いつも感想を書いてくださるマクロススキーさんの言葉から有馬の救出者を当初から変更しました。ありがとうございます。
時計の針を少し前に戻そう。ララライ版の『今日あま』がSNSやYoutubeに投稿されるとネット界隈は大きくざわついた。
【批判上等!『今日は甘口で』】偽物たちの戯れと本物の演技
1:名無しの役者志望
実写化がまさか最後まで酷かったとは
2:名無しの役者志望
あれが地上波の1クールだったら完全にレガッていたよね?
3:名無しの役者志望
『レガって』って何?
4:名無しの役者志望
>>3
ジェネレーションギャップ極まりやね。簡単に言えば作品がクソつまらなくて視聴率も悪いから予定より早く最終回を迎えますってこと、『レガ』はドラマのタイトルからや
7:名無しの役者志望
鳴嶋メルトはもちろんだったけどストーカー役の俳優なんてお遊戯会レベルじゃん
10:名無しの役者志望
あれでギャラが貰えるんなら俺がやってやろうか?
11:名無しの役者志望
>>10
やめとけ母ちゃんが地獄で泣くぞ
15:名無しの役者志望
しかし有馬かなも地に落ちたよな昔は天才子役と呼ばれて引っ張りだこだったのに
16:名無しの役者志望
都落ちだね、落ちた先が怪魔界とは
17:名無しの役者志望
>>16
ゴルゴムの仕業か?
18:名無しの役者志望
>>17
それはブラックや
21:名無しの役者志望
ってか実写ドラマ版のプロデューサーってあのクラッシャー鏑木じゃん、上もよくOK出したよね
22:名無しの役者志望
こいつのせいで原作がクソ扱いにされるのがマジで嫌なんだけど
23:名無しの役者志望
日本から消えてほしい
26:名無しの役者志望
だけどまさかララライがあんなことをやるなんてビックリだ!
27:名無しの役者志望
映像を見比べてみたけど月とスッポンってこのことを言うんやね
30:名無しの役者志望
しかもあれ吉祥寺先生の目の前でやったみたい、同じ学年にララライに加入している人がいるけど東ブレの作者と来ていたって
31:名無しの役者志望
>>30
マジかよ、ってかあの2人は師弟関係だもんな、いても当然か
32:名無しの役者志望
>>31
いや変だろ、師弟関係はともかく誰が2人を呼んだんだ?だって「やります」と言って「じゃあ行きますね」なんて不可能だろ
35:名無しの役者志望
俺達があーだこーだ言っても答えは出ないだろ、それよりも知ってるか?みたのりお組に星野アクアがいたことを
36:名無しの役者志望
懐かしい名前だね。テレビで見なくなっていたから引退したかと思ってた
38:名無しの役者志望
>>36
去年映画に出てたぞ情弱
40:名無しの役者志望
小4で一緒のクラスだったけどあまり学校には来なかったよ
41:名無しの役者志望
俺のクラスにも学校に来なかった奴はいたな
43:名無しの役者志望
>>41
それは不登校のお前だろ
47:名無しの役者志望
そういえば星野アクアと有馬かなって子供の頃に映画で共演してたよな?
49:名無しの役者志望
>>47
五反田監督の「それが始まり」だな、この前ブックオフでワゴンセールされてた
52:名無しの役者志望
星野アクアって子供の頃からテレビや雑誌に出まくっていたから代表作と呼ばれる作品が人によって意見が別れるんだよね、逆に有馬かなは代表作って何?だもんな
54:名無しの役者志望
>>52
ピッ、ピーマン体操があるから
56:名無しの役者志望
懐かしピーマン体操、だけど不運だったよな同じ発売日にB小町のラストシングルが出ちゃって話題を全部そっちに持っていかれたもんな、オリコン何位だっけ?
59:名無しの役者志望
その頃にCDショップでアルバイトしてたけど確かB小町のシングルが6週連続1位を獲得して、ピーマン体操は8位に置いた気がする。次の週には無かったはず
61:名無しの役者志望
片方は実力派集団で力を磨いてレベルアップ、もう片方は芸能界に残ろうと歯でしがみついている落ちぶれ女優、どこで差がついたのかね?
