イェーイめっちゃ鬼殺隊   作:あああ

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変わらない朝を

 

少しの間微睡んでいた。

見たとしたら鬼の記憶だ。未来から来た私に鬼の血筋なんか残ってるとは思えないので、これは血を分け与えた黒死牟の夢だったんだと思う。

焼けつくような嫉妬、全てを捨てても届かない惨めさ、何も残らない恐怖。手を伸ばしても、手を伸ばしても、届かない太陽。

 

馬鹿な人だなぁと思いながら、その手を取った。

 

どうせ私達は太陽がなくては存在し得ないのだ。例えば虹だって雨粒による屈折でしか見えないし、月だって太陽を反射するから見えるのだ。

でも逆に、太陽なんか、眩しくて肉眼では見えないぞ。全てを照らす太陽よりも、星に囲まれて、私たちの影に隠れる奥ゆかしい月の方が好みだ。そっちの方が有り難いじゃないか。

 

「……やばい……要らないポエムを読んでしまった……今何時だろ」

 

目が覚める。

空は白み始めていて、紫色の雲が涙のような雨を降らす。そんな日は少し期待しながら空を見上げるのだ。……ん? 朝日?

 

「二択を間違える事に定評がある!」

 

アレ、もしかして、日光を克服するか否かの分岐だったんじゃないか? 取ったら駄目な方の手だったんじゃないか?

 

まぁいい、とにかく、そう遠くない場所でまだ戦っている音がする。朝日で自分が焼けるからなんだ、起き上がれるなら動け。いざとなったら色んなもの巻き戻してどうにでもしてやる。

少し歩けば隠しがバタバタと車に乗ったりバスを動かしたりとあくせくと働いているのが見えた。末期戦だ。戦える人がほとんど残っちゃいない。母親が素手で無惨の腕を引きちぎっていた。流石にウソかと思ったら、父親は炭治郎を庇って無惨に齧られていた。

 

「私たちってホント馬鹿」

 

刀を持て、日輪刀じゃないと駄目だ。倒れていた隊士が背中に背負っている刀を引き抜く。黄色の刀身に黒色の稲妻だ。……ここまで来てくれたのか、と頭を撫でる。

手が焦げた。露出した肌が爛れる。太陽はこんなにも痛いのかと歯を食いしばりながら、血鬼術で体を巻き戻して焼けながら歩く。山の王のように言うならね、克服できなくっても余裕だぜ!

 

これまで沢山の剣を見てきた。雷から始まり、風で進み、炎で揺らめき、月を見てきた。それで思い出したのが水の呼吸の技なので、やっぱり主人公の手本になる枠ってすごいぜ!

無惨は探すまでもない。でかい赤子は避けもしない。全てを解決する何かができたら最高だけど、そんなに都合の良いことはない。

 

「和の呼吸 壱ノ型──光環終虹(こうかんしゅうこう)

 

少しの時間稼ぎにしかならないかもしれなくても、全ての鬼殺に関わる人が死力を尽くしている。がんばれ、私も。がんばれ。

自分の小さな手を誰かが上から握ってくれたような気がした。よし、選択は間違っちゃいないぞ。

 

 

 

「未来ちゃん、未来ちゃんが燃えちゃう……!」

「何か影になるものは無いか!」

「おい、怪我人の手当てをしろ!」

「担架もってこい!!急げ!!」

「しのぶさんが来たぞ!!」

 

ザクッと首に何かが刺される。いや、怖さが勝るって。救護班なんだよね? どうなった?

月の呼吸を真似して刀に血鬼術を乗せたんだ、半刻とは言わないけど少し戻せたんじゃないか。みんな生きてるか。腕とか繋がってるか? 少しは役に立てたか?

 

「馬鹿ですねぇ。そんな技があるなら日陰から使ってください。目立つの、お嫌いなんでしょう?」

「……ひ、にく、いえるくらいには、なかよく」

「別に私が距離を取ってた訳じゃないですよ? どちらかと言うと人を選んでたのは貴方でしょう。置いていく側になんかさせません」

「お、ばないと、かんろじさんは」

「今良いところなので、邪魔しないであげましょう」

「……ほんと?」

「死なないですよ。ちゃんとした、優秀な医者が来ましたから」

 

マジかマジか。ここに来て一番頼りになるのしのぶちゃんなのか。何を打たれたか知らないけれど、日にあたってない部分は動く。え? 何を打ったの?

