男女比がおかしい世界に産まれました   作:大気圏突破

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番外編シリーズ第2部となります。時系列としては有馬が苺プロに加入した頃になります


番外編〜銀髪美少女ツクヨミ爆誕〜その1

「そうか有馬はお前の所に入ったのか」

 

 ララライの本部でアクアは今回の顛末を金田一に話していた。芸能人を多く巻き込んだポンジスキーム詐欺はニュースでも取り上げられ、SNSでは詐欺に加担した関係者達の吊るし上げが行われている

 

「にしてもだアイツに500万貸すとは今のガキは恐ろしいな、折り紙で金や銀紙を使うのを躊躇っていた俺の頃とは時代が違うな」

「これに関しては有馬への投資だと思ってます」

「投資?返ってくる当てはあるのか?」

 

 金田一の質問にアクアは1回深く息を吸い込んで

 

「詐欺の被害を受けて役者としてもドン底を味わった!もう仕事を選り好みする余裕はありません。なりふり構わず何でもやると思います」

「その根拠は?」

「金田一さんが言ったでしょ?有馬には実力があると」

 

 振り向きながら瞳に宿る星は煌めくとアクアは部屋から出て行った。残された金田一はタバコに火を点けて肺に煙を満たしながら天井を見つめていた。苺プロの副社長から話は聞いている。アクアならアイツや姫川を超える逸材になると思っている

 

「決めるのは本人次第だな」

 

 その言葉と共に霧散する煙が部屋を包む

 

 

 

 

 肩の荷が下りたアクアは廊下を歩きながら首を回して骨を鳴らす。確かに500万円(賞金も渡しているので520万円)は大金だが、これは有馬を苺プロに留めておく楔である。大学進学を機に苺プロを離れることを想定している彼は事務所の今後についても考えていた

 

「(母さんが第一線で何年やれるか?ルビーのアイドル事業も成功どころか始動するのか分からない。だが有馬がいれば世代交代が出来る。世間の評価は低いが本人の実力を押し殺していただけにすぎない!必ず上がり目はある)」

 

 星野アイが聞いたら暴れ出しそうな未来予想図だが彼は本気である。医学を目指す人間が片手間でタレントをやるべきではない!雨宮吾郎が受験した時代よりも医学は発達している。今は地頭の良さと経験で補っているが胡坐をかいてしまえば置き去りにされてしまう。転生前の用心深さが遺憾なく発揮されている。

 

 

 

「星野!」

 

 振り返るとそこには大量のパンフレットを抱えた姫川がやってきた

 

「また週末に行くんですか?そろそろ決めないと向こうにも悪いですよ!」

「お前の休みを潰しちゃ悪いから今度は、みたさんと行ってくる」

 

 彼の愛車選びの旅は迷走を続け、金田一が危惧したように1000万以上するフルコンバージョンのキャンピングカーを購入しようとしていたのを全員で止めたのは数日前のことである

 

 

「玄関に可愛い女の子たちが来ているから知らせにきた」

「あぁルビーですか…?たちって?」

「行ってこい!」

 

 

 パンフレットで背中を押され、バランスを崩しながら前に歩きだしたアクアは姫川の口にした『たち』が気になっていた

 

「(クラスメイトの誰かか?まさか母さんじゃないよな?)」

 

 

 

 彼が一人暮らしを始めてから約束した2週間に1回の帰宅だが、アイと一緒に過ごしたのは今のところ2回しかない、副社長のミヤコが土日祝日のどこかに仕事を入れて彼女の居ない時を狙ってアクアは帰っている。アイは彼に役者を続けるメリットを常々口にしているが感情論と擬音ばかりで辟易してる

 

 

「あっ!お兄ちゃん」

 

 出入口には陽東の制服を着た妹と

 

「アクアお疲れ様!」

 

 苺プロに加入して間もない有馬が立っていた

 

 

「なんの用だ?」

 

 その質問にルビーがニヤニヤと気持ち悪い笑顔になりアクアを見つめ、隣にいる彼女の肩を叩いて

 

「先輩がお兄ちゃん稽古してるところを近くで見たいって駄々を」

「そんなこと言ってないって、ただ劇団でのアクアってどんな感じなのか気になって」

「やっぱ見たいってことじゃないですか、もう先輩のムッツリさん」

 

 漫才のようなやり取りに笑っていると

 

「かなちゃん?」

 

 奥からララライの看板女優で大河ドラマにも出演することが決まっている黒川あかねがやって来た!ルビーと彼女は中学時代から顔を合わせ黒川のことを慕っている。姉妹というより母娘に近いモノで本能が母性を求めている

