アクア君がこの世界に生まれて1年と数か月が経過した。母親のアイは男装アイドルとして復帰したが子持ちになった結果、今までのような活躍は出来ず小さい箱でライブをしても黒字にはならずタレントへ転身しようにも気の利いたコメントが出来ず、段々とスケジュール帳に書き込むことが無くなった。本来ならお先真っ暗で明日のご飯を心配しなきゃいけないが彼の存在は水戸黄門の印籠並みに凄まじい
「このままだと私、アクアのヒモになりそう」
居住費がタダで生活費も国から一定額支給されるので家族3人が困窮することは無い、じゃあ育児ブログを開設してアフィリエイト収入を得ようと考えたがミヤコたちからNGを食らった。生まれた男の子の成長をブログを通じて疑似ママ状態になるのは働く女性たちの心の栄養になるが、指示厨があれこれ文句を言い『私の方が上手く育てることが出来る』や写真の背景から場所を特定してストーカー行為に走る輩も存在している
「思い詰めちゃダメだアイ、俺の時だって基本はこんな感じだったし」
「そうよ生きていく分には問題無いわ」
ミヤコと壱護が彼女の焦りを感じとりフォローするが母親は首を横に振ってしまう。そもそも生活に不自由が無いのに何故アイは活動しようとするのか2人は気になり尋ねてみた
「アイどうしてアイドルとして活動を続けようとしたの?社長としては嬉しいことだしアクアにも同じ道を歩ませるのことについて理由も教えて頂戴」
ソファの対面に座るアイは一度深呼吸をして口を開いた
「デビューしてすぐに東北へ営業しに行ったでしょ?ステージで歌っているときは、お客さんたちが歓声をあげていたんだけど帰る時に車の中から外を見たときに、その人たちの顔が寂しさと絶望が入り混じった悲しい顔をしてて」
「遺伝子提供をやっている時に聞いたんだが、あっち側はここよりも男の出生率は低いんだ。しかも生まれたと同時に首都圏に越してくるからドンドン寂れていくんだ」
壱護の言葉にミヤコは思う事があった。生活のしやすい場所はどうしても大都市に固まってしまう国としても分散してもらうために地方移住推進のプロジェクトを進めているが、村社会特有のルールや取り決めによるトラブルが起きてしまいマスコミも大々的に地方悪を報道するので、数は殆ど伸びていない
「もしかしたらアクアなら人々を照らす光になると思う。私に出来なかったことをアクアに託してみたいの。アクアを見て明日も頑張ろう!人生最後の日に感動出来て良かったって思える空間を作りたい!」
フィクションなら親から子へ子から孫に託された想いを受け継いで夢を叶えていくが、そうは問屋が卸してくれないのが現実である
「言っちゃあ悪いけどアイそれは夢の押し付けじゃないの?確かにアクアなら出来るかもしれないわ、でも親が子供の意志を無視して未来を奪うのはいけないことよ」
「でも」
「分かってる全部否定するつもりは無いわ、それにアクアに対して仕事のオファーが山のように来ているの。アクアにやらせてみて嫌がる素振りを見せたら普通に生活させましょう」
「ミヤコさぁ~ん」
「壱護、アナタの意見も欲しいから知恵を貸して頂戴」
妻の頼みにグラサンは頷き事務所の方針とアクア君の芸能活動(仮)のスタートが決まった瞬間である。なお当事者の彼は別室で
「ルビーいつまでやっていればいいの?」
「私が満足するまで」
彼の太ももの上に頭を置いた姉は弟の太ももを堪能しながらナデナデを要求していた。生後のキス未遂騒動で喋ったことを不審に思っていたアクアはアイが寝ている時に問いただした結果、ルビーも自身と同じ転生者ということを明かした
「へぇ~アクアも同じなんだ」
「あぁ、それよりなんで俺にキスしようとしたんだ?」
転生者であることを伝えてはあるが別世界からというのは伏せてある。言ったところで信じてもらえないだろうし
「したことがなかったから」
「ん?したことが無い?独身のまま亡くなったってこと」
「違うの未成年のままで病気で死んじゃって、入院している時なんて親は1回も来なかったけど病院にいた『せんせ』が優しくて、私の命が尽きる日まで一緒に居てくれたの」
「ふ~~ん」
「死んじゃうちょっと前に『せんせ』と約束したの。16歳になったらキスのプレゼント頂戴って」
