行方不明者捜索【エレクトリアコード二次創作】 作:ジャック・アヴェンダドール
ジャックと別れて1時間後、リュミレスカは準備を終えて誘拐されている現場へと向かう旨を彼に連絡し、町外れの廃墟へと移動する事にした。
装備を大幅に変えて、両手には大型のプラズマ砲を二門、背中にはレーザー砲をカメラに換装したシーカードローンを、脇には自動追従モードのウォッチャードローンを従えている。
そのような装備を付けて目的地の最寄駅に到着するとジャックが待っていた。柚朝ミサキや合流する予定の筈のロザンリーティの姿が見えない。
「あれ?ジャック?他の人たちはどうしたの?」
「リーティさんと合流した後、先に例の場所に向かってもらっています」
「じゃあなんでジャックがここに居るのよ?」
「その装備じゃ時間掛かるでしょう?」
「まぁそうなんだけど、移動手段はどうするの?」
「私達はタクシーで行きましょう。彼女たちにはバスで目的地に1番近い停留所に行ってもらってます。そこで一旦合流する形にしてます」
「バスの時間無かったの?」
「最終だったんですよリーティさん達を乗せたのが」
それを聞いたリュミレスカはある懸念が浮かび上がった。
「大丈夫なのそれ?」
「と、言いますと?」
「リーティって人嫌いでしょ?」
「あー、まぁどうにかなりますよ」
明らかに忘れていたという返答の仕方にジトっとした視線を送る。
「まぁ先には行かないとは思うけど。とりあえず私たちも行こう?」
ジャックが持っている鞄に入り、タクシー乗り場に向かわせる。
「忘れてたでしょ」
「最近順調に依頼をこなしていたので忘れていました」
「まぁあの時よりかは全然マシではあるんだけどね」
「あの時は色々酷かったですからねぇ」
タクシー乗り場に居たタクシーに乗り込んで行き先を告げると、ゆっくりと駅のロータリーから出る為に動き出した。
「まぁずっと1人だったようだからね」
「上手くやってればいいんですが……」
そのままタクシーは目的地に向かって走りだした。
一方その頃ロザンリーティと柚朝ミサキはバスに揺られながら静かに町外れの廃屋の最寄りのバス停に向かっていた。ミサキの表情は変わらず焦りを隠せないでいた。
「無事よ、きっと……無事だよね?」
誰に話すわけでもなく口から声が漏れている。それをロザンリーティは特に気にする事なく頬杖をつく。
ロザンリーティはリュミレスカと同じく、ジャックが所有するエレクトリアであり元野良エレクトリアである。ある事件やその後の野良生活がきっかけで人間不信に陥っており、今でも一部の人間や特定の状況でもなければ話もしない。その為無言を貫いてやり過ごそうかと思っていたが
「無事よ……でも、もし手遅れだったら?もぬけの殻だったら?バラバラになっていたら?急がなきゃ……待ってたら手遅れに」
「少しは静かにしろ」
あまりに呟きが多く、つい言葉を発してしまった。ため息をついてまた視線を外に向けようとするが、立ち上がったミサキに掴み掛かられ捕まってしまう。
「静かに出来ないわよ!私のせいで……私のせいでアルシェが……⁉︎」
ミサキは一瞬だけ痛みを感じ握っていた手の力が緩まる。その隙に抜け出して彼女を睨みつける。
「…………」
「何よ……何よ!その目は!」
「他の客が居る。周りを見てみろ」
そう言われたミサキが周囲を見渡すと、僅かながらに居た客が彼女達の方に視線を向けていた。軽く頭を下げて座り俯く。目からは涙が溢れ出している。それを見たロザンリーティはため息をつきながら彼女の顔の横に移動する。
「……焦るな。1人で行ったって助けられる物も助けられねぇ」
「なんでそれを⁉︎」
「自分で口走ってただろ……」
目を見開き口に手を当てるミサキ。本当に気づいていなかったようだ。
「アイツらを信じろ。私から言えるのはそれだけだ……この停留所だな、降りるぞ」
そうこうしているうちに指定されていた停留所に到着し、下車した。
降りた場所は周辺は森や畑に囲まれた場所だった。バス停からは近くに家があるようにはあまり見えないような田舎で、バスの他には自家用車やタクシーが無いと厳しそうに見える。ロザンリーティは周辺を見渡して腕を組む。
「……なるほどな、エレクトリアを隠すにはもってこいだな」
ミサキも周囲を見渡すと何処かへ歩き出そうとしていた。だがその歩みは3つの金属音に阻まれた。
