男女比がおかしい世界に産まれました   作:大気圏突破

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シマカンの1人称って『俺』でいいのかな?


番外編〜銀髪美少女ツクヨミ爆誕〜その6

「家の氷が無いと思ったら妹が全部コップの中に入れていて、”なんでテレビみたいに煙が出ないの?”って泣きながら…」

 

 

 アクアとみなみが出演したトーク番組は概ね成功と呼べる内容だった。主に幼少期のルビーに関する内容や子役時代に行った地方ロケのハプニングを話し、周りを笑顔に変えていった。なお1番の爆笑をさらったのはモデルの女の子が話した

 

 

「コンビニで1番くじの列に並んでいたら後ろにいた子供が母親に向かって、『今からオナラしま~す。3・2・1、ママ出ちゃったぁ』って親と一緒にトイレに駆け込んで」

 

 という内容で司会者も手を叩いて笑っていた。

 

 

 

 

 事務所の廊下で有馬は1枚の名刺を眺めていた。そこに書かれているのは『島 政則』という名前で業界関係者どころか一般人でも知られている映画監督である。しかし裏の顔も有名で彼の映画に出演する女優は同じベッドで一夜を共にしていると言われている

 

 

「役者復帰…」

 

 

 彼女はミヤコが持ってきたドラマのオファーを受けて現場に赴いていた。とは言っても端役で本来出演する女優が過労で倒れてしまい、抜けた穴の隙間をぬって副社長の彼女が射止めてきた。出番も少なく簡単な台詞を口にして現場から離れようとしたが

 

 

「君、”女優”の有馬かなだよね?」

 

 急に呼び止められて振り向くと彼がいた

 

「島…監督?」

「単刀直入に言うけど今の立場に満足していないでしょ?」

「それは…」

「さっきの演技も見てたけど天才子役じゃなくて元天才子役だね!」

 

 手を抜いているつもりは無かった。でも心が燃えなかった

 

 

「最高の舞台を用意することが出来る。『今日あま』のようにバッシングされ不甲斐ない駄作の中で生き続ける気か?」

「監督は『今日あま』を見て」

「見ていたさ全部!そして実力に蓋をする君を見ていた」

 

 懐から1枚の名刺を差し出し携帯電話を書き出した

 

「もし君にやる気があるのなら”一晩中”語ってほしいね」

「それって?」

「想像に任せるよ」

 

 名刺を受け取った有馬は彼の方を見ようとするが既に遠くの方まで歩いていき、片手を上げて振っていた。

 

 

 

「(でもこれって枕営業の…)」

 

 彼女も業界に身を置いて長い日々を過ごし、この話が綺麗なことではないことを理解している。喉から手が出る欲しい映画出演、あの口振りなら主演クラスも

 

 

 

 

「ホント女って簡単だな、ただの口約束に意味なんて無いのに甘い言葉で囁いて共感していればコロっと騙されてくれるんだ‼落ち目の女ならより滑稽だ」

 

 彼は自室で今まで交わった女性との映像フォルダを整理しながら有馬のことを想像する。自分には才能がある。この世は才能が全てなんだ‼努力なんて無意味、みんな俺のおこぼれを待っている。だからこんなことをしても許される

 

 

 

 

 

「天音さん、私たちとアイドルやりましょう!」

 

 星野ルビーは喫茶店で兄の隣にいる銀髪ボインの美少女である天音ツクヨミの手を握り、キラキラとした目で顔を近づけ迫っている

 

「えっと…」

 

 ツクヨミが困惑するのも無理はない、あの日以来アクアに対して従順な性格になってしまいクラスメイトからは『転校生を手籠めした』と吹聴されているが無視をして、ララライに行かない日は彼女の勉強を見ている

 

『金髪ツンデレ教師と銀髪の女子生徒』

 

 妄想逞しい生徒はこの構図で興奮してしまい、創作意欲が湧いたと口にして1週間学校を休んで同人誌を書き上げたが出席日数が足らなくなることを知るのは先のことである

 

 

 

「ルビーお前なぁ」

「お兄ちゃんは黙って、しかもあんなことを言うなんて恥ずかしかったんだから」

 

 

 彼女はこの前アクアがトーク番組で口にしたことに対して文句を言う為に、授業が終わった後にマッハで彼のいる高校へ向かい下校する生徒に”妹ですが兄の星野アクアを呼んできて”と頼むと、ツクヨミを連れたアクアが現れルビーが彼女の出で立ちを下から舐めるように視線で犯し惚れ込んでしまった。

 

 

「私がアイドルなんて…」

 

 転生する前は星野アクアの口車に乗って役者デビューしてしまった。幼少期の双子を演じルビーのワガママで馬鹿っぽい表現はアクアからも高評価だった。しかし今回は役者ではなく歌って踊るアイドル、煌びやかな世界に自分がいていいわけなんて

