かぐや様は告らせたい 〜天才転校生はメイドの心を暴きたい〜 作:ハヤオ
5. 一日の終わりに
その夜、自室のデスクに向かった蓮は、昼間の出来事を静かに思い返していた。
秀知院学園——予想以上に興味深い場所だった。
会長の白銀御行は、努力で自分の地位を築き上げた人物。
副会長の四宮かぐやは、血筋と知略を併せ持つ令嬢。
そして、その傍らに控えるメイド・早坂愛。
(……あの目は、簡単には手に入らない種類のものだ)
感情を見せないよう訓練された人間が、ごく一瞬だけ見せる「素」の輝き。
それが蓮の中に妙な引っかかりを残していた。
彼はノートを開き、何やら簡単な図を描く。
真ん中に「白銀」と「四宮」、その周囲に「藤原」「石上」、そして「早坂」。
その線を結びながら、蓮は小さく笑った。
「……さて、どこから崩してみようか」
6. 翌日、生徒会で
翌日の放課後、蓮は正式に生徒会室を訪れた。
白銀は書類を抱え、かぐやは紅茶を用意している。藤原は相変わらず菓子を並べ、石上は隅で漫画を読んでいた。
「お、来たな朝倉」
白銀が顔を上げる。
「早速だが、今日の議題は——」
生徒会の活動内容は、表向きは行事の準備や予算管理だが、裏ではそれぞれの思惑が入り交じる場でもある。
蓮はその空気を瞬時に読み取り、必要な場面で意見を挟んだ。
「それは予算上、こういう形に変更すれば解決できます」
「資料はこちらで再作成します」
その的確な対応に、白銀もかぐやも目を見合わせた。
「……優秀ね」
かぐやが紅茶を差し出しながら小さく呟く。
「ありがとうございます、副会長」
「かぐやでいいわ」
「では、かぐやさん」
その呼び方に、かぐやはわずかに口元を緩めた。
7. 早坂との二度目の接触
生徒会活動が終わり、蓮が廊下を歩いていると、角を曲がった先で早坂と鉢合わせた。
彼女は掃除用具を手にしており、どうやらかぐやの用事で動いているらしい。
「また会いましたね、早坂さん」
「……偶然ですね」
表情は変わらないが、声のトーンは昨日よりわずかに柔らかい。
「昨日の件、気を悪くしていませんか?」
「別に。ただ、詮索は好まない性質なだけです」
「じゃあ、詮索はやめましょう。代わりに、世間話でも」
蓮の提案に、早坂は一瞬だけ迷い、そして頷いた。
「……天才って、退屈じゃないんですか?」
「退屈ですよ。だから、面白い人を探してる」
「それで、私が面白いと?」
「ええ。まだ入口だけですけど」
早坂は視線を外し、短く笑った。
「……変わった人ですね、朝倉さんは」
それだけ言うと、再び背を向けて去っていった。
蓮はその後ろ姿を見送りながら、小さく呟いた。
「……やっぱり、この学園で一番面白いのは君かもしれない」
8. 予感
夜、自宅で窓の外を眺めながら、蓮は深く息をついた。
生徒会の面々、かぐやと白銀の奇妙な関係、そして早坂愛。
その全てが絡み合い、これから何かが動き出す予感がする。
「さて——天才転校生としての腕の見せ所、かな」
桜の花びらが、夜風に乗って静かに舞った。