メガミと『つくる』日常   作:ミヤビコウ

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楽しんでいただけたなら幸いです


地下組織という言葉は厨二心に突き刺さる

 ち~ん  ち~ん

「……」

「……」

朝の葛葉家の仏壇で、マッチで点けた蠟燭の火で、線香に火をつけて香炉に供え、おりんを二回鳴らし、遺影で笑う誠士郎の祖母、とし子に、学校の制服のブレザー姿で誠士郎は手を合わせ、エリナは手を組んで目を閉じる。

数秒して目を開けると、誠士郎が蠟燭の火を手で扇いで消して、二人は玄関へと向かいローファーを履く。

「行って来る」

「行ってキマス」

「交通事故に気をつけなさいよ~」

「行って来い主様」

「お兄ちゃん行ってらっしゃ~い♪」

「姫、どうかお気を付けてくださいませ」

 葛葉家の母、佳と、各々のメガミに見送られながら、誠士郎とエリナは歩いて登校していった。

 季節はボチボチ五月の後半。気温は少しずつ高まり、それに伴い湿度も上昇。不快指数もそれだけ上昇していき、夏服が恋しくなってくる季節になっていく。

「エリナは長髪だから、色々大変そうだね」

「起きると髪がドッカンしマス……」

「髪留めとかある?」

「アマリ持ってマセン……」

「言ってくれたらじいちゃんとかがバレッタとか作ると思うよ?」

「そこまでワガママ……」

「ばあちゃんと母さんの髪留め類は、じいちゃんと父さんが自作したんだ。だから問題ないよ。まぁ、ウチの高校の校則違反に触れないようにしないとだけど、その辺は局長と副長に聞けば大丈夫だって」

 

何だかんだと喋りながら、交通ルールを守って事故に気を付けながら、無事に二人は昇降口に辿り着き、自分の下駄箱に大量に突っ込まれた手紙に驚くのだった。

誠士郎はその手紙の束をさっさと無視して、エリナの元に向かうと、誠士郎の下駄箱同様、いやそれ以上の手紙に、どうしようかとアタフタしていた。

「セーシロー、どうしたら……」

「まぁ、一先ず証拠は撮影しておかないとね」

 誠士郎は携帯端末を取り出すと、エリナの下駄箱の惨状を撮影し、ビニール袋を取り出すと、その袋に手紙を全部入れて口を縛る。

 同じように、誠士郎も自分の下駄箱を撮影し、手紙をビニール袋に入れて口を縛る。

「よし、証拠確保」

「この後はどうしマス?」

「職員室に提出。迷惑行為だし、校則違反。然るべき処分を下してもらう」

「スットコドッコイな人?」

「もちろん♡」

 誠士郎の口調はとても優しいが、その表情は絶対零度な能面のような表情をしていた。

 

「で、中身も読まずに生活指導に提出したと。相変わらず思い切りがいいな葛葉は」

「読むだけ無駄だろあんな紙屑。僕は無駄が嫌いなの。昨日エリナに対して威嚇したからな~僕を懐柔してエリナとお近づきになりたいんじゃない?」

「外堀埋めようってわけか。セコいな~」

「でも反省はしてる。あの一件でエリナに友達出来にくくなるんじゃないかってさ」

「お前はエリナさんの親か何かかよ?」

「ホストファミリー」

 朝の予鈴前に、池と席に座りながら昇降口での出来事を話す誠士郎。この時間は誠士郎にとって学校で数少ない楽しい時間の一つで、池と友達になってから、いっつもこうして馬鹿話をしながら予鈴が鳴るのを待っている。

「でもまぁ、お前がここまで過保護だとは思わなかったぜ」

「やっぱそう見える?」

「自覚があんならそうだろう。昨日は昼飯一緒だったし、そのために九重先輩と天神平呼んだし、放課後は大声事件起こしやっがたんだ。これだけで新聞部はおいしいネタって食いつくだろ」

「一応、顧問と生徒会と校長が検閲してるけど、ネット掲示板がなぁ……」

「好きにさせとけよ。二、三ヶ月もすりゃ落ち着くって」

「カオダケが介入しなければ。だろ?」

「お前本当に生徒会長嫌いだよな」

「女性票だけで当選した能力なしのハリボテ会長が、エリナに近づいたら合法的にぶっ潰す」

「お前だったら本当にやりかねないから怖いんだよ……っと、予鈴鳴ったな」

「ん」

 

 時刻は過ぎて昼休み。誠士郎は鞄から弁当を取り出すと、エリナの教室へと向かう。やはり過保護とも言われるが、それでも心配なものは心配。ちなみにだが、今回池は一緒じゃない。理由は『たまには一人で食べたい』というもっともらしい回避をしたからだ。