62:名無しの役者志望
最初からじゃないの?
64:名無しの役者志望
そうかもな、それよりも有馬かなは脱ぐと思う?
67:名無しの役者志望
鏑木Pもそっち方面に性(間違いじゃないよ)を出すかもね
68:名無しの役者志望
ついにアダルト事業にも進出か買わないし借りもしないけどな
やはりというべきかネットドラマ版の方は叩かれララライ版の方が持ち上げられる展開となり、特に出演者やプロデューサーへの過剰なまでの暴言が散見され祭り状態である。なお今回のことがきっかけで漫画版の『今日あま』が増刷が決まり完結した漫画がランキング圏外から戻って来る珍事が発生している。更にはアニメ化も検討され誰がヒロインの声優にふさわしいか?ランキングもされている。
「凄いじゃないのアクア‼」
「やるからには妥協したくなかったから」
ミヤコの興奮が電話越しに伝わってくる。彼はパソコンに映る自身の演技を見ながら小さいミスのピックアップをしていた。
「ミヤコさんが俺にララライを紹介してくれたから、実写化で落ち込んでいた吉祥寺先生を励ますことが出来たんだと思う」
「嬉しいことを言ってくれて、そういえば吉祥寺先生からお礼状が届いていたけど、そっちに持っていく?」
「いいよ、家に帰った時に持ち帰るから」
信頼できる育ての親からの祝福にアクアは少しはにかみながら表情を崩しているが、すぐに険しい顔に戻ってしまう
「実はアクアにオファーが」
「おやすみミヤコさん」
電話を切ろうとするアクアだが
「ちょっと待って!話だけでも」
「高校在学中は基本受けない方針の約束じゃなかった?監督やララライに関連することだったら多少の融通はするけど」
「違うのよアイとルビーが」
その言葉に物凄く怨念のこもった深くて重いため息をつく
「ルビーたちが何をやらかしたの?ろくでもないことだったら」
「あのね…」
話を要約すると今回の動画を見て母親のアイはとても喜んでいた。画面越しから伝わる息子の成長に親バカを最大限に発揮してしまい撮影の現場で関係者に自慢しているのだ本人曰く
「アクアが小さい頃に私を推してくれたから、今度は私がアクアを推すね!」
という怒るに怒れないことをやらかしてしまった。またルビーもクラスメイトにアクアの活躍を広めてしまい、それが大女優の不知火フリルの目に止まって興味を持たれている。なおアイが宣伝してくれたおかげでララライに所属する役者達の評判も上がり仕事のオファーやSNSのフォロワー人数の上昇など悪いことばかりではなかった
「ごめんなさい!まさかこんなことに」
「ミヤコさんが謝ることじゃないよ、母さんの行動を予測できなかった俺の責任だ」
頭痛薬を探そうと戸棚を開けているが空箱だったのを確認してゴミ箱へ投げ込む
「それでなんの仕事?」
「今すぐじゃないけど、2つあってネットテレビのクイズ番組に出てほしいの」
「なんでクイズ番組に?」
その質問にミヤコは言いづらそうに
「壱護が言うには本来は恋愛リアリティショーを収録して放送する予定だったんだけど、6人集める予定が4人だけになって、その4人のうち3人も辞退したみたいで」
「悲惨だね、もう1つは?」
「トーク番組って書いてあるけど詳しい内容がまだ決まってなくて、とりあえずアクアを仮押さえしておきたいって」
「状況によってはバラシになると?」
「まぁそうね、あとクイズ番組は出演料と別に賞金も出るから」
アクアは数秒だけ無言になり目を閉じて考えた。”賞金が出れば欲しいと思っていた医学書の資金にもなるし、ララライの人たちに差し入れも出来る”
「(この世界は恩の貸し借りみたいなものだし、母さんを黙らせる1手にもなるかな?)」
明らかに打算的だが断って雰囲気を悪くするよりかマシだろうと思い
「分かった出るから収録日と時間を教えて」
「ありがとうアクア‼」
