行方不明者捜索【エレクトリアコード二次創作】 作:ジャック・アヴェンダドール
ある日、リュミレスカという女性は
この町、
内容としては迷い猫や迷子のエレクトリア探しから指定された場所の調査まで様々である。そして依頼をこなしたら報酬としてこの町や近衛インダストリーの関連企業で買い物に使用できるゴールドを貰うといった形式を取っている。
リュミレスカはそんな依頼が集まる掲示板を見てある事に気付く。
(前に比べて行方不明になったエレクトリアが増えた?)
以前に依頼を引き受けに来た時よりも捜索依頼が増えている……ように見えた。だが、なんとなくでしか思えていないので、勘でしかないのだが。
(少しだけ気になるし、一件引き受けてみるかな。リーティの件もあるし)
リーティというのはリュミレスカと共に暮らすエレクトリアで、以前に売り払う目的で攫われた事があった。その時はオーナーと共に見つけ出し、救出する事が出来た。その件があった為か妙に気になっている。
どのエレクトリアの捜索をしようか少し考えて、一枚の紙を手に取った。そこには『アルシェ』という名前と失踪時につけていた装備と日付が記載されていた。その日付は今日の日付から2日程前のものだった。だがその日、どこで失ったのか、オーナーの名前は記載されておらず、糸口がその紙一枚だけではいまいち見えて来ないものだった。
(これは……詳細は市民協働課で聞いてみる方がよさそうね)
紙を持ったままリュミレスカは掲示板を離れ、市民協働課の窓口に移動した。
「すみません!誰か居ますか?」
「少々お待ちください!」
言われた通りに待つと、女性の職員がリュミレスカの前に現れる。
「どうされましたか?」
職員は物腰柔らかく、とても小さな存在である彼女に驚く様子も無く対応をする。
「この依頼票なんだけど、もう少し詳細を教えてくれない?」
「少々お待ちください…………この依頼ですね。何を知りたいですか?」
職員がパソコンの方に見続けながら問いかける。
「まずはオーナーの名前と住所かな。それと電話番号も」
オーナーからより詳細な状況を聞き出す他、見つけた後の届け先を確認する為である。
「……申し訳ありません。名前だけしかありません」
だが、どうやら住所や番号は非公開らしい。
「構わないよ。それで名前は?」
「
「柚朝ミサキね……どこかでバトルとかやった?」
「うーん……森のある公園に行ったとしか言ってないようですね」
「森のある公園って吉瑞自然公園の事?」
「だと思います」
「わかった、ありがとう。あとそれと確認なんだけど」
次の目的地が決まり、カウンターから立ち去ろうとしたが思い出したかのように引き返す。
「なんでしょうか?」
「この依頼って達成報告だけでいいのよね?」
「はい。受託の報告は不要です」
それを職員から聞いた彼女は、ニッとした笑顔になって。
「じゃあ掲示板にこの依頼書貼っておいて」
と言った。職員は少し驚いた様子を見せる。
「分かりました。ですが良いのですか?」
「こういうのは人手があった方がいいし、時間も掛けられないからね」
あまり時間が無い可能性がある今回の依頼では手伝える人が多い方がいいと彼女は判断した。
「では何枚か追加で刷りましょうか?」
「お願いするわ。じゃあ公園の方に行ってみる」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
リュミレスカは今度こそカウンターを離れ、公園の方に向かった。
吉瑞市の中にあるそこそこの規模の公園、その一角にリュミレスカは来ていた。そこは小さな小屋でぱっと見は倉庫のような印象を受ける。だが近づくと中から物音が絶えず響き渡る。何も知らない子供が聞いたら心霊スポットとして騒がれるだろう。だが、今のこの小屋の主をよく知る彼女にとっては日常の音として気にも止めずにエレクトリア用の入り口に向かう。そしてそのままノックをして反応を待つ。中の物音は一瞬だが途切れた。しばらくすると中から勝手に入ってくれという声が聞こえたので扉を開け、中に入る。
「久しぶりだね、シュレー」
リュミレスカがシュレーと呼んだエレクトリアは手をあげ反応する。
「あぁ、お前も相変わらずだなぁ」
「まぁね。結構上手くやってるじゃない」
シュレーをはじめとしたこの小屋のエレクトリア達は、元々からここを縄張りにしていた野良のグループだった。それを調査しに来た野良時代のリュミレスカが見つけ、色々とあって吉瑞市と契約して今はこの自然公園の警備課として働いているのだ。
