イェーイめっちゃ鬼殺隊 作:あああ
「無限城キツい〜絶対しのぶさん助けるの無理だよ〜涙涙」とか思ってるせいで胡蝶しのぶさんとすごぶる仲が悪いです。なんとかなりませんか?
と言う問いを、遊郭編が終わって療養中の音柱にぶつけてみました。特に有用な返事は無かったです。
「いや、地味にパクリだろこの蛙」
「忍獣とか言ってネズミに筋トレさせてる人の方が絶対おかしいですよ」
「あれは自主的にやってんだよ」
嫁が三人居ることで有名な宇髄天元さんである。ところで大正の時代ギャップの一つに女の人すぐ結婚すると言うものがある。産めや増やせや政策だろうか。大衆文化と国際社会進出の流れと共に女性の権利については割と主張され始めたくらいの時期である。
嘘みたいだがタイムスリップして何年?かしてしまったので賞味期限の近いショートケーキみたいになって来た。私は絶対に一人目の嫁にも四人目の嫁にもならない。道路でぺたんこになってる干物みたいになる。
柱合会議に引っ張り出された時はどうなることやらと思ったが、無一郎くんと接点が持てたのは良いことだったかも知れない。まぁそう思ったのも束の間で今の彼はなーんにも覚えていてくれないので結局は一から関係を構築し直した……いや、いい。かなりやりたい事が出来るようになったので!
ビルド、というゲーム用語がある。能力や装備のことを指すが、広義でもって構築という意味で使ったりもする。するよね?多分。どのようにする為に何を持って来たか、と言うことでね。
鬼滅の世界で戦うにあたって、特に避けたいものと言えば"四肢の欠落"である。この点かまぼこ隊は優秀な五感で避けているとも、ただ単に運が良かったとも見える。少なくとも私が避けられるのは初見殺しくらいのもんだが……十分強いか!
咄嗟にお館様に伝えたが、どんな能力かと言えば相手の感情の起伏と方向性がわかる程度である。人と動物、生き物全般に通用するが虫にはそういうのはない。人よりは動物の方が単調でわかり易いかな。そして動物に伝えるには……その場のノリかな? プリンセスなので。
心が読めるって? 何を言っているんでしょうか……読心はメタ知識のアテレコですよ。だって読めたらチートでしょ! チート!
他に体質として母親譲りの筋肉があるけど語るほどでもないから割愛するね。
そして呼吸、和の呼吸とは名づけましたが全部の呼吸から防御力の高そうなものだけをピックアップして、循環し繰り返し使える様にしただけだね。日ノ呼吸、十三の下位互換になっている。流石にそのまま使えるほど適正は無かった。何なら黒からはかなり離れた位置にいる気がする。ヒノカミ神楽は確かに踊れるには踊れるが、実践レベルなのは幻日虹だけ。しかも霧の呼吸の朧と被っててあんまり意味がない。デカめの舌打ち。
まぁしかしインチキ無敵防御技"凪"があるので無限城では粘れると思いたい。目指せ四連戦。鬼殺隊の一番の欠点はヒーラーが居ないことだが、呼吸で回復とか、素人が縫って直すとか無茶苦茶なことをするので、とりあえず時間稼ぎが出来るだけの奴こそ重宝するのだ。モブ隊士を使い捨てる手もあるけどそれはちょっと外道が過ぎる。平成ポイントマイナスです。
最後に刀だ。こーれは悩んだ。
小芭内の刀はグネグネで、まぁ、これはよくわからん。甘露寺さんの刀はビヨビヨだ。こっちは分かりやすくパワーを速度に変換する強化パーツみたいだね。じゃあ長くしてみるかとバレエの猫じゃらしを振ってみたら思っていたより不器用な事がわかってやめた。最低でも絡まらない刀がいい。いろいろな物を作っては試して、これがもう時間のかかるのなんの。
最終的に波打った長剣に落ち着いたけど、何で曲がってた方が太刀筋が正確になるのか腑に落ちない。間合いはでかい方がいいかと思って派手に大きくし、折れたら嫌だから分厚くもした。だって振れるんで(パワータイプ)