 

「不死川さんの血です」

「薬ではなく!?」

「はい、これから血鬼術にお世話になるので」

 

通りで話しながら日陰に引きずられていく訳である。ところで原作を読んだ勢はこの、死屍累々な中、もう一戦ある事をご存知だろう。

 

「布でいいから、ほしい」

「血鬼術の治療なら後でいいですよ?」

「炭治郎が鬼になる」

「それも大丈夫です」

 

「でも、義勇が可哀想だ」

 

ずっと戦ってた。最後まで戦ってた。ちょっとでも楽をさせてあげたいよ。

 

「はぁ、欲張りな人ですね。十分助かってますよ。生きてるだけで」

「友達なんだ……」

「あ、そんなに進展してなかったんですね?」

 

ええ、なんだよ。もしかして最終回発情期だと思ったのか!?

私は反対だぞ。戦いの中で芽生えた感情は平和な世界に持ち込んじゃならねぇ。それはズル……平和になってからもう一回やるべきなんだ!! キメ学とかでな!!

そもそも私は男女にも男男にも女女にも貴賎はないと思っている。そして全てのカップリングを食らう雑食のカメ……怪物だったんだ。怪物故にオタクを傷付け、避けられながら生きてきた。そんな私が人と結ばれる事など無い……戦いの中で死にたい……ッ!

 

「大丈夫です〜。カナヲが来ましたから」

「イヤアアアアカップリングが固定されるううううう」

「別に良いじゃないですか……男女が番うのは普通のことでしょう?」

「大正時代!!ちくしょう!!!公式が全てじゃないんだぞ!!!」

 

全てじゃないんだぞ──ないんだぞ───ぞ────。

 

 

 

三か月後、季節は春。

私は蝶屋敷の奴隷になっていた。

 

「じゃあこの人の事は指があった頃まで戻してあげてください」

「ハイ シノブサン」

「ちゃんと自分宛の手紙は書きましたね? 三か月前の戦いの前まで戻りますからねー?」

 

流石にもうほとんど終わったはずだ。こんなに酷使される事があるのか。確かにめちゃくちゃ便利だが。そう、本当に便利すぎた。

どれくらい便利かと言うと、いろんな枷が外れて無機物にまで適応できるようになったりした。なので最終決戦で壊れまくった市街地を完全復旧させたりとかもしたのだ。こんなに都合が良すぎることあるの?

そこからアレやこれやとやり直したい人が押しかけて、しのぶさんが取り仕切って、今に至る。

 

「ひ、貧血……珠世さんに輸血パック貰わないと死ぬぜ」

「死にませんよ、鬼ですから」

 

無惨くん、今ならわかるよ。鬼は種族じゃない。人の心に住まう残酷なまでの非情さ、厳しさなんだよ。お前の愛のない意味不明なパワハラとは訳が違うんだ。逃げられないんだよ、愛があるから。損得で動いてる訳じゃないんだよ。

夜桜を横目にトホホと息をつく。戦いの中で死ぬならそれで良かった。いや、そんなつもりで戦ってた訳じゃないけども。事後処理が一番大変なのは分かりきっていたことだろうに。

 

「仕事帰りか、未来」

「あぁ、義勇。来てたの」

 

片腕である。直してやろうかと言ったけれど、彼もまた無惨を倒した事を忘れたくない側の人間だった。そういう人は結構多い。個人の自由だ。痣が出た者もほとんどそうだった。不死川兄弟の喧嘩とか凄まじかったもんな。

 

「あまり弟弟子達の所には顔を出さないのか? 心配していたぞ」

「えーどっちだろう。……獪岳!」

「いや、黄色い方だ」

 

素晴らしい。義勇の言葉が足りている。グッドコミュニケーション!ノーブレイクダンス!

