メガミと『つくる』日常   作:ミヤビコウ

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楽しんでいただけたなら幸いです。


姫騎士、狐、踊り子

「感謝してもしきれないぞ葛葉。おかげでルーナと一緒にいられる」

「何かあったら言ってね。あ、でも『カオダケ』のと接触は避けたいから、そこら辺のこと教えて。あと、新聞部の連中。絶対エリナに取材が集中するから」

「努力はする。『会長』にその辺りは通達しているはずだ」

「あぁ『局長』か。だったら安心出来るかな」

「葛葉、生徒会を新選組だと勘違いしていないか?」

「似たようなものでしょ。ほら、始まるよ。エリナの日本での初バトル」

 ショップの大画面モニターには、ウキウキ顔のエリナと、したり顔の30代ぐらいの男性が映し出されおり、二人のメガミがジオラマフィールドで待機していた。

「なぁ葛葉、二人のメガミはどういうメガミなのだ?」

「副長はあまりバトルに興味ないの?」

「クラウドで数回だ。元々話し相手が欲しくてルーナを手に入れた。それに、今回のこともあるしな……怖くなった」

「それもそうか……」

 先ほどまでパートナーであるメガミが壊れかけていたのだ。そう考えてもおかしくない。それに、そういった考え方をする人も結構いる。バトルよりも、よりクオリティの高いメガミを作成してSNSに投稿する人の方がちょっと多い。時間と心血を注いだメガミがバトルで壊れてしまうのは血涙レベルだろう。

 バトル仕様で作るもアリ、鑑賞目的で作るもアリ。

 メガミデバイスは、とにかく自由に造ることが醍醐味なのだ。

「う~ん。相性はエリナが不利かな」

「どういうことだ?」

「相手が『ロマン砲』だからね……」

 エリナの相手のメガミ。それは、『BULLET KNIGHTS ランチャー HELL BLAZE』だったのだ。

「ロマン砲?」

「あのメガミは拠点攻撃型の遠距離タイプで、一発の砲撃の攻撃力が高い。しかも攻撃範囲が広いから、一発で勝負が終わる。例え外したとしても、攻撃範囲に入る可能性が高いから、致命傷になりやすいんだ」

「ちなみにエリナのメガミは?」

「聖騎士型の近距離タイプ。武装は……あのバスターソードだけって凄いな。でもpt

二割増しぐらいかな?よく作り込まれてる」

「pt?」

 ptとは、メガミのバトルパラメーターのことで、その値はメガミの作り込みや改造度合いで変換する。パラメーターの種類は、

 

・近距離戦闘

・中距離戦闘

・遠距離戦闘

・装甲・防御

・重量

・稼働時間

・隠密

・索敵

・空中機動

・地上機動

 

 に分かれており、その合計数値によって決まる。だからと言って何でもかんでも詰め込めばいい。わけでもなく、特化型にしてみるもよし。バランス重視にしてみるもよし。とにかく正解がないので、ユーザーが頭を悩ませる種でもある。

「なるほど。奥が深いな」

「ちなみに、副長のルーナは魔女型遠距離タイプでptは290。エリナのアルトは240だったかな」

「葛葉のメガミはどうなんだ?」

「妾は電子戦特化型タイプ……まぁ器用貧乏じゃのう。ptは350といったところか」

「サンは踊り子型支援タイプだよ♪pt280♪」

「ユノ、あくまで参考だからね」

「ありがとう。ルーナ」

「副長、いよいよ始まるよ」

 

 エリナの対戦相手の男性は、内心喜んでいた。何せ相手のメガミが近距離タイプで、こちらは遠距離タイプ。しかも一発当たれば、ほぼ勝ち確の高火力。しかも攻撃範囲だって大きい。勝てる。確実に勝てる。

「お互い、いいバトルにしまショウ♪」

「ああ。そうしよう」

 本当にニコニコ顔の可愛い女の子だなーと思ってしまう。が、時代が時代だ。心の奥底にしまって、バトルに集中しなければ。

 

「よし。勝つぞ!」

「了解ですマスター!一撃必殺です!」

 

「アルト。貴女の勝利を信じます」

「我が騎士道に誓い、姫に勝利を捧げます」

 

