男女比がおかしい世界に産まれました   作:大気圏突破

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おかしいな~最初は2話ぐらいで纏める予定だったのに本編よりも時系列的には先に進んでいるし、あれか勉強中の息抜きすると勉強時間よりも長く休んじゃうパターンか


番外編〜あべこべ世界の雨宮吾郎が原作世界へ〜その5

 翌日からアクアは有馬かなのことに関して情報収集を開始した。とは言っても自身の身の回りに彼女と共演した人物は皆無に等しく第一歩から暗礁に乗り上げそうになっていた

 

「(そもそも有馬が詐欺被害者という前提で動いていいのだろうか?)」

 

 

 あくまで彼女が”詐欺の被害を受けて財産を失った”というのはアクアの想像である。授業が終わり下校中にミヤコから送られてきた写真を見ながらマンションに帰ると

 

「あら星野さん」

「吉祥寺先生どうしてここに?」

 

 

 隣に住む低身長駄目人間漫画家の師匠で『今日あま』の作者である吉祥寺頼子が鮫島アビ子の部屋の前に立っていた。眼鏡姿で知的に見える彼女だが34歳を超えても男の影がチラつかないのはウワバミ並みの酒飲みが原因で寄り付かず、自身より若い同業者が結婚するとSNSで「〇〇さん結婚おめでとうございます。そういえば吉祥寺先生ってまだ独身じゃ?」とネタにされてしまう

 

「アビ子先生の手伝いですね。まぁ説教も兼ねてますが」

 

 話を聞くと自分が登校した頃にアビ子からHELPの着信があり師匠に泣きついてきた。足の小指をマガジンラックにぶつけ、二日酔いで頭がガンガンしている状態で泣き叫ぶ元アシスタントの声はモーニングコールとしては最悪で断ろうと思っていた。しかし

 

 

「あの子が人を頼るなんてビックリしちゃって」

「どういうことですか?」

 

 アクアの質問に対し彼女は

 

「アビ子先生ってアシスタントをしていた頃から我が強いというか、自分でやらないと気が済まない性格で妥協も許さなくて、連載を持って私の所から巣立ってからも一人で全部やっていて、何度か注意したのに聞く耳持たずだったんですけど」

 

 ニッコリと笑みを浮かべアクアの方を見据えると

 

「星野さんが引っ越し初日から助けてくれたでしょ?”困ったら人に頼っていいんだ”ってようやく理解してくれたみたいで、これを機にアシスタントを雇ってほしいものだけど」

「求める理想が高くて話がまとまらない?」

「正解です!」

 

 吉祥寺が溜息を吐くとドアが開き

 

先生助けてください~

 

 

 とても背の小さい売れっ子漫画家が泣きべそを浮かべ吉祥寺に抱き着く形で懇願してきた”あっ彼女の服で鼻をかんだ”

 

「それでは私たちはこれで」

 

 アビ子の脳天に特大のタンコブを作った握り拳から湯気が昇り、顔は笑っているが完全に怒っている吉祥寺は地面でヤムチャ状態のアビ子を雷獣シュートのように蹴り込んで中にいれる。ふとアクアは

 

 

 

「吉祥寺先生って有馬に会ったことって?」

「有馬って有馬かなさん?あるわよ」

「仕事が終わってからでいいので相談したいことがあります」

 

 その言葉を聞いた吉祥寺は了承の返事をしてドアを閉めた。室内からは”この服いくらしたと思っているの‼という怒号が聞こえたが気のせいだ

 

 

 

 事務所のデスクでミヤコはスケジュール管理を打ち込んでいた画面を閉じて背もたれに体重を預けた。背骨がドレミファソラシドを奏でるように鳴り響き自身の歳に対して悲観する

 

「(やっぱり現場での評価は低かったわね)」

 

 彼女もアクアと同様に有馬のことについて調べている。2人の初共演となった作品の監督を務めた五反田からは

 

「陰りが見えた頃に有馬の母親が現場介入してくるようになってきた!過剰なまでの押し売りに辟易したよ、丁度アイツが多忙になってきた時だな」

 

 と述べられ、他の事務所や番組スタッフで勤める人たちからも似たような文言があったが1つ気になったことを聞いた

 

 

 

「お菓子が全部無くなってる?」

「そうなんですよ、お菓子の他に机の上に用意した飲み物も無くて」

 

