メガミと『つくる』日常   作:ミヤビコウ

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思いついたので、書いてみました。
楽しんでいただけたなら幸いです。


とある家族の日常

 西暦2046年。

「機械少女」に「模型の武装」を施し戦わせるバトルプラホビーが始まる。

 使用機体はプレーヤー自ら組み立て、完成させなければならない。

Mechanical Girls × Armament of Miniature

頭文字をとって機体は「MAGAMI(メガミ)」と呼ばれる。

 全高約14cm。AIで稼働する。

 

 と、説明はされているが、バトルだけでなく、会話を楽しんだり、一緒に遊んだり、中には生活の手助けをしてくれたりと、その用途は様々だ。中には犯罪などという非合法な使用をする人間もいるのが悲しいところではあるのだが。

 

「よし、完成」

 チョキン。と糸切鋏の音がした。高校二年生の青年、葛葉誠士郎(くずのは せいしろう)は自分の勉強机兼作業台の上には、丁度メガミが座れるサイズの二脚のキャンピングチェアが置かれていた。

 針金ではメガミの自重でフレームが曲がってしまうため、硬い鉄くずの棒を使用し、接合部分をはんだでくっつけて、さっきまで背もたれと座る部分をちょっと厚めの布を使って布と同じような色の糸を使って手縫いで完成させたのだった。

「ちょっと座ってみて。違和感あったら直すから」

 その言葉を聞いた誠士郎の所有する二人のメガミが、机の端からやってくる。

 

朱羅 玉藻ノ前     固有名:クオン

皇巫アメノウズメ陽光 固有名:サン

 

「そう言っても今までお兄ちゃんが作ったモノに違和感なんてなかったけど?」

「そう言うでないサン。どれ……流石妾の主様(あるじさま)が作ったモノじゃ。違和感なぞ微塵も感じられぬ」

「本当だ。さっすがお兄ちゃん♪」

「その言葉が聞けて嬉しいよ」

 嬉しそうにはしゃぐクオンとサンを横目に見ながら、誠士郎はさっきまで使っていた道具を片づけにかかる。

 

『自分で決めた場所にちゃんと元に戻しておけば、次に使うときに一々探す手間が省ける』

 

 モノ作りに対する心構えを教えてくれた、尊敬する祖父と父の言葉であり、今も大事にしている金言だ。

 そうして裁縫セットやはんだごてなどをしまい終え、ウェットティッシュで机を拭く。作業場は常に綺麗な状態にしておく。これも金言の一つだ。

「しかし、いつもながら主殿の手先の器用さには驚かされるのう」

「今座ってるコレだって、一時間もしない内に作っちゃうんだもん」

「そうかな?構造が分かれば、あとはクオンとサンのサイズに合わせて作ればいいだけだし。それに、こういうのって作る過程の動画を参考にすれば、簡単じゃないかな?」

「……お姉ちゃん。お兄ちゃんがな〇う系主人公みたいなこと言ってる」

「主様にとっては、というよりも、葛葉家にしてみれば、この程度児戯にも等しいということ。だからこそ、妾たちは「ここ」にこうしておられるのじゃからのう」

「そうだよね。お兄ちゃんには一生かかっても感謝しきれないもんね」

「そんな大げさな……」

 そんなクオンとサンの会話を聞きながら、本日学校より出された課題に取りかかる。今回の課題は数学と古文。まるで正反対だ。

 先も述べたように、メガミはAIで稼働する。そのため学習機能が備わっており、こうした課題に取り組む際の手助け要員としてメガミを購入する人もいるとかいないとか。であるからして、クオンとサンもその学習機能の影響により、誠士郎が取り組んでいる課題の内容を見れば、すぐに解説付きで解答することが出来る。が、そういうことは決してしない。

 

『課題は、自分で考えて答えを出さないと、知識として身に付かないから』

 

 以前、誠士郎からそう言われたので二人ともそうはしないし、カリカリと課題プリント用紙に書き込んでいくペンの音をBGMにして、作ってくれたばかりのキャンピングチェアの座り心地を楽しんでいく。

