さて、そんな俺は『神芝樹学園高等部』に入学することになって、初日から試合をしたわけだ。
……その勝敗がどうなったのかは、君の目で確かめてみてくれ。
・連載してみようかと書いてみたはいいものの、棋譜を真面目に作りすぎて読者視点だと訳が分からなくなったカードゲーム短編です。
・カード効果は注釈でまとめています。
「皆さん、入学、進学おめでとうございます。このクラスの担任になった佐藤です」
今日は
期待と僅かばかりの不安を抱えているであろう新入生達の前で、佐藤と名乗った担任の男は教室内に入ってきたかと思えば、自己紹介を手早く済ませ、言葉を続ける。
「さて、今日は午後から行う式の前に軽いホームルームとレクリエーションをするわけですが……、その前に自己紹介をしてみましょう」
ざわめく教室内。頭を抱える者、スマホを取り出す者、隣人と会話を始める者。……仲が良さそうに話す様子を見るに、彼らは内進生だろう。
「特に面白いことを言えって訳では無いので、かるーい気持ちでお願いしますね。では出席番号……、今座っている席順ですね。一番の阿久津くんからお願いします。あー、前に出る必要はありませんよ」
「ご指名ありがとうございます。ボクの名前はは
一番手の阿久津くんは金髪ロングのイケメン。実に好青年といった振る舞い。ただ、彼の着ている服は金色に光り輝いていて正直眩しいし、あまり近寄りたくない。
この神芝樹学園では制服の改造が自由とはいえ、いくらなんでも改造しすぎではないだろうか。
「えっと、次はわたしですね! わたしは
次の甘濃さんは茶髪の少女。まぁなんというか、The 普通の女の子って感じだ。それ以上に言うことは多分ない。
そして、次は……俺か。
「どうも、
さて、一応俺自身のパーソナルと諸々も確認しておこうか。
俺は射落家の長男で、肉体上の性別は男、自認も男。年齢は15歳、誕生日は10月15日で、見た目は
そう、この世界においてはだ。誰にも話したことはないのだが、俺には前世の記憶、……正確に言うのならば人格の連続性がない記録のようなものがある。無論、この記録は全てまやかしで自分の頭がおかしい可能性というものもある程度考えてはいるのだが、流石に自分は正常であると信じたい。
そして、その記録に照らし合わせれば、この世界は明らかにおかしい。人間の髪色がやたらカラフルな上にフィジカルも強いし、変な名前のやつも多いし、何より、とあるカードゲームが馬鹿みたいに流行っている。
そのカードゲームの名前は『ヨリシロ・クロス』、通称シロクロ。君だけのヨリシロとカードを使って楽しく
そして、そんなシロクロには特色としてヨリシロと呼ばれる、いわゆるところのプレイヤーの分身とでも呼ぶべき存在がおり、これには
また、ヨリシロそのものには個体差があり、その違いがデッキコンセプトの違いを生み出すことになる。
……まぁ、それまではいい。多分、他のカードゲームにもそういうのはきっとあるだろう。ただ、問題なのは、それを、世界規模の超大手企業である
しかも、受け取ったヨリシロは戸籍にも登録される。……一企業が力を持ちすぎではないだろうか。それに、ヨリシロ自体にもAIが搭載されているそうで、クロス中に投影されるホログラムの中では、まるで生きているみたいに動く。いったい、どんな技術を使っているのだろう。
記録の中で見た、スマホにマイナンバーなる個々人のパーソナルなカード?のアプリを入れる行為とかとは多分レベルが違う気がするのだけども。
…… 一応、企業を弁護しておくと、ヨリシロは生まれた時にだけ回せるガチャではない。勿論後から変えることができるし、大会に出場する競技勢なんかは頻繁に変えているらしい。
ただ、それには役所で手続きをする必要があり、過去あったとされる地獄のサメ環境下ではヨリシロの変更のための部署の受付に長蛇の列ができたとかなんとか。本当に頭がおかしい。デッキくらい自由に変えさせてくれ。
と、まぁこんな無駄なことを考えて現実逃避をしている場合ではない。不平不満を垂れたところで結局、今生きているのはこの現実なのだし、散々この世界が狂ってるみたいに考えたが、あちらが狂っていてこちらが正常な可能性もある。とりあえずクラスメイトの顔と名前を一致させるのが最優先……。
人間も名称とフレーバーか効果テキストが常時表示してくれてれば、すぐに記憶できるんだけどな……。
◇
「さて、出席番号が最後の
再度ざわめく教室内。ただし聞こえてくるのは心做しか嬉しそうな声。積極的に近くのクラスメイトに声をかける人もちらほら見えて、少しばかし彼らの社交性に感心する。……さて、どうするか。自分のように特にアクションを起こしていない人もチラホラ見受けられる。適当にその中の誰かに声をかけて……。
「ねぇ射落くん、わたしと一戦やろ?」