「今回だけだから、次も同じやり方で仕事を頼んで来るなら二度と家には帰らない!」
「大丈夫、アイの方は抑えておくから」
ミヤコの言葉を聞いて彼は電話を切った。
『やっぱり実写化は失敗だよね』
『男性陣も酷かったけど、有馬かなも大概だよね』
『元天才子役(笑)』
『吉祥寺先生が可哀想、あんな人たちに作品を壊されるなんて』
「やめて言わないで、私だって頑張った!吉祥寺先生の想いに答えたかった。だけどあれでどうしろっていうの」
掲示板に投稿された誹謗中傷
『ララライ版は最高だった』
『あれこそプロの演技』
『それに比べてドラマ版ってやる意味あったの?』
『あったでしょ!世間にプロと素人の差を見せつける為に』
「私だってプロなの!でも本気で演じた浮いちゃうのプライドを封じ込めていたの」
頑張ったのに見えないところで演者たちのフォローをして現場の雰囲気作りに努めていた
『姫川大輝に黒川あかねは次世代のスターだね』
『化野やみたのりおも良かった』
『いや星野アクアが台風の目になる!』
『どっかの天才子役様とは全然違う』
「比べないでよ‼環境が違うの、メルトたちを最低限のレベルにするのだって大変だったの、ストーカー役なんて収録前日に決まったの稽古なんて出来てないの」
『有馬かなは不要』『オワコン女優』『凋落という言葉を調べたら隣に有馬かなって書いてあった』『一発屋にはなれたじゃん』『いるだけ無駄』『ご苦労様』『昔は好きだったよ』『これからはテレビで本物のプロの活躍を見てて』『あの人は今に出てたら教えてね』『サイン入りのピーマン体操が10円で売れた』『しくじり先生にはいつ出るの?』『暴露本でひと稼ぎするの?』『引き際を見誤ると大変ね』『短い賞味期限いや消費期限やね』『大根役者?大根を作っている農家に謝れ』
「ヤメテ‼」
叫び声と共に目が覚めた彼女は過呼吸気味に空気を吸い込み額からは大粒の汗を流している。全身に酸素を届けると周囲を見渡した
「ここはどこ?」
確か自分は裸足で夜の街を歩いていたはず。そして歩道橋から飛び降りようとしたが誰かが後ろから引っ張り現実に引き戻したところで暗くなってしまって
「アクア?そうだアクアが私を!」
その言葉を発すると部屋のドアが開き金髪の女の子が入ってきた。それは入学式の日に自分が呼び止めた人物であり、アイツの妹
「星野ルビー?」
「お兄ちゃ~ん、先輩が起きたよ~!」
「そんな大声じゃなくても分かるから」
あきらかに不機嫌そうな顔をしているが有馬かなの目の前に探していたアイツがいる。初対面から約14年が経過し大人の1歩手前まで成長した彼はスクリーンや画面越しで見るよりも凛々しい姿となり、若干だが心臓の鼓動が早くなる
「有馬かなだな?ルビーのいる陽東の先輩で女優の?」
「うん」
「ガキの時に五反田監督の映画で共演したときに俺達のいる控え室に殴り込んできて、世間から大バッシングを受けた『今日あま』のヒロインを演じた有馬かなでいいんだな?」
「お兄ちゃん先輩は病み上がりなんだから傷口に味噌を塗っちゃダメだよ」
「味噌じゃなくて塩だ!アホルビー」
アクアの口から言われた文言にダメージを受ける有馬だが尋ねたいことがあった
「アクアが―――」
「待て、なんで下の名前で呼ぶ?」
「えっ?だって私のことをさっき呼び捨てに」
「本人確認で聞いたに過ぎない、それに最後に会ったのは6年ほど前に局の廊下ですれ違ったぐらいで、少なくとも名前で呼び合う関係じゃなかったはずだ」
彼女に対して明確な拒絶を示すアクアはまるで有馬のことを特別視せず、妹がいる学校の先輩という認識でしかなかった
「お前を助けたのは社長たちだ!」
「えっ!」
