かぐや様は告らせたい 〜天才転校生はメイドの心を暴きたい〜 作:ハヤオ
白銀は蓮を椅子に促すと、机越しにじっと観察するように視線を向けた。
「……朝倉くん。君はなぜ、この秀知院に?」
「転校の理由ですか?」
蓮は口元だけで笑い、答える。
「簡単に言えば、環境を変えたくなったからです。海外の学校も面白かったけど、ここは学問も人も多様だと聞きましたから」
「なるほど。だが、この学園は競争も激しい。君のような優秀な生徒なら、きっとどこでもやっていけただろうが……」
白銀は腕を組み、わざと視線を鋭くする。
「その実力を、生徒会で試してみないか?」
横でかぐやが微笑を浮かべた。
「生徒会長の提案に異論はありません。むしろ歓迎したいくらいです」
「……初対面でそこまで言われるのは光栄ですね」
蓮はあくまで落ち着いた声で応じた。
「でも、生徒会とはいえ、それなりに労力を割く覚悟が必要でしょう? 僕が入ることで何を期待しているのか、少し気になります」
白銀は一瞬だけ言葉に詰まったが、すぐに表情を引き締めた。
「君の分析力だ。人を見極める目——それはこの学園で生徒を導く上で大きな武器になる」
(……ああ、やっぱり)
蓮は心の中で頷く。
この会長は、自分と同じく人を見抜くタイプだ。だからこそ、互いを早くも“駒”として評価している。
「わかりました。お役に立てるなら、喜んで」
そう答えると、藤原が「やったー! 新しい仲間だ!」と手を叩いた。
4. 放課後の遭遇
その日の放課後。
蓮は昇降口で靴を履き替えていると、校舎裏の駐車場から黒塗りの車が入ってくるのが見えた。
運転席から降りてきたのは、すらりとした長身の女性——そして助手席から現れたのは、昼間生徒会室で見た四宮かぐやだ。
だが、蓮の視線を引いたのはもう一人。
車の後部から現れた、ブロンドの髪をツインテールにまとめた少女。
整った顔立ちに控えめな表情、だがその瞳の奥には淡々とした光が宿っている。
「お迎えですか?」
蓮が近づいて声をかけると、その少女はわずかに驚いたように眉を動かした。
「……はい。お嬢様の専属ですので」
声は礼儀正しく、抑揚が少ない。
「朝倉蓮です。今日から転校してきました」
「……早坂愛です。四宮家のメイドです」
短い自己紹介。しかしその間、蓮は確かに感じた——
完璧に整った態度の裏に、別の顔を隠している気配を。
「専属メイド、か……なるほど」
蓮は意味ありげに微笑む。
「その割には、少し距離を置いた目をしているように見えますね」
早坂の瞳が、一瞬だけ鋭く光った。
「……観察眼が鋭いんですね。ですが、余計な詮索は——」
「しませんよ」蓮は軽く手を上げる。
「ただ、そういう目をする人には、興味が湧くんです」
早坂は何も答えず、かぐやの隣に立った。
その背中を見送りながら、蓮は小さく呟く。
「……やっぱり、この学園は面白そうだ」