柱がほぼ生還したので全員が全員「え、こんなんだった?」という顔をしていた。こんなんだったんですよ。みんなで分かち合えて嬉しいな。私は誤解やすれ違いを憎んでいる。

ところで柱生存で一番生きてて楽しそうなのって、無一郎だろうか。なんだかんだ早めに回復した彼は勝手に修行の旅に出てしまった。剣を極めるらしい。燕を三回斬ることを勧めておいたので、英霊にでもなるのかもしれない。ちょくちょく炭治郎のところや刀鍛冶の里には顔を出しているみたいなので大丈夫だろう。

 

堅実なのはしのぶさんと杏寿郎だろうか。まぁ堅いね、安定してる。蝶屋敷はずっと病院やってるだろうし、杏寿郎は……もうちょっとしたら世界大戦なので気をつけた方が良い。血が途絶えてないのを見るに平気だとは思うが、本当に見た目がそのまま受け継がれていて違った恐怖を感じる。

 

甘露寺さんと小芭内はって、挙式したよ。すごい速さで。包帯巻いたまま結婚してたよ。タイムパラドックスとかで悩む暇も貰えない鮮やかな手腕だったね。

逆に話題に上げにくいけど、悲鳴嶼さんは亡くなった。痣前に戻すより悔いなく逝かせてやってくれの方向だ。悔いがあるのは獪岳の方かと思ったが、直前に解決したらしい。本人から聞いた。すごい泣いてて面白かった。

 

うーん素晴らしい。わだかまりが解けるのは良い事だ。気分が良い。まさに最終回だ!

 

「そうか。未来が満足しているなら、それで良いと思う」

「満足? 満足……はしてないな」

「何かやりたいことがあるのか?」

 

フッフッフ。やっても良いと思うか?

もうすぐ最後の柱合会議があるらしいぜ……めちゃくちゃ怒られそうだぞ! フッフフフ。

 

「やりたいことがあるなら応援しよう。友達だからな」

「義勇……友達じゃないぜ?」

「そう、なのか」

「親友だ! フハハハ!!」

「そうなのか!」

 

よし決めたぞ、今夜から決行する。狙いは貴様だ冨岡義勇!!喰らえ、ご都合血鬼術!!!

 

十歳前後まで若返るビーム!!!

 

 

 

「それで獪岳までこうなっちゃったのォ!?!?」

 

それは普通に誤射で……なんか前にいたからつい、出来心で……ワザとでは決してなく……。

蝶屋敷を夜襲した私は最後に炭治郎の病室へ忍び込んだばかりに善逸に捕まっていた。こういう時その耳は憎いぜ。いや多分禰豆子ちゃんが居たからって寝てなかったなコイツ。

 

「義勇さん小さいなぁ、可愛いなぁ。六太みたいだ」

「流石に六太はもっと小さかったよお兄ちゃん」

「つ、蔦子ねえさん?」

「あらまぁ、お姉ちゃんですよー」

 

「スマホの充電が切れていることが悔やまれる」

「声が本気だ……」

 

かまぼこ隊は偵察が鬼のように強かったのでビームが当たったのは伊之助のみである。あんま普段と変わらんな。ではさらばだ。

 

「まって、おかあさん」

「お母さん!? 今お母さんって言った!! 獪岳が!!!」

「まずい、蝶屋敷の人間が起きる。もうしのぶさんには当ててんだ。こんな所に用はない」

「まって、まってえ」

 

獪岳(10歳)がトコトコと付いてくる。ウワーッ無理。好きになってしまう。そっと抱き上げるとベッタリとくっ付いて甘えてくる。エーッ!? かわいい……。

 

「うわ……コレって記憶とか大丈夫?」

「覚えてたい人は覚えてると思うけどどうかな。すごく不安になってきた」

「不安になった方がいいよ。俺知らないからね」

「ええ、獪岳だよ? 普段からこんなんじゃない?」

「俺、知らないからね」

「隙を見て炭治郎にもビーム」

「キャーッ!!最低!!!」

 

では今度こそおさらばだ。獪岳は連れて行く。

こんなに甘えたい盛りの時もあったんだね。頑張って生きてきたんだねぇ。ウッ泣けてきた。しかし夜は短いぞ、次は炎柱邸に行く。柱は全員だ。もう私は止まらない!!