 

 

「良いんじゃないか」

「えっ?」

 

 

 コーヒーカップを置いたアクアはツクヨミのことを見つめ

 

「ルビーは馬鹿だけど人を見る目は確かだ!」

「馬鹿は余計じゃ…」

「4歳ぐらいの時にドラゴンボールを見て口から生卵を吐き出したのは誰だ?世の中が水不足の時に『じゃあお湯を使えばいいじゃん』って言ったのはどこの星野ルビーだ?」

 

 

 過去の黒歴史のことを持ち出されたルビーは顔を真っ赤にさせて座り込んでしまい、ツクヨミも口から生卵を吐き出すルビーを想像して笑いを堪えようとしていた

 

 

「1度でもいいので事務所に来てレッスンを見てください」

「じゃあ見るだけなら」

 

 

 流石に今すぐ事務所へ向かうことは出来なかったがお互いの予定を話し合って来週の土曜日にアクアが同伴する形で見学することになった

 

 

「なんで私のことを推したんだ?」

 

 喫茶店からの帰り道ツクヨミは隣を歩くアクアに問い掛けると

 

「お前は先のことを知っているんだろ」

「だがもう歴史は変わって」

「それでもだ!ルビーが危険なことに足を突っ込みそうになったら、こっち側に引き戻してほしいんだ!離れていても妹のことは心配だからな」

「シスコンめ」

「褒め言葉として受け取っておく」

 

 

 

 

 喫茶店での邂逅から瞬く間に時間は過ぎていき、週半ばでは姫川がついにマイカーを購入し納車されるのを待ち望んでいた。今はレンタカーを借りて自宅の駐車場に入れる練習をしているが返却するときはいつも傷だらけだ

 

 

「ここが苺プロ」

 

 ツクヨミの脳内にあった事務所とは違い大きい建屋である。星野アイが生存したことで業績が伸びアクアも子役時代にガムシャラ働いた結果、レッスン場や仮眠スペースがある事務所になっている。

 

 

 

「早く入って!」

 

 中から出て来たルビーに手を取られ彼女は事務所の中に入り、ツクヨミに普段のレッスン風景を見せていた。まだ下手の横好きレベルだが宝石のように輝く姿にときめいてしまう。しかし有馬の動きにキレが無く、休憩時間になると彼女は出て行ってしまった

 

 

 

「ねぇアクア、私に隠し事ってしてない?」

「いきなり何?母さん」

 

 

 事務所の会議室には鍵が掛けられ中にはアイとアクアの2人しか居ない

 

「母さんの好きな味のアイスを黙って食べたこと?」

「やっぱり数が合わないと…違う!はぐらかさないでっ‼」

「(騙すのは難しいが、やってみるか)」

 

 目を閉じて深く呼吸するとアクアは決心したように母親の方に目をむけた。アイも遂に息子が本音を自分に吐露してくれると思ったが

 

 

「ねぇカミキヒカルって誰?」

「っっっ!」

 

 アクアの口から発せられた言葉にアイの体温は一気に上昇する

 

 

「アクア…その名前は……どこで?」

「昔ルビーと3人で寝ていたときに、母さんが寝言で口にしていたのが気になっていたんだ」

「それはドラマの台詞で」

「実は金田一さんが同じ名前を口にしていたんだけど…変だよね?ドラマの台詞って?」

 

 息子の瞳に写る星は漆黒に色づき母親のことを見つめている

 

 

「俺に隠しごとを追求する前に母さんの隠しごとを教えてほしいな」

「それは…」

 

 言葉を紡ぐことが出来ない!アイは背中に大きな汗をかきながら脳内から起死回生の文言を選ぼうとしているが、どこにも存在しない

 

 

「母さんが話してくれるなら俺も全部さらけ出すよ、家族なんだ隠しごとなんて無しにしようよ」

「アクアその…ちょっと待って、その名前は」

「話してくれるまで待つから決心がついたら教えて」

 

 そう言って彼はレッスンを見るために会議室から出て行った。残された母親はぐったりとして椅子から立ち上がることが出来なかった

 

 

 

 

 

「(何やってるの私は…ルビーが頑張っているのに足を引っ張って、しかも見学者に)」

 

 有馬は自販機の横に座り込んでしまい自暴自棄になっている。シマカンの言葉が頭にちらつきレッスンに集中することが出来なかった!まだ間に合う、こんな醜態を晒すなら辞めてしまった方がいい、スマホに手を伸ばすと

 

 

「隣いいですか?」

「えっ」

 

 顔を上げると銀髪の美少女が有馬の前に立って尋ねてくる。確かアクアが連れて来た女の子でレッスンを見学しにきた。有馬の目から見ても惚れてしまう美貌で息を飲んでしまった

