揺れるけど取れないのはアバター仕様だからね。
「けど良い景色でしょ!」
何処までも広がる青い空! 間近で見える白い雲! 神秘的な浮遊大陸! その浮遊大陸の上でこっちに手を振っているクネモンやホークモン!
「本当に凄い景色……下が黄色いけど砂漠かしら?」
「わいらブリンプモンの中に入ってて良かったわ~」
ゴツモンとレナモンも頷いて同意する中、シズカちゃんとタクヤくんも強化ガラス越しに眼下の景色を見て楽しんでいる。なんだかんだ、こういう絶景を見れるのがデジタルワールドの利点なんだよね。
飛行能力を持つデビドラモン、それもダスト・アートで翼を鍛えてきた事もあって、風が吹きすさぶエヴァー・ウィンドでもへっちゃら。パルクールランニングで鍛えた体力と根性でしがみ付くススムくんも、なんだかんだ度胸と冒険心があるようでワクワクしている。
対する私達ー勿論パートナーのレアモンも一緒だーは、ブリンプモンが両手で持っている車両の中だ。いやー空の旅って快適だねー(悠々と飛ぶデビドラモンの背でヒーヒー言っているススムくんを見ながら)。
「それでよー、依頼人とそのデジモンはどこにいるんだー?」
「ついてくれば解るよデビドラモン。頼むねブリンプモン」
謎の機械音を出しながらブリンプモンは微速前進。デビドラモンも後に続く。
さて、こんなだだっ広いデジタルワールドで発生している問題ってなんなのやら。
・悠久の風(エヴァー・ウィンド)
広大な砂漠の天空に島々が浮かぶデジタルワールド。空を飛ぶデジモンを中心にしたデジタルワールドをイメージしました。
やっとこさ話のプロットがまとめたので投稿。起承転結の4話で進めます。