 

・フィールド:荒野

・THREE・TWO・ONE……『BATTLE START!!』

 

 

 開幕と同時にドでかい轟音と閃光で視界がいっぱいになった。

「うおっ!!」

「ユノ、平気かい?」

「あぁ大丈夫だ。驚いてしまってな……さっきの音や光はエフェクトか?」

「そうそう。あんなの本当に直撃したら、メガミ本体が消滅しちゃうからね」

 ランチャー同士のバトルにおいては、音と閃光が激しくてバトルの観戦ができない。とSNSに投稿されたほど。(ランチャーのロールアウト初期のころ。現在はこれでもマシになっている)

 メガミバトルにおいて、勝敗の決着は『相手のメガミの稼働エネルギーをゼロにする』というもの。

 しかし、そこに問題がある。実はこの稼働エネルギー、攻撃エネルギーにも適用されており、ランチャーのようなビーム砲撃をすればするほど稼働エネルギーも消費してしまう。

 そのため現在では、改造用拡張パーツとして、外部バッテリーパーツが販売されるようになり、ある程度の解決はされた。

 その証拠、というわけではないが、プシュッっと音がして、ランチャーの腰の位置に付いていた小型の樽型バッテリーが外れて、カラカラに乾きひび割れた地面に落ちる。

「なるほど。聞けば聞くほど興味深いな」

「あとでバトルしてみるかい、ユノ?」

「ルーナの武装パーツは持ってきていない。……やはりまだ怖い」

「まぁ人それぞれだよね。さて、アルトはどうなったかな」

 

「状況は?」

「バッテリーを一つ消費。でも直撃はさせた」

「だが決着ブザーが鳴っていない。周辺警戒。お前のメインウェポンは取り回しが悪いからな。索敵に反応があればもう一発。サブアームは常に使えるようにしておけよ」

「了解」

 エリナの相手は、相当にバトル慣れしているし、メガミとの報連相もしっかりしているし、メガミもマスターと呼ぶ彼のことを信頼している。

 こういうメガミユーザーは強い。観戦しながら誠士郎はそう思う。

 だが、それでも、こう思う自分もいる。

『エリナが負ける想像が出来ない』と。

「マスター!索敵に反応あり!」

「どこだ!」

「真正面!!突っ込んできた!!」

 ランチャーの言う通り。その目の前には、バスターソードを振りかぶったまま、もの凄いスピードでランチャーに、真正面から突っ込んでくるパラディン、いや、アルトが眼光鋭く突っ込んできたのだ。

「あれだけの砲撃の中、どうやって!?」

「アルトの機体の特性と、エリナの作り込みの腕前だね」

「アルトの特性?」

 アルト、いや、『BUSTER DOLL パラディン』は、重装甲で有名で、装備の中のアーマーマントには、対ビームコーティングが施されている。なので、多少なりともビーム兵器には耐性がある。

 だが、それは『多少のビーム耐性』だ。

 あのランチャーの一発を完全に防ぐのは不可能だ。確実に敗戦は確実だ。でも、アルトは多少のダメージこそあるが、突っ込んで来ている。だとすれば、考えられることはただ一つ。エリナの作り込みの腕前だ。

 メガミのptには、作り込みや改造度合いも組み込まれている。そのため、クオリティが高いとptにボーナスが付与される。

「つまり、エリナが作ったアルトのptは……」

「平均値よりも高い。だからあんな無茶苦茶なことが出来る」

 

「アルトGo!!」

「覚悟!はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 アルトの咆哮と共に、アルトはランチャーを愛剣の黄金のバスターソードで袈裟斬りにしたのだ。

「ぐ、あぁ……」

「我が剣に断てぬモノなし」

 その一言が決着の合図だったようだ。

 

 

WINNER! エリナ・バレンシュタイン&アルト!