想定外のぼっち回避、都合のいい事に前の席から指名が入る。……たしか、名前は甘野 朱里さんだったか。
「おっけ、じゃあ、よろしく」
「よろしく!!」
そこからはもうトントン拍子、小学生の頃からやっていたようないつもの流れで、クロスの準備が始まる。
周囲を見渡せば他のクラスメイトも対戦相手を見つけたらしく、今か今かとデッキケースを構えて対戦相手と先生の方を見ている。
クロス中はホログラムで人間大のヨリシロを投影する都合上、ある程度の広さは必要であり、机椅子をどけた上で、それでも廊下に出なければならない人もいたが、それはまぁご愛嬌といったとこ。
「さて、今回のクロスはスタンダードルールで行います。……もう分かりきっているとは思いますが、一応スタンダードルールのおさらいをしておきましょう。デッキは15枚と最初からフィールドに出ているヨリシロが1枚、、初期手札は5枚、後攻ドローはあり、特殊なものを除いた敗北条件はヨリシロが瀕死になるか、手札と山札のカードが0枚になること。以上です」
実にシンプルなルールだ。自分のデッキからすると、特に山札の枚数が少ないところがいい。
「それでは、デッキを構えてください。……そして、どうぞ楽しんでください」
「「クロス!」」
かくして、俺の高校生になって始めてのクロスが始まった。
◇
クロスは基本的にある程度機械が進行してくれる。そして、それを可能とする機械が内蔵されているのは、この世界の誰しもが持っているデッキケースだ。
そう、この世界のデッキケースは普段からデッキを守ってくれるだけでなく、クロスの時は実質的なジャッジにもなってくれるわけだ。
しかも、オマケにクロスの状況を3Dで周囲に投影するホログラム技術までついているし、変形させて腕に取り付ければ、山札と墓地とヨリシロのカードを置く場所にもなる。
……、ヨリシロ・クロスが手札以外なら三つのゾーンで完結するスタイルのカードゲームじゃなければ、このデッキケースは何かしらの完全なパクリになる。と、記録は主張しているが正直もう既に怪しい気はする。
という余談はさておき、腕にデッキケースをくっつけて対峙する俺と甘濃さん、そして、その前にはホログラムで形成された、人間大のサイズの双方のヨリシロ。
こちらのそれは『孤独なる王の骸』という名前のゴテゴテした装飾のついた骸骨。相手のヨリシロは『奇想天外英雄』というライダースーツにヘルメットの全身真っ黒不審者。
……なんというか、少しばかし華のない風景ではある。絵面がB級映画のそれなんだよな。
いや、そんなことよりもクロスだ。前置きが長すぎる。今回は俺が先攻なので俺から動くことになる。
「俺の先攻。それじゃ、まずは『王の墓場*1』の①効果を発動します。これにより、墓場フィールドが展開されます。このフィールドの効果は、自分、相手の墓地にカードが送られる度に、このフィールドにSカウンターを1つずつ貯めます」
カードを発動した瞬間、自分と相手のヨリシロの周囲が黒く染まり、足元から無数の墓標が立ち並ぶ。
「……先1フィールド!」
このゲームにはフィールドというものがある。それの効果を簡潔に言うのなら、自分のヨリシロに有利な領域を作り出す、と言った感じだ。また、一度展開されたフィールドの上書きは不可能であり、新しくフィールドを展開した場合は古いものと新しいものとが共存することになる。
……要するに先1でフィールドを展開するのはかなりのアド、ということだ。
「次に『王への手向け*2』の①効果を使用し、Sカウンター名称が記されたカードを1枚手札に加え、それを発動!『冥府への供物*3』!。自分のデッキの上からカードを1枚墓地に送り、甘濃さんの手札を1枚ランダムに捨てる! これでSカウンターは5!」
「くっ……! 」
「更に、『連環*4』を発動!墓地から『冥府への供物』を回収し、再使用! そしてもう1枚手札に抱えていた『冥府への供物』を発動っ! 」
「わ、わたしの手札が……!」
「そして、このタイミングでSカウンターの数は12! 甘野さんの手札は2枚! 先1は攻撃できないのでターンエンド! ちょっとテンション上がってきた……!」
このデッキの理想ムーブを展開。テンションもそりゃ爆上がりである。
「手札は2枚……、厳しい……。わたしのターン!ドロー! よし、引いた!」
キーカードを引かれたか。手札枚数が減っているとはいえ、流石に少しばかり油断してられないかもしれない。
「わたしは『旭の時*5』を発動! これにより旭フィールドを展開! そしてフィールドの効果でさっき墓地に落ちた『漆疾轟圏*6』をデッキに戻して1ドロー!」
墓地戻しからのドロー……、少しめんどくさいな。だが、カード発動でSカウンターは溜まったので結果オーライか?