ビルドに名前をつけるなら「無限城で無限に戦う」型である。どこに放り出されても相手の手の内がわかっていると言うのはとんでもなく有利なものだ。勝てはしないが柱に情報込みで繋げれば上等。
どこまでやれるかはやってみないとわからない。
時は秋頃。上弦の肆、伍と入れ違う形で任務に復帰。そして合流。
「久しぶり〜、獪岳」
「ご健勝のこととお慶び申し上げます、姉上殿」
「丙になったんだって? 怖いなぁ、追いつかれちゃうな」
「……それで、姉貴はいくつになったんです?」
獪岳と私の関係は何だろう。拾って来たのは慈吾朗さんだけど、育手には私も関わった。善逸が来る少し前までね。幸いにも一年の差はあったので負けたことは一度もないが、最初の方は勝ちもしなかった。暴力自体にビビっていたからだ。性格が善逸側なので、好かれている訳でも尊敬されている訳でも無いだろう。
定期的に煽る為だけに会いに行っているので、目の上のたんこぶくらいにはなっているかもしれないが。
「いくつと言うか──柱だよ。まだ柱合会議でお披露目してないから知らなかった?」
拳を握ってみると"柱"と文字が浮き出る。茶柱が浮かんだら絶対面白いと思ったけど、一文字らしい。スペースの問題か。
それを見た獪岳は……唖然とした後、「お前の様な奴が!?」と顔を顰めた。それに関しては自分でも思っているのでノーコメントだ。とんでもない飛び級をかましているので長めの悪夢みたいなもんである。流石に「俺はお前らとは違う」とか言って会議をボイコットしたことは無いが、討伐数は結構ショボいと思う。
獪岳は多分……私が舐められてても良いかなと思っているのもあるし、性質が生意気なのもあって年下のライバルみたいになっている。変に偉ぶるよりかはこの方が健全な関係だろう。
「ふふん、こう見えても鬼の発見で隊士ポイントを稼いでいるからね。高みで待っているぞ、我が弟弟子よ」
「碌に努力もしてないアンタが!?」
「しとるわ、舐めんなよ」
いやまぁ確かに基礎練習を怠って痛い目を見るタイプなのは否定しないけど、こっちにはこっちのやり方があんのよ。
木刀をちゃんと持って来たので投げて渡す。因みに刀に慣れる為にこれもぐにゃぐにゃしている。しなりはしないけど十分だ。
「ほら、現役柱さまの有り難ぁ〜い手合わせだぞ」
「天才様ってのは本当に、ムカつくなぁ!」
え? 勝ちました。搦手を出そうとしてくる時が分かり易いから反応速度で負けない限りはそりゃあね。
さて……良い加減に目を向けようか。
前哨戦にしてはちょっとガチすぎる弟弟子vs上弦の壱──黒死牟!
善逸じゃないけどイヤアア死ぬウウウくらいは言ってもいいと思うね。いっそ不自然な迄に頭から消してはいたけれど、これが何とかなったらクズカス戦も無くなる訳だし、チャレンジしない訳にも行かない。時期は遊郭編の終わりから柱稽古の間のどこかと広く、目星をつけるとしたら上弦がスカスカになる刀鍛冶編の直後くらいじゃないかというくらい。そんなあやふやな時期なので義勇を拘束するという手が使えなくなった。私だって出来る事なら鬼が出る場所に柱全員連れて行きたい! それができたら苦労はしない!
されども無策ではない。ギリギリ即死はしないだろうなという予感がある。あの煽り方をした以上は生きたまま無惨の前に出されるだろう。弾幕ゲーを想定しての凪もある。相手が剣術にこだわるタイプなら技の見本市を披露してやろう。
私は柱の救援が来るまで持ち堪えるのが勝利条件。或いはそこで死んだ場合でも、お館様には洗いざらい吐いたので仕方がないと割り切ろう。
後は──、
遠ざかっていく、獪岳に無理やり着せた青い鱗模様の羽織が。そして振り返った彼と目が合った時、私は笑えていただろうか?
