男女比がおかしい世界に産まれました   作:大気圏突破

10 / 36
前話から少し時計の針を進めます


アクア君だって人間なんです

ー『行き過ぎた代償』ー

 

 数年前からYouTubeで動画投稿者(YouTuber)として世間を賑わせていた星野アクア君が小学校を転校したことが判明した。学力や健康に関する問題ではなく我々マスコミが彼らを追い詰めてしまった。彼が幼稚園に入園した時に所属する京プロから「アクアやルビー、他の園児に迷惑となる行為をしないように謹んでください」と各報道各社に通達されたが遵守するところは無かった。彼等は塀を乗り越え教室内を隠し撮りし、まだ未発達な園児たちにカメラのフラッシュを浴びせ続けた。更に2人が小学生になる頃には過激の一途をたどってしまい、住んでいるマンションを特定し壁をよじ登って室内を撮影する無法者まで現れ星野一家は引っ越しを余儀なくされた。そして数日後に

 

 

『星野アクア無期限休養』

 

 

 が発表され、現時点で受けている仕事がひと段落ついたら全ての芸能活動を一時的に休むことがマスコミ各社に伝えられた。SNSで第一報が流れた瞬間に彼らを追い廻していた記者・カメラマン・出版社が特定され『アクア君あなたを愛してる』通称AAA(トリプルエース)と呼ばれる非公式ファンクラブが立ち上がり下手人たちへ制裁を与え続けていた。世論も休養に追い込んだ面々を悪と認識し不買運動が各地で行われ販売店も卸すのを拒否し、複数の出版社が倒産し巷にはクビになった社員たちが腹いせに下手人たちの顔と名前をSNSに公表した。親や子供が存在しない人物なら当人だけで済むが親族が存命な家庭は悲惨としか言えなかった。地獄絵図が生易しいと思うほどの絶望を浴びせられ、この世から姿を消した人たちも両手では数え切れないほどであった

 

 

 

 全ての騒動が終わり事態が鎮静化しても彼は復帰しなかった。そして第2の星野アクアを目指そうとしていた人たちも我が子を守るために天の岩戸に籠ってしまった。この世に再び光が訪れる日は来るのであろうか?

 

 

 

 

「アクア君ご飯が出来たよ、はいあ~~んして」

「いや自分で食べれるから」

「あ~~ん」

「だから」

「あ~~~ん」

 

 黒川あかねの圧に負けてしまいアクアは口を開けると、プラスチックのスプーンに盛られたオムライスが口内に侵入しケチャップの甘辛さが全体的に広がっていく

 

「ルビーちゃんにはミルクですよ~」

 

 哺乳瓶の代用としてペットボトルに入ったカルピスを持って彼女はルビーを膝の上に抱えるように座るとキャップを開けて飲ませてあげようとするが、ルビーは逃げ出してしまいアクアに近づこうとするが

 

「ダメでしょ?飲まないと大きくなれないよ!」

「もう大きいか…」

「赤ちゃんなんだからママの言うことを聞きなさい」

 

 そう言って黒川あかねはルビーの口にペットボトルを押し込んで500ミリを一気飲みさせると、1人でオムライスを食べていたアクアの方を向くと

 

「ねぇアクア君、ルビーにも弟か妹が居た方が良いと思うよね」

「あかね?」

「私頑張るから、アクア君も付き合ってくれるよね?」

 

 子供用のエプロンを脱いで彼に抱きつこうと近づくが

 

「ままごと遊びで本気にする奴がいるか!」

「アタッ!」

 

 デコピンで額を弾かれて痛い所を手で押さえ涙目になっている彼女の口に食べていたオムライスを持っていくと受け入れてくれた

 

「(これってスプーンの間接キスじゃ?でも美味しい。もっと頂戴)」

 

 そう思いながらゆっくり噛んで咀嚼するとルビーもやって来たので、姉の口の中にも同様にチキンライス部分を入れてあげた

 

 

 

 

「アクアもすっかり受け入れているね」

「あかねもアクア君に会える前の日はソワソワしちゃって、鏡の前でクルクル回りながら変なところが無いか確認してて」

「遠足前に眠れなくなるのと同じですね」

 

 アイと黒川の母親は少し離れた椅子に座って優雅に紅茶を飲みながら談笑していた。テーブルの上には移転した事務所から拝借してきた高級菓子が並んでいる

 

 

「あの~良いんですか?」

「ん?何が?お菓子ならぜんぜん食べていいですよ」

「そうじゃなくて、このマンションのことです」

「あ~~それなら問題無いです。それにあの2人が離れ離れになるのはダメだと思いまして、ルビーも懐いていますし」

 

 黒川の母が言いたかったのは越してきたマンションに自分たちを招待していることについてだ、マスコミのせいで星野家は引っ越しを余儀なくされアクア君も芸能活動を休むことになった。あかねはテレビのニュースで知った時に絶望に満ち溢れた顔をしていたが、彼から連絡を受けたときには受話器を持って泣きながら喜んでいた。アクア君が口にしたのは

 

「うちに遊びに来て!」

 

 デートのお誘いという訳ではないが彼にとって娘の存在は大きなモノになっていると実感した。そしてマンションに訪れると豪華で堅牢な造りに驚愕してしまった。そもそも敷地内に入るだけでも複数のチェックがあり部屋に入るまで何度身分証を提示したのか思い出せなかった。しかもジムとプールも併設されているので屋外で無法者に追われる心配もない

 

