彼の中では天童寺さりなが心の中を占めているので彼女に16歳のプレゼントを上げることが出来なかったことを悔やんでいます(もっと長生きしてほしかった)
番外編〜あべこべ世界の雨宮吾郎が原作世界へ〜その1
「綺麗な空だ…」
菅野良介は薄れゆく意識と自身の腹に刺さったナイフの痛みによる覚醒を交互に受けて今まさに命が尽きようとしている。
「俺の人生って…いったい…」
最期にアイの姿を見たかった東京ドームで煌びやかな笑顔をファンたちに振る舞う姿を、ニノに最後の言葉を伝えたかった。でも何て話そう?
「アイツに…関わったせいで俺は…」
だんだんと心臓の鼓動が弱まり命の灯火が消えそうになる。彼は凍える空気の中で見上げた雲が存在しない青空を見て憎悪に包まれながら短い生涯を終えた
彼はB小町が東京ドームライブを行う当日の朝に協力者から伝えられた場所に出向いていた。自分たちを裏切り隠して双子を産んだアイに鉄槌を下す為に彼女の住む部屋の階まで歩を進めた。
「(こんな高いところに住みやがって)」
右手に持っている花束と隠し持っているナイフに力が籠る。アイツは俺達から巻き上げた金で悠々自適な暮らしをしている
「(あと少しで…)」
陽光を浴びて一歩ずつ目的の場所まで少しのところで彼の夢は潰えてしまう
「行ってきま~す!」
ゴン‼
「えっ?」
良介の身に突如強い衝撃が与えられ彼の足はもつれてしまいバランスを崩す。そして彼は数秒間だけ鳥のように空を舞った。誰もが一度は夢見る空中浮遊だが悲しいことに翼を持たない人間には羽ばたく術など存在しない。高所から地上に落ちるまでの僅かな時間だが人生の走馬灯が駆け巡った
「コラッ!玄関を開けるときは外に人が居ないかを確かめなさいって、この前も小さい男の子に怪我をさせたでしょ」
「大丈夫だって」
少年は知らない!君の行動がアイドルの命を救ったことに
「マ…ダだ!俺には…や」
地面に叩きつけられた良介はまだ生きていた。携帯電話で119番をすれば助かるかもしれない、そうだ救急隊員にアイのことを暴露しても面白いマスコミが駆け付ければ秘密が白日の下に晒される。最後の力を振り絞ってポケットに手を入れてみると液体に触れる感覚に陥った
「な…んだ、こ」
飲み物なんてもっていたっけ?恐る恐る引き抜いて見てみると、自身の手のひらが真っ赤に染まっていた
「血?………うっ!」
それを知覚した瞬間に猛烈な痛みが彼を襲った!地面に落ちた衝撃で持っていたナイフが自身の腹に突き刺さり臓器を傷つけると周囲に鮮血を垂れ流していた。そして彼は悟ってしまう終わりが近いことに、今までの人生を振り返り空笑いをする。あの男性医師を突き落とした俺が落とされて命を終わらせるなんて滑稽だな、死神がゆらめくロウソクの火に口を近づけ息を吹きかけようとする
「次は…まとも……なじん……せ」
菅野良介の命はここで終わりを迎え、15分後に近隣住民が倒れている彼に気付いて110番と119番通報をしたが遅かった。警察は事件で捜査をしたがナイフからは彼の指紋しか検出されず目撃者や防犯カメラも無く、良介のことを派遣切りに遭い将来に悲観した若者の自殺として処理をした
そして彼の目標対象だった星野アイは
「起きてってば!あと30分で現場入りしないと遅刻するって!」
「あと5分だけ」
ベッドの上で息子のアクアに体を揺さぶられているが、娘のルビーを抱き枕にしてしまい起きる兆しが無い。マンションから東京ドームまで飛ばしても1時間以上掛かりアクアの言葉は不自然と思われるが問題無い、この3人はドーム近くのホテルに居を構えている
「ミヤコさぁ~ん助けて!」