「大丈夫、大丈夫だよ。獪岳」
全然頼りない姉弟子だったろうなぁと、思うんだ。
飯も炊けないし、火も起こせない、生水を飲んで腹を壊すし、夜な夜な寂しくて泣くような甘ったれだったから。慈吾朗さんと獪岳には本当に迷惑をかけた。
「だい、じょうぶ。かいがくはちゃんと、やり直せる、よ」
おじいちゃんにクソとか言ってはいけない、善逸のことを虐めすぎてもいけないよ。そりゃあ少し悪い奴だったかもしれないけど、君はもう逃げたりしない筈だ。他の隊士も居ただろう。最後の一人になる前に逃れただろう。それだけできっと十分だ。逃げなかったから、鬼になったワケでしょう。
「あーでも、くやしいな。せっかくなら、もっとあそべば、よかった」
思ってたよりも黒死牟に遭遇するのが早かったな。せっかく長い間付きまとう訳だから、鍛錬じゃなくて、もっと普通の兄弟みたいなことをしたら良かった。惜しかったなぁ。
「首を掴まれてもなお……他の事を考える余裕があるか……」
「もちろん。だって、こんなに、ちがでてる。わたし、鬼になるんでしょう?」
大丈夫、大丈夫だ。自分を信じよう。
琵琶の音がする。一足先にラストダンジョンに入るわけだ。ちょっとワクワクするね。浮遊する感覚と変わる景色に、見慣れた羽織が一瞬だけ見えたような気がした。
蟲柱、胡蝶しのぶは未来の事が好きではなかった。しかし上弦の壱と遭遇したと報告を受け現場検証に立ち会った時、その死を悼む他に出来ることはなかった。
街中から道、森へと続く、抉れるような斬傷と薙ぎ倒された樹木。そして山道の様に切り開かれた道を蛇行するように落とされた血痕は、二つ先の山の頂へ届く前に途切れていた。
これを一人の鬼と、一人の女性がやったとは信じられなかった。
未来という隊士は、ある時を除けば地味な女人であった。お淑やかで、飾り気のない身なりで、人の血を見るのも嫌がるほど臆病な女の子であった。
最初に見たのは姉のカナエに稽古を付けてもらっていた時だろう。背丈はしのぶと同じくらいだったのに、姉を力で押し退けるほど筋力があった。
そして器用だった。いくつもの呼吸を使い分けられる程に才能があった。そして玉虫色の鮮やかな刀身が、鼻歌の様な呼吸と共に、うねるように戦う。それは地味な女の子のする戦い方ではなく、相手を巻き込んで踊るようなもの。
その刀身が踊っている間、誰も彼女を地味だとは思えない。だから、苦手だった。
姉が死んで、程なくして彼女は蝶屋敷に来なくなった。怪我をしなくなり、戦うよりも人を守るように立ち回るようになった。
よく隊士が話しているのだ、七色の刀に助けられた、と。それだけならば良かった。その隊士が鬼の隙を作ってくれたから、首が斬れたと。何人もの隊士が話していた。
首が斬れない筈が無い人が、手柄を譲るような立ち回りをしているのだ。それも沢山の隊士に向けて。そう確信した時、しのぶは未来の事が嫌いになった。恵まれた才能を持ちながら、人に尽くす事を喜ぶ未来の性格に暗い感情が芽生えた。ああそうか、彼女は、姉さんと似ていた。
彼女は怪我をしなかった、周りも死なせないように立ち回った。そして大事を取る代わりに鬼の首も狙わなかったので、昇進しなかった。一度はしのぶにも追い抜かれた。
何せ目立つのだ、戦場で色彩豊かな刀身は。
それが鬼の周りを踊る内は隊士に攻撃は来ない。気を伺って飛び込めば首級が取れるとなれば、好機の風とでも呼ばれるだろう。それは有卦の者と呼ばれ、よく耳に入ってきた。彼女が蝶屋敷に来ない間も、ずっと。
大蛇が通ったような山の道の最後には一際大きな血溜まりと抜き身の刀身が刺さっていた。刀身は三つに折れ、その戦いの苛烈さを物語っていた。
「……大丈夫なんですか? 冨岡さん」
心配なのはこの男だ。現場に最も早く辿り着き、しかし間に合わなかった。目の前で攫われていったと話したきり、表情も動かない。
「ああ、問題ない」
「そうなんですか。てっきり、涙くらいは見せると思っていました」
「……俺が至らなかっただけだ」
「そういう意味ではないのですけれど」
仲が良いことは聞いていたので、打ちのめされているかと思えば。現場の跡と相手の獲物から技を考察したくらいで、そこにはなんの感情も読み取れない。未来はどうやって仲良く話をしていたのだろうか。どうして前を向けるのだろうか。
「未来さんは、何か言い残して逝かれたんですか?」
「…………無惨を倒したら」
「はい。……はい?」
「九州に茶葉を買いに行くと言っていた」
まさか。この血溜まりを前にして、生きて帰ってくると思ってはいないだろうに。