「もちろん。昔からここは私のシマだからな。勝手知ったるって奴だよ。それでだ、今回は何を追ってる?」
目を鋭くするシュレー。相変わらずだなと思い微笑みながらリュミレスカは一枚の紙を取り出す。
「行方不明のエレクトリア探し。この子見かけてない?」
「……あまり見ない顔だな。この町に住んでる奴なのか?」
「いえ、非公開でわからない。そっちで保護していたら話は早かったけど……」
「そうしたら依頼板に出してないだろうな」
「それもそっか」
「ちょっと待ってな。おーい!このエレクトリア見た奴いるか?」
シュレーが小屋の中の他のメンバーに声を掛ける。その中に1人手を上げる者が居た。
「あーこの子5日前にオーナーっぽい人と一緒にバトルスポットでやってましたよ。バトルログを漁れば痕跡は見つかるんじゃないすかね」
「何処のバトルスポット?」
「森林エリアっす」
「ありがとう。少しは進展出来そうかな」
行方不明になる前の足取りを追う上で有力な情報が手に入ったリュミレスカ。そこにシュレーが間に挟まる。
「いい情報が出たんだ。ちゃんと対価はあるんだろうな?」
情報料の請求だった。いつも情報の引き換えの対価を要求するのが定番になっている。リュミレスカは持ち歩いていた鞄を机の下に置いて色々取り出す。エレクトリアサイズのツール類を机の上に置いていく。
「もちろん、どの装備から見ればいい?」
「そこのレーザーライフルからだな。エネルギーパックの摩耗が激しくなってみたいでな」
「どれどれ……」
そうして彼女らの装備をしばらく整備していった。装備は使い込まれた形跡があったが、無茶な使い方はしていないようで、経年劣化したパーツ部以外はそこまで摩耗していないようだった。
「これで全部かな」
リュミレスカは一通り装備を整備し終わり、シュレー達に引き渡す。
「あぁ助かった。やっぱり定期的にうちに来ないか?」
「遠慮しとく」
「そうか。こっちでも見つけたら連絡する」
「ありがとう、助かったよ」
「それはこっちのセリフだ……さっさと行ってこい」
このやりとりも定番である。どうやら今の警備課には装備の細かい手入れが出来る人は居ないようだ。お陰でこの小屋に行くたびに勧誘を受けるが、断っている。
軽いやり取りをした後にリュミレスカは森林区画にあるバトルフィールドへと歩みを進めた。
公園の約4割を占める森林区画にやってきたリュミレスカ。目的はバトルフィールドのエントリー用装置に残されたアルシェのバトルログを入手する事である。
だが二日前ともなると、ログを漁るのが難しくなる。古い情報は自動的に削除される事が多い為である。だが今のところの手がかりはコレしか無いので、どうにか引っ張り出さなければならない。
事前にシュレーから話が伝わっていた為なのか、スムーズにエントリー装置の操作端末を従業員モードに切り替えてくれた。リュミレスカは感謝を述べ、ログを漁り出した。
ログは名前、装備構成、バトルIDの3種類が残されていた。名前と装備構成は依頼書に記述があり、そのパーツを条件に指定して検索する。すると2日前の昼頃に数回程バトルしていたようで最後のログは夕方だった。
(夕方までは一緒に居たっていう認識でいいかな……)
そう推測したリュミレスカはある所に電話を掛ける。
「もしもしジャック?」
『どうしましたか?何かトラブルでも?』
掛けた相手はリュミレスカのオーナーだった。
「今から言うバトルIDで近衛の位置情報サービスで調べて位置の割り出ししてくれる?」
『バトルIDだけじゃ厳しいかもしれませんが……行方不明者ですか?』
「そんな所。最近増えてきているみたいだし、リーティの件もあるから気になってね」
『分かりました。バトルIDからだと……』
通話越しにキーボードを叩く音とクリック音がする。しかし途中からどこか迷うような間隔になる。
『これだけじゃ無理か。リュミレスカさん』
「どう?」
『バトルIDだけだと追跡出来なさそうです。アルシェさんのオーナーとしてのIDが必要なんですが、会えますか?』
「それが名前しか知らないのよ。依頼書には電話番号も無くて。本当なら会いたいけどね」
『ならば一つ、こちらからバトルの申請をするんです』
「バトルの申請?」
『あれってオーナーの登録した端末にメッセージと共に届くんです。無論エレクトリアが居ないタイミングで見ず知らずの人間からの申請なので警戒されるでしょうけど、メッセージに救出の意図がある事を示せば応じてくれるかと……』
「大分掛けね」
『現状近衛に通報する以外だとコレしか思いつきません。ですがやってみる価値はあるかと』