 更に電話の相手は続けて

 

「実はスタッフ間で噂になっていることなんですが、有馬さんが局やスタジオに来ると日用品が無くなっていることがあるみたいで」

「それって例えば?」

 

 緊張したミヤコは机の上にあるメモ帳にペンを乗せる

 

「そうですね。さっき言った飲食物の他にトイレットペーパーや傘とかですね」

「じぁあ?」

「でも結局のところ現場を見た訳でもありませんし、お菓子が無くなっていることに対して噂が一人歩きした可能性も…いや」

「どうしたの?」

 

 何かを言いかけていたので問いただすと

 

「同じ大学のお笑いサークル出身で『マテマティカ』というコンビがいるんですが」

「ごめんなさい。そっちの方面は畑違いで知らなくて」

「まだそこまで有名じゃないですが、2人とも偏差値ランキング上位の高校出身でして少し前に現場で顔を合わせたら奇妙なことを口にしてて」

「それって?」

「有馬かなが『学生時代に使っていたテキストがあったら譲ってください』って、2人とも学校や塾で使っていたモノの処分に困っていたから彼女にあげたみたいです」

 

 その言葉にミヤコは疑問を感じた。壱護と一緒に有馬の家に訪れた時にテキストどころか本棚すら無かった。仮に自分たちが見落としていたとしても何故彼女はテキストを欲したのか理解出来ない

 

「それっていつの話?」

「テキストをあげたのが確か3月ぐらいって言ってました」

「ありがとう教えてくれて」

「別にいいですけど今度アクア君を使わせてくださいよ!」

 

 ミヤコは会話の内容を思い出し、メモ帳に書き出した単語を1つずつ精査しながら予想を組み立てていった

 

「(お菓子や飲み物は有馬さんが持ち帰ったことで確定だけど理由は何かしら?普通に考えれば食費を浮かせる為だけど、他の窃盗に関しては話半分にしておきましょう。あとはテキストだけどいったい何に使うのかしら?役者の道を諦めた?)」

 

 点と点が繋がらずミヤコは推理を投げ出した。アクアの情報にも期待しつつ有馬が自身の口から本音を吐露してくることを祈るだけであった

 

 

 

 

 

 

「最初は真面目な女の子って感じでしたね」

 

 20時を過ぎた頃に鮫島家に呼ばれたアクアは吉祥寺から有馬の印象について聞いていた。家主のアビ子は疲れ果てたのかベッド上で寝ている

 

「真面目ですか?」

「えぇ、ドラマを成功させようと周囲に気を配って男性陣に演技指導やスタッフさんたちのフォローもしてましたし、私が稽古の現場に行くと真っ先にやってきて挨拶や原作を褒めてくれて、ただ」

「ただ?」

「顔を合わせる度に余裕が無くなっている感じがして、焦っているというよりも追い詰められているという状態でしたね、打ち上げの時はこっちから声を掛けても上の空みたいでスマホを持って何度も外に出てました」

 

 彼女の言葉を聞いてアクアは考え込んでしまう。判断材料が多くなってしまい答えを導き出すことが出来なくなっている。有馬が素直に”お金に困ってます”と口にしてくれれば次の手を打つことが可能なのに

 

 

 

「星野さんどうして有馬さんのことを?」

「実は…」

 

 今回の件に関して彼は飛び降り未遂の部分を隠し、事務所の社長が裸足で放浪していた有馬を見つけて保護したことを吉祥寺に伝え部屋の写真も見せた

 

「女の子がこんな部屋に住むなんて」

「汚部屋で漫画を描く女性はそこで寝てますけど、やっぱり変ですよね?」

「ミニマリストにしてもあり得ないことよ、今も星野さんの自宅に?」

「家には妹や事務所の先輩もいますし有馬が2人理由を話てくれれば、あと1つ気になっていることがあって」

「それって何?」

 

 飲みの席でみたのりおから伝えられた芸能人を狙ったポンジスキームと有馬がそれの被害者なのでは?という仮説を話すと吉祥寺は顎に手を当てて黙ってしまうが

 

 

「星野さん、有馬さんと面会することは出来ますか?いえさせてください‼」

「社長たちに連絡はしますが明日すぐにという訳には」

「無理なことを頼んでいるのは承知してます。出来るだけ早くお願いします」

 

