イェーイめっちゃ鬼殺隊   作:あああ

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霹靂夢行

 

──タイムスリップである。

 

見慣れぬ右横書きの看板に、木造の大通り。テーマパークの様な大正ロマンに見合わない学生服の子供が、迷子で立っていた。私である。これでも察しが良いもんで、使えないであろう硬貨を質屋に出し、とりあえず一杯と茶菓子をしばいた所だった。ああ、タイムスリップである。平成が31年で、昭和が60……大正は短かったと記憶しているけれど、100年くらいは前ってことか?

 

街に溢れていた筈のカーディガンとワイシャツとネクタイとスカートと……みたいなありきたりな服がめちゃくちゃに浮いている。

さてここからどうやって登校したものだろう。当然、スマホは使えやしない。お母さん、弁当もう食べちゃったよ。お父さん、早く迎えに来て。ああ、お姉ちゃんとお兄ちゃんも元気かしらね……。

 

座り込んだ私に、ぽつ、と水が垂れた。

はて、と上を向いて見ればそれは大柄な男のヨダレであった。男は犬歯が長く、目は爬虫類の様で、手は血まみれだった。唖然とする私に襲いかかる男を、一陣の雷鳴が貫いて、その男は風に溶ける様に居なくなってしまった。

そこには小柄なご老体が代わりに居た。刀は既に鞘に納められる所で、一瞬の瞬きの内に勝負が決したのだと、たっぷりと時間をかけて理解した覚えがある。

 

後にこれを鬼と教わり、行く当てのなかった私は雷の育手に師従する事となったのである。

 

 

鬼滅の刃という漫画を知っているだろうか。もし知らないのであれば、先に読んで欲しいと思う。ファンブックのコソコソ話も面白いので、改めて読んで欲しいと思う。

こんな事を言ってはみたものの、実際に私が読んだのは近所の宗教施設で一通り一回りなのでうろ覚えであっても寛容でいて欲しい。あ、映画は見ました。本当に良くて(ろくろ)

 

さて、修行を積んで二年ほど。成果と言えば一ノ型と肆ノ型しか使える様にはなっていなかった。平和な世から一宿一飯を求めてやって来た割には頑張った方である。今日も今日とて茶が美味い。

 

「お主の才能は申し分ない。しかしどうも、雷の呼吸を扱うには呑気じゃなぁ」

「うん、焦っても仕方ないものね」

「もしかしたら、他の呼吸に適性があるのかもしれん。一足早いが、日輪刀を握ってみるか」

 

前提として、才能が無いわけでは無いのだろうが。適性というものはとんとわからなかった。

炎の呼吸や風の呼吸を見様見真似で使ってみれた事もあるし、女の割に力も強くよく食べ、手先は器用で正確で、しかし性格にむらっけがあり、大雑把だった。或いは何をするにも最初はうまく行くが、極めるのは苦手だった。

悩んだ師匠が最後に色変わりの刀とも呼ばれるそれを特別に握らせてみれば、それは七色に反射する宝石の様な刀になった。

 

「この場合、呼吸の適性は?」

「……前例はないが、いろんな呼吸の適性があるのかもなぁ」

 

師匠は私を後継人にするのを諦め、弟弟子を見つけて来た。少年の名前を"獪岳"と言った。

 

 

さて、指針を決めなければならない。

映画で再度盛り上がった作品だが、きちんと完結している。これは私が何をせずとも平安時代から生きる元凶の鬼、鬼舞辻無惨は死ぬという事に他ならない。相応の犠牲を払い、多くの悲しみを経て平和へと至るわけである。

観客としてなら映画三本一気見して朝日浴びたいくらいの思い入れがあるのだが、それとこれとは話が別だ。綿密なフラグ管理の元、一切の隙もなく、泥臭く、ギリギリな勝利。知った上で、手を出してドウコウという気はしない。なんなら下手に触りたいとも思わない。

ついさっき適性が「器用貧乏」とわかったのも拍車をかける。やはり、隠などになって裏方から見守ろうか?

 

生来戦いなどとは無縁な一般人である。最終局面の夜を越えるには、覚悟ってものがない。私は根性とか精神という言葉が大嫌いである。

全てを救うなんて傲慢な事は辞めておくべきだし、邪魔をして無惨が近代まで生き残ろうものなら鬼殺隊は存在できない。炭治郎と禰豆子に任せて傍観するべきだと思う。

 

その過程で私の弟弟子のクソガキは鬼になって、育ての親の桑島慈悟郎は腹を切って死ぬ訳だが……?

 

うーん、やっぱり面白くないな。

早々に死にかけていた私を育ててくれた恩は勿論のこと、クソガキではあるがそれなりに可愛い所もある獪岳を姉弟子として見捨てるのも嫌だ。茶が不味くなる。

そうと決まれば目下の標は呼吸だ。ゲーミング日輪刀なんか持つことになるんだし、多分何かしらは作らなければならない。幸いにも構想はあるので、巡り合わせ次第である。原作で言う、無限列車の頃には確立したい所ではあるが、それまでちゃんと生き残れるだろうか?

 

何はともあれ、茶を点てよう。

ゆとりがあった方が人生は楽しい。

 

 

「また姉貴がサボって茶を点てているんですが」

「怒るな獪岳。明日には最終戦別に行くのだ、好きにさせてやろう」

「だとしたらいつも通りすぎやしませんか」

「そうじゃな……」

 

獪岳から見た姉弟子は、変な人だった。

まず、苗字を名乗らなかった。名前は未来と名乗ったが、誰も彼女を知る者は居らず、無から生えて来た様な人だった。

中身も変だった。西洋語まで使うし、妙に学があったり無かったりした。そしてこの時勢に在るまじき、平和主義だった。

 

「獪岳もできる様になるよ」「無理はしない方がいいのさ」「きっと時間が解決するよ」

「──大丈夫だよ。私のこと信じてみて?」

 

ぬるすぎる価値観。そしてそれを面と向かって言えないくらい、差を感じていた。

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