「わかったわ、OK貰えたら場所教えて。そこで合流しましょ」
『了解、それとリーティさんの依頼がひと段落つきそうなら、そっちに合流させましょうか?』
「そうね、お願い」
『分かりました、ではリーティさんには私から伝えておきます』
「お願い」
通話を一旦切り、ログを再確認しながら返信を待つ。正直望み薄に感じながら数分後、オーナーから連絡が来た。
『リュミレスカさん。OK出ました』
「え⁉︎ホント⁉︎」
まさかの承諾に驚くリュミレスカ。
『バトルフィールドを吉瑞市のシティアリーナに指定しました。私もすぐに向かいます』
「え?ジャックも来るの?」
『行かないと逆に不自然かと思いまして。来る途中に概要と調査状況をこちらにもください。それと場所は大丈夫ですか?』
「もちろん!駅の近くのショッピングモールでいいのよね?」
『そこです。ではまた後で』
通信が切れる。スタッフに再度礼を言ってショッピングモールに向かう事にした。
連絡を受けてシティアリーナの近くにあるショッピングモールに訪れたリュミレスカ。周りを見渡しすと、見知った男性と見知らぬ若いというよりも少し幼い印象を受ける女性が居るのを見つけ、そこに行く。男性はリュミレスカのオーナー、女性は恐らく依頼主の柚朝ミサキだろう。
何か話をしているようで、主に女性から男性に話しているようで今回の事件の事で色々聞いているようだ。聞き耳を立てながら会話に混ざるタイミングを図る。
「それでは家出とかは今回が初めてではないと?」
「そうよ。でも大体は数時間もしたら帰ってくる筈なのにあの日は翌日になっても帰ってこなくて、それで捜索依頼を出したの。でもなんでそれを知ってるの?」
どうやら経緯を聞いているようで、まだ捜索サービスは使っていないようだ。それにオーナーが怪しまれているのでここで会話に入る事にした。
「その依頼を引き受けたのが私だからね」
「リュミレスカさん、いつの間に?」
「今来たとこ」
「誰よ、そのエレクトリア」
「私の所のエレクトリアです。彼女が依頼を引き受けたのがきっかけです」
幼げな警戒の眼差しが刺さるが意に介さずに話を続ける。
「それで?いつも喧嘩してるの?」
「うっ……週に2回から3回ぐらい……」
「結構しますねぇ。理由は何か?」
「ちょっとした事よ。晩ご飯の事とか、アクセサリーの事とか……でも今回は、全然バトルに勝てなくてお互いイライラしちゃって大喧嘩して、その時私つい……」
ミサキはそこまで言って口を噤む。後悔の念を感じて言い出しにくいようだ。リュミレスカとジャックは顔を合わせ、彼女の方が軽く頷いた。
「”アルシェの事なんか知らない“と言った、だよね?」
リュミレスカのその言葉に大きく瞳を細めるミサキ。そして静かに頷いた。
「言ってしまったの。まさか……まさかこんな事になるなんて」
涙を流し、うずくまる。
「反省は後です。今は見つける事に集中してください」
「ジャック?少しぐらいは泣かせて気持ち的にスッキリさせてあげないと」
「でも時間があまりありませんよね?」
「まぁそうなんだけどさ」
感傷に浸らせる気がないジャックとそれを宥めるリュミレスカ。だが時間がないのも事実である。タブレット端末を開き、ある画面をミサキに見せる。
「なによこれ?」
「近衛が出しているエレクトリア捜索用の座標特定サービスです。これを利用して位置を割り出せれば救出が可能になります」
「こんなモノ、聞いた事無いわよ」
「購入する時に一応説明はされる筈ですが……まぁそれは置いといてオーナーIDとアルシェさんのIDを入れてください」
「えぇっと確か……」
ミサキがそれぞれのIDを入力をすると、町外れの建物らしき場所の中に1箇所、ピンが立てられている。そこの場所をリュミレスカは知っていた。
「ここ確か所有者不明土地にある建物だね」
「行った事あるんですか?」
「実際にはまだ行ってないけど、再開発とか建て替えとかの予定一切ない地区な関係で一切手付かず。周辺地域の人口も減ってるみたいだし、隠れるのにも隠すのにもいい場所のようね」
「じゃあどうするのよ?」
「入り込む事自体は簡単だよ。私の名前で申告出せばすぐに侵入許可が出るでしょ」
「何者なの貴方?」
「ただの廃墟好きなエレクトリアだよ。ちょっと役所と警察に申請出してくる」
「了解です」
リュミレスカが少し席を外して、どこかへ連絡をし始める。その間にジャックの元に一つ連絡が届く。
『依頼完了』
たった一言だけだったが、彼の所有するもう1人のエレクトリアの手が空いた連絡だった。彼女にも手伝ってもらう為に返信とやりとりをする。