顔を赤くしながら告白するルビーは、両手を頬に当てて顔を横に振って当時のことを思い出している
「俺は身代わりってこと?」
「ごめんなさい。でもどうしても経験してみたかったのキスの味って本当にレモンなのかって」
「あれってウソらしいぞ」
「えっ本当なの?」
驚愕し雷に打たれたような顔をしたルビーは拝啓に”ガーン”という効果音が出て来そうな衝撃を受けていた。だってキスの前に焼肉を食べていたら焼肉味になるだろ
「でも!もしかしたら『ゴローせんせ』はレモンかもしれないじゃん」
「(ゴローせんせ?まさか、いや違うそんなことなんて)」
「私が成長したら見つけだして「天童寺さりなだよ」って告白するんだ!愛に歳の差なんて関係ないんだよ、それで『せんせ』の子供を身籠って」
「(さりなちゃん?)」
その言葉を聞いたアクアは心臓バクバクとなり驚いているが表情に出さないようにした。
「どうしたのアクア?手が止まってるよ」
「あぁ大丈夫」
再びルビーの頭を撫でるが焦っているのか少々雑になっている
「(ルビーがさりなちゃんって何の偶然だよ神様のイタズラなのか?いや違うここいる彼女は俺の知るさりなちゃんじゃない。この世界の雨宮吾郎に恋慕を抱く『天童寺さりな』なんだ!ここで俺が雨宮吾郎と名乗るのはダメだ、ルビーの記憶にある思い出を穢してしまう)」
何の因果か悲しいことか、こちらの世界でも雨宮吾郎は医師として天童寺さりなの最期を看取っていた。そしてルビーに真実を話してならないとこの瞬間に心に決めた
「ねぇアクアは転生する前は何をやっていたの?」
「俺?聞いてもつまんないよ」
「え~教えてよ~」
「学校の先生だ!受け持っていた3年生が出場した合唱コンクールを見届けた直後にお陀仏になってな、アイツ等の卒業式に参加することが出来なったからな、全員見つけて会いにいくかな」
もちろんウソの経歴である。彼が昔みたドラマの設定をパクったモノで天童寺さりなが生まれる前の作品だからバレることは無い
「そうなんだ見つかるといいね」
「あぁ」
そう言ってルビーは目を閉じて寝ようとしたが
「寝るな」
「あうっ!」
喉にチョップを叩きつけて無理やり覚醒させた
「もう!膝枕で寝る最高の雰囲気だったのに」
「痺れて痛いんだよ」
「ということは動けないんだよね」
ニヤニヤ笑うルビーは、伝説の大泥棒のようにジャンプして水泳の飛び込みスタートのようにアクアへ向けてダイブしたが
「ふぇっ?」
普通にアクアは立ち上がりスタスタと去って行き、ルビーは石崎君のように顔面を強く打ち付けて床の上をのたうち回ることになった
「(まったく油断も隙もない)」
アクアは自室に戻るとベッドの上に身を預けた。この世界について調べたが色々と狂っているのは事実だ!男というだけで優遇されチヤホヤされるが場合によっては誘拐される可能性もはらんでいる。この世界の女性は男のことを存在でしか捉えていない。母のアイはちゃんとアクアとして向き合ってくれて愛情を注いでくれる。しかも姉のルビーに対しても差別しないで同等に愛している。ミヤコたちもアクア達のことを大切にしてくれている
「(この世界の俺は行方知らずだけど生きているのかな?)」
その問い掛けに答えてくれる人は誰もいない
「(まぁいいか)」
前世で心残りはあった。でも同じ道を辿るのは難しいと思う。なら第2の人生は悔いなく生きて笑顔のまま逝くことを目指そう。母が自分のことを愛してくれるなら自分も母のことを大切にして不幸なんて置き去りにする日々を過ごしていこう。世界は違えど推しの子として生を受けたんだ!
「やってやろうじゃん」
天に輝く星たちは流星となって彼の想いを耳にするのであった
一応3話まで執筆しましたが、もう少し続けて細かい部分を考えて本格的にやっていきます。他にも2本執筆してますがISの執筆速度を落として、1週間でどれかを必ず1本以上更新出来るように頑張ります。
まだ高校生編の部分は全く考えてないのですが寿みなみの肩書き(グラビアアイドル)を変更しようかと思ってます。理由は追々話しますが
別にネタバレという訳ではありませんが、この世界の雨宮吾郎は亡くなっています。そして彼は原作側の星野アクアとして転生しています。