彼は携帯で頼れる大人に連絡をして最悪を回避することに務めた。どうしてこの3人がホテルに泊まっているのか?簡単であるアイが寝坊して遅刻する可能性がディープインパクトの複勝率並みに確定していたので、アクアが斉藤夫婦に”ドーム近くのホテルに泊まろう”と提案した。また彼女だけでなく朝が弱いB小町のメンバーにも同様の措置がとられ彼女だけを特別扱いにはしていない
「(これが世間を賑わせるアイドルグループのセンターって、なんだかな~)」
アクアはこの世界に転生して約2年の月日が経過をしていた。最初は戸惑いだけが先行し頭の中でクエスチョンマークが常に楽屋で出番待ち状態だった。雨宮吾郎時代に自分が担当する未成年者の息子として産まれたが周囲が変だった
母親は男装ソロアイドルではなくB小町というアイドルグループに所属し、男の社会進出も普通に行われ、テレビを点ければアムロ・レイが男だった。そして何より
「(男性優遇措置が存在しないのか)」
彼にとってこれが1番大きかった。今まで『男だから』という性別の括りで見られていたが、この世界では『星野アクア』という個人で周りが見てくれている。そして女性に怯えることなく街中を歩けることに感動していた。転生前は常に襲われるのではないのか?という不安に苛まれていたが、ここでは杞憂でしかない
「(さりなちゃんゴメン!君の墓前に手を合わせることは出来なくなるが忘れないよ)」
心の中で担当していた少女に謝罪の言葉を述べ誠心誠意を込めて手を合わせた。しかしアクアにとって厄介な問題が数多く山積している
「(アイドルをしながら未成年のアイドルが双子を育てるって無謀だろ)」
もしアクアが転生する前の世界だったら、自身の存在で家族3人で生活することは可能だったが『男性優遇』が存在しないここでは母親の収入が生活に直結するのである。頑張ってもらわないと困るのだが売れるまで生活がカツカツであった
「(若干のネグレクトに節約意識の欠如って母親になるのが早かったな、いや親の愛情を受けることがなくて俺達に対してどうすればいいのか分からないのか)」
赤ん坊の頃にルビーがお腹を空かせて泣いているのに爆睡していたので粉ミルクを作ったり、手取りが20万前後だったのにハーゲンダッツを食べて「どうしよう」って悩んでいた母親を見て、アクアは悲観した。このままだと確実に路頭に迷うと、そして彼は自身のスペックと環境を利用した
鏡で自身の顔を見ると父親は知らないが金髪で整っていることが分かった。母は苺プロという弱小だが芸能プロダクションに所属しているので社長夫婦に懇願し子役としてデビューした。幼いがイケメンで中身は三十路前後なので配慮と気配りの出来る幼児は瞬く間に引っ張りダコになるが、彼は常にアイのことをスタッフや監督に推し続け、裏方を担当する人たちに労いの言葉と差し入れを続けた。それが功を奏し母は着実にステップアップを果たし自身も人気者になっていたが、アクアは心の中には隠してある夢があった。彼にとって子役とは手段でしかなかった
「東京ドームで行われたB小町のライブは大盛況―――」
テレビから流れるニュースを聞きながら青年はスーツの上にコートを羽織りながら思案していた。あの男にアイの居場所を教えたが今日は何も起きなかったSNSで調べても出て来るのは東京ドームライブの感想ばかり
「正月狙い?それとも武道館かな?」
カミキヒカルは薄ら笑いを浮かべリモコンを持つと
「都内のマンションで無職の菅野良介さんが全身を強く打ち死亡が確認されました」
全身の毛穴が拡大しカミキの体温が一気に急上昇した。なぜ彼が死んでいる?まさかバレていたのか?しかも映像に映るマンションの名前は隠されているがアイと双子たちが住むマンションで、つまり良介はドームライブが行われる今日に行動をしていたことが分かる。じゃあなんで?誰が彼を?