「エリナ~学食行こう~」

 と誠士郎が昨日より声量と威嚇圧低めで、エリナに声をかける。と。

「あ、葛葉先輩来たよエリエリ~」

「Thank youデス、ハル。セーシロー、待ってマシタ」

 ブンブンと弁当箱を持ったエリナが手を振る。そしてエリナの隣には、同じように弁当箱を持っている眼鏡をかけている、黒のセミロングにアホ毛の女生徒がいた。

「いや~昨日の啖呵は見てましたけど、かっこよかったっすよ葛葉先輩!」

「そりゃどうも。って君誰よ?」

「あ、それもそっすね。初めまして。ウチはエリエリの親友第一号、長谷川榛名(はせがわはるな)。っす。よろしくお願いするっすよ、葛葉先輩!」

 と、何とも無邪気な笑顔で誠士郎に臆することなくやって来たのだった。

 

「ほぅ。親友第一号か。それはめでたい。君もそう思わないか天神平君」

「まぁそうですが。九重先輩は今日もカツ丼ですか」

「量と値段も丁度いいし質もよい」

「ひえぇぇ……生徒会メンバーと知り合いって、エリエリどうやったの?」

「共通のシュミですヨ」

「ホストファミリーとしては嬉しい限りだよ」

 学食で、昨日、池が座っていた席に榛名が座り、昼食と相成った。因みに誠士郎、エリナ、悠乃は弁当で、旭は学食のカツ丼、榛名は同じく学食の豚の生姜焼き定食である。

「葛葉先輩たちはお弁当なんですね。ご自分で作っているんですか?」

「たまに」

「エリナも、佳ママ手伝いたいデス」

「佳ママ?」

「セーシローのママですヨ。あむっ。ん~~~玉子焼きとってもDelicious~デス!」

「誠士郎君、私のカツ一つと玉子焼き一つを交換しようじゃないかね?」

「だが断る」

「九重先輩と葛葉のそれは一体何なんだ?」

「「ただのじゃれ合い」」

 そんなこんなで、昨日と同じく楽しく、そして周りから相変わらず嫉妬が乗っかっている視線を向けられながら、楽しく?昼食を取っている。

 若干、嫉妬の圧が増えた気もするが、そんなことは全く気にしていないし、何なら榛名は何のことだか全くわかっていない。

「あ、そうだ。エリエリは兎も角として、先輩たちって『RBI』って知ってます?」

「私は聞いたことはない。九重先輩はどうです?」

「私もないな。生徒会では把握していない。そういう部活も同好会もないはずだ」

「僕そういうの興味なし。SISなら興味あるけど」

「エリナの母国の諜報機関を知ってるセーシローすごいデス」

「何で葛葉先輩ってそういうの知ってんですか……で、RBIってのは、この学校の地下組織なんすよ」

 あむ。と、最後の一つの生姜焼きを食べて、ちゃんとよく嚙んでから飲み込んで、話を続ける。

「このRBIは、正式名称『リア充撲滅委員会』っていう名前で、リア充、要はカップルみたいな連中をターゲットにして、自分達の気が済むまで徹底的に妨害しまくって、あわよくば別れさせるっていう悪質な連中なんすよ」

「榛名はどうして知っているのデスカ?」

「学校裏サイト。たまにRBって単語がやけに出てくる時があってね。気になって調べたら出てきたの」

「ぜひ、イギリスの諜報機関で働きませんカ?」

「てことは、今朝下駄箱に突っ込まれた手紙やらって、そのRBIの仕業かな。読まないで全部職員室に提出してきたけど」

 

『なんだと!』

『一切読まずに!?』

『しかも職員室に提出しただと!?』

 

「私も葛葉と同じことをする。写真は?」

「端末で撮ったし、クラウドに保存済み。ついでにそのデータも生活指導の先生に渡した」

「葛葉先輩、えげつないっすね……」

「私も誠士郎君と同じ行動をするだろうね。もし仮に、エリナ君や誠士郎君に対して脅し文句のようなものが書かれていた場合、脅迫罪が適応される可能性があるな」

 

『きょ、脅迫罪だとっ!』

『ホストファミリーだからって調子に乗るなって書いたけど、大丈夫だよな……?』

『落ち着け!我々の調査では葛葉にそんな度胸はないはずだ!!』

 

「ま、これからもこんなことが続くなら僕も容赦しませんよ。僕だけだったらいいですけど、エリナの下駄箱にも手紙突っ込んでたし本格的に潰そうかな?ビニール袋に入れて提出したから指紋は綺麗に残ってるだろうし、いっそ警察に相談してみようかな?」

 

『警察……だと……!』

『ヤバい!奴は本気だぞ!!』

『だから落ち着け!悪ふざけ!そう、悪ふざけでやったんだ!刑事事件になるはずはない!!』

 