 

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 渡された常温の水に口を付けると彼女はため息を吐いてしまう。話のきっかけがほしいが今日初対面の相手になんて話せばいいのか分からない。あれこれ考えていると

 

 

「輝いてましたね」

「ルビーのこと?それに比べて私なんて」

「あら有馬さんも輝く素質を持っているから誘われたのでは?」

「だって私は…あんな」

 

 卑屈になっている彼女を見てツクヨミは転生前のことを呼び起こし、有馬の行動によってアクアが苦しんだことを思い出していた。そしてその轍を2度と踏ませないように

 

 

「有馬さん、限界まで一生懸命に打ち込んでみて駄目だったら逃げましょう」

「えっ」

「諦めが肝心って言いますけど、勝者って諦めないで挑戦を続けたから、最後に勝者になったんですよ」

「でも私がルビーの足を引っ張って、こんなことを続けるなら」

「今から役者に戻って復活出来ますか?中途半端に未練を残して演技を人々に魅せるのが正しいことだと言えますか?」

 

 ガツンッと頭を殴られたような感覚だった。今日初めてあった美少女に何でこんなにも言われて負かされてしまうのか、有馬には理解が出来なかったが

 

 

「じゃあ私が有馬さんの代わり入って2人でトップを目指します。そうですねアクア君も貰っちゃいますね」

「アクアを…もらっ」

「有馬さんは遠くから私たち3人の幸せを眺めながら、独りでさみしぃ」

「嫌、嫌よ!そんなの、もう何も失いたくなんて」

 

 涙を零す彼女の肩を持ってツクヨミは耳元に口を近づけると

 

「ならやることは分かってますよね?」

 

 彼女の言葉に服の袖で涙を拭いた有馬は名刺を破り捨てゴミ箱へ入れてしまった。そしてこの瞬間に天音ツクヨミの加入が決まり、ルビーは飛び跳ねて喜んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりそうだったのか、これは大スクープだ!」

 

 夜道を運転する彼の名前は鏑木勝也で職業は番組プロデューサーだが、現在は無職に等しい状態である。ネットドラマ版の『今日あま』を担当し原作をブチ壊す暴挙を犯した。当人にとっては完結した作品をどう扱おうが勝手であり、演技経験0(ゼロ)のモデルを集めて世間に顔見せ出来れば良しと思っていた。しかし劇団ララライがYouTubeで『今日あま』を実演し原作者の吉祥寺が向こう側を擁護するコメントを残したことで事態は一変した

 

 世間はララライ版を評価しネットドラマ版をこき下ろした。それは役者だけではなく製作側の人間までに及びプロデューサーの彼にも火の粉がふりかかる。世間の声に敏感な局の関係者たちはトカゲの尻尾切りのように鏑木を見放し、予定されていた恋愛リアリティショーも収録前に企画が潰れてしまった。

 

 

「これであの2人を」

 

 星野アクアのことは彼が子役の頃から知っていた。苺プロに所属する彼女に仕事を斡旋したこともあり、いつか自分の手掛ける番組に起用しようと考えていたがアクアが中学に進学したことで仕事量を絞ったことで叶うことはなかったが、鏑木の中で1つ燻ぶっていた違和感があった

 

『もしかしてあの2人は親子じゃないのか?』

 

 まともな思考を持つ人に話せば鼻で笑い飛ばされてしまいそうな妄言だが、長年悪鬼蔓延る芸能界を渡り歩いてきた鏑木には確信に近いものを感じていたが裏付けがなかった。無論このことを暴いてやろうと思うこともなかったが、彼がララライ版の首謀者ということを人づてに聞いた瞬間に踏み切ってしまった。

 

 

「少し懐を痛めたが、これからのことを考えれば安い出費だ!」

 

 番組スタッフからアイが使用した割り箸を受け取り、美容室の見習いを抱き込んでアクアの毛髪を手に入れた鏑木はそれを鑑定に送り、車内で結果を確認していた

 

 

「これを使えばあの親子をタダ同然で使うことも出来る。それに落ち目になれば週刊誌に売ってしまえば金も入る」

 

 

 これから起きる未来予想図を思い描きながら、ほくそ笑む鏑木はタバコを吸おうと助手席に置いてあるライターに目線を向けた瞬間

 

 

 

「えっ」

 

 車線からはみ出し猛スピードで突っ込んでくる車の運転手と目が合ってしまった。

 

 

 




描写されていませんが鏑木が人づてに聞いたのは、金田一が飲みの席で「ウチの星野のおかげで…」という話を聞いた関係者からの又聞きで耳にしています。


明日は天皇賞秋ですね楽しみですよ

感想ありがとうございます。
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