 どの程度時間が経過したのだろうかとクオンがちらりと壁掛け時計を見れば、もうそろそろ夕飯時だ。自らのマスターである誠士郎の父と祖父は体力と精神を使う仕事の職人だ。そのため、食事時には仕事で使った分のエネルギーを補充するためか、かなりの量を食べる。クオンもサンもその光景を目にしたときには、とても驚いたことを鮮明に記憶している。自分のサイズが誠士郎と同レベルなのであれば、その大量の食事を用意する誠士郎の母を手伝えるのにと何度思ったことか。

 不意に、ガチャッっと葛葉家の玄関が開いた音がした。今考えていた大食漢二名が仕事から帰ってきたのだろう。それはどうやらサンにも分かったのだろう。というか、身をよじって誠士郎に伝えていた。

「お兄ちゃん。パパとおじいちゃん帰ってきたよ」

「流石はメガミの聴覚センサー。ということは、そろそろ晩ご飯か。丁度いいや。僕も課題は終わったところだし」

「とはいえ、父上も老師もこれから風呂じゃろう。その間に母上を手伝わねばなるまい」

「そうだねお姉ちゃん。お皿並べ、手伝わないと!」

「というわけじゃ主様。早う妾達を茶の間まで運ぶのじゃ」

「今日はどこに乗るの?」

「妾は右肩」

「じゃあサンはひっだりかた~♪」

 誠士郎はその要望通り、クオンを自身の右肩に、サンを同じように左肩に乗せて、二階の自室から出て階段を降りてリビングに向かう。

 何度も言うが、メガミは自立型AIの機械少女。乗った肩から落ちないように、シャツの布を掴んでバランスを保つことは当たり前に出来る。

 そうしてリビングに辿り着くと、大皿に山盛りとなっている唐揚げ山が大きめのちゃぶ台の中央に置かれていた。

「いつ見てもすごい量だよねお姉ちゃん……」

「妾も最初は驚いた」

「母さん、何か手伝うことある?」

「あるある。そこのサラダ運んでおいて」

 黄色のエプロン姿でテキパキと調理を進めているのは、誠士郎の母である葛葉佳(けい)。少しウェーブのかかった亜麻色の長髪をこれまた黄色のシュシュで纏め、これからまた唐揚げを揚げようというところだ。

「え、まだ揚げるの?」

「これは明日、お昼に従業員のみんなに食べてもらう用」

「なるほど。一気に揚げちゃうわけね」

「そういうこと。クオンちゃん、サンちゃん、取り皿、いつものように並べておいてくれないかしら?」

「任されたぞ母上」

「りょーかーい!」

 佳の声に応じて、クオンとサンは等間隔になるように、取り皿と箸を並べていく。全高約14cmのホビーとはいえ、初見の人間からしてみればビックリするほどパワーが備わっており、その証拠にサラダをちゃぶ台に置く頃には、すでに皿と箸を並べ終わっている。

