イェーイめっちゃ鬼殺隊 作:あああ
茶碗を取り出す。特に高価なものでは無い。たまに割るので柄が違う。
魔法瓶などあれば早いのだが、無いので瓢箪の水筒の水を沸かそう。適当に鉄器の急須を直火にかける。人間は枝があればどこでも火を起こす事ができる。
お抹茶の少しお高いものがあるが、玉露の方が早いのでそっちを出す。雑なので目分量である。沸いたお湯を人数分、二巡に分けて注ぐ。
「色合わせて茶色、茶柱なんてどうかね」
「それが言いたかっただけだろォ」
「うむ、君は何も無いところから茶を出せるんだな! ありがとう!」
「ふふふ。お館様のお庭なのに、急に行楽みたいですね」
上から実弥ちゃん、煉獄さん、胡蝶しのぶさんである。カナエさんには少し呼吸を教わった事があるが、しのぶさんとは多分初対面だ。
悲鳴嶼さん、無一郎くん、甘露寺さん、伊黒小芭内にも茶を出す。おおなんと錚々たるメンツ。茶菓子の一つでも持ってこれば良かった。
「とりあえず刀を無くしたんだったな。別にそんなに頻繁に戦うわけでもないから何でも良いか。いや良くないな、柱になろうとしている。おかしいぞ」
「落ち着いた顔で混乱してるのね……」(かわいいわ〜)
「とりあえずくつろいでんじゃねェ。移動しろォ」
特に何を発したわけではない義勇が無言でチビチビお茶を飲むのを待ちながら、ついでに柱を観察する。いやあ壮観だ、人数が多い。
しのぶさんと甘露寺さんは仲が良さそうだ。見てて癒される。無一郎くんと悲鳴嶼さんは黙って飲んでるな。あんまり喋るタイプじゃないからな。
実弥ちゃんと義勇は見たところ程々に仲が悪い、めっちゃガン付けられてるけどシカトしてるな。小芭内は木の上でこちらを睨みながらお茶を持て余している感じね。こちらも威嚇で返しておこう。
天元さんは……あ、そもそも居ないわ。遊郭に潜入中か。
うーん、決して尊敬できない訳ではないんだけど、平和主義でやってるからこの集団に入って見劣りする自信しかないぞ。やってらんねーな。
「うまい! それで、柱にはいつなるんだ!」
「あぁ、自分義勇の継子なんで。師匠に聞いてください」
「俺に継子はいない」
「こんだけ一緒にコンビ組んでたら誰が言うでもなくそういう扱いになるって」
「ならもう柱でいいだろう」
「じゃあ私の刀が出来てからって事で」
「そうか! 俺の代わりに頑張ってくれ!」
言葉の軽さの割に背負わせるものがデカすぎる。
とりあえずこれで刀鍛冶編まで時間は稼いだことにしてもいいだろう。いや柱ァ……
所変わって、蝶屋敷に行く事があまり無いよね。カナエさんが亡くなって以降気まずさがあったしさ。今回はお見舞い回です。巻き込みます。
「そう言えば義勇は弟弟子見に行かなくて良いの?」
「怪我人を見てどうする」(何も出来る事がない)
「普通にお見舞いだよ。何か持っていってあげたらいいんじゃないかな」
多分悩み混んでいるので引きずって移動する。あまりモタモタしていると天元がかまぼこ隊を攫っていってしまうからな。流石にそんなすぐって事は無いと思うけれど。
因みに煉獄さんが退院したのは確認済みだ。あんまり陽の気を浴びてると鬼みたいに灰になりそうな気がしている。
「とりあえず軽くしのぶさんの所を通ろう」
「俺は嫌われていない」
「え?うん。大丈夫だよ。お菓子持ってきたから」
「そうか」
間取りは分かっているのである程度人に挨拶をしながら、アオイさんにクッキーの缶を預けてやって来ました、入院室。かまぼこ隊ってなんかしょっちゅう入退院を繰り返していて可哀想だな。
「お邪魔しまーす。かまぼこ隊の部屋ってこちら?」
「かまぼこ隊……?」
……そう言われると、かまぼこ隊って由来なんだっけな。まぁ見つかったからいいか。
「キャー!!!未来さん!!!」
「おっ可愛い弟弟子の善逸君じゃないか」
「お見舞いに来てくれたんですかぁあ!!!」
「善逸、うるさいぞ!」
弟弟子は動きがキモくてうるさい。どうしてこの子は寝てる時以外かっこ悪いかね。とりあえず飛び込んできた善逸を受け止めて、後頭部を掴んで飴を三つくらい口に入れる。最も穏便に静かにする方法だ。
「おお、何だそれ! 食いもんか!!?」
猪である。義勇の反応は薄い。なんか蜘蛛の鬼の時見てたっけ。これはいつの時代なら正常な装束なんだろう。
お見舞いの品というか、お土産は無限列車前に遊び倒すついでに買っておいた。茶菓子はどれだけあってもよろしい。レトルトのカレーとかがあったら良かったんだけど、今の時代ってかろうじてサブレとかキャラメルとかしか無い。おばあちゃん家の仏壇より昔のラインナップ。
「さて、暇じゃあ無いんでね。タンジェロくんの疑問にだけ答えておこうかな」
「炭治郎です!」
「日の呼吸についてどこまで知ってる?」
「な、名前しか」
「あそうか、まだ炎柱邸は行ってないんだね。じゃあ行ってください。後はお父さんを定期的に思い出して差し上げてね」