「まぁいいさ方法はいくらでもある。手駒の1つが減ったに過ぎない!」
彼はテレビを消して外に出ると携帯を取り出して今後のことについて計画を練り始めていた。良介は扱いやすい手頃な駒だから簡単に誘導することが出来た。同じような存在を見つければ問題無い!なんなら双子を目の前で亡き者にするのも面白い、いったいどんな顔を魅せてくれるのだろうか?まるで夏休み前の子供が計画を立ててウキウキするように心を弾ませていると
「おいアンちゃん、危ない!」
「えっ?」
彼は失念していた。いつも歩き慣れている道で信号のパターンも熟知しているが今日はクリスマスで信号のタイミングが違うことに気付かなかった。携帯を見ていたせいで赤信号なのに渡ってしまいカミキヒカルは重量超過と速度違反をしていたトラックと衝突してしまった。
「あががががががっがががgg!」
衝突した瞬間はまだ息があった。しかし不幸なことに体が地面とトラックの間に挟まれしまい顔面がアスファルト側を向いていた。そして着ていたコートがトラックの下回りに引っ掛かってしまい走行を続けていた。道路にはサンタクロースの衣装のように赤い装飾が施されたがロマンチックなものではない。アスファルトは卸し金のようにカミキの顔面を削り続け肌を露出させ出血を加速させる。鼻の骨は折れ眼球が潰れていく下半身も同様に地面と接触しているので汚い紅葉おろしが大量生産される。次第に小さくなっていく体だが心臓は動き脳は働いていた。即死なら苦しむことはなかったが、この世の神は彼の命を安易に終わらせようとはしなかった
「ア………イ、きみの」
カミキが最期に何を言おうとしたのか?それは誰にも分からない。翌日の新聞はB小町のライブの賑わいを報道したり、有馬記念で単勝1.1倍の馬がスタート直後に落馬し最低人気の馬が優勝した大波乱を伝え、彼の死亡は片隅に文字だけで掲載されるのみだった
それから13年の月日が経ち星野ルビーは陽東高校の芸能科に進学した。母の所属していたB小町は東京ドームライブの3年後に武道館で解散コンサートを行い大盛況のまま幕を閉じた。メンバーは芸能界を引退する人や海外で役者デビューなど多岐にわたり、アイはタレント兼女優として活動している。娘のルビーも母に憧れアイドルを目指す卵なのだ
「(凄い周りがキラキラしている)」
教室内では自身と同じ芸能人の卵や既に活動している生徒が点在している。気後れしないように肩肘を張っていたが3分も持たなかったが、隣に座る巨乳のグラビアアイドルである寿みなみと友達となりクラスメイトに大人気若手女優の不知火フリルがいることに歓喜した
「ねぇみなみちゃん放課後どうしようか?」
「そうやね撮影もないさかい遊びにいかへん?」
担任の説明が終わり解散となった教室内では生徒たちが和気あいあいと雑談をしたり、帰りの準備をしている。2人は椅子から立ち上がり廊下に出ると赤髪の女性に呼び止められる
「どちら様ですか?それともみなみちゃんに用ですか?」
「アンタ、星野ルビーよね?」
彼女の口から自分の名前が出てくると不思議そうな顔をするが頷いた。そういえば昔どこかで会ったことがあるような気が?
「アンタの兄貴にアクアっているでしょ?アイツはどこにいるの?」
「お兄ちゃんの知り合いの人?」
「ルビーちゃん、この人って女優の…」
隣のたつ寿みなみが目の前の人物の名前を言いそうになった瞬間
「重曹を舐める天才子役の人だ!」
「10秒で泣ける天才子役よ!ってか昔アクアと一緒に会ったことがあるでしょ‼」
その瞬間ルビーは記憶から当時のことを思い出し手のひらをポンッと叩いた
「あ~思い出した楽屋に殴り込みをしてきたロリっ娘」
「私の方が先輩なんだよ!」
血圧の上がる彼女はルビーの戯言を無視して本題を尋ねると
「お兄ちゃんならここじゃないよ!」
「普通科ってこと?」
「違います。通っている高校が違うんです」
「へっ?」
天才子役の気の抜けた声が小さく放たれるのであった。
「あれ?ここはどこだ?」
カミキはとある部屋で目を覚ます
「確かトラックに轢かれたはずじゃ?なんで動かない?」
目は動くが頭や手足が全く動かない。しかも変だ!体には痛みどころか傷1つ無い
「轢かれたせいで体が動かないのか?いやでも傷が無いのはおかしい」
状況の把握に困っていると手術着を着た男性が近寄ってくる。カミキは彼に尋ねるが返答が無かった
「今日は27日で推定年齢が10代後半から20代前半、死後24時間以上が経過しているのか、ったく年明けが近いのに死体と一緒だなんて最悪だ」
「おい!なんだ?いったいこれは」
男性はメスを握るとカミキの腹を割腹させた。大きく叫んでいるのに手術着の男は手を止める様子はなく素手で各臓器を握って検分している
「肝臓や肺も綺麗だなんて健康意識の高い奴だな、心臓も見てみるか」
彼はノコギリで肋骨を切断し華麗なメス捌きでカミキから心臓を抜き出し、横たわるカミキは意識を失った
「はっ何だ今のは?夢?」
彼は再び目を覚ますと暗い空間で地面の上に立っていた
「なんだこれは?宇宙服だと?なんでこんなものを着ているんだ?」
理解することが出来ない自分の身にいったい何が起きているんだ?夢なのか現実なのか分からない!するとけたたましい電子音が響き手元をみると『empty』の文字が真っ赤に表記されていた。
「無くなる?いったい何が…うっ!」
突如胸が苦しくなる。心臓を押さえ四つん這いに倒れ込んでしまう、呼吸を整えようと大きく息を吸い込もうとするが出来ない!次第に視界がぼやけてしまう
「これ…はさん…そ、いきが」
もだえ苦しみ酸素を求めて宇宙服を脱ごうとしても脱ぎ方が分からない。必死に手で顔を叩くが乾いた音がするだけであった
「ハァッ、はぁはぁここは?」
カミキは周囲を鉄で覆われた場所で横たわっていた。酸素はあるが少し息苦しいのと変な音が聞こえてくる
「いっ―――」
次の言葉を紡ぐ前に0.02秒で地上の約375倍の圧力で高密度に圧縮されてしまった。痛みを感じる時間すらなかった。
「それでは5秒前、4・3・2・1」
上半身はいつものスーツを着ているが下半身には身を守る布が1枚も無かったカミキは視線を落とすと男の大切なモノがピアノ線で結ばれていることに気付いた
「発射!」
勢い良く放たれた巨大なペットボトルロケットは瞬く間に速度を上げて上昇していく、そして
"プツン!"