 

「黒川あかね」

 

 元天才子役は天才女優との久々の再会に眉を顰める、子役時代のいざこざでギクシャクした関係が続き2人は距離を空けていた。世間ではライバル関係と揶揄されていたが自分がサスケなら黒川はナルトである。出会った当初は才能と実力で他を圧倒していたが成長のグラフは伸びず、反対に彼女は1つずつ階段を昇り出来ることを増やしていった。姫川が自来也でアクアがシカマルのポジションに収まったことも成長の後押しとなった。

 

 

「黒川さんお疲れ様です。お兄ちゃんから聞きました大河ドラマの出演おめでとうございます!」

「ありがとうルビーちゃん」

 

 そんなことはつゆ知らずルビーは大声で彼女に挨拶するが、大河ドラマのワードを聞いた有馬は更に気落ちしてしまう

 

 

「ねぇルビーちゃん、何でかなちゃんと一緒なの?」

「えぇっと、先輩は…」

苺プロの人たちに助けてもらったの!

 

 少し大きめの声で有馬が叫ぶと拳に力を入れて

 

「馬鹿で愚かな私に苺プロ…いやアクアが手を差し出してくれて、私はその手を握った!」

「かなちゃん、それっていったい?」

 

 あかねはクエスチョンマークを製造しアクアは手で顔を覆い天を向いた

 

 

 

「そんなことが…ねぇアクア君なんで教えてくれなかったの?」

 

 4人は場所を移してララライ本部の会議室に集まっていた。有馬から詐欺被害の話を聞いた彼女は目が点になっていたが、隣にいるアクアに対して問い詰めようとした

 

 

「みたさんと金田一さんに口止めをされていたんだよ、変に話が広まると犯人たちが逃げる可能性があったから情報の流出を抑えるようにしたんだ!」

「だからって…仲間なのに」

「じゃあアンタは何が出来たの?」

 

 2人の会話の間に有馬が割り込み彼女に問い掛けた

 

「えっっと、それは励ますぐらいなら、それにお父さんに相談して―――」

「気持ちは嬉しいけど、それだけでしょ?」

「大事な撮影の前に余計な心配をさせたくなかった。もしだけど今回のことを聞いて万全な状態でドラマの撮影に挑むことは出来たか?」

「それは…」

「あかねにとって大事なチャンスを最高の状態で迎えてほしかった。お前が大河に出ることを皆が祝福していただろ?生半可な気持ちで現場入りしてほしくなかった」

 

 アクアの言葉に目を潤ませる彼女は言われたことを振り返り想像してみた。確かに彼の言う通りだったら心在らずの状態で撮影に向かっていたと思う。理解した瞬間

 

 

「ありがとうアクア君!」

 

 彼に抱きつく形で謝罪した。その様子を見ていたルビーは”ほほぅ~”と声を上げ眼鏡を掛けていないのに直す仕草をして、有馬の目は黒く染まり瞳孔が開きっぱなしだった

 

 

 

 

 ララライ会議室での乱痴気騒ぎが終わり疲労困憊のアクアは自身の暮らすマンションに辿り着いて椅子に腰を下ろした。そして

 

「案外綺麗にしているんだ!」

「なんで、さも当然のように入ってきているんだ!有馬っ」

 

 彼の自宅前でルビーと別れたが彼女はアクアの後ろを歩き、何食わぬ顔で部屋に入ってきた

 

 

「アクアがどんな暮らしをしてるか気になって、副社長から聞いてるわよ抜き打ちの訪問があるって、だからこれは事務所の仕事なの」

 

 ドヤ顔で笑いつつも彼の部屋を見渡し、適当に本棚を漁り『東京ブレイド』の単行本を取り出した

 

 

「意外ね少年漫画も読むなんて」

「作者が隣に住んでるからな」

「へぇ~鮫島先生が、隣りに……隣りッ!」

 

 突然のことに有馬は驚き単行本を床に落としフローリングが傷つき、眉に皺を寄せたアクアが近づきながら拾いあげる

 

 

「多分だけど、そろそろ」

 

 数秒後にドアのチャイムが鳴り、スコープを覗くと駄目人間漫画家を家に招き入れた

 

 

「いつもありがとうございます!」

「原稿終わったんですか?」

 

 彼女は伸びをしながら頷き自身の定位置に座ろうとしたら、先客がいることに気付き挨拶しようとするが

 

「あっ!先生の作品を貶めた女」

 

 何気ない本音の感想が有馬のハートにダメージを与えた。彼女は吐血するような仕草で倒れ込んでしまうが更に

 