「ひぅ⁉︎」
「まだ動くな」
「は、ハイ」
地面に刺さったナイフを抜き、ホルダーに収める。おっかなびっくりな表情のままミサキは問い掛ける。
「お、思ってたより静かなのね」
「そうか?」
ロザンリーティは一言で返すと、そのまま道路脇の鉄柵に座りジャック達の到着を待つ。その間にミサキが先に行かないように睨みを利かせている。沈黙の時が訪れる。お互い何も喋らずに田舎の道路で待つという状況で2人とも実際の時間よりも長く感じる。そんな状況だからなのかミサキから声を掛けられる。
「ねぇ、ロザンリーティもリュミレスカもあのオーナーの事“ご主人様”とか“マスター”とかって呼ばないよね?」
「それがどうした?」
「不思議だなって。なんでなの?」
「……深い理由は無ぇ。アイツは小っ恥ずかしいらしい」
「じゃあ君は?」
「まぁ……なんとなくな」
「そっか」
再び訪れる沈黙。今度はロザンリーティの方から話しかける。
「なぁお前って」
「ミサキって呼んで」
「…ミサキは焦ると周りが見えなくなるタイプか?」
「はぁ⁉︎なによそれ⁉︎」
「バスの件でな」
「……それは…あるかも。焦っちゃダメって思ってるけど……」
「焦るなっていうのは無理な話だ。むしろ焦りを感じとって対処した方が早い」
「対処?」
「これはアイツの受け売りなんだが、焦りそうな場面で簡単なルーティンをこなしてほぐすんだとよ。深呼吸なんかが手っ取り早い」
「へぇ……じゃあロザンリーティはルーティン何かあるの?」
「戦闘前にナイフや剣を軽く回すぐらいか」
「へぇ……ワタシも取り入れようかしら?」
「やってみな。少しは楽になるぞ」
「うん」
その後2人は軽い雑談を続けるのであった。
しばらくすると、一台のタクシーがバス停の前に止まった。少しすると1人の男と青と銀のメタリックなボディに身を包んだエレクトリアが出てきた。見覚えしかない2人にロザンリーティは声を掛ける。
「おいおせーぞ」
「ごめんごめん思ったよりも改造するのに時間掛かっちゃった」
「そこのお転婆姫の監視するの結構大変だったからな?」
「なによお転婆姫って!」
「おや、いつの間に仲良く」
「「なってない!(無ぇ!)」」
その光景に内心微笑みながらリュミレスカの方を見る。
「さて、ここからは歩きですよね?」
「そう、森側の方に3km。ミサキさん歩ける?」
「大丈夫よ」
「良かった。私が先頭としてリーティ、後ろ頼んでいい?」
「いいぞ」
「じゃあ、行こうか」
4人はバスが通っていった道に対する脇道を通っていく。舗装がところどころ剥がれており、普段人が通りかからない場所である事を物語っている。だが剥がれ具合とは裏腹に道にはタイヤの跡があり、最近ここ道を使った事が伺える。それに気づいたのはリュミレスカだった。
「どうやら誰かが居るのは確かなようね」
「他の家の住民のじゃねぇの?」
ロザンリーティが問いかける。
「この先にある家は2、3軒だけ。どれも所有者が不明だったり引き払った後だったりで普段から住んでる人は居ない筈よ」
「だといいがな」
周辺を軽く警戒しながら道を行くリュミレスカ達。ロザンリーティはジャックの横に移動して話しかける。
「そういえば近衛には通報したか?」
「もちろんです。ただ証拠がまだ無いので一部隊のみ出してもらえるそうで」
「一部隊もありゃ十分だ。合流はいつする?」
「証拠を掴んだら突入してくれるらしいです」
「遅くならねぇか?」
「いえ、近くには来ているので即応は可能かと」
「だといいがな」
「そういえば、意外でしたね私たち以外にそれなりに話をするなんて」
「おい何処から聞いていやがった」
「いえ聞いてはいませんよ。ただ柚朝さんの様子が先程よりも落ち着いているように見えましたので」
「お前が来るまでの暇つぶしの結果だ」
ほんの僅かに顔を赤くするロザンリーティ。すぐに首を左右に振って気合いを入れ直す。
「アホな事言ってねぇでさっさと行くぞ」
4人は目的地へと歩みを進めていく事1時間、森が少し開いた所で目的地が見えてきた。そこはところどころ荒れた場所がある以外はごく普通の少々古い家だった。
リュミレスカは目的の家が遠くに見える所で立ち止まる。後ろにいた3人も一緒に止まる。家の周りは少し開けておりそのまま進めば気づかれてしまう事が容易に想像出来る。