「そして、『壱針電身*7』を発動!」
「そんなにカードを使用して大丈夫なのかぁ? カードが墓地に送られる度に俺のSカウンターは貯まっていくぞ!」
「ふふっ、勘違いしてるかもだけど、わたしの壱針電身を含む『
「……っ!ヨリシロにカードを重ねる!?」
「あ、アレは機装十鎧デッキ……! 中々見ないデッキではありますが、十枚の機装十鎧のカードをヨリシロに重ねて強くなっていって化け物みたいに成長していくデッキですぞ!」
なんか説明してくれたヤツが出てきたな。メガネをかけている彼は確か五十理くんだったか。自分の後に自己紹介をしていた気がする。
……うん、正直助かるけどもフェアさは欠ける気はする。というか見た感じ彼もまだクロス中なのになんで他の試合の解説してるんだ。怖……。
だがまぁいい。情報が入ってきたなら入ってきたなりに考察をしよう。今回の機装十鎧デッキに対して俺のそれはSカウンターが貯まらない以上相性不利か?
……いや、慢心して見てなかった墓地のカードのテキストを確認した感じ、重ねたカードは再度利用まで時間がかかる。しかも、墓地に行かないということは裏を返せばデッキと手札の枚数が減り続けるということ。LOが割と現実的に狙える相手ではある。怖いのは強化を程々に顔を殴られ続けることではあるが……。
「このマッチアップ、射落くんがSカウンターを貯められない所で一見不利に見えますが、実際の所はハンデスを雑に打たれるだけで甘野さんの動きが遅れること、そしてLOが近くなることは事実……。甘野さんは速攻をする必要がありそうですぞ! 幸いにしてハンデスデッキは自己強化が少ないという性質上速攻に弱いのですから」
「すげぇ! 考えてること全部言われた! 黙ってろ五十理くん!」
双方に情報が渡って実質五分五分みたいな感じにはなったが、やってることがあまりにも敵である。やめてほしい。
「そっか! 早く殴っちゃえばいいんだ!」
「あーー あーー 言わんこっちゃない!!!」
「だけど、とりあえずやるべきは殴る準備! 『壱針電身』の③の効果で1枚ドロー! そして私は手札から『空弍占黎*8』をヨリシロに乗せて③の効果を発動、射落くんのヨリシロにダメージを与える!」
「くっ……」
甘野さんのヨリシロが少しゴテゴテした姿に変身して、ダメージエフェクトを放ってくる。こちらのヨリシロには微量のダメージ。
さて、ダメージとは言っても実はこのカードゲーム、そういったダメージ関連や攻撃力だのHPだのの正確な数字は明示されていない。というか、多分場合によって変わる。
正味、カードゲームとして破綻している気もするが、その辺で不満を聞いたことがないのでまぁ問題はないのだろう。何となく耐えられない時は耐えられないってわかるし。
「さらに、連環を発動! 墓地から『燃伍巫赫*9』を手札に加え、それを発動! そして燃伍巫赫の③効果を発動し、自分と相手のヨリシロにダメージを与える! そして、攻撃! ファイブ・バーニングフレア!」
「ぐわぁぁっ!!」
またフォームチェンジした甘野さんのヨリシロに諸共な感じで焼かれたと思えば、そこままダイレクトに殴られてかなりのダメージを受けてやられ役みたいな声を出してしまった。
……叫んだことはともかくとして、正直、かなり嫌な展開だ。
「攻撃をしたのでターンエンド! 」
……一応ではあるが、仮にHPとATKがあるものとして考えた上で現状を考えよう。
まずは自分のヨリシロのHPは初期値を4000とした場合3000といったところ。半々殺しくらいのダメージは受けているのでなかなかにマズイ。ATKは300を初期値として考えた場合、300のままな感じ。だって何もしてないから。
対する甘野さんの奇想天外英雄のHPは3900、ATKはカードでの強化もあって800と言ったところだろうか。
