この世界では『なぶる』という漢字は『嫐』の方が多く用いられ、複数の女性が1人の男性を襲っていることを示す意味となっている。同意なく行えば即御用だがプレイの一環として有名であり18歳未満禁止コーナーのレンタル店でも売り上げの大半を占めるジャンルである
「パパ~~抱っこ!」
金髪の女の子はソファの上で横になってる父親の腹の上に飛び乗り、構ってほしいアピールをしている。のしかかりのダメージは効果抜群であり既にHPはレッドゾーンに突入しかけているが、母親似の顔立ちは潤んだ目で見つめくる
「しょうがないな」
愛娘の催促に彼は全身に力を入れて立ち上がり娘を抱き上げると奥の部屋から
「アクア君また無茶して、この前も同じことをやって腰を痛めたでしょ?」
「返す言葉もありません」
妻のあかねは夫から娘を引き取ろうとするが
「や~パパがいいの、ママだって裸で、お布団でパパに抱っこしてもらってるじゃん」
その言葉に夫婦は額から大粒の汗を流す。娘に夜の営みを目撃されていたのでは?しかし夫婦の寝室には鍵が掛かっている。バレる事なんて…
「フリルママが言っていたもん。パパ達は夜のプロレスが大好きだって」
アクアの胸にしがみついている娘は近くの椅子に座る。フリルのことを人差し指でさして彼女に教えてもらったことを暴露すると、大きなお腹を摩り笑顔の彼女が
「子供には真実を伝えるのが親の役目でしょ」
「フリルちゃん‼」
「怒らないでくれる。胎教に悪いわ」
いつものように2人痴話喧嘩が始まりアクアは娘を”たかいたかい”しながら反応を楽しんでいる
文面の通り星野アクアは2人と結婚した。あかねとフリルに屋上で告白され年貢の納め時を悟った彼はプロポーズを受け入れ、改めて自分の口から2人に愛の告白を伝えた。そしてその場で屋外プレイに移行してしまい、星空の下で3人が『嫐』(なぶる)状態で抱き合った。なお娘はこの時に注ぎ込まれた時のモノである。
「アクア、この子の名前は決めてあるの?」
あかねとの口喧嘩を終わらせたフリルは彼に尋ねるが
「考えてはいるけど母さんやルビーが、”これにしましょう・こっちがいいよ”で連日うるさくて」
「宝石の名前は止めておきましょう」
「身をもって体験しているので名付けないよ!」
4人家族…いやもうすぐ5人家族となる一軒家でアクアは幸せを実感していた。雨宮吾郎時代に抱えていた心のモヤモヤが無くなり、それを埋めるように妻たちが自分を愛してくれて自分も妻たちを愛している。きっと天国にいる”向こうのさりなちゃん”も祝福してくれるはずだ!心の中で手を合わせアクアは娘を降ろし妻たちを交互に抱きしめる
「アクア君?」
「アクア?」
驚く2人彼は
夫からの感謝の言葉を受け入れた妻たちは微笑みながら左右の頬にキスをするのであった。
さて、彼等以外の顛末を書いていこう。30代でお婆ちゃんデビューしたアイはアクアとルビーの子育て秘話を綴ったエッセイを出版したが誤字脱字が多く、編集が手直しをしようとしたが、”このままの方がアイらしくて良い”ということでOKサインが出されてしまった。なお育児エッセイのコーナーではなく教育コーナーに置かれ『正しい文章を身に付けましょう』という名目で年間売り上げランキング9位を獲得する。
斉藤夫婦には待望の子供が誕生した。ドーピング有りで夜のプロレスを時間無制限で行い、壱護が倒れ落ちる直前にミヤコへ放った一撃で着床に至り見事懐妊となったが、彼はドーピングの後遺症でしばらく虚ろな目で意味不明な言葉を口にしていた。
前話でアクアに結婚相手を紹介した姫川大輝はマスコミを巻き込んで盛大な大立ち回りを繰り広げ、愛梨に結婚を認めてもらったが婚姻に関する書類を妻任せにしてしまい、『片寄大輝』になってしまったが当人は
「好きな人と同じ苗字になれるのは最高だ!」
と言ってご満悦で、アクアとは今も交流が続き妻たちはママ友になっている。なお彼が生放送で放送禁止用語を連発しながら2人の夜の営みを口にしてしまい大問題が起きるのは別の話である。
星野ルビーは馬鹿である。2年生の頃に中間テストで赤点を全科目でやらかしてしまい留年の危機に陥った。アクアも妻との生活に主軸を置いていたので姉の勉強の世話をする暇はなく万事休すだったが、有馬かなが過去問題を提供してくれたおかげで留年を回避することが出来た。
「先輩、ウエディングドレス似合ってますよ!」
途方もない馬鹿ではあるが受けた恩は必ず返す姉は有馬に男を紹介した。オンラインゲームで交流のあった『永夢』の弟である。アクアが2人と籍を入れてからも果敢にアタックをしていたが惨敗続きの彼女は路上にてジンジャーエールと牛丼汁切りで悪酔いしていたがルビーが励まし、そのことを『永夢』に伝えると