「ここからは草木に隠れるよ。あの家が見える程度には近づくけど……あまり詰められなさそうね」
先程よりも小さな声でリュミレスカは周囲を見渡しながら森の方へと動き出す。それに合わせて警戒しながら続く3人。少しだけ歩いてそこそこの背丈の草の陰に隠れる。家を見る事は出来るがやはり距離が遠くなってしまうが見つかるよりかはマシだと言い聞かせて装備の展開を始める。
「ジャック、ウォッチャードローンの遠隔操作モードへの切り替えは出来てる?」
「もちろんです。シーカードローンの用意は?」
「準備完了。いつでも出せるよ」
「了解です、因みに一回の稼働時間は?」
「3分ね。帰還まで含めて5分が限界」
「ならウォッチャードローンを先行させて外観と窓際の部屋を確認。その後にシーカードローンで中を偵察という形に」
「了解、ただすりガラスっぽいけどどうするの?」
「サーモセンサーを使おうかと。エレクトリアなら起動していればそれなりの熱量がありますよね?」
「起動していればね。ただスリープモードとかシャットダウンされてると熱感知は不可能になるわ」
「その場合は陽動を仕掛けます。ウォッチャードローンなら時間稼ぎにはなるかと。その間リュミレスカさんの方で見つけてください」
「分かったわ。とは言ってもどれぐらいの規模がいるか分からないけど……やるしかないね」
「ドローンの操作している間はリーティさん周囲の警戒を」
「分かってる。バレたら耳元で大声出してやる」
「反応が鈍るので勘弁を……柚朝さん、貴方にもやってもらいたい事があります」
「何よ?」
「この端末にマッピングの状況や識別結果が出ます。こちらでもある程度確認しますが、特にマッピング関連は片手間に確認が出来ないので確認をお願いしたいです」
「どうすれば分かるの?」
「マッピングはスキャンデータが画面に出るのでそれを確認して下さい。別途必要な場合は逐次指示します」
「分かったわ。この画面を見ていればいいのね?」
「えぇお願いします、各員準備はいいですか?」
「すでに監視体制に入っている」
「いいわよ」
「準備完了ですリュミレスカさん。作戦開始の号令はそちらに」
「分かったわ。では……作戦開始」
リュミレスカによる作戦開始の宣言と同時に一機のドローンが飛び出した。見つからないように高度を上げてまずは建物の位置関係を探る。どうやら小さな物置小屋と家の2棟あるようでその間に軽自動車が一台止まっている。家は30坪の平屋で見た目からして建てられてからそれなりの年月が見て取れる。
「位置関係マッピング出来てますか?」
「大丈夫……そうね」
ミサキが見ている画面には3Dデータとして読み込まれた地形や建物のデータが表示されている。
「では一旦高度を落とします。窓の場所側に移動させます。モードを地形スキャンから通常に切り替え」
ウォッチャードローンを少し遠くに移動させてから高度を落とす。ズーム機能も使い窓のタイプを確認する。
「格子にすりガラス……風呂場?いや違うキッチンか」
「そこには居ないと見た方がいいな」
「念の為サーモセンサーで確認します……ん⁉︎」
「ジャック、どうしたの?」
「サーモセンサーに人の反応あり……一度高度を上げます」
「不味くない?リーティ」
「分かってる」
誰かが居たようで少し慌てて高度を上げる。しばらく静観して様子を見るがこれといった動きは無い。
「人の反応の他に横長四角いの熱源があったので恐らく電子レンジで何かを温めていたかとは思いますが……」
「まずは1人見つけたって事で偵察を続けよう」
「了解、玄関からみて左側の方からサーモで確認します。森の中を経由するので少し時間が掛かります」
そう言いながらジャックはドローンを森に入れながら左側面に移動させる。移動させた後に窓がない事を確認して少しだけ壁に接近させて再びサーモセンサーを起動させる。
「……反応は……無さそうですか……この距離だと確か……」
「壁の裏側ぐらいね」
「反応が出るまで接近します。見つかったらそのまま陽動を行います」
「了解、いつでも発射は出来るからね」
「了解」
そのまま壁に近づいていく。青い画面に他の色が混じりだす。基本は水色だが時折黄色が混じる。それらの物体の大きさからどのような物かを判別する。その中に一つ小さいが温度の高い物体の反応が出る。形状を捉えようとしたその時、ロザンリーティが声を上げた。