この事から何がわかるか。それは、こちらのデッキの中にある自己強化ができるカードは少ない上に条件も付いているという理由から、同じ土俵で殴り合いをし続ければ高確率で負けるということ。詰まるところ、速攻されたら負けるということである。
……いや、考えうる中で一番の負け筋とはいえ何回同じこと考えるんだよ。
「俺のターン! 甘野さんのターンでも貯まったSカウンターは現在14! ここで俺はドロー前に墓地の『王への手向けの②の効果*10』を発動! Sカウンターを3つ取り除くことで相手の手札を1枚捨てさせる! これで甘野さんの手札は0枚! そして、ドロー!」
「えーっ! そんな、私のカードが!」
だがまぁ、速攻はさせない。手札も使わせない。攻撃を受け流し、何もさせずにじわじわと真綿で首を絞めていくのがハンデスの流儀だ。
「手札に抱えてたってことは何かしらの制約のあるカードってことか……? 一応効果を確認して……」
えーっと、『神無罪玖*11』か……。って、なるほど、まだ詳しくは分からないが、落としておいてよかった気配がある。耐え、と言ったことろか。
「まぁいい、さらに、俺はさっきドローした『死者の呪い*12』を発動!自分と相手の山札の上から2枚を墓地に送る! 落ちろ、切り札ぁ!」
「デッキが削られてっちゃう……!!」
……俺の方で落ちたのは『王権臣従*13』と『輪廻転生*14』か。そして甘野さんの方は『無限砲捌*15』と『拾祝夢法*16』……。テキストを見た感じ無限砲捌の方は先程の神無罪玖を発動するのに必要な前提条件、そして『拾祝夢法』の方は逆に神無罪玖が発動に必要なカード……。
というか『拾祝夢法』の性能壊れてないか? 繋がるルートのカード落とせてよかった……。
「そしてまぁ、攻撃せずにターンエンド!」
「えっ!? 攻撃しないの!? ……ハンデか何かのつもり?」
「別に意味が無いからやらないんだよ。何も攻撃するばかりがクロスじゃないんだからさ。というか、俺のヨリシロじゃ攻撃しても返り討ちにされそう」
事実として、ステータスに差があると返り討ちにされることはままあるし。
「頭良さそうなこと言っちゃって! 私のターン! ……来たっ! 私は『天啓*17』を発動、デッキから2枚ドローする! さらにフィールド効果で墓地のカードを一枚デッキに戻してドロー!『壱針電身』の効果でさらに1枚ドロー! これで手札は4枚!」
「引くじゃないか。だけども……、甘野さんのデッキは残り5枚、デッキと手札が無くなる時間は刻一刻と迫っているよ」
「それを言ったら、射落くんのデッキは残り3枚だし、手札は1枚じゃん! さっきにそっちが息切れするんじゃないの?」
「その辺はデッキコンセプトの違いだ。こっちは確実に勝ちに向かってるぞ」
「へぇ……、でも勝つのはわたし!『空弐占黎』、『燃伍巫赫』の効果で射落くんにダメージを与える!」
「ちっ……」
HP換算すれば50くらいになっただろうか。分類的には半殺しである。
「さらに、『胎参命導*18』、『水征霧肆*19』をヨリシロに乗せて、それぞれの③効果を発動! わたしのヨリシロは全快! 更に1回の回避能力を獲得!」
「ぶん回りすぎだろ……」
「なんのまだまだ! 使える効果は使ったけど、勝負はこのターンで決める!『機装十鎧:昇』の条件は達成済み……、『甲闘陸型*20』を発動!!!」
甘野さんのヨリシロが、今度はパワードスーツのようなものを纏う。なんというか、端的に表現するならば、パワー重視の中間フォームといった感じの見た目だろうか。