 着々と夕食の支度も整い、炊飯器から米が炊けた合図の音がしたころに、風呂から上がった誠士郎の父、渉(わたる)と、祖父の巌次郎(がんじろう)が浴衣姿でやって来た。

「何とか納期に間に合った……」

「急に計画が早まったと聞かされた時には焦ったが、そこを間に合わせるのが職人魂ってもんよ。従業員の皆には感謝だな」

「従業員あってこその我々ですからね……」

 そんな会話をしながら、ちゃぶ台のいつもの場所に座り込む。いつのまにやらその場所が各々の指定席になっているのは、ある意味不思議な話ではあるが。

「父上、老師、本日もお疲れ様じゃな」

「お仕事大変だったの?」

「大変というか、先方に振り回されたというか……」

「まぁ仕事が大変なのは変わらんよ。ちょっとばかし早くしてくれって言われただけでな」

 渉も巌次郎も、ナチュラルにクオンとサンと会話を楽しむ。葛葉家にとってクオンもサンも大事な『家族』の一員なのだ。この光景とて当たり前。

「父さん、じいちゃん、そっちにご飯と味噌汁運ぶから、場所空けといてよ」

「「はーい」」

 そうして本日の夕食のメニュー(ご飯、具がタマネギの味噌汁、大根のぬか漬け、レタスときゅうりとミニトマトのサラダ、山盛りの唐揚げ)が揃ったところで、

「「「「いただきます」」」」

 と、相成った。

「あぁ……やっぱり佳さんの作る料理は最高だ……」

「食べる度に言ってくれて嬉しいわ」

「それを見せられてる息子の身にもなってよ。いつまで経っても慣れないんだからさ」

「そう言うな誠士郎。感謝の気持ちを普段から伝えられる夫婦は円満なんだぞ」

「さすが老師。金言じゃな」

「お姉ちゃん、本当におじいちゃんのこと尊敬してるよね」

「当然じゃ。そう言うサンはどうなのじゃ?」

「サンもおじいちゃんだ~い好き!」

「そうかそうか!そりゃおじいちゃんも嬉しいな!はっはっは!」

 まるで孫と会話しているみたいだなと味噌汁を啜りながら誠士郎は思う。まぁ確かに、クオンとサンが家にやって来る前まで、ここまで会話をしながらご飯を食べていたっけと過去を振り返る。たまに従業員の何人かが食べて帰ることもあったが、ここまでではなかった。

 きっと、今はクオンとサンを中心に葛葉家は回っているのだと、啜る味噌汁の具のタマネギの甘みを感じながら、少し大きめの唐揚げに手を付けようとした瞬間だった。

「あ、そういえば、来週からウチに女の子が下宿するから、気をつけてね、誠士郎」

「は?」

 寝耳に水な母からの発言を聞いて、箸で摘まんだ唐揚げを落とさなかった誠士郎は、そのままの姿で固まった。

 今なんて言った? 来週? 女の子? 下宿? ゲシュタルト崩壊? What?

「は、母上!?その言葉は真なのか!?」

「本当♪」

「父上と老師はご存知であったのか!?」

「言おうとしたんだけどね……」

「サプライズはワシも好きだからな!」

「佳さんと親父に口止めされちゃっててね。すまないね、誠士郎」

確かに母も祖父もサプライズ好きではあるものの、そういうサプライズは止めてほしい。落ち着け。思考を止めるな。呼吸を整えろ。ひとまず唐揚げを取り皿に置くんだ。

「あ、ちなみに誠士郎が通ってる高校の留学生で、誠士郎の後輩ってことになるから」

「ん?お兄ちゃんの後輩だから……その女の子16歳なんだ。わぁ~楽しみ~♪」

 サン、確かにその情報は合ってはいるが論点はそこじゃない。

「しかし母上、その留学生の部屋は何処にするのじゃ?」

「階段左、つまり誠士郎の隣りの部屋よ。先方には間取りを見てもらって決めてもらったの」

 最近やたら自室の隣りの部屋の掃除を念入りにしていた理由はそれか……

「最初に佳ちゃんから話を聞いた時には驚いたが、これも何かの縁だろうと思ってな。そのまま渉を取り込んで準備を進めていたんだぜ?」

 そんな決め顔で言ってもかっこよくはないからな、じいちゃん……

「僕とクオンとサンがいないところで、もうそこまで話が進んでいたなんて……こんな展開、アニメかマンガかラノベかギャルゲーでしか見たことない……」

「事実は小説よりも奇なりだよ、誠士郎」

「その奇がデカすぎるって父さん……」

「誠士郎に言わずにおいたのはすまなかったよ。でも、誠士郎だからこの話を受けたんだ」「僕だから?」

「ああ。『その名』の通りに育ったお前だからだよ。そうじゃなきゃ、俺は全力でこの話を断るに決まってる」

 

―――いいかい誠士郎。人生で盛大にすっ転んでも、必ず『名前』のように生きなさい。

 

「……これから、扉とか開ける前にノックを必ずするクセつけないと。それと、その話は反則だよ、父さん」

「すまない。俺も気を付けないと。じゃなきゃ佳さんに られちゃうしね」

「確かにね。そういえば母さん。その留学生の名前って何ていうの?それと、どうやってここまで連れてくるの?」

「私が車で空港まで迎えに行くわ。それと、名前なんだけど……」

 

「エリナ・バレンシュタインって名前だそうよ」

 

 

 

 

おまけ

「しかし、その留学生とやらはメガミを所持しているのじゃろうか」

「もしそうだったら仲良くなりたいな~♪」

「そうじゃといいのう」

 

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