 

 

「日本初Victoryデス!!」

「お見事です。姫」

「頑張ってくれたのはアルトデス!」

「いや~見事だったよ。相性はこっちが有利だったんだけどね」

「あ、対戦相手の方デスね。さっきはありがとうゴザイマシタ。メガミは大丈夫デスカ?」

「今は急速充電中。故障もしてないよ。ちょっと気になったんだけど、あの一撃をどうやって防いだんだい?後学のために教えてもらえない?」

「ちょっとした裏技デス。稼働エネルギーを、ビームコーティングのエネルギーに集中させマシタ」

「そういう方法があったのか……ありがとう。参考にさせてもらうよ」

「ナイスファイト、エリナ」

「セーシローもこれからバトルですカ?」

「ランダムマッチで予約したからね。勝ってくる」

 そう言って、エリナと誠士郎は入れ替わって筐体に入る。

 エリナがあそこまでのバトルを繰り広げた。本当に素晴らしいモノだ。自分はエンターテイナーでもないし、プロでもない。でも、『勝ってくる』なんて言った手前、負ける訳にはいかない。自分で外堀を埋めて背水の陣にしてしまったが、やるしかない。

「主様、全力を出してもよいのか?」

「サンも!全力で戦いたいよ、お兄ちゃん!」

「相手のメガミと数とタイプを見てからね」

 

 

「見ていてハラハラしたが、見事だったぞ、エリナ」

「Thanksデス。フクチョーさん♪」

「次は葛葉か。ランダムマッチと言っていたが、エリナとは違うのか?」

「そうですネ。ランダムマッチは、バトルするメガミの数が『最大』五体まで。という決まりがありマス」

「最大で五体?ということは……」

「最悪の場合、1on5ということがありマス。あ、始まりマス」

 

・フィールド:荒野

・THREE・TWO・ONE……『BATTLE START!!』

 

 荒野の特徴は、遮蔽物が一切ないことだ。仮にあったとしても、少し大きい石ぐらいで隠れることはできない。

 だが、それでこそメガミ自身の実力を余すことなく発揮できる。そういうフィールドだ。そしてそんなフィールドに、九尾モードのクオンと、レガリア武装のサンが降り立つ。そしてその向かいには、『WISM・ソルジャーアサルト』が五人立っていた。

「WISMシリーズ。しかも五体デスカ……」

「あのメガミはどういうメガミなんだ?」

「メガミデバイスは、WISMシリーズから始まりマシタ。メガミの原点デス。作りはシンプル。でも改造しやすいノデ、トップランカーの中にもWISMをベースにしている人もイマス」

「だがあのメガミは誰も改造されていないようだが?」

「数の暴力で圧倒デスネ。ホラ」

 エリナと一緒にモニターを見ると、ソルジャーのアサルトライフルの一斉射撃を何とか避けて避けて避けまくるクオンとサンがいた。その表情は少しばかり焦っており、苦しそうだ。それもそのはず。アサルトたちの位置が少しずつクオンとサンを円形に包囲するように移動しているのだ。

「包囲網が完成されたら、クオンとサンは的になってしまいマス……」

「しかも銃弾の雨で動けない。このままだと葛葉は……」

「逆ですよ、姫、悠乃殿」

「そうだね。準備完了し終わっている。サンの避け方を見てごらんユノ。まるで踊っているように見えないかな?」

 ルーナに言われサンをよく見ると、あれだけの銃弾の中、まるで優雅で激しい舞のようにも見える。ときに彼女の武装、十束剣を用いてクオンに向かう銃弾を逸らし、弾く。それもあってかまるで剣舞。そして銃弾の発射音の中、クオンが一言静かに言葉を発する。

「始めようかのう」

 トン。と、クオンは自らの武装のロッドを地面に軽く打ち付ける。そしてそれが合図かのように、『ソルジャーたちの銃口が、滅茶苦茶な方向に向けられて撃ち始めた』のだ。

「おい!どこ撃ってんだ!そっちじゃない!くっそ!センサー壊れてんのかよ!!」

 誠士郎の対戦相手は矢継ぎ早に指示を出しているが、その指示通りにメガミが行動しない。だが、それは当然だ。

 今この状況こそが、朱羅 玉藻ノ前の真骨頂。相手のメガミのセンサーを混乱させ、視覚に干渉し消えたり分身しているように見せ、相手を翻弄しながら戦う。それこそ、怪談話などで語られる、狐が人間を化かすかのように。

