【悲報】魔王♂だが、財政破綻で美少女Vtuberになりました ~勇者に勧誘されたり、アンチにブチギレたりしながら、今日も余はダンジョン配信でスパチャを稼ぐのだ!~   作:月城 友麻

47 / 69
47. 五分で片付ける

「やってまいりました!」

 

 リリィの声が、興奮で震えている。

 

「ついに! ついにこの瞬間が! 『白銀の牙(シルバーファング)』の皆さんです!」

 

 巨大な黒鉄の扉の前。五人の冒険者が、堂々と立っていた。銀の鎧が、松明の光を受けて眩しく輝いている。誰一人、息を乱していない。

 

「いやぁ、驚異的です!」

 

 リリィが小さな体を震わせながら叫ぶ。

 

「まだダンジョン突入から一時間! たったの一時間ですよ! さすがAランク……いや、もはやSランクパーティですね! お見事です!」

 

「ありがとうございます」

 

 リーダーのシルヴァンが、優雅に一礼した。

 

 ブロンドの髪が、まるでシャンプーのCMのようにサラサラと揺れる。整った顔立ち、鍛え上げられた肉体、そして何より――圧倒的な自信に満ちた笑み。

 

 彼は髪を手でかき上げながら、魔眼石(ゴーレムアイ)に向かってウインクした。

 

「でも、これからがいよいよ本番ですからね」

 

〔きゃーーシルヴァン様ーー!〕

〔イケメンすぎる〕

〔髪サラサラwww〕

〔ナルシストかよw〕

 

 コメントが爆発的に流れる。

 

「いよいよマオちゃん戦ですが、自信のほどはいかがですか?」

 

 リリィがマイクを向ける。

 

「いやぁ」

 

 シルヴァンは肩をすくめた。その仕草すら、計算されたように優雅だ。

 

「勝ちますよ。当然でしょう?」

 

 彼はカメラに向かって剣をすっと突き出すと不敵に笑った。

 

「百万ゴールドを抱えて凱旋して、『白銀の牙(シルバーファング)ここにあり』って、大陸中にアピールするんです」

 

「でも、マオちゃんは相当強いという噂ですが……大丈夫ですか?」

 

 リリィが心配そうに聞く。

 

「ふふっ」

 

 シルヴァンの笑みが、さらに深まった。

 

「悪いけど、女の子だからって手加減はしない……。俺も胸ポロリさせちゃって、泣かせちゃったらゴメンね?」

 

 

 

〔うわ、最低www〕

〔胸ポロリ狙いかよ〕

〔でも見たい(本音)〕

〔マオちゃん逃げてーー!〕

〔変態剣士www〕

 

 

 

「お、おぉ……」

 

 リリィが引き気味に反応する。

 

「凄い自信ですね! では、シルヴァンさんが代表して戦われるってことですね?」

 

「まぁ」

 

 シルヴァンは仲間たちを振り返った。

 

「ここはリーダーが、ビシッと決めるしかないでしょ?」

 

「リーダー、頼んます!」

「百万ゴールド! 絶対に取ってきてくださいよ!」

「あんな小娘に負けんなよ!」

 

「みんな……」

 

 シルヴァンは感動したように目を潤ませる。だが、それも一瞬。すぐに自信満々の笑みに戻った。

 

「任せておけ! 五分で片付けてくるよ」

 

「はい!」

 

 リリィが大きく頷いた。

 

「それでは、シルヴァンさん! どうぞ、入場されてください!」

 

 彼女が手を挙げると――。

 

 ゴゴゴゴゴゴ……。

 

 地響きと共に千年の重みを持つ黒鉄の扉が、ゆっくりと、しかし確実に開いていく。隙間から、眩い光が漏れ出してくる。

 

 そして――。

 

「うおおおお!」

 

 観客から歓声が上がった。

 

 完全に開かれた扉の向こうには煌びやかな光景が広がっていた。

 

 まず目に飛び込んでくるのは、鮮やかにライトアップされた空間。天井から降り注ぐ無数の光の筋が、まるで神の祝福のように注いでいる。

 

 そして、奥には黄金の山が神々しく輝いていた。

 

 百万ゴールド――――。

 

 金貨が山のように積み上げられ、宝石がちりばめられた宝箱が、誘うように蓋を開けている。その輝きは、まるで太陽のようだった。

 

 そして、中央にマオが立っていた。

 

 銀髪が光を受けてまるで月光のように輝き、フリルのドレスが微かに揺れている。

 

 その立ち姿は、まるで戦乙女のように美しい――が、赤い瞳は、退屈そうに半開きだった。

 

 

 

 

 

〔うひょーーーー!!〕

〔きたぁぁぁぁ!!〕

〔マオちゃーーーん!!〕

〔金貨やべぇぇぇ!〕

〔これが百万ゴールド!?〕

〔シルヴァン頑張れ!〕

〔いや、マオちゃん頑張れ!〕

〔歴史的瞬間キタコレ〕

 

 コメントが、もはや読めない速さで流れていく。

 

「これは……」

 

 シルヴァンが、一瞬息を呑んだ。

 

 マオから放たれる、異様な威圧感。やる気なさそうな態度に反して底知れない気迫を感じる。それは、ただの美少女剣士のものではない。もっと深い、もっと恐ろしい何かだった。

 

 だが――。

 

「ふん」

 

 彼はすぐに不敵な笑みを取り戻した。

 

「面白い。これは、やりがいがありそうだ」

 

 一歩、また一歩。

 

 シルヴァンがボス部屋に足を踏み入れる。

 

 その瞬間――。

 

 ガシャン!

 

 背後で、扉が音を立てて閉まった。

 

 もう、逃げ道はない。

 

 百万ゴールドを賭けた、運命の戦いが始まる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。