「やっぱり芸能活動はもう…」

「とりあえずしばらくはお休みかな?ちょっとここまで過激になるとは思わなかったし、それに家族の時間が少なくなって、家の中でも仕事の話ばかりなるのって息が詰まるから」

「そうですか」

「アクアは物分かりが良いから何でも出来ていたけど次第に私のワガママを受け入れるようになっちゃって、だって息子がブラックコーヒーを一気飲みして現場入りするなんて変でしょ?」

 

 少し寂しそうな表情をするアイは紅茶を流し込むと黒川の方を向くと

 

「生活する分には困らないしミヤコさんたちが頑張ってくれて慰謝料だっけ?賠償金?をふんだくってくれたから、それに2人も忙しい日々から解放されて毎日ラブラブしてるし」

「まぁ!アクア君がお兄ちゃんって呼ばれる日も?」

 

 その質問に彼女は微笑み頷いた

 

 

「アクア君!もうYouTubeはやらないの?」

「どうしようか考え中、やらなくても生きていけるし」

「ねぇ一緒に劇団に入ろうよ」

「劇団?」

「うん、『あじさい』っていう名前なんだけど私と同じぐらいの小学生が集まって大きな劇場で演劇を見せるの」

 

 それは突然の申し出だった。アクアにとって芸能活動はアイの夢を叶える為の手段でありチョウチンアンコウのオスのようにくっついてきただけである。それにYouTubeもミヤコさんから与えられたにすぎない。黒川あかねには考え中と言っていたが復帰については頭の中には1つのビジョンがあった。

 

「あかね1つ聞きたいんだけど、通っている学校に男っているよな?」

「うん各学年に4人から12人ぐらいかな」

「やっぱり走るのが遅かったり鉄棒とか出来ない?」

「そうだよ運動会でも分けられているんだけど、男子の1番早い人でも50メートル走が12秒ぐらい掛かるの」

 

 この世界の男は弱い姉のルビーと力比べをするとアクアは押し倒されてしまい恍惚とした彼女は抱き着いてクンカクンカしている。筋肉がつきにくいのもあるが男の最強格が戸愚呂弟なら女は雷禅・黄泉・躯レベルである

 

「アクア君はどうなの?」

「50メートルが9秒8」

「私は8秒5ぐらい」

「凄いよアクア君、私が1年生の時より早いなんて」

 

 褒めているのか?けなしているのか?多分褒めているんだと思いたい。そして彼が考えているのはYouTubeにて運動能力や筋力を向上させるフィットネス系の動画投稿である。医師としての知識も合わせれば世の男性のパワーアップを見込めるのでは?と思考していた。雨宮吾郎はただの医者でしかない演技に関してはズブの素人である。だからこそ彼女の申し出は渡りに船なのだ

 

 

「どうかな?」

「そこって男は?」

「男のように見える女の子ならいるよ」

 

 その言葉に腕を組んで考えてしまう。言ってしまえば女の園に単騎で飛び込むことは自ら死地に赴くのと同じである。断っても問題無いしチャンスはまた訪れる可能性もあるが、その場合心を許せる存在がいないのはマズい

 

「とりあえずミヤコさんたちに相談してみる」

「じゃあ一緒に来てくれるの?」

 

 キラキラした目で両手を握る彼女はアクアを押し倒そうとするが、ギリギリの所で耐えることに成功し貞操を守り切った。頼むから残念そうな顔をしないでほしい

 

 

 

 夜も近くなり黒川家の2人はマンションから去っていったが、あかねは何度も振り返っては手を振ってしまうのでアクアも部屋に戻るタイミングを逸してしまった。

 

「演技を学んでみたい?」

「うん、復帰するときに必要だと思って」

「戻りたいの?あの世界に」

 

 アイとしては息子の意志を第一優先にしているが、再びマスコミに追われるのはよろしくはない。過去の出来事で膿は出し切ったはずだと思うが楽観視は出来ない

 

 

「因みに何をやりたいの?」

「また動画投稿だけど、運動に関することをやりたいんだ」

「それって下のジムでやってること?」

「それよりも簡単で器具無しで出来るやつかな」

「ふ~~ん!それと演技がどう関係するの?」

 

 矢継ぎ早に飛んで来るアイの質問に息子は答え続ける

 

「やっぱ棒読みとか嫌だし、表現の仕方を覚えてみたいんだ」

「そうなの、私だけの判断じゃ駄目だからミヤコさんにも相談してみようか」

 

 そう言って息子を抱きかかえる母は次第に重くなっていることに気付きアクアが成長していることを実感するのであった。

 

 

 

 有馬かなは憂いでいた。それは愛しの彼が活動休止したことに対してである。あの時の撮影以来アクアと会うことが出来ていないのは彼女の心に重くのしかかっていた。もしあの時に連絡先を交換することが出来ていたら、アクアがSOSのサインを出していたら一目散に駆けつける自信はあったのに。

 

「どうすればいいの?」

 

 今日は所属する劇団の稽古日だが別の劇団も訪れ合同に練習をする日である。目標を見失い意気消沈している彼女の目の前に

 

「アクア君ここが稽古場なんだ」

「結構広く作られているんだな」

 

 意中の彼が目の前に現れた。知らないオンナトトモニ

 




新潟記念って去年もそうでしたがキズナ産駒が放馬する原因でもあるのかな?菅原君を買っているだけで家が建つよ


そしてアクア君はマスゴミに追われてしまい休んでいますが、当の本人は休養期間を満喫しています。先の展開を全く考えずにフィーリングだけで執筆しているので大変ですが頑張っていきます


感想を書いていただき誠にありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。