「条件をつけるけど弟を紹介しようか?」
ルビーが紹介人となり料亭でお見合いとなった。彼はアクアと比べれば顔は劣るが有馬に対して悪印象を持つことは無く、彼女がリードする形で話が弾みデートを繰り返し3年の夏に水族館でプロポーズの言葉を彼に伝え受け入れてくれた。なおイルカショーの最前列でOKの返事を貰ったので、イルカたちから水しぶきの祝福を受けて全身ずぶ濡れになるあたり笑いの神は常に有馬の傍で輝いている
「これも縁ね」
アクアのことを射止めることは出来なかったが人生の伴侶を得て幸せな生活を送っている。籍を入れて落ち着くと子供時代はいがみ合っていた、あかねと和解し星野家に遊びに来ている。これは先の話になるが、あかねの娘と有馬の息子が結ばれて親戚になるのは17年後のことである
有馬のブーケトスを貰ったルビーはアクアの家でニートをしている。当初は雨宮吾郎先生を探そうと躍起になっていたが宮崎までの移動費を捻出することが出来ず、後回しにしていたらアクア夫婦に子供が産まれてしまいニート兼子守として居座っている。ただ赤ちゃんの魅力に心を奪われてしまい雨宮先生と同じ産婦人科医を目指す為に勉強をしているが前途多難である。
「どうしたのアクア君?」
娘を寝かした妻が夫に話し掛けるが、反応が無かったので彼の膝の上に対面で跨ぐように座り抱きしめる
「今までのことを思い返していた」
「私たち出会ってから長いね、実は会う前は怖かったの」
「どうして?」
「もしかしたら怖い人かも、横暴な男の子かもしれないって」
「どうだった?」
胸に顔を埋め感触を味わうように背中に手を回す
「杞憂だった!そして将来をアクア君に捧げようと心に誓ったの」
「ありがとう」
あかねもアクアの背中に手を伸ばして密着する
「そういったことは私のいない所でやってくれない?」
膨らんだお腹を冷まさない恰好をしたフリルがジト目になりながら熱々の2人に注意の言葉を投げかける。もうすぐ予定日であり入院することを勧めたが、彼女はそれを拒否している
「産婆さんに取り上げてもらう経験もしてみたいわ」
本気なのか冗談なのか表情では分からないが母親の顔となって日々を過ごしている。妊娠・出産・育児でしばらく休養になっているが、本人は再び現場に戻って姫川愛梨のように母親役の似合う女優を目指すつもりだ!
「あの時にアクアに助けてもらっていなかったら今の私はいなかった」
「そのお返しが入学式でキスだからビックリしたけどな」
「一期一会を疎かにすれば幸せは逃げてしまうわ」
フリルは彼の隣に座って肩に頭を乗せ、太ももを撫でていく
「これから賑やかな日々になるわお父さん‼」
「頑張ってねパパ!」
2人の妻に投げかけられた言葉に強く頷いたアクアはこれからの日々に思いを馳せて目を瞑るのであった。雨宮吾郎として生きた世界とは違い男女比が著しく偏っている世界でアイドルの子供として生をうけた彼は様々なことに足を踏み入れ時代に名を残した。彼に憧れタレントデビューする男の子も増え若干だが男児出生率も右肩上がりになってきている。それはアクアが転換点だったかもしれない。
生前に叶えることが出来なかった暖かい家庭を持った彼の今後は誰にも分からないが、愛する者たちと守るべき子供たちに囲まれたアクアを不幸と呼ぶ者はいない。星野アクアの未来に光があることを皆願っている。
本編はこれにて終わります。お盆休みの時に「推しの子で男女比逆転モノって無いのかな?」と思いハーメルン内を検索して1件も無かったので執筆していました。殆ど準備もせずにフィーリングだけで書いていたので途中から番外編に浮気したりR18を書いたりと迷走していました。
自分の作品をきっかけに「俺もあべこべモノ」やってみようと思う作家さんたちがいれば試金石になると思います。実のところフリルのキスは完全にミスでした。そこから軌道修正をしていましたが上手くいかなかったのが心残りです。
読者の方々からの感想で新たなインスピレーションが浮かび執筆意欲に繋がりました。本当に重ね重ねお礼を申し上げます。
活動報告の方に「推しの子」の世界で、あべこべ作品を作るうえでの注意点や自身が執筆で思ったことを書き残そうと思います。
今後は番外編の「ツクヨミアイドル編」を執筆し、私に執筆意欲が残っていたら本編のプロポーズ以降の空白部分を短編にするつもりです。もう1つ新作の構想が浮かんでいまして脳内でキャラクターを動かしています。
読者の方々のおかげで本編を完結させることが出来ました。本当にありがとうございます。番外編も楽しみにしていてください!