「確かネットでオワコン女優(笑)って」

 

 トドメ刺してしまった。フローリングの上で号泣する元天才子役は”だって私だって頑張って~”と口にしていた。世間の評価は未だに最底辺で上昇する兆しが見えない彼女であった

 

 

「同じ事務所に入ったんですか?」

 

 3人で食卓を囲み口の周りを汚している彼女は隣にいる有馬に問い掛けた

 

「もう1度役者として輝く為に」

「アクアさんの事務所の力を借りる訳ですね。正直なことを言いますが前途多難ですよ!」

「どういう意味で?」

 

 アクアは彼女の口元をティッシュで拭いてあげると

 

「これは漫画業界のことですが、最終回を迎えた作者の次って1部を除いて失敗してます」

「理由は?」

「周りがハードルを上げてしまって期待以上のモノを求めてしまうんです」

 

 漫画家としての視点に彼女は続けて

 

「そうならない為に1つの作品を続ける人もいますが、終わりの見えないダラダラとした展開に読者は段々と離れて最終的には後ろのページでひっそりと終わります」

「そんな…」

 

 有馬は箸を落として絶望する。自分の未来に光が無いことを…

 

「でもその次が売れるんです」

「えっ?」

「1回落ちてハードルが下がって読者の目も甘くなります。デッドボールで父親を亡くした子供の野球漫画がヒットしましたけど、次のボクシング漫画は短期で終わりましたが、その次は売れましたよね?」

 

 

 漫画をあまり読まないアクアは理解に苦しんでいたが、有馬の顔に太陽のような輝きが戻ってきた

 

「だから有馬さんは今まで違うことに挑戦すれば役者として復活するんじゃないですか?アクアさんおかわりください!」

 

 茶碗を差し出し大盛りを要求してくる。やっぱり漫画家はカロリーを使う職業なんだと思ってしまうアクアであった

 

「(俺っていつの間にかお母さんポジションじゃない?)」

 

 救世主(メシア)ではなく飯屋の星の下に生まれたんだよきっと

 

 

 

 

 食事が終わりアビ子は自宅に戻り編集者とのZOOMを使って東京ブレイドの今後の展開についてとアシスタントの斡旋について話し合っているが

 

「もしかしたら舞台化するかもしれませんので」

 

 と言い残していった。そしてアクアは有馬を最寄りのバス停まで送り届け彼女から

 

 

「ねぇアクアはこの先どうするの?」

「ん?MEMちょの番組出演とネットテレビのトーク番組に出る」

「じゃなくて役者としてよ!あるんでしょ目標?」

 

 顔を髪色と同じく赤くして地団駄を踏んで睨みつける

 

 

「目標はあるけど口には出さない」

「なんでよ教えなさいよ!」

「言葉にしてしまうと夢は軽くなる。胸に秘めて叶えるまで努力するだけだ」

 

 瞳の星が輝き有馬を見つめ、彼女は別の意味で赤くなる

 

 

「まぁいいわ、副社長には部屋に女の子を招き入れているって報告しておくから」

「大丈夫だ!もう知っているから」

「そうなんだ…」

 

 イニシアチブを取ろうとして失敗してしまう

 

 

「そういえば結構勉強しているみたいだけど、私が教えてあげようか?こうみえてそれなりに偏差値は高い…」

「もう3年生の履修科目分のやつは終わらせてあるし、今は過去問をやりながら勉強中」

「えっとじゃあ」

「無理に関わろうとするな!」

「ごめん、でも恩を返したくて!お金を返すだけじゃ」

 

 その言葉は彼にとって待ち望んでいたモノであった。有馬は分かりやすいから誘導するのも楽である。心の中で悪い笑みを浮かべるアクアは

 

「まだ少し先だけど頼みたいことがある。それに頷いてくれればOKだ」

「それって」

 

「内緒!」

 

 

 ニッコリと笑い佇む、その姿は伝説のアイドルである『アイ』と同じような仕草で一瞬にして彼女の心を掴んでしまった。バス停まで送り届けた彼はコンビニに入って明日食べるパンを購入して外に出るが、自動ドアを通る際に銀髪の美少女とすれ違う

 

 

「星野アクア?」

 

 小さな声は彼に届かず暗闇の中に消えていってしまうのであった

 




番外編シリーズ2部のスタートです。原作とは違い鏑木が『今日あま』で失脚しているのでアイドルフェス編は飛ぶと思います(まだそこまで考えていません)

今週は菊花賞なので競馬ファンはこの週だけ血統派になります。

アビ子先生は完全にアクアに依存しています(確定)

感想を書いていただき誠にありがとうございます
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