「おい、下から何か来るぞ」
その言葉の直後に眩い光が見えた。ロザンリーティは咄嗟にミサキの頭を下げさせて、自分も姿勢と高度を下げる。ジャックは木の影に隠れ、リュミレスカは草の中に隠れた。
光が通り過ぎて頭を上げると、そこにはもう1台の軽自動車があった。前側からガタイの大きな男と背がやや低い男の2人が出てきて後部のドアを開けると小さな箱を持ち上げた。よく見ると、箱は中からの衝撃で揺れているのが見えた。
リュミレスカはすぐさまドローンを発進させようとするがそれをロザンリーティが止める。
「今動いたらこっちの居場所が割れる。ここは待「ならば陽動を仕掛けましょう」あ?」
彼女の提案に割り込むジャック。言うが早いかドローンのプロペラの音を大きくさせながら、速度と高度を上げて男2人の方へと向かわせる。男達は妙な音が聞こえたからか耳を澄ませている。
「リュミレスカさん今です」
「了解!」
シーカードローンが台座から離れて家の方へと向かう。その間にウォッチャードローンは激しい駆動音を出しながら男達がいる所へ飛び出した。男達は慌てた様子を見せて対応が遅れる。
箱を持った方が急いで家の中に入ろうとし、もう1人が捕まえようとウォッチャードローンを追いかけて来た。
「予想通り……間に合いますか?」
「なんとか!」
箱を持った男が扉を閉めようとしたその時二つの影が頭の上を通り過ぎた。それに気付かずに鍵を閉め慌てて家の奥に行く。リュミレスカはそれを天井スレスレでドローンを制御しながら追いかける。
家の中央辺りにある部屋に入ると机の上に雑に箱を置いて部屋を出た。その部屋には似たような新しめの箱が積まれており、とてもこの家には似合わない物だった。リュミレスカのドローンだけになった部屋で証拠探しをする為に机の上にあった箱を落として箱を開けて中身を確認する。箱から出て来たのはやはりエレクトリアでシーカードローンに怯えている様子を見せた。その様子をモニターしていたリュミレスカは一言こぼす。
「……しまった、使わないだろうと思ってスピーカー機能つけてなかった……とりあえず壁に近い所にドローンを置いて監視を続けるわ」
「その必要は無いかもな」
え?とロザンリーティの方に視線を向けると彼女は首を家の方向に振る。そこにはウォッチャードローンを片手で持ち上げている男の姿があった。出力を上げて脱出を図ろうとするが手を離せるまでには至らず。ただもがくだけになってしまっていた。
「このままじゃ見つかるぞ、証拠なら出たしさっさと引こうぜ」
「……いや、下手に探し回られて動かれるよりその場に留まってくれた方が一網打尽に出来る。ジャック、近衛の部隊はどうしている?」
「……分かりました。10分程で到着する予定です。引くにしろ打って出るにしろ、今決めておかないといけません」
「あたしは打って出る方がいいと思う」
「本当なら突撃してぇが、コイツの事を考えると引きてぇ」
「どちらにせよ柚朝さんは今からここを降りてもらいます」
「え?せっかくここまで来たのに?」
「お前が残ってもやる事無ぇだろ」
「それは……そうだけど」
「それにただ降りるだけじゃねぇ、近衛の奴らが登ってくるからナビしてやれ。出来るな?」
「わ、分かった」
ロザンリーティのじゃあ行ってこい!の一言と共にミサキは家とは反対方向に駆け出した。それを見送った3人はドローンを捕まえた男の様子を伺う。予想通り持ち主を探しだしているようでキョロキョロしながら持ち主を探しているようだった。
「……つーかお前も着いていってやれば良かったじゃねぇか」
「貴方達を置いてく訳にも行かないでしょう?」
はぁ……とため息をつくロザンリーティ。続けてリュミレスカに聞いた。
「さて、どうする?何処で突っ込む?」
「遠くまで探しに行きそうになったら出よう。相手する時間は短い方がいい」
男を見据えながらリュミレスカは腰を低くしてシステムで兵装ロックを解除し飛び出せるようにする。ロザンリーティは散弾銃の装弾を確認してナイフを構える。
男はまだ探しているようで今にも行動範囲を広げようとしていた。近衛の警備隊が来るまで後8分程、それまで2人で抑える事が出来るのか?
「なぁ今気づいたんだけどさ」
唐突にロザンリーティが声を上げる。
「何よ」
「あれ倒せば良くねぇか?」