 正座した姿勢からアクアの方に体を向けて深々と頭を下げる。そして目が覚めたアビ子は何を勘違いしたのか

 

「先生が未成年に付き合ってくださいと土下座してる」

 

 と口にしてしまいドラゴンフィッシュブローで再びベッドに沈められた。

 

 

 

 

 翌日の放課後にララライへ訪れたアクアは金田一のいる部屋に向かった。3回ノックして入室の許可をもらい中に入る

 

 

「間違えなかったのは親の教育のおかげか?」

「2回はトイレですから」

 

 胸ポケットからタバコを出して火を点けると、目の前にいるのが未成年だと気付き慌てて消そうとする。彼は”構いませんよ”と言うが消してしまった

 

「なんだ?姫川の奴がキャンピングカーでも買ったのか?」

「まだパンフレットと睨めっこをしています。金田一さんに尋ねたいことがあります」

 

 彼は目の前にいるアクアがいつもと違う目をしていたことに気付き、近くのソファに座らせて自分は対面に向かった

 

 

「有馬かなについてです」

「『今日あま』のアイツか、かつては天才子役と言われたが星野お前が頭角を現してから堕ちていった。あのドラマでも分かるように実力はあるのに酷いモノを見せやがる。だから俺は消した」

「有馬は何で干されたんですか?」

「干されたというより自滅だな、栄枯盛衰の激しい子役の業界じゃよくあることだ大きな理由なんて存在しない、それでその有馬がどうかしたのか?」

 

 ギロリ!とした目つきでアクアのことを見ると

 

有馬かなが俺の実家で保護されています!

 

 その言葉に金田一は一気に立ち上がり驚いた表情で見つめていた

 

「いったいどういうことだ‼有馬を保護って何があったんだ?」

「順を追って説明します」

 

 アクアは冷静に土曜日の夜から起きたことを金田一に伝えた

 

 

「そんなことがあったのか壱護社長のファインプレーだな」

「そしてこれが有馬が住んでいた部屋です」

「何もないじゃないか?これから住む部屋じゃないのか?」

 

 首を横に振って否定の意思を明確にし更に詐欺について話すと、彼は思うことがあったのか腕を組んで黙ってしまった

 

 

「その話は俺の周りでも噂にはなっていた。お前は誰から聞いた?」

「みたさんです」

「星野、今日は予定より早く終わらせる。お前はアイツと一緒に俺のところへ来い場所を移して話すぞ」

 

 アクアの答えを聞く前に金田一はスマホを持って部屋から出て行った。

 

 

 

 

「ここなら他の団員にバレることは無い。お前は今回の詐欺に関してどこまで知っている?」

「事務所の後輩が話を持ってきましてね。もちろん説得して関わらせないようにさせましたが」

 

 金田一の運転する車に乗って首都高のサービスエリアの駐車場に停めると助手席に乗っていた彼は眼鏡を外し淡々と述べていく

 

「星野あの写真を見せてやれ」

「どうぞ」

「これって?」

「詳細は運転中に話したが有馬かなが詐欺被害に遭っている可能性がある。2.5次元の鴨志田にも話があったみたいだがアイツは女遊びに金を使いすぎて加担することは無かった」

 

 前方の席に座る2人はため息交じりに近しい人物から被害が出ていないことに安心したが、舞台俳優が女遊びで金欠になるなんて恥ずかしいと思うのであった

 

 

「しかし何で有馬が狙われたんでしょうか?言っちゃあ悪いですが、もっと金を持っている人に近づいた方が良くないですか?」

 

 アクアは今回のことでずっと疑問に思っていたことを2人に話すと金田一が

 

「”有馬だから狙われた”が正しいな」

「どういう意味ですか?」

「例えば姫川にこの話を持って行ってもアイツは生活に困っていないし、その前に理解する頭が無くて俺か星野に相談するはずだ!しかし有馬の場合は違う、頼れる人が居なくて中途半端に財産を築いたせいで今の状況で生活を維持出来るだろうか不安になってしまった。生活水準ってのは1度でも上げちまうと下げるのは難しい、そんな時に甘い話を耳にしたら聞いてみようと思ってしまう」

 

 彼は吸えない代わりにニコチンガムを取り出している間に助手席に座る彼が口を開く

 