 そして、その玉藻ノ前の能力を増幅させているのがサンだ。彼女は日本神話に登場するアメノウズメがモデルであり、天岩戸に隠れた神を、その唄と舞で誘い出した逸話により、『唄』『舞』というメガミの駆動系に作用するバフ機能が搭載されている。要は、『唄って踊りながら戦うと、味方のメガミが強くなる』ということだ。

 サンは初めから回避をしていない。回避をしているように踊っていたのだ。そうして『唄』『舞』のバフ効果が発動。その効果が最高潮『アゲアゲ↑↑』状態になった瞬間に、クオンがジャミング能力を最大出力で発動させたのだ。結果はご覧の通り。そこにいないクオンとサンに向かって、ソルジャーはアサルトライフルを射撃する。いや、させている。

 だが、そのジャミング能力だって長続きしない。原因は稼働エネルギー。この能力はかなりのエネルギーを消費する。もちろん、サンのバフ効果だって同じだ。能力の強い武装や効果は燃費が悪い。それを踏まえてクオンとサンが今の能力を使える時間は、七秒。

 だから、誠士郎は二人に指示を出す。

「クオン、サン、ブーストジャミング解除。その後は『身軽』に戦おう」

「了解じゃ」

「は~い♪」

 その言葉で、クオンとサンは『アーマーと武器をパージ』したのだ。

 そして、その様子を観戦していた全員が『有り得ない』といった表情を浮かべる。

 それは当然のことだ。何せ攻撃方法と守備方法の両方を捨てたに等しい行為。メガミバトルにおいて、こんなことをするメガミとユーザーは、いない。

「誠士郎殿は、一体なにをするつもりなのだ?」

「でも、クオンもサンも勝負を捨てていないよユノ」

 メガミにも格闘武装パーツはあるがそれもない。本当に素の状態だ。一体何がしたいのか。観戦している全員がそう思った瞬間だった。

 クオンがソルジャーアサルトの一人に、恐ろしい速度で、とても強烈な肘打ちを打ち付けていたのだ。

「フェェ!?」

「なにっ!?」

 そしてそのまま、その場で一回転し、遠心力を利用してアサルトの頭部に上段回し蹴りを見事にヒットさせてアサルトを沈めた。

 その間に、サンが後方倒立回転、所謂バック転でアサルト二人のアサルトライフルを弾き飛ばすと、着地した瞬間にスパンッとアサルト二人の顎に引っ掛けるように、フリッカージャブを高速でぶち当てて二人を沈める。

 メガミの急所は人間に似通っているため、人間の急所に打撃を与えれば、稼働エネルギーを大幅に減少させることができる。だからこそ、何が起きているのが未だに分かっていない、残りのアサルト二人に、クオンとサンが同じタイミング、同じ速度、同じ威力で、ズン!!と重い正拳を、人間でいえばレバーブローをぶち当てて沈めるのだった。

 

WINNER! 葛葉誠士郎! クオン&サン!

 

「勝てたのぅ……疲れたわぃ……」

「やったねお姉ちゃん♪お兄ちゃんも見ててくれた?」

「見てたよ。流石、俺自慢のメガミたちだ」

七分咲の白梅が彫刻されたカチューシャを取り外しながら、対戦相手のメガミの様子を確認する。よく調べなければ分からないが、回路までは壊れていないはずだ。

「ありがとうございました」

 誠士郎はそう言って、対戦相手に一礼すると、クオンとサンを回収して筐体から立ち去って、観客席にいるエリナと悠乃の下に戻っていった。

「疲れた……」

「セーシロー!あれは一体なんデスカ!?」

「私はバトルは初心者だが、あの戦い方は明らかに異常だ!まさか、AIに改竄を!?」

「してないしてない単純な話だよ」

 いつものように、世間話をするかのように誠士郎は答える。

 

「人間が出来るのに、メガミに出来ない道理はないよ」

 

 

 

 

おまけ

「くっそ~!負けちまった!前はこれで勝てたんだがな~。悪ぃな皆。俺の責任だ。戦術の見直ししねぇとな。帰ったら反省会だ!」

「「「「「はいっ!マスター!」」」」」

「葛葉の対戦相手、結構真面目だな」

「メガミとの信頼関係がなければ、大人数でバトルは不可能ですカラ」

 

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