「あの、あの! 助けてくれてありがとうございました」
「ん? ああ、はいはい。君たちも昇進おめでとうね」
善逸の頭をわしゃわしゃしながらお茶を点てる。ちゃんと高い抹茶を持って参りました。
事あるごとにお茶を飲んでいる人だと思われているかもしれないが、あながち間違いでは無い。どうせなら会話のついでだ、茶も飲んだ方がいいに決まっている。水よりお湯よりお茶が好きだが、割と汁物は総じて好きだ。ラーメンも好き。
「イノシシくんもお茶いるかい?」
「それより勝負しろ! 強い気配がビンビンするぜ!」
「飲み終わったらしよう。それで、どこで日の呼吸について知ったかを聞きたいんだろうけど、私も近所の神楽で踊る側に回った事があるだけさ」
「あの、どうして会話を先回りするんですか?」
「考えてる事がわかるのは大体本当なんだ。ニュータイプと呼んでくれて構わないよ」
「善逸! この人は普段からこうなのか!?」
「もごもごもご」(お姉さ〜ん♡)
うん、お菓子を入れる時はお茶を一際苦くするのが好きだね。時代が時代ならコーヒーでもインスタントスープでも良かったけど、抹茶はいつの時代でも通用する旨みがある。現代ではイギリスで人気出てるらしいよ。
「未来は、普段からこうだ」
天使が通ったんじゃなく、さっきまで後ろで気配を消していた義勇が喋った。逆に伊之助くんが驚いている。こんなに目立つ半々羽織なのに。
「誤解が無いようには伝えているし、思った事が伝わっているから会話は成り立ってると思うんだけどな」
「炭治郎はどうして最初から知っているのかが聞きたいんじゃないのか」
「ええ、いやぁ、それは言えない決まりでしょ」
他の人の未来はフーンとしか思わないけど、自分の人生のネタバレはあんまり踏みたくない。特に炭治郎に関しては詳しくなりすぎちゃった気がする。ポツンと一軒家のノンデリヤングケアラーに凄い運命が乗りすぎだ。
かと言って妙に勘ぐられるのも嫌だしなと思って軽く説明込みで好感度調整にきただけなんだけど、義勇が話始めるのがそこだとは思っていなかったな。じゃあ今まで「何で普通に未来の話始めるんだろう」とか思ってたんだろうか。
「まぁちょっと未来が見えると思って気にしないで。また会えるように頑張ってね」
「え!?まだ戦うの!?イヤアアもがふっ」
「善逸は寝てる間も戦うくらい頑張り屋さんだから自分のこと信じてね〜」
因みに善逸が一番会話を圧縮できる。向こうもこちらも耳が良い。スキンシップで愛情だけ伝わっていれば良いのだ。うるさいとかじゃないよ? ホントホント。
「あ、それと禰豆子ちゃんのことしっかり守りなさいよ。あんまり情けない事ばっかりしてると獪岳出すからね」
「もご!?」
「アイツも結構のし上がってきてるから怖いわぁ。まぁ追い付かれる心配は無さそうなんだけどね。ははは……」
雷一門(私を含む)が揃うとそれなりに騒がしいぞ。水の方は静かだね、主に義勇か。
しかし私は和の呼吸、茶柱(?)なので場を和ませる事は得意である。関係ないけど伊之助もムードメーカーだと思うね。こんなにずっとお菓子食べてて癒される子ってないよ。
試合はって?
義勇を繰り出したので無敵です。
「未来」
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「何か悩みでもあるのか」
ホホー、今日はよく喋る日だ。柱合会合の時は多分考えすぎて全然喋ってくれなかったのにな。しみじみと連れ回しがいのあるヤツ。
まぁ凪を覚えても尚付き纏っているだけあって、普通にめちゃくちゃ頼りにしてはいるんですけどね。情報を渡しとけばこんなに判断が早い人居ないし。
え、で、悩み? 何かあるかな。
呼吸は形になったけど、刀の形状がアレな蛇と恋の呼吸が使いづらいとは思ってるから、その辺の改良かな。炭治郎に便乗して猗窩座に刺してきた事だし、次はもっとしなやかな感じで長い刀がいいのかしら。
そう、今から刀鍛冶編まではそこを詰める。生半可な刀で上弦の壱とか挑めないって!
「面白い人だったね」
「多分それを思ってるのは姉さんの方だと思うぜ」
「強えのに全ッ然攻撃してこなかった! フゥアーッハッハ!! 俺の方が、強い!!」
「うん、一撃も入れられなかった……」
義勇さんも、未来さんも強い。そして息が合っている。猗窩座相手に引もせず押されもしなかった。なんていうか、安定していた。
「お茶の香りの人だったな」
「音もね、いつも楽しそうなんだ。一緒に居ると元気が出るんだぜ。獪岳とは大違いだよ!」
「でもヒョロかったァ!」
「なんだか底知れないんだ。きっと隙の糸も無いんだろうな」
「あー。効率厨ほどスタミナはあるって言ってたような。ンフフ、また会えるかなぁ〜いつもあんまり話せないんだよなぁ〜」
「効率かぁ」
「今日の姉ちゃんは機嫌が良かったのかな。お茶も特に美味しい奴だったし、お土産もくれたし。……そうだよね?」