繋がっていたモノが痛みと共に自身の体から千切れて引き離されていく、グッバイマイサン!グッバイマイ玉サン!
全身が凍えるように冷え切っている。体どころか指1本すら動かすことが出来ないが意識だけはハッキリしている。声を出そうにも冷気で口が閉じてしまい鼻の穴から呼吸をすることも出来ない
「どっこいしょ!」
カミキは大柄な男に抱えらえ金属の窪みに入れられてしまうと起動ボタンが押され足先から自身の体がドンドン細かく砕けていく、生きたまま砕氷機で粉々になり彼だったものはゲレンデに撒かれてしまった
全裸で拘束されたカミキは激しい痛みに襲われた。腹を見ると2本のチューブが自身の胃に突き刺さっていたのだ!当然麻酔なんてされていない、そしてチューブの先に茶色い液体が”シュワシュワ”と泡を立てているのが見える
「まずはコーラを投入します!」
ピエロのような恰好をした女性は液体をせき止めていた止水板を取り除くと一気に強炭酸のコーラが彼の胃に直接注ぎ込まれる
「うっぶぐふげがっふぶ‼」
液体から発生したガスは全身を駆け巡り腸内までも満たされると
「メントスも入れちゃって!」
もう1本のチューブから大量のメントスがコーラの詰まった胃袋にダイブしていく
「や…だ、やめて……」
弱々しく発した言葉は無情にも化学反応によって生じた噴水芸によりかき消され、全身の穴という穴から汚い液体を撒き散らすのであった
カミキは何度も何度も死にかけるが絶命の手前で場面が切り替わる。陽の光が届かない森の奥で両手足を縛られハチミツとワインが頭から掛けられる。次第に虫たちが自身の体につきまとい蝕んでいく
「どうしたの?」
「アイ?なんで君が」
目の前にかつて愛した女性がいた
「なにをしてるの?」
「誰を待っているの?」
「ねぇ遊ぼうよ」
「お兄さんが鬼ね!」
「この絵本を読んでよ」
「一緒にアイスを食べよう」
「あそこの夜景は綺麗なんだ!ねぇこっちに来て」
周囲には子供から見たことのない大人の風貌をしたアイ達が彼に対して言葉を語り掛けてくる。どのアイも綺麗な顔立ちなのに表情が全く変わらない
「俺に近寄るな〜〜!」
誰も存在しない暗闇の中でたった独りの声だけが木霊する
「カミキヒカル、お前の罪は決して許されることはない『冥獄界』で永遠の苦痛を味わい最後には完全な無を迎える。だが私は君のことを覚えておこう」
黒服の少女は黄金の風を閉じて去って行くのであった
原作世界に転生したあべこべ世界の雨宮先生ですが、常に襲われることを念頭に生きていたのでリスク管理が出来ています。そのせいで母のアイを否定的な目で見てしまう現象が起きてしまいミヤコさんに懐いています。原作ですがある意味パラレルワールドです
最後のカミキですが未完成で私のストレスが溜まれば更に追加されます。
アンケートが日曜日だったのになんで水曜日に完成するの?という感じでした
感想を書いていただきありがとうございます。励みになります