『お疲れの所申し訳ありません。現在リュミレスカの依頼が難航してまして、増援に来れませんか?』
『弾薬の補給が済み次第行く。山分けだよな?』
『もちろんです』
やりとりを終えた辺りでリュミレスカがえぇ⁉︎と驚いたような声を上げた後、気落ちしたような返事をして通話を切ったのが見えた。
「どうしましたか?」
「踏み込もうとした場所の所有者だって言う人が現れて、立ち入り拒否されちゃった」
「タイミングが良すぎませんか?」
「良すぎるね。ただこうなっては踏み込もうにもと言った感じよ」
まさかの横槍に頭を抱えるリュミレスカとジャック。それを見たミサキは瞳を細め、声を荒げる。
「じゃあアルシェに会えないって事なの⁉︎」
ミサキが焦るのも無理は無い。せっかくパートナーを見つけられる所まで来たのに、足踏みされる事になってしまったのだから。
「いや、何か手はある筈よ。恐らく誘拐犯の1人かそれに連なっている筈だから。だけど……」
「それを証明する証拠を持ち得てないんですよ。それさえあれば……」
3人は静かに悩む。するとジャックの携帯に着信が入る。誰からか見ると発信者の欄にはロザンリーティの名前があった。
「もしもし?」
『弾薬の補給が終わったが、何処で合流するんだよ?』
「シティアリーナの近くのショッピングモールです」
『すぐに行く』
「あぁその前に一個だけ確認したい事が」
通話を切られる前になんとか呼び止めるジャック。
『なんだよ?』
「以前誘拐された時にリーティさん、犯行の目的を聞いていましたよね?」
『あぁ、売り飛ばすって言ってたが売る相手は知らねぇ。あの感じだと指示役みたいなのがいるような感じだったが……』
「その場合って恐らく何処かに纏めてから売り払う感じになりませんか?」
『複数の場所でやってるなら、あり得るだろうが……いや待てよ?そうでないにしろアシが付くだろ、すぐに売ったら。そう考えると今ソイツが居る場所っていうのが』
「そうです、恐らくはほとぼりが冷めるまでの隠れ蓑と言った場所かと。ですが……」
『邪魔が入って入れねぇって事か』
「そうです。なのでどうにか突入する口実を作るための材料が今欲しいって所ですが……」
『とりあえずそっちに行く。その間にいい考えでも浮かばせてくれ』
通話が切れる。ジャックは再び頭を抱えて考えだす。どうしたものかと考えるがいい案が思い浮かばなそうだ。リュミレスカも考えてはいるが、確実な方法を見出せずにいる。だが案が無いわけではないようだ。
「確実ではないんだけど、何個か方法が思い浮かんだ」
「どういう方法ですか?」
「普通の来客として玄関で話す間に入って見つけ出す。これが一つ」
「その場合中に入るのは?」
「無論私かリーティ」
「リスクが高すぎます。バレた後にどうなるか……その案は却下です」
実際問題、潜入は出来ても脱出出来る保証は無い。そういう事もありこの案は不採用になった。
「それでもう一つ。ドローンを使った外部からの偵察。正確にはビットのレーザー射出口をカメラに換装して数箇所に設置する。そうすれば比較的安全に偵察は出来る筈だよ。まぁバレたら壊されるだろうけど」
「ただ、そんな改造出来る物ってうちにありましたっけ?」
「シーカードローンとウォッチャードローン。合計3機による偵察ならば行けるかも」
「シーカードローン?あぁ、最近受注生産限定で発売された物ですか」
「そ、中身をカメラに変えてリアルタイムで中継録画するスペースがあるぐらいには大きいからね」
ドローン単体ならば、本人が潜り込むよりも安全に偵察が出来る。だがもう一点問題があった。
「ウォッチャードローンは私の方で操作用の端末がありますが、シーカードローンはどうするんですか?」
「そこは私がビット操作の特化モードにすれば行ける。その間、無防備になるからリーティにその間カバーしてもらおうと思ってる」
「カメラの付け替え作業はどれぐらい掛かりそうですか?」
「1時間ぐらいあれば行ける。ついでに二丁プラズマキャノン型に装備換装したいから一旦家に帰って作業してくるね」
リュミレスカの現在の装備はアサルトライフルと特殊なフリントロック銃、脚につけたレーザーハンドガン二丁と背中に付けているセイレーンビットという遠隔兵器という構成である。
「了解です。私はリーティさんと合流する為にここで待機しておきます。換装が終わり次第連絡下さい。現場にて合流としましょう」
「分かった。そっちも準備とか調査とか進めておいてね」
リュミレスカは急いで家へと向かい、準備を進める事にした。