 

 

──翌朝。本日が鬼殺隊最後の日である。柱合会議は天国と地獄に別れていた。

 

「よく天元に当てられたね」

「そこは奥さんに根回ししてたんで余裕ですよ」

「そんなことは聞いてないんだけど……」

「ねぇ、時間経過で戻るって言ったけどいつまでガキの相手しなきゃいけないの? 今日で解散なんだよ? わかってる?」

「だから決行した……!」

「馬鹿だとは思ってたけど馬鹿でしょ」

「無一郎、落ち着いて……」

 

所在不明の霞柱以外は夜襲でイチコロである。やっぱりご都合血鬼術はこう使わねばならない。二次創作に必ず一つはなければならないのだ。全員がロリショタになって一つの部屋に集められる回は、性癖を選ばず最高である。悲鳴嶼さん私はやりましたよ。見ていますか──!

 

「達成感持ってないでなんとかしてよ。阿鼻叫喚なんだけど」

「えーん、えーん」

「おかあさん……どこ……?」

 

意外かもしれないが一応さっきまでが天国sideである。意外と十歳は親離れできていない。記憶残したままの方が良かったか。そんな器用なことはできないんですけども。

 

「だいじょうぶ?」

「……うん」

 

しかしながら両親(概念)はこの時でも運命の人らしい。ちょっと仲良くし始めた恋蛇。そして兄貴分の風が仕切り直し水炎音もわちゃわちゃと遊び始めた。良い……最高……!!

なお蟲柱のしのぶちゃんはカナヲさんが面倒を見ており欠席です。ガチの怒られが発生するからではない。取引の結果そうなったのだ。ホントホント。

ずっと自分に抱きついている獪岳を撫でながら静かに涙を流す。ああ、コレがやりたかった。この為に私は居たんだ。ここは天国なんだ……。

 

「で、いつ戻るの?」

「多分半日もすれば勝手に戻るので今日の午後には解散できますよ」

「痣と欠損は?」

 

察しの良い無一郎くんはもう気がついたらしい。いやーわかんないですけど、もしかしたら一部だけ戻るのが遅いこととかがあるかもしれないですね。知らないですけども。いやー狙ってないからさっぱりだなー。ギリギリと無一郎にほっぺたを捻じられるが、鬼なのでだいじょう痛ッ痛いな意外と。

 

「それでまだあるんでしょ。今のうちに言いなよ。時間の無駄だから」

「ああ辛辣! お館様にスマホを返してもらったので、元の時代に帰ろうかと思います。今までお世話になりました!!」

「なんだそういう事。湿っぽい別れが嫌だからってこんな騒動起こさないでよ。迷惑だから」

「いてててててて」

 

血鬼術には鬼の望みが反映されている。手が欲しければ手を、力が欲しければ力を、生きたければ生命力を、と言った具合だ。無惨のアレはやりすぎだと思うけど私は私で大概ってことか。

 

「行きの駄賃を払う為にも、私はここまでです。お世話になりました」

「それは寂しくなるね」

「はい、でも百年後ですから。また会う日もあるかもしれません」

 

獪岳を撫でる。離れ難いなぁ。ある意味この姿にして良かったかもしれない。素直じゃないもんねえ。静かだし、寝たのかな。そっと、髪に触れるように唇を落とす。

 

「弟を頼みます」

「あー、はいはい。早く行きなよ。これ以上面倒なのはごめんだ」

「うん、いってらっしゃい。未来」

 

小さなお館様は優しく、むいむいはぶっきらぼうに見送ってくれる。力強い獪岳を優しく解いて、姿勢を正した。

 

「では、不肖茶柱。これにて任を解かせていただきます。また、いずれ!」

 

 

 

昔々、或いは100年先の未来。一匹の鬼がやって来て、学校に行く途中の私は襲われた。勿論、誰も気がつくことは無い。少し暗がりで目を覚ました時、変わらず私は私だった。

 

「大変、遅刻する!!」

 

少し身のこなしの良くなった、少し変わった呼吸の、人間の私だ。どこかの池では珍しい青いカエルが鳴いている。

 

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