「有馬さんは物欲や称賛で心を満たしていた可能性があります。しかし称賛を受けるどころかネットでは非難の嵐、じゃあ買い物でストレス解消すれば貯めていたモノがドンドン減っていく、そこに隙が生じたのかもしれません」

「もしかすると詐欺師はチームで動いていた可能性があるな、通販でよくある”芸能人の〇〇さんご愛用”みたいな感じで安心させる手法だ、あの人もやっているから大丈夫だと思って金を渡したかもな」

「この場合ってお金は?」

 

 その問い掛けに2人は黙ってしまいアクアも察してしまいスマホで検索をしてみたが、希望を持てることは書かれて無かった

 

 

「みた!お前は周囲に被害者が居ないか調べてくれないか?」

「人気のグラフが下降線の人たちに目星をつけてみます」

 

 金田一は後ろを振り向くとアクアの目を見て

 

「星野お前は何もするな!これは大人のやることだ」

「未成年の俺は無力です」

「いや何もするなというのは語弊があるな有馬のケアに務めてほしい、少なくともまともな精神状態で過ごすのは難しいからな」

「飛び降りの部分は伏せてありますが吉祥寺先生にも同じ話をしてまして、有馬と会わせるつもりです。それに家には妹がいますから」

「場合によっては壱護社長の力を借りると思う。金融問題に強い弁護士の知り合いなんていないからな」

 

 

 

 

 とりあえず今後の動き方が決まり、自宅まで送ってもらったアクアは今日の出来事について知らせる為にミヤコへ着信した

 

 

「どうしたのアクア?」

「有馬の様子は」

「1日中アクアの部屋に引きこもっているわ、アイには事務的な対応だけどルビーには心を開いているみたいで」

「どっかでシンパシーを感じているのかな?」

「それで何か分かったの?」

 

 電話で話す2人は集めた情報をパソコンやメモ帳に書き出して推理を始めた

 

 

「十中八九詐欺で財産を失ったな!多分家財道具が無かったのは当座の生活費か追加で振り込む為に処分したってところだ」

「じゃあお菓子が無いのも?」

「それで飢えを凌いでいたのかもしれない」

「それとテキストなんだけど何のために譲ってもらったの?」

 

 ミヤコは自身で導き出すことが出来なかったことに関して尋ねてみると

 

「昔読んだ漫画にテキストとかで使われている紙が上質だから高く売れるって、あったけど流石に違うだろうし」

「そもそも有馬さんは未成年だから中古ショップに売ることなんて不可能だわ」

「それは代行を立てれば出来るけど二束三文にしかならないし、そのテキストって非売品?」

 

 その問い掛けに対して肯定の返事をすると、アクアは試しにパソコンでフリマサイトを開いて塾名とテキストの単語を入れてみた

 

「有馬のやつこれも売っていたんだ!」

「えッ?どうして」

「フリーマーケットのサイトで調べてみたんだけど、非売品のテキストって中古市場でも高値で取引きされてる。そうか書き込みがされていても受験生にとっては数式が1つですら宝の山だからな!」

「有馬さんは誰かに頼んで売ってもらっていたってこと?」

「生活費に当てていたんだと思う、多分だけど他の人たちにもねだっていたんじゃないの?」

 

 アクアの推理によって有馬の身に何が起きていたのかを組み立てることが出来た。更に彼は吉祥寺が彼女に会いたいと申し出たことを伝えると

 

 

「流石に明日明後日は難しいわね今度の土曜日はどうかしら?ここなら事務所の会議室で私たちも同席出来るし」

「俺は番組の収録後になりそうだな」

「ごめんなさい!勉強に集中させたいのに巻き込んでしまって」

「まぁ3年生までに習うことは終わらせてあるし余裕はあるよ」

 

 おやすみの言葉を交わし電話を切ったアクアはバンザイをするように背筋を伸ばす。最初は彼女のことを見放そうと思っていたが、ここまで関わってしまうとは追い出して野垂れ死なれるのも目覚めが悪い、命を救う視点から見れば有馬も患者の1人なんだと納得させた

 

 

 

 

 




明日は京都大賞典と凱旋門賞ですね。予想に入るので日曜日の更新は無いと思います。

感想を書いていただき誠にありがとうございます。執筆意欲に繋がり次も頑張ろうという気持ちになります。また誤字訂正をしていただき感謝しています

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