「さらにわたしは手札から『常勝の音色*21』を見せることでヨリシロのステータスをアップ! そして攻撃を宣言!……この瞬間、『甲闘陸型』の③効果を発動!!! 私のヨリシロの与ダメージが上昇する!!! これで終わり、シックス・ボルテージフィスト!!!」
……、これは非常にまずい。相手のカードの重なり様から見るに、ワンチャン残り5割がこの攻撃で削られる可能性がある。というか、耐えてもHPに余裕が無ければ弐と伍のバーンで死にかねない。
なので、まぁ今鬼札を切ろう。
「俺はその攻撃に対して、『死せる王の呪い*22』を発動! Sカウンターを5つ取り除くことでそこ攻撃を無効にする!!! 更に、追加効果として甘野さんのランダムに手札を1枚捨てる……! まぁ手札が1枚な以上、100%その『常勝の音色』だがな!」
「くっ……。手札0枚……。だけどそれはそっちも同じ!」
「確かにな、だが一連の流れにより、俺のSカウンターは15だ! そして、俺のターン、ドローッ!」
……、いいカード、3分の1のを引いた。正直劣勢ではあるが、まだ何とかなりそうではある。
「俺はSカウンターを2取り除き『王の墓場』の②*23を発動、『輪廻転生』を回収する! そして、『輪廻転生』の②の効果*24を発動! 自分と相手の墓地と手札のカードをデッキに戻し、互いに3枚ドローする!」
「えっ!? いいの!?」
相手の山札を回復させる。これは短期的に見るならば、勝利から遠ざかる行為ではある。だが、現状を凌ぎ、勝つ方法はこれしかない。
引いたカードは『王権臣従』、『死せる王の呪い』、そして『天啓』。とりあえず引いてからここからのルートは考えるか……。
「手札から天啓を発動! デッキから2枚ドローする!
よし……、これで勝ち筋は見えた。
「冥府への供物を発動!自分のデッキの上から1枚墓地に送り、相手の手札をランダムにハンデス! 更に、Sカウンターが10以上あるため、処理後にもう1枚手札を選んで捨てる! 」
今落ちたカードは天啓、そして残りの甘野さんの手札には漆疾轟圏と円環。
「天啓を拾われると面倒だからなぁ! 円環を落とす! 続いて、死者の呪いを発動! Sカウンターが15以上あるため、互いのデッキから4枚ずつカードを墓地に落とす!」
「更に! 俺は『王権臣従*25』を発動!このカードは俺のSカウンターに応じて俺のヨリシロをパワーアップさせる!」
カードを発動すると俺のヨリシロ、『孤独なる王の骸』が謎オーラと共に、少し大きくなる。
もし仮にヨリシロのステータスを数値化するならば、甘野さんのヨリシロの攻撃力は2500、それに対してこちらは2000と言ったところだろうか。正直、現状では全くステータスが足りていない。
「強くなったみたいだけど……、それじゃあわたしの『奇想天外英雄』には勝てないよ!」
「いいや、まだ俺のターンは終わっちゃいない! 今王権臣従を使用したことで、Sカウンターは30! ……この意味が分かるか?」
「……っ! わからない!」
「そっか……。だったら今から目に焼き付けろ! 発動条件はSカウンター30以上!EX:『キングオブグレイブ*26』!」
──── EX、それはヨリシロが持つ各々の切り札。発動条件こそあるものの、大ダメージや超絶自己バフ、特殊勝利など、基本的にはゲームエンド級の強さを持つ。これが、このゲーム、シロクロの醍醐味だと言われている。
「キングオブグレイブの効果はシンプル、発動条件を無視して、自分相手の墓地のカードを3枚まで発動できる。俺が選ぶのは……、俺の墓地の王権臣従2枚と、連環! この効果の処理後、俺は連環を発動し、王権臣従を回収して再度発動する!!!」
Sカウンター30相当のステータスアップが4回。相手の奇想天外以下略某の現在の攻撃力が2500であるとするならば、こちらのヨリシロの現在のステータスはおおよそ10000!
