イェーイめっちゃ鬼殺隊   作:あああ

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木枯らしと団欒

 

──最終戦別である。

またの名を蠱毒。親方様ァ、もうちょっとやりようはなかったのですか?

年中生えていると言う異常な藤に囲われた山に生きたまま捕えられた鬼、そこに見習い鬼殺隊士を七日間入れて生きていたやつを合格にするのである。確かにペーパーテストにする訳にいかないのはわかるけど、普通に鬼畜すぎて現代人には眩暈がする。鬼殺隊がイカれた非公認の組織であることを思い出させてくれるな。

……来てしまったものは仕方がないか!

 

とりあえずここで探すのはキツネの面の人である。居たらどうするかって、別にどうもできないが……手鬼ってこの時期に在るまじき強さすぎるだろ。普通に距離を取るばかりだ。

だってテストって事は生き残れば良いわけだからな。それより私はこのテスト期間、一番の敵を自覚している。

 

七日間、飯が出ない。

 

 

ぎゅうう〜〜〜。ぐるる、ぎゅう。

またしても私は弁当を食べ終わっていた。風呂敷いっぱいに握り飯を持たせてもらったのに、二日で食べてしまった。しかし、救いはあった。

 

茶筒だ。抹茶と、梅昆布茶と桃の烏龍茶を持って来ている。ひもじい時でもこれがあればなんとかなる。お茶、大好き。コスパも素敵。

しかしそう、これが一番ピンチである。なんかみんな平然としてるけど七日間飯出てこないのヤバすぎる。しかもどこで寝たら良いんだよ。舐めるなよ、現代人の甘やかされっぷりを。

 

とりあえず毎晩、と言うか毎朝、或いは昼に魚を焼く為に火を起こしているので、私の周りにはいろんな人が集まってくる。

なんだかんだで基本調味料や鍋を持って来ていてよかった。集まる人が食える野草や魚を持っていれば炊き出しだってする。こうなると米がないのが惜しいくらいだ。流石に米俵抱えてテストに来たら舐めすぎて怒られるんじゃないかと思ってしなかったが、この盛況っぷりを見ると皆思うところは同じな気がする。

 

「……おい。お前だな、毎晩毎晩わかりやすく煙を立てやがって」

 

鬼もよく出る。彼らは別に食べ物も持ってはこないし、特に益はないが、迷惑というほど強くもない。実は序盤の雷の呼吸ってのは無双ゲーみたいなもんである。そもそも適正が無かったら一つの型もできない天才型の呼吸だ。善逸くんも寝ながら突破する。

 

まぁそういう事なので、四日もいれば煙に鬼は集らなくなった。手鬼以外怖くないのはわかっている。なので、今話しかけて来た人は鬼ではない。

 

「最終選別舐めすぎだろテメェ……!」

 

血も出ていてボロボロに見えるが、まだ比較的傷は少ないと思える不思議な人である。

知っていたので近寄るか迷っていたが、同期としては心強い。顔の割に十割マトモな未来の風柱、不死川実弥さんだ。やーん、目が怖い。

 

「まぁ、座ってくださいな。手当てもしますよ」

「マジで何しに来たんだ。鬼殺隊になりに来た様には見えねェぞ。呑気に飯なんか食いやがってよォ」

「大事ですよ飯。鬼も飯を食えないことには同情しますね〜」

 

なお価値観は結構合わない方みたいだな。

稀血に集まる残党鬼を滅ッしながら、会話をする為に引き止めることにした。藤襲山の鬼はほとんど居なくなったようで、彼も暇なんだろう。律儀な彼は他の人に聞いて来たのかちゃんと毬栗を持って来ていた。これってどうやって焼いたら良いんだ。とりあえず剥いたら良いのか?

 

「それでさねみちゃんは何のお茶がいいのかな?」

「ダァレが実弥ちゃんだァ……」

 

原作ではずっとキレてるイメージがあるが、あれは炭治郎が鬼を連れているからであって普通に話す分にはマトモである。まぁキレてはいるが、それは私がテスト中に茶をしばいているからであって、理由を言えば納得してくれる程度に常識人である。

可哀想に。枠にしてライナーのような、作者の寵愛を受けたが故に死なせてもらえないキャラクターの造形だ。まじまじと顔の傷を見てしまうが他意はない。珍しいんだわ。

 

「鬼殺隊だってそれなりの組織ですからね、そりゃちょっと不真面目な隊士も居ますよっと。そもそもこの試験、生き残るのが条件なんだからそっちが頑張りすぎなんだな〜」

「鬼は殺す。鬼は……人を食うからなァ」

「実弥ちゃんは鬼の方から寄ってくるから仕方ないかぁ。はい、梅昆布茶」

「……どうもォ」

「栗もうまいよ〜。焼いてくれてありがとう」

 

この相手に悪気も悪意もないとわかると怒るに怒れなくなる善性、お労しいぜ。感受性が豊かで、怖がられる事には慣れていて、傷つく事にも慣れすぎている。ちゃん付けはワザとだが、仲良くしていて損は無しだな!心配になる!

……えーと、将来の風柱と言ったけど、今は原作のどれくらい前なんだろう。

 

「ところでこの山、鬼がほとんど居なくて暇じゃないか。このあと鍛錬でもどう?」

「余裕だなァ、良いぜ。どんな腕前か気になってたんだよ」

「じゃ、とりあえず型全部みーして♡」

「何で最初に手の内を晒さなきゃいけねェんだよ……」

 

難しいことはいいや、講習だ。学ぶのは当然、私である。

呼吸とは、鬼と戦う為に人が編み出した技術の一つ。私は割と得意な方だ。肺か筋肉か、フィジカル面の苦労はあまりした事がない。しかし特に向いている呼吸というものが無いし、応用は苦手だ。

そして剣術、その呼吸に合わせた基本の動きを"型"という。少なくて四、多くて十二くらいだったか。私はとりあえず七つ欲しい。目星もついてるので、必要なのは見取り稽古だ。真似をするのは得意な方である。

 

さて、風の呼吸は霞の呼吸とかの派生前だっけな。使い易いといいけど。

 

「お前、雷の呼吸じゃねェのかァ」

「こんなに攻撃的じゃ使いづらいよ。助けると思ってさ、教えてくれよう」

 

私はどこまでやれるだろうか。もしかしたら柱稽古まで生き残ってないかもしれないし、鬼のいなくなった新しい朝日を浴びてるかもしれない。

なんにせよ、やる事と言えば決まっている。器用貧乏ならそれはそれで、どこまで器用になれるかやってみるし、未来の知識があるならより良い未来を目指してみよう。そりゃあそうだ、ただの人間だものね。

 

「だって同期じゃん? 仲良くしとこーぜ」

「はぁ……確かに長生きだけはしそうな奴だなァ」

 

 

不死川実弥には変な同期が居た。

黒髪で、毛先にかけてが抹茶色の女だ。羽織は灰色の鱗紋様で、二、三個だけ墨でオニギリにしていた。小柄だが力強くしなやかで、しかしムカつく女だと思った。

 

「そういや、何で鬼殺隊に入ろうと思ったんだァ?」

「刀を振り回すのが思いの外楽しかったから!」

 

確かに才能はあったが、印象が凄く阿呆だったからである。

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