「夜のデート中に”裸足で歩く変な女”が歩道橋から飛び降りようとして咄嗟に助けたって、警察に連絡しようとしたらミヤコさんが”この子って女優の有馬かなじゃないの?”って気付いて、大事になるのを避ける為にここに運んだんだ」
「ここって?どこなの」
あらためて周囲を見回すと複数の本棚が部屋を埋め尽くした隙間なくギッチリと難しい本が陳列されているのが分かる。ここが小さな本屋だと言っても通じるレベルだ
「ここは俺が使っていた部屋だ!」
「アクアの部屋?」
その言葉に彼はムッとした表情をするが訂正するのが面倒になると思い黙った
「足の裏の怪我は簡易的な治療をした!痛むんだったら病院に行け…と言いたいところだが1つ質問に答えろ、なんであんなところを裸足で歩いていた?」
聞かれたくない質問に有馬は頭を下に向けて黙ってしまう。しばらく沈黙が続いたが
「お兄ちゃん!女の子には男に言えない事情があるの、無理やり聞き出すのは良くないことだよ」
「だが」
「お兄ちゃん‼」
「分かった。言う通りする」
ルビーが2人の中に割って入り有馬を庇う形でアクアを諭し、彼はやれやれとした表情で部屋から去っていった
「ありがとうルビー」
「でもやっぱり理由は教えてほしいな」
「ごめん今は言えない、心の整理が出来なくて」
「もしまた死にたいって思ったら、ここに来ていいから話相手ぐらいにはなってあげるよ」
深い関係でもないのに彼女から伝わってくる優しさに、自然と涙がこぼれ落ちて布団を濡らしていく、ルビーは慌ててタオルを投げ渡し
「何かあったらLINEで伝えて」
そう言ってお互いの連絡先を交換した
「ねぇお兄ちゃん」
「なんだ?」
リビングのソファで新聞を読んでいるアクアは飲み物を持ってきたルビーに目線を向けてマグカップを受け取るり礼を述べると
「入学式の時に先輩がお兄ちゃんのことを探していた理由をず~っと考えていたんだけど」
「何か分かったのか?」
その話自体は目の前にいる妹から聞かされアクアも当時は疑問に思っていたことだが明確な答えは出ていなかった。
「もしかし先輩はお兄ちゃんを『今日あま』に出すつもりだったんじゃないの?」
「どうしてそう思った?」
「あのね最終回に出てたストーカー役って、元々はフリルちゃんの事務所の人が選ばれていたんだけど直前で辞退しちゃったの。それで辞退した日と撮影日の間に陽東の入学式があったから”この日にお兄ちゃんをスカウトしてストーカー役にさせる”つもりだと思って」
普段はアホな言動で周囲を困らせアクアやミヤコの肌に皺を作る原因となっている妹だが、頭はキレる方である。人の機微を察知しやすいが気付けて動けるのは別の話である
「それだと何故有馬がスカウトを担当していたんだ?主演の女優が代役を探すなんて俺は聞いたことがない」
「これもフリルちゃんからの情報なんだけど、ストーカー役の人が先輩から演技指導を受けていたって、それがプレッシャーになって辞退しちゃって」
アクアはふとララライの皆で視聴した最終回を思い出していた。ストーカーを演じていた役者は他の劇団員からボロクソに叩かれていた。無論そのシーンを選んで吉祥寺先生の目の前にして魅せたアクアも同様の意見であり、みたのりおの怪演したストーカーと比べるのがおこがましい程にレベルが開いていた
「俺が陽東にいなくて急遽見つけた役者の演技は酷かった」
「あとララライで『今日あま』の動画を投稿したでしょ?あれと比較されて」
「だけど動画を出す前から炎上してたぞ、あのドラマは」
「もしだけど入学式のときに先輩にお兄ちゃんの番号や住んでいるところを教えていたら」
「やめとけそんな”もしも”は考えるな、仮に俺が出たとしても状況が激変したとは思えないし、そもそも出演を断っている方が高い」
腕を組んで思案にふけっていると誰かに見られている視線に気付き廊下に目を向けると、部屋で寝ていた有馬が立っていた
「あの何か飲み物を」