「──ッ! これが射落くんの戦略……!」
「あぁ、これを俺は狙っていたんだ」
まぁ、普通に手札が上振れただけだし、できるなら甘野さんの手札と山札を全部落としてLOさせたかったけども。
「まぁいい、とりあえず攻撃! まぁ防ぐことはわかってるけどさ」
「勿論!水征霧肆の効果③*27を発動、攻撃を回避!」
「さて、ここでターンは終わるけど……、サレンダーの意志とかはあるか? 甘野さんののデッキは残り2枚、手札は現状意味の無い1枚、更に言えばこちらのヨリシロはとんでもなく強化されてる。半ば詰みだよ」
……と、こんなことを言いはしたが、正味相手にもまだ勝ち筋に見えそうなルートは残っている。
相手の墓地に落ちている中に気になるカードが1枚。それは
さっき見えた『拾祝夢法』、アレの効果に確か『ヨリシロの交戦時に必ず勝利する』*28というものがあったはず。あのカードを起動されるとダメージを通されて普通にこちらが負けかねない。
最も、そのルートを辿る可能性は細い上に……、こちらの手札にもそれを防ぎ勝利を掴むための切り札があるのだが。
「わたしは……、最後まで諦めない! ドローッ! 私は手札から『常勝の音色』を発動!」
「ニブイチではあったけども、引いてきたか……!」
一応このターンの甘野さんの『拾祝夢法』着地までのルートを考えてみよう。
まずは最初のドロー、ここで山札にある拾祝夢法と常勝の音色の2枚から、常勝の音色を引く。次に、墓地に落ちている『神無罪玖』をフィールドの効果で回収、そしてここでもまたニブイチで神無罪玖をドロー。
そうして、ラストに壱針電身の効果で1枚ドローすれば完成、ということになる。
「ヒーローが勝つ時はね、音楽がいるんだよ! わたしは墓地から『神無罪玖』を山札に戻して……ドロー」
「……引いたのか!」
「うん! じゃあこれからわたしが何をするかもわかるよね。私は手札の『漆疾轟圏』、そして『神無罪玖』をヨリシロに重ねて……、③の効果で『壱針電身』の効果を選択して1ドロー!」
「確率を全部通してきたか……、面白い! じゃあ見せてくれよ、そのデッキの最強のカードを!」
「言われなくても! 今ドローしたことで発動条件を満たした『拾祝夢法』をヨリシロに乗せて効果発動! 転鎧:決! これにより、墓地の機装十鎧カードを全て私のヨリシロに重ねる!」
「なるほど、ここでステータスアップ……! 確実に勝負を決めに来た!」
「勿論、ここで決める! 奇想天外英雄!射落くんのヨリシロに攻撃!」
流星もかくやという煌めきと速度の飛び蹴り、それが俺のヨリシロへと飛んでくる。喰らえばこちらは負ける、それは間違いない。だが、その程度でやられる俺ではない。
「……かかったな。俺は手札から『死せる王の呪い』を発動! 攻撃を無効化し……、甘野さんの手札を1枚捨てさせる!!! ……君の手札は1枚! つまりこれで終わりだぁ!」
──── 勝った!
「いいや、終わるのはそっちだよ! わたしはこの瞬間、EX:『カウントテン・ミラクルフィニッシュ*29』を発動!! 攻撃に相手のヨリシロに超絶特大ダメージを与える効果を付与する!」
「EX……っ! だけども、どんなに攻撃を強くする効果だとしても、所詮苦し紛れ!ルールには勝てない! 」
「それはどうかな! わたしのEXが付与された攻撃は無効化されず回避もできない! これで終わり……だよ!」
流星は止まらない。次の瞬間、眩い光が視界を覆い尽くし……。
「グッドゲーム……」
──── 俺は負けた。
あぁ、なんて、カードゲームは面白いのだろうか。
社長の3D新衣装お披露目に興奮して下書きから引っ張り出してきたので初投稿です。
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