「それ以前に、こんなチンケな嫌がらせしてるからモテないんでしょ?姿隠してまでやることか?フラれるのが怖くて勇気出せない意気地なしの集まりでしょこんなの。それとも新撰組の局中法度みたいなのがあるのかね。『RBIにいる限る、告白は許さぬ』って。子供じゃあるまいし」

 

『『『『『ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』』』』』

 

「セーシロー。セーシローは好きな人ができたら、告白シマスカ?」

 エリナがコテン、と可愛く首を傾けて誠士郎に聞いてみると、その答えはシンプルだった。

「もちろん告白するよ。ちゃんと自分の気持ちを伝えないと自分にも相手にも失礼だよ。その結果フラれても、それだけってことなんだから」

 

『『『『『やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!正論パンチをやめろぉぉぉぉぉ!!!!!』』』』』

 

「葛葉はそういう所は達観しているな。清々しさまで感じる」

「達観というか、死んだばぁちゃんに口を酸っぱく言われてたんだ。『傷口に塩をすり込もうとも、自分の気持ちに従え』って。その覚悟がない連中の集まりなんか怖くないよ」

 

『『『『『もうやめて!!!!!我々のライフはもうゼロよ!!!!!』』』』』

 

「あ、そういえばエリナは放課後は暇?またショップ寄ってく?」

「葛葉先輩、ショップって?」

「メガミデバイスのショップ。それでどうする?」

「もちろんデス!ハルも一緒にどうデスカ?」

「あ~……じゃあウチもそうする!!実はウチってメガミデバイス初めてなんだよね~」

 

『『『『『……ということは、ターゲットは確実にモールのショップに現れるということ!!!!!ターゲットを潰すチャンスだ!!!!!』』』』』

 

「いっそ誠士郎君の家に行ったらどうかね?エリナ君と友達ということは、ホームステイ先である誠士郎君の家に行く機会も増えるだろう」

「確かにそっすね。エリエリもそれでいいかな?」

「いいデスよ。セーシローも、それでいいデスカ?」

「ただ帰るだけだしね。母さんに連絡しとく」

「葛葉、念のため下校時には気を付けろ。例のRBIの連中がストーキングしてくるかもしれんぞ?」

「それなら寧ろ大歓迎。警察に通報する大義名分ができるしね」

 

『『『『『こ、こやつ、出来る!!!』』』』』

 

「決まったようだな。そして私も丁度食べ終わったところだ。ご馳走様でした。相変わらずここの学食のカツ丼は素晴らしい」

「私もご馳走様だ。じゃあな葛葉。ついでに生徒会でも、そのRBIとやらを調べてみる。そして、徹底的に糾弾し跡形もなく潰すことを天神平の名に誓う。それでは先に。あ、午後の授業で寝るなよ」

 そう言って、生徒会メンバーの二人は席を立ち、それぞれの教室へと向かっていった。

 それを三人は見送ると、各々食器を片付け、自分達の教室へと向かっていく。

「葛葉先輩、放課後エリエリと先輩の下駄箱前に集合でいいっすか?」

「エリナもそれでいいなら」

「モチロンデス」

「わかった。それじゃ放課後にね。あ、それと……」

 そう言って誠士郎は学食の席を立つと、その場で深呼吸をしてから、吸った分の空気を声に変換し叫ぶ。

「ここにいるRBIとか言うスットコドッコイ共!僕とエリナ、いや、僕に用があるってんなら、面と向かって真正面から文句を言えってんだ!そんな簡単なことも出来ねぇ腰抜けどもなんぞ怖くもなんともねぇ!!このこと裏掲示板に書き込むか!?上等だ!いくらでもそうしろってんだ腰抜けのスットコドッコイ共が!!以上だ!!わかったな!!」

 誠士郎は言いたいことを言って満足すると、どこかせいせいした表情で学食から去っていく。それに続いてエリナと榛名も後に続く。

 そして、くるりと180度回転してエリナがトドメの一言をポツリと言う。

 

「スットコドッコイな人、エリナは大っ嫌いデス」

 

 RBIへの会心の一撃!!HPをトンネル掘削用のドリルで削り取るどころか、HPバーにパイルバンカーをぶち込んで完膚なきまでにへし折って粉砕していった。

 のちに、今日の学食での出来事は『葛葉事変』として長く語り継がれていくことになるのだが、そのような些末な出来事など、あの三人にはどうでもいいことなのであった。

 

 

 

 

おまけ

「えっと、スロー、スロー、クイッククイック。こんな感じアルトちゃん?」

「うむ。流石はサン殿。筋がいい」

「妾も覚えてみようかのぅ。その社交ダンスとやらを。パートナーが居らぬと華がないのであろう?」

「本当!?お姉ちゃん早く一緒に踊ろうよ!」

「アルト、妾にもお教え願いたい」

「私の教導は厳しいぞ?」

「かまわん。妹に格好悪い姿を見せるわけにはゆかぬからな」

 

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