「もう先輩!スマホに連絡してって」
「ごめんなさい」
ルビーは台所に立ち、アクアは時計を見て玄関に向かっていく
「じゃあ俺は用事があるから」
「うん、気をつけてね」
「お前もな」
そう言って外に出て行ってしまった
「アクアは何の用事?」
「なんか劇団の姫川さんって人が車を買うからついてきてくれって」
コップを受け取った彼女はルビーの言葉を反芻していく
「(ララライ?姫川?って姫川大輝じゃん、ちょっと待ってアイツ姫川大輝が繋がりがあるの?)」
自分には無い大物とのパイプを持つアクアは到底自身の及ばないところにいる。乾いた笑いを浮かべ放心する彼女を見るルビーはクエスチョンマークしか出てこなかった。
「星野~いったいどれを選んだらいいんだ?」
「ここに来る前に決めてこなかったんですか?」
「いや決めてたよ!だけどいざ実車を見ちゃうと目移りしちゃって」
月9で主演を務めララライの看板俳優である姫川大輝は後輩の星野アクアを伴って国内メーカーの販売店に来ていた。天文学的な確率と100年に1度の奇跡が重なり運転免許(MT可)を取得することが出来た彼はタクシーや電車での移動が億劫で常日頃マイカーがほしいと口にしていた。周囲の人間は”試験に受からない”と思っていたが、転がした鉛筆が連続で答えを導き出してしまい合格してしまった
「やっぱりMTの免許だしミッション車にしたいな」
読者の方なら分かると思うがMTのMは『ミッション』ではなく『マニュアル』のMである。アクアは姫川のボケにツッコミを入れるのが面倒になってしまいスルーしている
「いっそのこと軽でいいんじゃないですか?都内なら小回りが重要ですし、燃費や税金を考えれば得ですよ」
「う~~んでもな~軽は」
アクアは姫川を見て今日の購入は無いと思い、持ってきてもらったパンフレットに目を通している。しかし脳内では車のことではなく我が家の自室でベッドを占領する有馬かなについて考えていた
「(ネットからの誹謗中傷で心を病んで飛び降りるは可能性としては1番だよな、確か母親とは別居しているんだったな、まぁ流石に自殺未遂をすれば迎えに来るだろう)」
「星野~ボンネットってどうやって開けるの?」
「アクセルペダルの近くに引っ張るのがありませんか?」
「あっ給油口が開いた!」
結局姫川は購入することに至らず2人は帰ることになった。自宅までの道のりを歩きながらアクアは彼に
「死にたいと思う時?なんだそれ」
「感情演技で今後必要になると思って」
「そうだな、俺等だとネットからの誹謗中傷に同業者からの嫌がらせとかになるのか?」
「やっぱその辺ですよね」
姫川の意見を耳にしながら有馬に当てはまるか考えていると
「あとは財産を失ったときかな?」
「お金ですか」
「この場合は技術も入るな、言わば今まで出来ていたことが加齢や衰えによって出来なくなったり、1回ミスったことがきっかけで同じ状況に陥ると動けなくなるヤツ、ウソップだっけ?」
「イップスですね。スポーツ選手で見受けられる症状ですね」
ボケなのか素なのか分からない姫川の言動にツッコミ入れる
「もう引退した人なんだが、時代劇で斬られ役の名人と呼ばれる人が自身で及第点にも値しない演技をしてしまうんだが周りが『流石名人』『お見事!』って褒めてきたときに辞めることを決意したって金田一のオッサンから聞いたことがある」
「そうですか」
「まぁ職人だからこそ不甲斐ない自分に嫌気がさしたんだと思う」
彼と別れたアクアはルビーたちの方ではなく1人暮らしの自宅へ向かう。隣人のアビ子は東京ブレイドの出版イベントに登壇しているので御飯の催促はなく晩御飯をどうするか検討していたが、作る気力が湧かず結局ウーバーを頼み、小皿に盛り付けて自炊したことをカモフラージュしているとポケットに入っているスマホが鳴動する
「どうしたのミヤコさん?」
「ごめんねアクアせっかくの休みの日だったのに」
「そっちも有馬の対応で大変だったでしょ?別に良いよ」
「そう言ってくれると助かるわ」
電話越しから疲労感が伝わってくるのが分かり、状況が好転していないことが分かる
「それで有馬の親はいつ来るの?」
「それがね来ないの」
「はぁっ?ちょっと待って飛び降り未遂してるのに来ないって海外にでもいるの?」
耳がキーンっとなりそうなアクアの大声にミヤコも疲れた声で詳細を語ってくれたが頭の痛くなる内容だった
「”自由にさせていますので娘のことは関与しません”って育児放棄だろ‼」
「追加で”邪魔なら追い出しても構いません”って言われたわよ」
「それでどうするの?」
「正直なところ警察に通報するのが筋なんだけど有馬さんのキャリアに傷はつけたくないの、とりあえず数日はアイたちのところで過ごさせるわ、今の状態で外に出したら昨日の二の舞よ」
ミヤコの判断はベター以上ベスト未満である。110番をすれば警察が介入してくれるが今回のことをマスコミが嗅ぎ付けば週刊誌のネタになってしまい、大炎上した『今日あま』と関連付けてしまい吉祥寺先生にも迷惑が降りかかるので、それだけは避けたい
「それで彼女の部屋なんだけど」
「まぁ俺の使っていた部屋を」
「そうじゃないの、下着とか服が必要だから壱護と一緒に有馬さんの住んでいる部屋に行ってきたんだけど」
どうも歯切れの悪い口ぶりにアクアは汚部屋だったんだなっと思ってしまうが
「何もなかったの」
「どういうこと?」
「言葉で伝えるより見てくれた方が早いわ、パソコンを立ち上げてくれる?壱護のスマホから画像を送るから」
アクアは言われた通りにパソコンの電源を入れて届いたメールを開くと、何もない殺風景な部屋が写し出されていた。例えるならエヴァで綾波が住んでいそうなところでアニメと違うのは廃墟じゃないぐらいだ。床に敷かれた布団とコンセントから伸びる充電ケーブル、家具と呼べるのはタンスだけで冷蔵庫すら存在していない
「これって本当に有馬が住んでいたの?」
「紛れもなく事実よ」
「それで本人は理由を語ってくれた?」
その質問にミヤコは首を横に振って否定した。今はルビーが近くにいて夜になればアイが撮影から帰ってくる。母が有馬の心を開くカウンセラーになれるのかは不明だが頼るしかない
「アナタに頼むのはお門違いかもしれないけど、有馬さんの身の回りで何があったのか調べてもらえない?ララライなら共演している人や噂話ぐらい知っている役者もいると思うわ」
「別にいいけど期待はしないで、俺もそれほど顔が広い訳じゃないし」
「ありがとう!私たちの方でも探ってみるから」
電話を切ったアクアは背もたれに体重を預けると、みたのりおから聞かされた投資詐欺が頭に浮かんだ。芸能人が詐欺の広告塔になったり投資被害に遭うのは昔から存在していた。収入が不安定でスケジュール帳に白紙が続いたら発狂すると思う。だからこそ心の隙を突かれてしまって稼いだ金を奪われてしまう
「(金になりそうなモノを処分して藁にも縋る思いで託すほど馬鹿じゃないだろ)」
奇妙な形で再会した2人の行く末はどうなるのか
アイが家にいない理由ですが、いる状態で帰って来ると「役者やろう」って詰め寄ってくるので事前にミヤコさんから予定を聞いて撮影日に帰宅しています
感想のおかげで筆が進み執筆することが出来ました。本当にありがとうございます
「今ガチ」はアクアと黒川あかねを除いた4人に声が掛かっていたのですが、ネットドラマ版の「今日あま」の大炎上により出演をキャンセルしたことで製作中止となり詰め腹を切らされています。
今日は今からスプリンターズステークスの予想に入りますので、次話はどうなるか未定です
感想を書いていただき誠にありがとうございました。